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ナインティスリーを後にした二人は、デパートの上層を徘徊し、いくつかの洋服屋に足を運ぶ。
「ねぇねぇ!この服とかどぉ?!」
「うん、似合ってるよ」
「本当に~お兄はどんな服が好きなの?」
「でも、ここ女性物でしょ?」
「鈍感だなぁ~好きな女の子とか、妹にどんな服着てもらいたいの?ってことだよ~」
「んーーー、でもゆ、由貴は、今のままがいいよ」
「え?!…そ、そうなの…(こういう服が好きなの…)」
由貴は自分の今のコーデを褒められ、満更でもない表情で照れ始め、少しそっぽを向く。
「俺にも…選んでくれる?」
「え?お兄の服?」
「うん。なんか、服とかコーデ?って言うの。結構疎くて…今日も由貴が、選んでくれなきゃ外に出れなかったし」
「うん!行こう!」
自分を頼ってくれたことに由貴は大喜びをし、湊の手を握っては、すぐさま男物のエリアへダッシュで向かう。
ーーなんだろう。女子と手を繋いで、アイス屋や服屋、デパート中を回って…興奮よりも、楽しいって気持ちが押し勝つなんて…。
その後もアクセサリーショップや、少し遅めの昼食にフードコートでハンバーガーセットを食べて、デパートの外の海岸沿いにある観覧車に乗ったら、家族へのお土産としていくつかのスイーツを買ったり、終いには2時間ほどの字幕海外映画を見た。正直、他言語で話された挙句に、字幕が現実世界の日本語とは非なるものだったために、何も内容は入ってこなかったけど、横目で見た由貴が何やら感動のあまり涙していたところを見ると、まぁ普通の人が見れば感動する作品なのだろうと言うことだけはわかった。
ーー言語の読み書き…覚えないとな。
ミライトラベルで5、6時間は軽く過ごしただろうか。冬の空は現実世界と同じで、想像以上に早く日が落ちるもので、18時半でもうすでに真っ暗だった。
そんな中、由貴は最後のわがままに『グリーンガーデンパーク』なる場所へ行きたいと言い出した。
デパートの屋上『グリーンガーデンパーク』という施設に足を運んでは、人工芝で埋め尽くされた屋上の地に設置された鳥の巣をモチーフにしたカゴ椅子へ足を運ぶ。本当はカップル用に作られたクッションや布団が詰め込まれたカゴ椅子の中に二人で深く座り込み、冬の夜空を見上げる。
ーー今日はすごい楽しかったなぁ。なんでだろう。レッチや奈々美とは違う感覚。妹…だからかな。最初は自分から壁を作っていた気もするけど、たった一日で由貴のことが、とても頼りで、愛おしくて、大切な存在なんだと思わされた。
「綺麗だね~お月様」
「星じゃなくて?」
「うん、お月様が…」
「そう、だね。星も綺麗だよ。あっ」
キランッ
「どうしたの?」
「いや、流れ…星…」
「嘘?!どこ?どこ?!」
「今あそこを流れたよ」
湊は自分が目にした流れ星の位置を、夜空へ指を指して伝える。その腕を掴み密着しながら指の先を見つめる由貴。
そんなシチュエーションに湊はときめいてしまう。由貴は妹だ。妹に発情する兄なんかいない。いや、いちゃならない。でも…光にとっては、兄妹じゃない。
自分を見つめる兄に気付き、由貴もまた見つめ返す。
キランッ…。
キランッ…。
もはや、今の二人に流れ星がどうこうなどと言うことは、どうでも良くなっていた。
「由貴…」
「お兄…」
Welcome to the"STARLIGHT PARADE" ~♫
「「ハッ?!」」
思わず過ちに触れそうになる二人の頭に流れ込む閉幕のアナウンスと音楽。
湊は立ち上がり、由貴と共に家へ帰ることにした。
学院をサボって兄妹でミライトラベルへ行き、一日中遊び尽くした冬の思い出。
