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3話
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車がキッとブレーキを踏む。
目的地へ到着したことを告げる様に母がシートベルトを外す。
いつもなら退屈に終わるだけの帰省に胸を弾ませながら綾音は目的地である母の実家に目を向ける。
視線の先にあるには、二階の隅にある唯一の真昼でさえカーテンで閉ざされた部屋。
そこが例の開かず部屋だ。
さて何がある事やら?
綾音は飛び降りる様に車から下車した。
二階建てのシンプルな洋風モダン。
肌色の壁に深緑の屋根のシンプルな造りが綾音の祖父母の家だった。
どうせならTVとかで見るような和風造りの方が雰囲気が出るのにと綾音は残念に思う。
「こんにちわ」
玄関を開け空人が挨拶をすると正面のドアが開き白髪混じりの老女が紫のスカートに白いシャツという出立ちで現れた。
祖母の蓮木夕だ。
「よく来たね。さぁ上がって」
待ってましたと微笑む夕に空人が元気よく挨拶する。
綾音もそれに続く形で小さく会釈をした。
目の前の扉を抜けるとすぐにキッチンダイニングが姿を見せる。
キッチンは綺麗に片付けられていてダイニングの方も4、5人着けそうなテーブルにソファーTVと過ごしやすい環境が整えられている。
一人暮らしの老女にしては良く整理されているなと綾音は内心感心する。
そう祖母の夕はこの家で現在は一人暮らし。
夫、綾音からすれば祖父の蓮木玲人は30年程前に亡くなっている。
ダイニングの隣、襖の奥にある和室に祖父の遺影が飾られており空人はまずお参りをしているので綾音もそれに倣う。
和室にはこの後の墓参りで使うであろう花やペットボトルに入った水が置かれていた。
その後に入ってきた母とお父さんがその荷物を運び出す。
どうやら直ぐに出掛けるようだ。
なら今しかチャンスはないと、綾音は考えていた作戦を行動に移す。
お腹を押さえてソファーの座る綾音。
顔肌も苦しげのふせる。
その様子に一番に気づいたのは父、公男だった
。
「綾音ちゃん?どうした?」
「少し気分悪くて」
小声でそう返す。
「本当大丈夫?」
慌ててそう心配する公男に綾音はコクリと頷く。
「しばらく休めば大丈夫」
そんな二人の様子に気づいた他の家族が寄ってくる。
「どうしたの?」
代表して空人が聞く。
公男は綾音の様子をみんなに説明し、当の本人はキツそうにソファーに横になった。
「あらあら、大丈夫?布団敷こうか?」
そう心配する祖母に綾音は首を振る。
「大丈夫少し横になれば楽になると思うから」
「夜更かしするからそうなるのよ」
母、星美は呆れ声を出す。
「どうする?綾音ちゃんはここで休んでる?」
空人の言葉に夕が同意する。
「そだね。お墓参りは私たちで行くから休んどき」
うまくいったと綾音は内心ほくそ笑む。
星美は少し不服そうで体調が回復するまで待とうと言っていたが、公男に宥められ渋々納得したようだ。
これも綾音の予定通り。
母の性格からして綾音を一人残すのは嫌がるとは思っていた。
けれど体調不良といえば絶対にお父さんが母お説得する。
公男の言葉には星美は絶対従う。
それを知って体調不良を装ったのだから。
みんなが出て行ったのを確認すると綾音は直ぐに行動に移す。
まずはテーブルの小物入れから目当てのものを掠め取るとそのままリビングを後にする。
目的の部屋は2階だ。
階段は玄関横にある。
階段は一階と違い細かな埃が積もっている。
祖母は最近膝を悪くしてほぼほぼ一階のみを生活スペースとしているらしい。
その影響だろう。
綾音自身祖母の家には何度も来ているが二階にはほとんど上ったことがなく、とても新鮮な気持ちだ。
開かずの部屋があるというイメージでどうしても暗い埃にまみれたイメージがあったけれど、階段側と廊下側の窓からは日光が燦々と入ってきて白い壁紙と相まって若干の埃さえ目をつぶればむしろ清潔感すらある。
階段の登り切ったところで二階の部屋割を確認する。
扉は全部で四つ。
階段を登り切って直ぐ左側に一つ、正面にまた一つ。
