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第1曲 『明日晴れるかな』 act.1
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~ユグドラシル大陸~
龍歴1525年(冬)。彼の地ユグドラシル大陸にて、人とドラゴンが互いに手を取り、新時代を築き始めてから1525年の時を経て、今現在、ユグドラシル大陸東部にて、人間とドラゴンは戦争を繰り広げていた。東部戦線である。
ガガガガガッ!!!
ブワァァーーーー!!!
暗く天候悪い夕闇の中で、雲の中を飛び回っては、地上を降下して炎のブレスを吐き捨てる伝説上の生物・ドラゴン。頭には2本の角や何メートルもの大きな翼を広げ、トカゲのような鱗を纏いて、鋭い目つきで人間を睨みつけるドラゴンは、何十頭もの大群で人間たちを襲い尽くす。
そんなドラゴン相手に人間も一方的になぶられるわけではなく、彼らにも戦う術『魔法』があった。
その身体の内に魔法を扱うマナが備わり、魔法を武器に纏わせて戦う者『魔戦士』、魔法を体に纏わせて戦う者『魔導士』、魔法を杖を介して展開して戦う者『魔法使い』又の名を『魔女』。
空高く上空を旋回するドラゴン相手に空飛ぶほうきや空軍武器を用いて対抗する人間陣営。
ビュン!!!ビュン!!!
ズババババババン!!!!
魔法や銃弾など、多くの遠距離攻撃手段を用いて空飛ぶドラゴンを撃墜させていく人間たち。
一頭、また一頭とドラゴンは討伐されていき、それに臆せず、ドラゴンたちも空飛ぶほうきにまたがり、自分たちを後方から追いかけ回しては遠くから魔法を放ってくる魔法使いを翻弄しては隙をついて喰らい殺す。互いに一歩と引かない状況で戦いはさらに激化していき、救護班は救護の手が足りずに困り果てていた。
「ハフマン先生!!|リルカを!リルカを助けてください!」
「負傷箇所は?あぁ…」
「横腹を、骨ごと噛み砕かれて…」
簡易的に建てられた救護テントに女性を抱えて走り込んできた一人の男。その男は、自分の愛する大切な彼女の命を助けるべく、戦場から引き返して救護テントに足を運んだのだが、救護テントの責任者であるハフマン医師は、負傷者である女性の体を見て絶句する。
「先生…先生どうか…」
ハフマン医師は顔を横に振り、治せないことを伝える。手遅れかどうかは原因ではない。治せない理由は、もう彼女に生命を維持するための大事な器官が欠落していたからだ。噛み砕かれたのではなく、噛みちぎられたのだ。ドラゴンの牙によって、心臓も内臓も、体の半分がだ。どんな凄腕の魔法使いであったとしても、こうなってしまっても助ける術がない。
東部戦線が開戦してから早1ヶ月。ここまでで討伐されたドラゴンの数は約120頭。それらを討伐するのに命を落とした人間の数は…3桁を超えていた。重軽傷者も含めれば4桁を軽く超えている。
こんなにも多くの人の命を奪い、不幸を拡大させていく東部戦線はいつ終戦するのか。何をすれば終戦するのか。ドラゴンを一頭も残らず討伐すれば終わるのか。誰の目にもこの不毛な戦いの果てが見えなかった。
ただ一人、15歳の少年を除いては。
東部戦線に参加した魔戦士、魔導士、魔法使いの中で、前線部隊では唯一の中学生にして、最年少魔導士。群青色のローブを身に纏うその少年は、ユグドラシル大陸の中でも主にドラゴンが好み、根城にしているであろうと推測されていた東部に位置するバスティーユ大火山へ一人で足を運び、一際大きな一頭のドラゴンと対峙してきた。
ガァァァァァァ!!!!ガァァァァァァ!!!!
他のドラゴンよりも明らかに怒り心頭で発情していた黒色の鱗に鋭い無数の棘を持つ肉体。口からはドロドロの黄色液体を垂れ流すそのドラゴンの名は『バスティーユ・ポイズンテール種』。バスティーユ大火山を根城として繁殖する種であり、後ろに伸びる刺々しい尻尾は、まるでスコーピオンの持つ尾と同じで猛毒を有する危険な種のドラゴン。
そんな危険で獰猛な性格のバスティーユ・ポイズンテール種に一人で立ち向かう少年・柊木 湊(15)。黒髪で前髪をジェルであげた風貌、そして赤い瞳が特徴的な若き魔導士。
発情して怒りを周囲にばら撒くバスティーユ・ポイズンテールは湊へ、黄緑色の沸騰した毒のブレスを放つ。
ブワァッ!!!!
