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四十八話 会合
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荒身組、彼らの拠点は三丸病院の裏手にある集合団地その一室にあります。
もちろんヤクザが近くにいると知って入居してくる変わり者などそうそういるはずもなくそこいら一帯の敷地は実質彼らの所有地となっていました。
これほど、周知の事実なのに警察もこの荒身組の捜査にはなぜか本腰にはなっていないません。
その真相は。
「こうも単純なものなんですけどね」
「何の話だ?ヒル」
自分の目の前にいる熊を思わせる大男、荒身組組長、佐田木典久の横に座るスーツ姿の銀縁メガネの目立つ細身の男、神矢輝美がそう尋ねます。
コレは何を隠そう三丸警察所の警官なのですが裏ではご覧通りヤクザとつながり金をもらう代わりに我々の犯罪行為を隠すなんてことをしているまあ、警察官にあるまじき人物です。
「いえ、神矢さんは仮にも警察官である身。こんな所に出入りしているのを誰かに見られるのは不味いのではと思っただけです」
そんな自分の言葉に神矢輝美は眼鏡をかけ直しながら『ふん』と鼻で笑います。
「ご忠告どうも。だが私は警察である身、彼らの動きは百も承知だ。君に心配される必要はないよ。動きのしれた者など恐怖には値しないさ」
「そして、その警察の力すら取り入れた俺たち荒身組は最強というわけだ」
佐田木典久は誇らしげに笑います。
「私としては君の心配をしたいところだね。こんな所に出入りしているのがばれたら君の方こそまずいんじゃないの?」
「それは大丈夫です。そんな失敗はしませんから」
「神矢、コイツはそんなへまをするたまじゃないさ。なんせこの歳でここまでの悪事に手を染めているヤツだ、それなりの逃げ道も知っているだろう」
自分に変な信頼を佐田木典久はニカリと人の良さそうなけれどどこか乾いた笑みを浮かべます、その表情の変化はまるで仮面をつけかえてようでもあります。
「さて、雑談はここまでだ。仕事の話をしよう」
ギロリと一斉に部屋中の視線がこちらへと集まります。
そんな彼らの前に自分は持ってきたバッグの中から例の薬を取り出し机の上に並べ置きます。
「全部で200錠あります。今回は質を良くしてみたので量こそ少ないですが中毒性は上がっているはずです。使ってみてください」
「ああ。それにしてもよく個人でこれほどのものが作れるな、感心するよ。オイ、金」
佐田木典久に促され、部下だと思われる男の一人がバッグに入った札束をこちらへ渡してきました。
「報酬金だ。78万ある。受け取れ」
「ありがとうございます」
一礼しそれを受け取ると代わりに先ほど薬を取り出したバッグを机の上に置きます。
「なんだ、これは?」
「日ごろからお世話になっているお礼です。どうぞ開けてみてください」
促されまま、カバンを開く佐田木典久。
平静をよそをってはいるが内心はずいぶん興味をひかれているようで目頭が少し緩んでいるようにも見えました。
けれど、その興味はすぐに別の感情に変わってしまったようで、隣に座っていた神矢輝美も糸で顔の皮を吊り上げられたかのように歪み硬直します。
「これは、一体誰なんだ?」
コレというのは即ち、自分がカバンに詰め運んできた明志勇馬のことでしょう。
「これ、生きてるのか?」
「ええ、眠らせてはいますが。命に別状はありません」
「別状はないってコイツの手足」
聞いてくる神矢輝美の声は少し震えているように感じました。
「ああ、手足は運ぶ時かさばるので切り落としてきました。ちゃんと処置はしてきたんで死にはしません。生きた状態で貴方たちに引き渡さないとお土産とはなりませんから」
つぶされた目に顎を砕かれしゃべることのできない口。
そして体を包帯でぐるぐる巻きの明志勇馬はまるで芋虫のようにも見えました。
「お土産だと?」
「ええ。実はコレ、貴方がた荒身組の障害であるアルマゲドンの幹部なんです」
その瞬間、佐田木典久の目は人のそれから獲物を前にした獣のものへと変貌します。
「あのガキどもの?」
「はい。先日偶然流構える機会があったので捕えときました。貴方にとっては有益なモノかと思いまして。どうぞ好きにお使いください」
「ああ、そうさせてもらう。おい!」
部下たちに運ばれ奥の部屋へ消えた明石勇馬を見送った後、自分も事務所を出ていきます。
そんな自分に神矢輝美は言いにくそうに口を開きました。
「最近君ら、人類浄化の会はずいぶん活発的に動いていますね。いい加減自重してはもらえないですか。もうこれ以上君らをかばうのは限界です。幾人かの部下は勝手に調査しているようですし。私の立場も・・その危うくなっている」