右へ続く廊下の突き当たりに一つ、そして左横にまた一つ。
外から見た外観からすると廊下の先、左側にある部屋が開かずの扉だろうが折角なので他の部屋も軽く確認しようと綾音は早速一番近くの階段左側の扉を開ける。
開けてみて肩すかしを食らう。
そこはトイレだった。
センサーが付いているのか、開けると同時に室内に電気が灯る。
「ふん」
こんなところに用はないと綾音は次の正面の扉を開く。
扉を開けて直ぐ目に入るのは正面の窓、その横に木製のベッドが置かれておりベッドの上にはクッションやぬいぐるみが多数ある。
ベッドの横には勉強机があるが、置かれているのは教科書や参考書ではなく少女マンガや男性アイドルの写真集が敷き詰められている。
どうやらこの部屋の主人は勤勉な人ではなかったようだ。
他にも斜め後ろのクローゼットには数々の服がある。
あまりおしゃれに興味がない綾音からすればこういうのにお金を注ぎ込むのはあまり理解できない。
他にも壁には男性アイドルのポスターが貼られている。
このアイドルは綾音も知っている。
今では数々のMCもこなす彼らもこのポスターの中ではまだあどけなさの残る少年だ。
「母さんが学生の頃だから三十年くらい前か。そりゃ若いよね」
友達と撮ったのだろう。
雪山でクラスメイトと思われる集団と笑い合うかつての母の写真が机に飾られていた。
「ここが母さんの部屋ねぇ」
学生時代の母の部屋、興味がないこともないが今はいかんが惜しい。
もう一度だけ早の様子を伺い綾音は次の部屋へと向かった。
廊下の突き当たりにの部屋。
前の部屋が母のだったと言うことは必然的にここが祖父母の寝室となるはずだ。
確認のため部屋を覗くとやはり予想通り。
先程の母の部屋より一回り大きい部屋には大きなダブルベットが置かれていた。
祖父が健在な時はここで夫婦で床についていたのだろう。
後目を引くのは祖母のだろうと思われる化粧台に、リビング以外で唯一のテレビ。
それ以外は真新しいものはない。
母の部屋と比べると随分と簡素な部屋だ。
綾音は扉を閉めると最後の部屋へと向かった。
祖父母の寝室の横にある開かずの扉へと。
目的地へ到着したことを告げる様に母がシートベルトを外す。
いつもなら退屈に終わるだけの帰省に胸を弾ませながら綾音は目的地である母の実家に目を向ける。
視線の先にあるには、二階の隅にある唯一の真昼でさえカーテンで閉ざされた部屋。
そこが例の開かず部屋だ。
さて何がある事やら?
綾音は飛び降りる様に車から下車した。
二階建てのシンプルな洋風モダン。
肌色の壁に深緑の屋根のシンプルな造りが綾音の祖父母の家だった。
どうせならTVとかで見るような和風造りの方が雰囲気が出るのにと綾音は残念に思う。
「こんにちわ」
玄関を開け空人が挨拶をすると正面のドアが開き白髪混じりの老女が紫のスカートに白いシャツという出立ちで現れた。
祖母の蓮木夕だ。
「よく来たね。さぁ上がって」
待ってましたと微笑む夕に空人が元気よく挨拶する。
綾音もそれに続く形で小さく会釈をした。
目の前の扉を抜けるとすぐにキッチンダイニングが姿を見せる。
キッチンは綺麗に片付けられていてダイニングの方も4、5人着けそうなテーブルにソファーTVと過ごしやすい環境が整えられている。
一人暮らしの老女にしては良く整理されているなと綾音は内心感心する。
そう祖母の夕はこの家で現在は一人暮らし。
夫、綾音からすれば祖父の蓮木玲人は30年程前に亡くなっている。
ダイニングの隣、襖の奥にある和室に祖父の遺影が飾られており空人はまずお参りをしているので綾音もそれに倣う。
和室にはこの後の墓参りで使うであろう花やペットボトルに入った水が置かれていた。
その後に入ってきた母とお父さんがその荷物を運び出す。
どうやら直ぐに出掛けるようだ。
なら今しかチャンスはないと、綾音は考えていた作戦を行動に移す。
お腹を押さえてソファーの座る綾音。
顔肌も苦しげのふせる。
その様子に一番に気づいたのは父、公男だった
。
「綾音ちゃん?どうした?」
「少し気分悪くて」
小声でそう返す。
「本当大丈夫?」
慌ててそう心配する公男に綾音はコクリと頷く。
