断罪

宮下里緒

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十九話 少年少女と海 その二

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「なー俺ら一体何しに海に来たんだろうな?」

虚ろな瞳で海を眺めながらそう呟く修に慶介は『さぁー?遊びにじゃない?』と、答え返す。

「さぁーじゃねーよ。なんだよコレ、全然女子との絡みがないじゃん。俺ら一体何しに海に来たの?」

「泳ぎにだろ、ほら、成久なんてさっきからずっと泳いでるし」

「あいつは体力バカだからいいんだよ。見たかよあの腹筋、四つどころか六つも割れてたぜ。あいつ絶対十四歳じゃねーよ、年齢偽装してんよ」

「そんなわけ無いだろ。まぁ、いいじゃないかこうやってボーっとするのも」

「お前はな、俺はもっと楽しみたいの」

「なら、女子たちもところに行けばいいじゃないか」

「それは・・・」

慶介の最もな意見に修は口ごもる、そんな修を見て慶介は少しめんどうくさそうにため息をする。

晴れ渡る空とは打って変わって二人の雲行きが怪しくなりかけていく。

急に無言になる慶介、そんな彼を見て修はまずいと思う。

道長慶介、彼はどんな時でも表情一つ変えない冷静なやつというというのがみんなの認識だった、それはあっているようで根本的に違う。

彼は、単に表情に出ないだけで、その実感情の振れ幅がとてつもなく大きい、それこそスイッチでも入ったかのごとくガラリと変わる。

表情こそ変わらないが慶介を怒らせると怖いことは長い付き合いの修はよく知っていた。

一度こんなことがあった、あれは確か二年ほど前、小学校の卒業を目前としていたときのことだった。

その日いつもどおりの賑やかな昼休みの教室に大きな悲鳴が響き渡った。

誰もが何事かと振り返り騒ぎの中心へと蟻のように群がる。

そんな人々の折の中心に慶介は本を片手にいつものように無表情でたっていた。

そのそばには同じクラスの男子がうずくまりもがいている。

その表情はひどく苦しそうで口を必死で開様はどこかお気に打ち上げられた魚をふんとうさせた。

けれど、その苦しみ用とは裏腹に一切の声が聞こえてこない。

見るからに騒ぐのを我慢しているわけでもなさそうなので、おそらく声のも出ないほどの激痛に襲われているのだろう。

後から聞いた話だが、なんでも慶介がいきなり彼の喉を本で殴ったというのが事件のあらましであり、彼がこんなことをした動機というもの単純に読書中にうるさかったから喉を殴れば黙ると思ったからというものだった。

そんなことをいつものように平然と言い、あんなことを行った慶介を修は初めて怖いと思い、以降できるだけ彼を怒らせにように努めてきたのだが。

(まさかこんなところで、地雷を踏むなんて)

そう青ざめてくる修の前にまさにベストタイミングで凪沙が現れた。

「なーにしてるの?こんなところで、二人共」

腕を後ろに組む可愛らしい仕草に修の胸は少しだけ高鳴った。

「べ、別に!ただ男同士の語り合いを、なぁ、慶介!」

「ああ」

「え~そんなのつまんない。せっかくみんなで来たんだからさ、一緒に遊ぼうよ」

「俺は別にいいけど」

そう即答する慶介に釣られる形で修も返事を返す。

「やった!じゃあ、百合がボール持ってきてるからみんなでビーチボールでもしようよ。私先いってるから早く来てね」

それだけ言うと凪沙は再び女子たちの方へと戻っていった。

「元気なコだな」

「なんだ、修。ああいうのが好み?」

「ば、バカ!俺は永遠に百合一筋だ!!」

「ふ~ん。永遠ねぇ」

「なんだよその小馬鹿にした言い方。いいだろ別に、お前は信じないかもしれないけど俺は・・」

「いや、あるんじゃないの?永遠」

その慶介の答えに修は少し驚く。

「えっ!?」

「なに、その『えっ』って」

「いや、だってお前のことだからそんなもんはないってバッサリ切られるかと思ってたから」

「そうか。まぁ、俺も基本的には永遠なんて存在しないと思うよ、けど本当に少しだけどあるんだよ永遠は、意外と近いところにもね」

「?やけに断言するな」

「まぁね。修のその思いもその数少ない永遠だといいね」

「だからそうだって言ってんだろ」

「ふふ。けど今日のこの時間は永遠じゃない、そろそろ行かないと、女子たちが待ってるだろ。あんまりのんびりしてたら俺たちの身が危ない」

慶介のその言葉にハッとし修も後ろを振り返るとそこには可愛らしい水着とは不釣り合いの恐ろしい形相でこちらを睨んでくる恵子の姿があった。

「そうだな、あの目はヤバイ、マジで」

「成久!戻ろう!」

慶介がいまだ沖にいる成久に声をかけ修はこの真夏にそぐわないうすら寒さを覚えながら恵子たちのもとへと向かったのだった。



「喰らえ!俺の必殺サーブ!!サンダースラッシュ!!」

「喰らうか、馬鹿!」

恥ずかしい意味のよくわからない修の必殺サーブを訳もなく打ち返し点を決める恵子、これで恵子たちのチームの方が3点勝ち越したことになる。

ふたチームのメンツは恵子、成久、百合と修、凪紗、浅利というチーム分けだ。

ちなみに慶介は審判をやっている。

「ってか、このチーム編成おかしすぎるだろ力の差ありすぎ!」

息を切らしながら抗議する修に恵子は『馬鹿?』と、言い返す。

「なんでよ、ちゃんと女子2男子1で分けてるじゃん。なんの文句があんのよ!」

「だから、そのスペックの差が大きすぎんだろうが!そっちのチームは運動神経がいいやつばかりでこっちは俺も含めて運動音痴ときたこれじゃ勝負にならんって!」

「確かにこれじゃ勝負にならなくてあんまり面白くないかも、この際チーム編成を帰るのはどうかな、林田さん」

修に同意見だと成久も言うが恵子はそれを即刻却下する。

「ダメよ!せっかく圧倒的戦力差で勝ってるんだから、このまま最後まで押し切るよ!!」

「あはは、恵子ちゃんは負けず嫌いだねぇー」

「それは百合もでしょ!私らの中ではあんたが一番点入れてるんだから」

「むっ!私はただ自分のところに来たから打ち返してるだけだよ」

そう、抗議する百合だがそれはそれで彼女の異常な運動能力の高さを示している事となり彼女にそんな気はないのだが地味に嫌味に聞こえてしまう。

「そうそう百合って無駄に身体能力高いんだから」

「無駄って・・・ひどいな凪沙ちゃん」

「とにかくこれじゃ勝負にならんって!審判!メンバーチェンジを希望します!!」

「ふざけんな!審判!あんなバカに付き合わなくていいから!」

「お前こそでしゃばんな!審判、力の配分はゲーム的にも必要だと思います」

「黙れ!圧倒的力で敵を駆逐する!それこそゲームの醍醐味じゃない!ねぇ!審判!!」

審判の慶介に迫る修と恵子そんな冷静の欠けた二人だったが慶介の『うるさいよ二人共』という覚めた一言で沈静化するのだった。

そして、その後は各々一時休憩に入るのだった。

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