額に汗を浮かべ懇願するかのような目を向けてきます。
「それなら大丈夫です。自分たちの活動はそろそろ終了する予定ですから。ですからその不安も杞憂です」
そう、真実を告げ自分は神矢輝美の頬を撫でてあげるのでした。
明志の遺体が見っかったのは奴から連絡が取れなくなって十一日後のことだった。
遺体はまるでゴミのようにどぶ川に捨てられ全身を簀巻きにされていたそうだ。
その体には多数の暴行痕があり手足は切断されていた。
多くの障害跡が見つかったが死因は溺死とのことだった。
「いったいどうなってるんだよ。何で明志さんが!!」
怒り狂うのは奈佐。
見えない犯人にその感情を向けるかのように大きく振り上げた拳を壁に打ち付ける。
法事はうつむいたまま喋ろうとはしない。
他のメンバーも恐怖や怒り悲しみその様々な感情で体を震わせていた。
俺もその一人だ。
今回の件は失敗だった焦りすぎた軽率だった。
秋瀬の言う通り慎重に行くべきだった。
なのに、確信を得たことでつい引き際を誤ってしまった。
このまま一気に相手の懐に潜り込み決定的な証拠を手に入れられたら人類浄化の会を奴を止めることが出来るそう思っていた。
「その結果がこのざまか」
吐きでた声は自分でも驚くほどにしわがれてまるで別人のようだった。
「もう、限界だな」
誰にも気づかれないようにその場を去ろうとする俺を法事が引き止めた。
「大志さん。どこ行くんっすか」
さっきまでうつむいていたくせに目ざとい奴だな。
内心舌打ちしたくなるのを隠しながら俺は法事に向き直る。
「どこって、散歩だよ。こんな辛気臭い場所に居たらこっちの気まで滅入る。気分転換だ」
これにはさすがに怒るかとも思ったが、それでも法事は真剣な面持ちでこちらを見据えてくる。
「嘘ですよね、それ」
「嘘?ああ、そうだな嘘だ。けどそこまで分かっているなら本当のことを聞くなんていう野暮なことはするなよ。もちろん俺についてくるってのも無しだ。迷惑だわかるな?」
法事はまだ何か言いたげだったが俺はそれに取り合わないことにした。
代わりに『二時間ほどで戻る』と告げた。
「大丈夫なんですか?」
「誰の心配してんだお前は。それに俺が約束を違えたころがあったか?」
俺の言葉に法事は首を横に振る。
「僕はアナタを信じる。不安ですが大志さんがそう命じるならここに残り帰りを待ちます。約束を破らないアナタを信じます。だから帰ってきてください。仲間を失うのはもう嫌なんで」
その問いには答えず代わりに右手を上げ俺は奴のもとへ向かうことへした。
もちろんヤクザが近くにいると知って入居してくる変わり者などそうそういるはずもなくそこいら一帯の敷地は実質彼らの所有地となっていました。
これほど、周知の事実なのに警察もこの荒身組の捜査にはなぜか本腰にはなっていないません。
その真相は。
「こうも単純なものなんですけどね」
「何の話だ?ヒル」
自分の目の前にいる熊を思わせる大男、荒身組組長、佐田木典久の横に座るスーツ姿の銀縁メガネの目立つ細身の男、神矢輝美がそう尋ねます。
コレは何を隠そう三丸警察所の警官なのですが裏ではご覧通りヤクザとつながり金をもらう代わりに我々の犯罪行為を隠すなんてことをしているまあ、警察官にあるまじき人物です。
「いえ、神矢さんは仮にも警察官である身。こんな所に出入りしているのを誰かに見られるのは不味いのではと思っただけです」
そんな自分の言葉に神矢輝美は眼鏡をかけ直しながら『ふん』と鼻で笑います。
「ご忠告どうも。だが私は警察である身、彼らの動きは百も承知だ。君に心配される必要はないよ。動きのしれた者など恐怖には値しないさ」
「そして、その警察の力すら取り入れた俺たち荒身組は最強というわけだ」
佐田木典久は誇らしげに笑います。
「私としては君の心配をしたいところだね。こんな所に出入りしているのがばれたら君の方こそまずいんじゃないの?」
「それは大丈夫です。そんな失敗はしませんから」
「神矢、コイツはそんなへまをするたまじゃないさ。なんせこの歳でここまでの悪事に手を染めているヤツだ、それなりの逃げ道も知っているだろう」
自分に変な信頼を佐田木典久はニカリと人の良さそうなけれどどこか乾いた笑みを浮かべます、その表情の変化はまるで仮面をつけかえてようでもあります。
「さて、雑談はここまでだ。仕事の話をしよう」
ギロリと一斉に部屋中の視線がこちらへと集まります。
そんな彼らの前に自分は持ってきたバッグの中から例の薬を取り出し机の上に並べ置きます。
「全部で200錠あります。今回は質を良くしてみたので量こそ少ないですが中毒性は上がっているはずです。使ってみてください」
「ああ。それにしてもよく個人でこれほどのものが作れるな、感心するよ。オイ、金」