アイスを食べ、服を買い、アクセサリーを見て、ハンバーガーを食べて、観覧車に乗って、映画を見て、グリーンガーデンパークのカゴ椅子に座って流れ星を見た。
それに今日は多くのことを学んだ。一つはこの世界でのお金の価値と読み方。銅貨基準の単位、コッパー。それと銀貨、金貨、それぞれの価値について。それから始めて訪れた家と学院以外の場所『ミライトラベル』。そして、自分単体の価値観・感想ではあるが、由貴と仲良くなれた。由貴自身はいつもと変わらずの接し方なのだろうが、自分にとっては、家族と親密になる第一歩だった。お土産を渡した時の母や父の喜ぶ笑顔も、すごい暖かかった。柊木家、この家族はとても親切で暖かくて、幸せな感じがした。
「湊~お風呂沸いてるわよ~」
「はーーーい」
この一件があったおかげか、何とか両親と目を合わせて、日常会話を交わすことはできるようになった。本当に由貴には感謝しかないな。
「いや、デカァァーーーーー!!!!」
ーーデカすぎだろ、この風呂場。てかもはや銭湯の大浴場じゃん。
一般家庭では死んでも見ることはないだろう銭湯並みに広い風呂場を完備していた柊木家。こんなバカでかい風呂場に入るのがたったの四人。父、母、自分、由貴だけ。
「来客用?……いやいやいや、にしてもだろ」
ーーとりあえず日本式の所作として、体洗ってからにするか。どこまで行っても他人の家の風呂だしな。
そうして、湊は頭と体を先に洗ってから、お待ちかねの大浴場に足をつけ、そのまま肩まで一気に浸かる。
「プハァーーー…そういや風呂に浸かるのって何年ぶりだろうか…」
現実世界では両親は共働きで長い時間家を空けていた。別に風呂なんか作ったところで、すぐに入れるのは自分だけ。沸かしっぱなしは電気代がバカにならないし、どうせあったところであの人たちは俺が入った後の風呂を嫌うだろう。だから、ずっと手軽なシャワーだけで過ごしていた。
ーーけど、こうして、ゆっくり浸かると、やっぱり最高だなぁ…。
「こっちの世界にも温泉とかあるのかな…」
「お兄…」
「ひぇぁ?!」
バシャン!!!!!
風呂場の外から由貴の声が聞こえてきて、湊は慌てて湯船に顔をうずめる。
「なんです?由貴さん」
由貴は大浴場の入り口の戸を少しだけ隙間を開け、湊に話しかける。
「今日はありがとうね。わがままに付き合ってくれて」
「いやいや、こちらこそだろ。由貴のおかげで結構楽になったよ」
「そっか……。それなら良かった。(エヘヘ)」
由貴は湊に聞こえないくらいの声で軽く笑う。
「明日は学院行くの?」
「そうだなぁ…行ってみるかな…。進級試験ってのも控えてるらしいし……な…ぁ。進級…試験…んんんんんん?!?!?!?!やべーーーーー!!!!!」
進級試験のことが頭から離れていた湊は、唐突に思い出し焦る。
ザバーーーーーーン!!!!
ガラガラガラ!!!
「どうしたのお兄?!」
風呂場で大声で騒ぐ湊を心配に思った由貴は、大浴場の戸を全開にして、湊を見つめると…そこには立派なアレが浮き彫りになっていた。
「んんんんん…///////////お兄のバカーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
「なんでーーーーーーー?!?!?!?!」
これ、完全に嫌われたやつだ。うん、そうに違いねー。やっぱ今日死のう。そうしよう。
湊は覚悟を決めて大浴場を後にし、自室でうずくまっていた。
「ちくしょーーー、実の妹にアレ見られたーー」
ーーいや、俺にとっては、実の妹じゃないのか?それなら、同級生とか幼馴染と変わらないタダの異性?!そっちの方がよっぽどヤバくねーか?!公然猥褻ってやつだろコレ…うわぁ、俺もう30だぞ?!?!捕まるって!!