11010101100011101001…
視界に広がる無数の数字たち。それらを脳内で逆式に変換する湊。
「逆式…10011101000010101011」
湊は毒のブレスに右手を伸ばし、毒のブレスを防いだかと思えば、右手を振り払い、逆に毒のブレスを弾き返してバスティーユ・ポイズンテール種に直撃させる。
ガァァァァァァ!!!!
"反転魔法・ミラーフォース"
相手の放つ魔法を二進数変換で分析し、その逆転変換をして、相手に弾き返すという荒技。頭の中で無数の数列を展開し、その数列を完全に逆転させて魔法を再構築させ、同等の魔法を弾き返すという荒技を、相手が放ち自分へ着弾するまでの数秒の間にやってのける反転魔法・ミラーフォース。
成功条件は、事前に相手の使用する魔法の二進数変換を暗記し、一語一数間違えずに逆転変換させること。それも2、3秒の間にだ。それができなければ不発に終わり、何の成果もあげられずに自分にただ魔法が直撃するのみ。
そのため、反転魔法を実践で使う者は少ない。というか、いないだろう。世界で唯一湊だけが扱えると言ってもいいほどの最強魔法であり、世間は彼を『神童』と呼ぶ。
魔法が効かないとなれば勿論、物理攻撃でくるだろう。
ズバーーーーーン!!!
バスティーユ・ポイズンテール種は、そのスコーピオンのように鋭く猛毒を有する尻尾で湊へ狙いを定めて突き刺そうとするも、この攻撃を軽やかに避ける。
ズバーーーーーン!!!
サッ!!
ズバーーーーーン!!!
サッ!!
何度繰り返してもバスティーユ・ポイズンテール種の尻尾攻撃は湊へは当たらない。魔法の才だけでなく、日々鍛錬を積み、身体能力まで常人のそれを超えている湊は、弱点など無いのではと思わせるほどに強かった。
そして、"異空間魔法・オプションゲート"から己の剣武器である退魔ノ剣を右手で取り出し、バスティーユ・ポイズンテール種に向かって駆け出し、その首に狙いを定める。
バスティーユ・ポイズンテール種も湊の考えを読み取り、己が大事に守り抜く卵を両手で抱え、翼を幾度も上下し、大空へ羽ばたかんとする。
ーーやっぱり、出産して2ヶ月…雛の孵化直前。セシリーヌの言った通りだ。
ドラゴンの活発化した時期、つまりは東部戦線の開戦時期と孵化タイミングが合致する。新たなドラゴンの誕生とそれを守るために荒ぶるドラゴンたち。ただ、理由は本当にそれだけだろうか。ただの一頭のドラゴンが卵から帰る、ただそれだけのためにドラゴンたちが人間相手にここまで抗戦的になるだろうか。何か別に、深い理由が…。
ーーどちらにしろ俺のやることは一つ。
「ドラゴンの頭を叩いて、東部戦線を終結させることだ!!」
タッタッタッタッタッ!!!
スパッ!!スパッ!!
湊は駆け出し、空へ飛び立たんとするバスティーユ・ポイズンテール種の懐に飛び込み、退魔ノ剣で2枚の羽を内側から斬り裂き、バスティーユ・ポイズンテール種を抑制させる。
ガァァァァァァ!!!!
痛みに絶叫し、咆哮轟かせるバスティーユ・ポイズンテール種だったが、残りの力を振り絞り、卵を掴んだまま前屈みで飛び立ち、湊の振り回す退魔ノ剣の間合いから外れ、逃げようとするが、湊はそれを許さない。
「悪いけど、ここで終わりだ」
"風魔法・リフトアップ"
湊は左手で竜巻を生み出し、足元に展開させ、その勢いで縦方向に浮かび上がり、上昇するバスティーユ・ポイズンテール種へ急接近して、前のめりになる首に退魔ノ剣の一太刀を入れ、バスティーユ・ポイズンテール種の首を斬り落とす。
ズバッ!!!!
ブシャーーーーーー!!!!
首を斬り落とされ、力を無くしたバスティーユ・ポイズンテール種はフラフラと地面に向かって体を下降させ、卵から両手を離して落とす。
非情。これから生まれてくるはずだったドラゴンの赤子が詰まった卵が地へ落ちていくのをただただ見つめるだけの湊。
否!!
ビュンーーー!!!!!
湊は風魔法を駆使して、落下する卵へ飛んで向かい、地に落ちるギリギリのところで湊はドラゴンの卵をキャッチして倒れ込む。
ズガガガガガッ!!!!
地に肩や体を擦り付けながら卵をギリギリのところで守り切った湊。
「セーーーフ」
ーーこいつには何の罪もないよな…。
「ん?」
ふと、暗い夕闇に染まる曇り空を見上げる湊。そこに唐突に現れる尋常ならざる輝きを放つ光。
ピカーーーーーン!!!