佐田木典久に促され、部下だと思われる男の一人がバッグに入った札束をこちらへ渡してきました。
「報酬金だ。78万ある。受け取れ」
「ありがとうございます」
一礼しそれを受け取ると代わりに先ほど薬を取り出したバッグを机の上に置きます。
「なんだ、これは?」
「日ごろからお世話になっているお礼です。どうぞ開けてみてください」
促されまま、カバンを開く佐田木典久。
平静をよそをってはいるが内心はずいぶん興味をひかれているようで目頭が少し緩んでいるようにも見えました。
けれど、その興味はすぐに別の感情に変わってしまったようで、隣に座っていた神矢輝美も糸で顔の皮を吊り上げられたかのように歪み硬直します。
「これは、一体誰なんだ?」
コレというのは即ち、自分がカバンに詰め運んできた明志勇馬のことでしょう。
「これ、生きてるのか?」
「ええ、眠らせてはいますが。命に別状はありません」
「別状はないってコイツの手足」
聞いてくる神矢輝美の声は少し震えているように感じました。
「ああ、手足は運ぶ時かさばるので切り落としてきました。ちゃんと処置はしてきたんで死にはしません。生きた状態で貴方たちに引き渡さないとお土産とはなりませんから」
つぶされた目に顎を砕かれしゃべることのできない口。
そして体を包帯でぐるぐる巻きの明志勇馬はまるで芋虫のようにも見えました。
「お土産だと?」
「ええ。実はコレ、貴方がた荒身組の障害であるアルマゲドンの幹部なんです」
その瞬間、佐田木典久の目は人のそれから獲物を前にした獣のものへと変貌します。
「あのガキどもの?」
「はい。先日偶然流構える機会があったので捕えときました。貴方にとっては有益なモノかと思いまして。どうぞ好きにお使いください」
「ああ、そうさせてもらう。おい!」
部下たちに運ばれ奥の部屋へ消えた明石勇馬を見送った後、自分も事務所を出ていきます。
そんな自分に神矢輝美は言いにくそうに口を開きました。
「最近君ら、人類浄化の会はずいぶん活発的に動いていますね。いい加減自重してはもらえないですか。もうこれ以上君らをかばうのは限界です。幾人かの部下は勝手に調査しているようですし。私の立場も・・その危うくなっている」
額に汗を浮かべ懇願するかのような目を向けてきます。
「それなら大丈夫です。自分たちの活動はそろそろ終了する予定ですから。ですからその不安も杞憂です」
そう、真実を告げ自分は神矢輝美の頬を撫でてあげるのでした。
明志の遺体が見っかったのは奴から連絡が取れなくなって十一日後のことだった。
遺体はまるでゴミのようにどぶ川に捨てられ全身を簀巻きにされていたそうだ。
その体には多数の暴行痕があり手足は切断されていた。
多くの障害跡が見つかったが死因は溺死とのことだった。
「いったいどうなってるんだよ。何で明志さんが!!」
怒り狂うのは奈佐。
見えない犯人にその感情を向けるかのように大きく振り上げた拳を壁に打ち付ける。
法事はうつむいたまま喋ろうとはしない。
他のメンバーも恐怖や怒り悲しみその様々な感情で体を震わせていた。
俺もその一人だ。
今回の件は失敗だった焦りすぎた軽率だった。
秋瀬の言う通り慎重に行くべきだった。
なのに、確信を得たことでつい引き際を誤ってしまった。
このまま一気に相手の懐に潜り込み決定的な証拠を手に入れられたら人類浄化の会を奴を止めることが出来るそう思っていた。
「その結果がこのざまか」
吐きでた声は自分でも驚くほどにしわがれてまるで別人のようだった。
「もう、限界だな」
誰にも気づかれないようにその場を去ろうとする俺を法事が引き止めた。
「大志さん。どこ行くんっすか」
さっきまでうつむいていたくせに目ざとい奴だな。
内心舌打ちしたくなるのを隠しながら俺は法事に向き直る。
「どこって、散歩だよ。こんな辛気臭い場所に居たらこっちの気まで滅入る。気分転換だ」
これにはさすがに怒るかとも思ったが、それでも法事は真剣な面持ちでこちらを見据えてくる。
「嘘ですよね、それ」
「嘘?ああ、そうだな嘘だ。けどそこまで分かっているなら本当のことを聞くなんていう野暮なことはするなよ。もちろん俺についてくるってのも無しだ。迷惑だわかるな?」
法事はまだ何か言いたげだったが俺はそれに取り合わないことにした。
代わりに『二時間ほどで戻る』と告げた。
「大丈夫なんですか?」
「誰の心配してんだお前は。それに俺が約束を違えたころがあったか?」
俺の言葉に法事は首を横に振る。
「僕はアナタを信じる。不安ですが大志さんがそう命じるならここに残り帰りを待ちます。約束を破らないアナタを信じます。だから帰ってきてください。仲間を失うのはもう嫌なんで」
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