いや、待てよ??湊の体をもつ今の俺は…由貴と実の兄妹か。つまり、刑事的には、セーフか?あぁ…セーフくさそうだな。
「アウトだろーーーーーーーーー。人としてはアウトだろーーーーー。企業のパクリ云々指摘する前に自分の生き方指摘するべきだろーーー。」
ーーあぁ、あっつ。はしゃぎすぎて頭クラクラするわ。
妹に秘部を見られてしまったことはもう仕方ない。なんとか、弁明する機会を見つけないと、せっかくできた繋がりが切れてしまう。それに由貴には感謝の気持ちもあるんだ。尚更、良好な関係でいたい。
ただし、それと同じくらいに、進級試験とかいう意味不明な試験が待ち構えていやがる。
「確か湊は15歳…つまり、中3か。ってことは、進級試験ってのはどうにかして高校に上がること…学院は中高一貫だったんだっけか。内容は何だ…筆記か?実技か?あぁーわっかんねー。そういえば、校長は東部戦線がどうのこうので、期間を設けてあるとか言ってたな。勉強を頑張れとも…じゃあやっぱり試験は筆記!まずは、こっちの世界の言語の読み書きからだ!」
15歳、中等部3年生にして、初めてこの世界の語学に触れる湊。由貴と見た映画の内容はさっぱりだった。
「とりあえずググってみるか…って、スマホねーじゃん………。何で今の今まで気づかなかったーーーーーーーーー!!!!スマホガチでねーじゃん!!どうしよう!ググれねーし、AIも使えねーし、詰んだーーーー…。」
これが機械に頼りすぎた現代人のサガか。
調べ物は全てスマホに頼り切りで、聞くところによれば論文や文字起こしはAIの役目。漫画を読むのも、アニメを見るのも、調べ物も、何もかも自分の力ではなくスマホ頼りなせいで、体に染み付いてしまった。
それに自慢じゃないが、もはや端末を見ずとも指の感覚だけで文章は打ち込めるし、手元を見ずにタイピングも余裕なもんだ。それだけ現代人は進歩した機械に依存している。
「これを機に…紙の辞書にでも触れてみるかな…」
この状況下で何もしないなんて選択肢はないし、とりあえず一歩目を踏み出すしかない。無理矢理にでも、強制的にでも、由貴が外の世界へ連れ出してくれたように。勉学でも、まずは"あいうえお"の文字列を覚えるところからだ。
湊は進級試験に向け、勉学に取り組む姿勢を見せ、明日に備えて今日は早めに寝ることにした。
…寝れねー。なんでだろう。ずっと胸の内がドキドキして、こんな感覚初めてだ。
いや、初めてじゃないかもしれない。ドキドキして、その日一日意識しながら、眠れない夜。俺は知ってるかもしれない。
でも、理由は………明確だ。由貴だ。俺は、由貴が好きなのかもしれない。ダメだってことは分かってる。それでも、こっちの世界に来て初めて心の底から安らぎを得れた存在だ。
湊はベランダへ続くガラス戸を開け、外用のスリッパに履き替えて、ベランダに出ては、あの時見たものと同じ星空を見つめる。
時間が止まったようなあの時も…
今も同じ空を見てたりしないかな…由貴は。
深夜帯を回り、湊は由貴の部屋の方角を見つめ、少しは自分と同じことを思ってたりしないものかと淡い期待を抱く。
「なんてな…頑張って寝よ…」
湊の願いは綺麗な星空のもとに消えていく。
「ねぇねぇ!この服とかどぉ?!」
「うん、似合ってるよ」
「本当に~お兄はどんな服が好きなの?」
「でも、ここ女性物でしょ?」
「鈍感だなぁ~好きな女の子とか、妹にどんな服着てもらいたいの?ってことだよ~」
「んーーー、でもゆ、由貴は、今のままがいいよ」
「え?!…そ、そうなの…(こういう服が好きなの…)」
由貴は自分の今のコーデを褒められ、満更でもない表情で照れ始め、少しそっぽを向く。
「俺にも…選んでくれる?」
「え?お兄の服?」
「うん。なんか、服とかコーデ?って言うの。結構疎くて…今日も由貴が、選んでくれなきゃ外に出れなかったし」
「うん!行こう!」
自分を頼ってくれたことに由貴は大喜びをし、湊の手を握っては、すぐさま男物のエリアへダッシュで向かう。
ーーなんだろう。女子と手を繋いで、アイス屋や服屋、デパート中を回って…興奮よりも、楽しいって気持ちが押し勝つなんて…。
その後もアクセサリーショップや、少し遅めの昼食にフードコートでハンバーガーセットを食べて、デパートの外の海岸沿いにある観覧車に乗ったら、家族へのお土産としていくつかのスイーツを買ったり、終いには2時間ほどの字幕海外映画を見た。正直、他言語で話された挙句に、字幕が現実世界の日本語とは非なるものだったために、何も内容は入ってこなかったけど、横目で見た由貴が何やら感動のあまり涙していたところを見ると、まぁ普通の人が見れば感動する作品なのだろうと言うことだけはわかった。
ーー言語の読み書き…覚えないとな。