「なんだ?!」
スーーーーーーゥ!!!!
「うわぁ?!」
その輝かしい光は湊の体へ飛び込み、新たな人格が芽生える。
龍歴1525年(冬)。彼の地ユグドラシル大陸にて、人とドラゴンが互いに手を取り、新時代を築き始めてから1525年の時を経て、今現在、ユグドラシル大陸東部にて、人間とドラゴンは戦争を繰り広げていた。東部戦線である。
ガガガガガッ!!!
ブワァァーーーー!!!
暗く天候悪い夕闇の中で、雲の中を飛び回っては、地上を降下して炎のブレスを吐き捨てる伝説上の生物・ドラゴン。頭には2本の角や何メートルもの大きな翼を広げ、トカゲのような鱗を纏いて、鋭い目つきで人間を睨みつけるドラゴンは、何十頭もの大群で人間たちを襲い尽くす。
そんなドラゴン相手に人間も一方的になぶられるわけではなく、彼らにも戦う術『魔法』があった。
その身体の内に魔法を扱うマナが備わり、魔法を武器に纏わせて戦う者『魔戦士』、魔法を体に纏わせて戦う者『魔導士』、魔法を杖を介して展開して戦う者『魔法使い』又の名を『魔女』。
空高く上空を旋回するドラゴン相手に空飛ぶほうきや空軍武器を用いて対抗する人間陣営。
ビュン!!!ビュン!!!
ズババババババン!!!!
魔法や銃弾など、多くの遠距離攻撃手段を用いて空飛ぶドラゴンを撃墜させていく人間たち。
一頭、また一頭とドラゴンは討伐されていき、それに臆せず、ドラゴンたちも空飛ぶほうきにまたがり、自分たちを後方から追いかけ回しては遠くから魔法を放ってくる魔法使いを翻弄しては隙をついて喰らい殺す。互いに一歩と引かない状況で戦いはさらに激化していき、救護班は救護の手が足りずに困り果てていた。
「ハフマン先生!!|リルカを!リルカを助けてください!」
「負傷箇所は?あぁ…」
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「先生…先生どうか…」
ハフマン医師は顔を横に振り、治せないことを伝える。手遅れかどうかは原因ではない。治せない理由は、もう彼女に生命を維持するための大事な器官が欠落していたからだ。噛み砕かれたのではなく、噛みちぎられたのだ。ドラゴンの牙によって、心臓も内臓も、体の半分がだ。どんな凄腕の魔法使いであったとしても、こうなってしまっても助ける術がない。
東部戦線が開戦してから早1ヶ月。ここまでで討伐されたドラゴンの数は約120頭。それらを討伐するのに命を落とした人間の数は…3桁を超えていた。重軽傷者も含めれば4桁を軽く超えている。
こんなにも多くの人の命を奪い、不幸を拡大させていく東部戦線はいつ終戦するのか。何をすれば終戦するのか。ドラゴンを一頭も残らず討伐すれば終わるのか。誰の目にもこの不毛な戦いの果てが見えなかった。
ただ一人、15歳の少年を除いては。
東部戦線に参加した魔戦士、魔導士、魔法使いの中で、前線部隊では唯一の中学生にして、最年少魔導士。群青色のローブを身に纏うその少年は、ユグドラシル大陸の中でも主にドラゴンが好み、根城にしているであろうと推測されていた東部に位置するバスティーユ大火山へ一人で足を運び、一際大きな一頭のドラゴンと対峙してきた。
ガァァァァァァ!!!!ガァァァァァァ!!!!
他のドラゴンよりも明らかに怒り心頭で発情していた黒色の鱗に鋭い無数の棘を持つ肉体。口からはドロドロの黄色液体を垂れ流すそのドラゴンの名は『バスティーユ・ポイズンテール種』。バスティーユ大火山を根城として繁殖する種であり、後ろに伸びる刺々しい尻尾は、まるでスコーピオンの持つ尾と同じで猛毒を有する危険な種のドラゴン。
そんな危険で獰猛な性格のバスティーユ・ポイズンテール種に一人で立ち向かう少年・柊木 湊(15)。黒髪で前髪をジェルであげた風貌、そして赤い瞳が特徴的な若き魔導士。
発情して怒りを周囲にばら撒くバスティーユ・ポイズンテールは湊へ、黄緑色の沸騰した毒のブレスを放つ。
ブワァッ!!!!
11010101100011101001…
視界に広がる無数の数字たち。それらを脳内で逆式に変換する湊。
「逆式…10011101000010101011」
湊は毒のブレスに右手を伸ばし、毒のブレスを防いだかと思えば、右手を振り払い、逆に毒のブレスを弾き返してバスティーユ・ポイズンテール種に直撃させる。
ガァァァァァァ!!!!