「しばらく休めば大丈夫」
そんな二人の様子に気づいた他の家族が寄ってくる。
「どうしたの?」
代表して空人が聞く。
公男は綾音の様子をみんなに説明し、当の本人はキツそうにソファーに横になった。
「あらあら、大丈夫?布団敷こうか?」
そう心配する祖母に綾音は首を振る。
「大丈夫少し横になれば楽になると思うから」
「夜更かしするからそうなるのよ」
母、星美は呆れ声を出す。
「どうする?綾音ちゃんはここで休んでる?」
空人の言葉に夕が同意する。
「そだね。お墓参りは私たちで行くから休んどき」
うまくいったと綾音は内心ほくそ笑む。
星美は少し不服そうで体調が回復するまで待とうと言っていたが、公男に宥められ渋々納得したようだ。
これも綾音の予定通り。
母の性格からして綾音を一人残すのは嫌がるとは思っていた。
けれど体調不良といえば絶対にお父さんが母お説得する。
公男の言葉には星美は絶対従う。
それを知って体調不良を装ったのだから。
みんなが出て行ったのを確認すると綾音は直ぐに行動に移す。
まずはテーブルの小物入れから目当てのものを掠め取るとそのままリビングを後にする。
目的の部屋は2階だ。
階段は玄関横にある。
階段は一階と違い細かな埃が積もっている。
祖母は最近膝を悪くしてほぼほぼ一階のみを生活スペースとしているらしい。
その影響だろう。
綾音自身祖母の家には何度も来ているが二階にはほとんど上ったことがなく、とても新鮮な気持ちだ。
開かずの部屋があるというイメージでどうしても暗い埃にまみれたイメージがあったけれど、階段側と廊下側の窓からは日光が燦々と入ってきて白い壁紙と相まって若干の埃さえ目をつぶればむしろ清潔感すらある。
階段の登り切ったところで二階の部屋割を確認する。
扉は全部で四つ。
階段を登り切って直ぐ左側に一つ、正面にまた一つ。
右へ続く廊下の突き当たりに一つ、そして左横にまた一つ。
外から見た外観からすると廊下の先、左側にある部屋が開かずの扉だろうが折角なので他の部屋も軽く確認しようと綾音は早速一番近くの階段左側の扉を開ける。
開けてみて肩すかしを食らう。
そこはトイレだった。
センサーが付いているのか、開けると同時に室内に電気が灯る。
「ふん」
こんなところに用はないと綾音は次の正面の扉を開く。
扉を開けて直ぐ目に入るのは正面の窓、その横に木製のベッドが置かれておりベッドの上にはクッションやぬいぐるみが多数ある。
ベッドの横には勉強机があるが、置かれているのは教科書や参考書ではなく少女マンガや男性アイドルの写真集が敷き詰められている。
どうやらこの部屋の主人は勤勉な人ではなかったようだ。
他にも斜め後ろのクローゼットには数々の服がある。
あまりおしゃれに興味がない綾音からすればこういうのにお金を注ぎ込むのはあまり理解できない。
他にも壁には男性アイドルのポスターが貼られている。
このアイドルは綾音も知っている。
今では数々のMCもこなす彼らもこのポスターの中ではまだあどけなさの残る少年だ。
「母さんが学生の頃だから三十年くらい前か。そりゃ若いよね」
友達と撮ったのだろう。
雪山でクラスメイトと思われる集団と笑い合うかつての母の写真が机に飾られていた。
「ここが母さんの部屋ねぇ」
学生時代の母の部屋、興味がないこともないが今はいかんが惜しい。
もう一度だけ早の様子を伺い綾音は次の部屋へと向かった。
廊下の突き当たりにの部屋。
前の部屋が母のだったと言うことは必然的にここが祖父母の寝室となるはずだ。
確認のため部屋を覗くとやはり予想通り。
先程の母の部屋より一回り大きい部屋には大きなダブルベットが置かれていた。
祖父が健在な時はここで夫婦で床についていたのだろう。
後目を引くのは祖母のだろうと思われる化粧台に、リビング以外で唯一のテレビ。
それ以外は真新しいものはない。
母の部屋と比べると随分と簡素な部屋だ。
綾音は扉を閉めると最後の部屋へと向かった。
祖父母の寝室の横にある開かずの扉へと。
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