ミライトラベルで5、6時間は軽く過ごしただろうか。冬の空は現実世界と同じで、想像以上に早く日が落ちるもので、18時半でもうすでに真っ暗だった。
そんな中、由貴は最後のわがままに『グリーンガーデンパーク』なる場所へ行きたいと言い出した。
デパートの屋上『グリーンガーデンパーク』という施設に足を運んでは、人工芝で埋め尽くされた屋上の地に設置された鳥の巣をモチーフにしたカゴ椅子へ足を運ぶ。本当はカップル用に作られたクッションや布団が詰め込まれたカゴ椅子の中に二人で深く座り込み、冬の夜空を見上げる。
ーー今日はすごい楽しかったなぁ。なんでだろう。レッチや奈々美とは違う感覚。妹…だからかな。最初は自分から壁を作っていた気もするけど、たった一日で由貴のことが、とても頼りで、愛おしくて、大切な存在なんだと思わされた。
「綺麗だね~お月様」
「星じゃなくて?」
「うん、お月様が…」
「そう、だね。星も綺麗だよ。あっ」
キランッ
「どうしたの?」
「いや、流れ…星…」
「嘘?!どこ?どこ?!」
「今あそこを流れたよ」
湊は自分が目にした流れ星の位置を、夜空へ指を指して伝える。その腕を掴み密着しながら指の先を見つめる由貴。
そんなシチュエーションに湊はときめいてしまう。由貴は妹だ。妹に発情する兄なんかいない。いや、いちゃならない。でも…光にとっては、兄妹じゃない。
自分を見つめる兄に気付き、由貴もまた見つめ返す。
キランッ…。
キランッ…。
もはや、今の二人に流れ星がどうこうなどと言うことは、どうでも良くなっていた。
「由貴…」
「お兄…」
Welcome to the"STARLIGHT PARADE" ~♫
「「ハッ?!」」
思わず過ちに触れそうになる二人の頭に流れ込む閉幕のアナウンスと音楽。
湊は立ち上がり、由貴と共に家へ帰ることにした。
学院をサボって兄妹でミライトラベルへ行き、一日中遊び尽くした冬の思い出。
アイスを食べ、服を買い、アクセサリーを見て、ハンバーガーを食べて、観覧車に乗って、映画を見て、グリーンガーデンパークのカゴ椅子に座って流れ星を見た。
それに今日は多くのことを学んだ。一つはこの世界でのお金の価値と読み方。銅貨基準の単位、コッパー。それと銀貨、金貨、それぞれの価値について。それから始めて訪れた家と学院以外の場所『ミライトラベル』。そして、自分単体の価値観・感想ではあるが、由貴と仲良くなれた。由貴自身はいつもと変わらずの接し方なのだろうが、自分にとっては、家族と親密になる第一歩だった。お土産を渡した時の母や父の喜ぶ笑顔も、すごい暖かかった。柊木家、この家族はとても親切で暖かくて、幸せな感じがした。
「湊~お風呂沸いてるわよ~」
「はーーーい」
この一件があったおかげか、何とか両親と目を合わせて、日常会話を交わすことはできるようになった。本当に由貴には感謝しかないな。
「いや、デカァァーーーーー!!!!」
ーーデカすぎだろ、この風呂場。てかもはや銭湯の大浴場じゃん。
一般家庭では死んでも見ることはないだろう銭湯並みに広い風呂場を完備していた柊木家。こんなバカでかい風呂場に入るのがたったの四人。父、母、自分、由貴だけ。
「来客用?……いやいやいや、にしてもだろ」
ーーとりあえず日本式の所作として、体洗ってからにするか。どこまで行っても他人の家の風呂だしな。
そうして、湊は頭と体を先に洗ってから、お待ちかねの大浴場に足をつけ、そのまま肩まで一気に浸かる。
「プハァーーー…そういや風呂に浸かるのって何年ぶりだろうか…」
現実世界では両親は共働きで長い時間家を空けていた。別に風呂なんか作ったところで、すぐに入れるのは自分だけ。沸かしっぱなしは電気代がバカにならないし、どうせあったところであの人たちは俺が入った後の風呂を嫌うだろう。だから、ずっと手軽なシャワーだけで過ごしていた。
ーーけど、こうして、ゆっくり浸かると、やっぱり最高だなぁ…。
「こっちの世界にも温泉とかあるのかな…」
「お兄…」
「ひぇぁ?!」
バシャン!!!!!
風呂場の外から由貴の声が聞こえてきて、湊は慌てて湯船に顔をうずめる。
「なんです?由貴さん」
由貴は大浴場の入り口の戸を少しだけ隙間を開け、湊に話しかける。
「今日はありがとうね。わがままに付き合ってくれて」
「いやいや、こちらこそだろ。由貴のおかげで結構楽になったよ」
「そっか……。それなら良かった。(エヘヘ)」
由貴は湊に聞こえないくらいの声で軽く笑う。
「明日は学院行くの?」
「そうだなぁ…行ってみるかな…。進級試験ってのも控えてるらしいし……な…ぁ。進級…試験…んんんんんん?!?!?!?!やべーーーーー!!!!!」
進級試験のことが頭から離れていた湊は、唐突に思い出し焦る。
ザバーーーーーーン!!!!