"反転魔法・ミラーフォース"
相手の放つ魔法を二進数変換で分析し、その逆転変換をして、相手に弾き返すという荒技。頭の中で無数の数列を展開し、その数列を完全に逆転させて魔法を再構築させ、同等の魔法を弾き返すという荒技を、相手が放ち自分へ着弾するまでの数秒の間にやってのける反転魔法・ミラーフォース。
成功条件は、事前に相手の使用する魔法の二進数変換を暗記し、一語一数間違えずに逆転変換させること。それも2、3秒の間にだ。それができなければ不発に終わり、何の成果もあげられずに自分にただ魔法が直撃するのみ。
そのため、反転魔法を実践で使う者は少ない。というか、いないだろう。世界で唯一湊だけが扱えると言ってもいいほどの最強魔法であり、世間は彼を『神童』と呼ぶ。
魔法が効かないとなれば勿論、物理攻撃でくるだろう。
ズバーーーーーン!!!
バスティーユ・ポイズンテール種は、そのスコーピオンのように鋭く猛毒を有する尻尾で湊へ狙いを定めて突き刺そうとするも、この攻撃を軽やかに避ける。
ズバーーーーーン!!!
サッ!!
ズバーーーーーン!!!
サッ!!
何度繰り返してもバスティーユ・ポイズンテール種の尻尾攻撃は湊へは当たらない。魔法の才だけでなく、日々鍛錬を積み、身体能力まで常人のそれを超えている湊は、弱点など無いのではと思わせるほどに強かった。
そして、"異空間魔法・オプションゲート"から己の剣武器である退魔ノ剣を右手で取り出し、バスティーユ・ポイズンテール種に向かって駆け出し、その首に狙いを定める。
バスティーユ・ポイズンテール種も湊の考えを読み取り、己が大事に守り抜く卵を両手で抱え、翼を幾度も上下し、大空へ羽ばたかんとする。
ーーやっぱり、出産して2ヶ月…雛の孵化直前。セシリーヌの言った通りだ。
ドラゴンの活発化した時期、つまりは東部戦線の開戦時期と孵化タイミングが合致する。新たなドラゴンの誕生とそれを守るために荒ぶるドラゴンたち。ただ、理由は本当にそれだけだろうか。ただの一頭のドラゴンが卵から帰る、ただそれだけのためにドラゴンたちが人間相手にここまで抗戦的になるだろうか。何か別に、深い理由が…。
ーーどちらにしろ俺のやることは一つ。
「ドラゴンの頭を叩いて、東部戦線を終結させることだ!!」
タッタッタッタッタッ!!!
スパッ!!スパッ!!
湊は駆け出し、空へ飛び立たんとするバスティーユ・ポイズンテール種の懐に飛び込み、退魔ノ剣で2枚の羽を内側から斬り裂き、バスティーユ・ポイズンテール種を抑制させる。
ガァァァァァァ!!!!
痛みに絶叫し、咆哮轟かせるバスティーユ・ポイズンテール種だったが、残りの力を振り絞り、卵を掴んだまま前屈みで飛び立ち、湊の振り回す退魔ノ剣の間合いから外れ、逃げようとするが、湊はそれを許さない。
「悪いけど、ここで終わりだ」
"風魔法・リフトアップ"
湊は左手で竜巻を生み出し、足元に展開させ、その勢いで縦方向に浮かび上がり、上昇するバスティーユ・ポイズンテール種へ急接近して、前のめりになる首に退魔ノ剣の一太刀を入れ、バスティーユ・ポイズンテール種の首を斬り落とす。
ズバッ!!!!
ブシャーーーーーー!!!!
首を斬り落とされ、力を無くしたバスティーユ・ポイズンテール種はフラフラと地面に向かって体を下降させ、卵から両手を離して落とす。
非情。これから生まれてくるはずだったドラゴンの赤子が詰まった卵が地へ落ちていくのをただただ見つめるだけの湊。
否!!
ビュンーーー!!!!!
湊は風魔法を駆使して、落下する卵へ飛んで向かい、地に落ちるギリギリのところで湊はドラゴンの卵をキャッチして倒れ込む。
ズガガガガガッ!!!!
地に肩や体を擦り付けながら卵をギリギリのところで守り切った湊。
「セーーーフ」
ーーこいつには何の罪もないよな…。
「ん?」
ふと、暗い夕闇に染まる曇り空を見上げる湊。そこに唐突に現れる尋常ならざる輝きを放つ光。
ピカーーーーーン!!!
「なんだ?!」
スーーーーーーゥ!!!!
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