断罪

宮下里緒

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三十八話 断罪の始まり

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人はなぜ悲劇や災厄を恐れるのでしょうか?

それに見舞われた人々はよくこう言います。

『あまりに突然のことで』と、なら自分は考えます。

もし、悲劇や災厄を起こる前に知ることが出来たならそれはもう悲劇足りえないのでしょうかと。

知ってしまえば悲劇を回避しようという努力もできますしね。

つまり何が言いたいかといいますと、自分は知りたいのです。

悲劇は唐突に起きるから苦しいのか、それとも悲劇そのものが人にとっては苦しいのかと。

だから、このテープを警察の皆さんのもとへ送ります。

これか

追伸、時実養護施設火災事件の時のような幕引きはつまらないです。



以上が、この三丸警察署に送り付けられた荷物に添付されていた手紙の内容だ。

これだけならまだたちの悪いイタズラで済んだのだが、問題は付属されたテープの方にあった。

テープは今時珍しいビデオテープが使われており、署員たちも面白半分といった様子でわらわらと集まり視聴を開始する。

少しの警戒とそれを上まる興味で皆が画面の向こう側を凝視する中、それは始まった。

『あっ、いたいた。なんで、カメラなんて回してるんだ?ああ、記念撮影?そりゃな!今日はほんと記念すべき日だったよ!!まじサイコ-!!』

画面の中どこいらかの工場のような場所で年相応にはしゃぐ一人の少年はテープを回す誰かに向かってなにやら興奮気味に食らいついていた。

その光景、このビデオを見ていた署員はその少年の異様な姿に息をのむ。

見た目、中学生ほどのまだ子供らしさが残る顔立ちの少年、その体は見ているだけで気味が悪くなるどす黒い赤色に染め上げられていた。

「なんだ、こりゃ」

そう放つ岸野だったがこの光景が一体何を現すのかは大体予想がついていた。

血だらけの少年、この血が彼自身のものでないことは彼の態度を見れば一目瞭然、そもそもこれだけの出血なら間違いなく致死量だろう。

つまりこれは返り血ということになるわけであり、画面の右下に出ている日にち2008年8月21日はこの三丸町で例の女子中学生刺殺事件が起きた日にちでもあった。

それらのことから導き出される答えは一つで、つまり。

「つまり、コイツが事件の犯人か」

「軽はずみなことを言うな。まだ、いたずらの可能性もあんだ」

澄乃のセリフを注意する岸野だが内心はその可能性はほとんどないだろうと確信していた。

この映像から伝わる悪意が作られた創作のものではなく本物のそれだとヒシヒシと感じられたからだ。

少年の熱弁はなおも続く、喚くように自身の世界に浸り切りながらそこにいる誰かに自らの罪を告白する。

『でもさー、殺てみたら結構あけっなかったりするもんなんだな。あれ、こんなもん?って感じ。あの女ももっちょっと抵抗でもしてくれたら、もっと興奮できたかもしれないのに。そこは残念、今後はもっと生きのいい獲物を探さないと』

まるで、狩人思考、この少年にとって殺人は狩猟であり被害者は人間ではないことを物語った映像に刑事たちは少年に対する強い怒りを覚え、次にはそれが驚愕に変わる。

『今後はないですよ。言いましたよね。あなたを捕まらない様にする、それを今叶えます』

ら起こることをお知らせするために。

少年のものではない誰か第三者の声、その声はぐちゃぐちゃに加工されているようで性別も年齢も判断できないほどに生物的じゃない物だった。

聞くだけで背筋に虫が這うような悪寒が皆に走る。

そして、その声が流れると同時にいったん画面は暗転し次に映し出された映像には血だらけの少年の首つり映像が画面に映し出されていた。

鉄骨に引っかけられた縄に全体重を預け地上10メートルほどの空中でゆらゆらと揺れる少年、それはたちの悪い悪夢のようでもあり誰も言葉を発せなかった。

『見えていますかみなさん』

再びあの不気味な声が流れる。

『これで今回の事件は終わりです。犯人は死に事件は解決、おめでとうございます』

声の主の姿は見えず、映し出されるのは振り子のように揺れる少年だけ。

『ああ、自己紹介がまだでしたね。自分のことはとりあえずヒルとでも呼んでください。あと、一方的な会話になるのはご了承ください。さて、今回皆さんにこんなビデオをわたしたのには理由が二つありまして、一つ目が彼の死を伝えるためです。死んだ人間の捜査なんて無駄ですから早めにお知らせしようと思います。もう一つが今後の予告です、これからこの町で色々なことが起きる予定です、だからみなさん覚悟のほどをよろしくお願いします。まぁ、罪には罰をとのことなので清く正しく生きてください、そうすればそうひどい目には合わないかもですから。ああ、ちなみにこの場所、三丸病院近くの廃工場ですので死体の回収お願いします。でわ、さようなら』

ビデオはそこで終了していた。

最初の数秒は誰も何も言えずに暗くなった画面を目視するだけの状態が続きその後誰かが思い出したように『か、確認を』といった。

それに急き立てられるように数人の警官たちがドタドタト動き始める。

「なんなんですかこれは」

「わからん、わからんがろくでもないことが始まるってことだ」



秋保勝生の遺体が廃工場から見つかったのはそれから三十分後のことだった、死因は頸部圧迫による窒息死だったがそのさまはかなりえげつなく首の骨まで折られて凄惨なものだった。

吊るされた少年、彼の背中には髑髏と骨のマーク、俗にいう海賊旗の印がナイフにより刻み込まれていた。

そしてこの殺人がこれから始まる断罪事件の幕開けとなるのであった。

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