ガラガラガラ!!!
「どうしたのお兄?!」
風呂場で大声で騒ぐ湊を心配に思った由貴は、大浴場の戸を全開にして、湊を見つめると…そこには立派なアレが浮き彫りになっていた。
「んんんんん…///////////お兄のバカーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
「なんでーーーーーーー?!?!?!?!」
これ、完全に嫌われたやつだ。うん、そうに違いねー。やっぱ今日死のう。そうしよう。
湊は覚悟を決めて大浴場を後にし、自室でうずくまっていた。
「ちくしょーーー、実の妹にアレ見られたーー」
ーーいや、俺にとっては、実の妹じゃないのか?それなら、同級生とか幼馴染と変わらないタダの異性?!そっちの方がよっぽどヤバくねーか?!公然猥褻ってやつだろコレ…うわぁ、俺もう30だぞ?!?!捕まるって!!
いや、待てよ??湊の体をもつ今の俺は…由貴と実の兄妹か。つまり、刑事的には、セーフか?あぁ…セーフくさそうだな。
「アウトだろーーーーーーーーー。人としてはアウトだろーーーーー。企業のパクリ云々指摘する前に自分の生き方指摘するべきだろーーー。」
ーーあぁ、あっつ。はしゃぎすぎて頭クラクラするわ。
妹に秘部を見られてしまったことはもう仕方ない。なんとか、弁明する機会を見つけないと、せっかくできた繋がりが切れてしまう。それに由貴には感謝の気持ちもあるんだ。尚更、良好な関係でいたい。
ただし、それと同じくらいに、進級試験とかいう意味不明な試験が待ち構えていやがる。
「確か湊は15歳…つまり、中3か。ってことは、進級試験ってのはどうにかして高校に上がること…学院は中高一貫だったんだっけか。内容は何だ…筆記か?実技か?あぁーわっかんねー。そういえば、校長は東部戦線がどうのこうので、期間を設けてあるとか言ってたな。勉強を頑張れとも…じゃあやっぱり試験は筆記!まずは、こっちの世界の言語の読み書きからだ!」
15歳、中等部3年生にして、初めてこの世界の語学に触れる湊。由貴と見た映画の内容はさっぱりだった。
「とりあえずググってみるか…って、スマホねーじゃん………。何で今の今まで気づかなかったーーーーーーーーー!!!!スマホガチでねーじゃん!!どうしよう!ググれねーし、AIも使えねーし、詰んだーーーー…。」
これが機械に頼りすぎた現代人のサガか。
調べ物は全てスマホに頼り切りで、聞くところによれば論文や文字起こしはAIの役目。漫画を読むのも、アニメを見るのも、調べ物も、何もかも自分の力ではなくスマホ頼りなせいで、体に染み付いてしまった。
それに自慢じゃないが、もはや端末を見ずとも指の感覚だけで文章は打ち込めるし、手元を見ずにタイピングも余裕なもんだ。それだけ現代人は進歩した機械に依存している。
「これを機に…紙の辞書にでも触れてみるかな…」
この状況下で何もしないなんて選択肢はないし、とりあえず一歩目を踏み出すしかない。無理矢理にでも、強制的にでも、由貴が外の世界へ連れ出してくれたように。勉学でも、まずは"あいうえお"の文字列を覚えるところからだ。
湊は進級試験に向け、勉学に取り組む姿勢を見せ、明日に備えて今日は早めに寝ることにした。
…寝れねー。なんでだろう。ずっと胸の内がドキドキして、こんな感覚初めてだ。
いや、初めてじゃないかもしれない。ドキドキして、その日一日意識しながら、眠れない夜。俺は知ってるかもしれない。
でも、理由は………明確だ。由貴だ。俺は、由貴が好きなのかもしれない。ダメだってことは分かってる。それでも、こっちの世界に来て初めて心の底から安らぎを得れた存在だ。
湊はベランダへ続くガラス戸を開け、外用のスリッパに履き替えて、ベランダに出ては、あの時見たものと同じ星空を見つめる。
時間が止まったようなあの時も…
今も同じ空を見てたりしないかな…由貴は。
深夜帯を回り、湊は由貴の部屋の方角を見つめ、少しは自分と同じことを思ってたりしないものかと淡い期待を抱く。
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