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六十話 罪の告白
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人は生きるそれだけのことで罪を重ね、生き続ける限り罰を与えられる。
生きるということはこうも苦しい、生きているということはそれこそが病のようにこの体を蝕み続ける。
けれど、この苦しみがあるからこそ私たちは自らの生を実感でき苦しみがあるからこそ幸せを感じることが出来る。
なら最後に訪れる死はこれ以上苦しみをいだかなくてよいという救いなのか、それともこれ以上幸せは得られないという最大の罰なのか?
それは、各々の最後に得られる答えなのだろう。
断罪への道。
そう書かれた書籍は今から20年前に黒絵聖那という人物によって書かれた小説だった。
今回、この町で起きている断罪事件はこの小説に似ている、そう道長君に言われ読んではみたが、似ているなんてもんじゃないこれは予言だ。
断罪事件は完全にこの小説をなぞっている。
これはもう、犯人が故意的にやっているとしか考えられない。
だけどなんで犯人はわざわざそんなことを?
直ぐに作者である黒絵聖那について調べてみたがこの人物については何も判明することは無かった。
この作者が犯人ってのはいくら何でも出来過ぎだけど話を聞く価値はあると思って調べたがすべて徒労に終わった。
けれど分かった事実もある。
この本は今から二十年前に黒絵聖那が自主出版したもので発行部数がとても少なく扱っていた書店もほとんど無かったという幻の本。
もちろん知名度もまったくない、そんな本がこんな図書館にあったことが奇跡なのだが。
「なんでこんな古くて知名度もない本、道長君は読んだんだろう?」
なによりもそれが奇跡的に出来過ぎていた。
そもそもあの子がこの本を借りて読まなければこの本と事件の関連性に気付くなんてこと無理だったろう。
だって、こんな地味で薄汚れた本、ここで働いている私ですら知ることのなかった本を読もうだなんて誰が思うだろう。
けど、何のいたずらか偶然この本は断罪事件の発端であるこの三丸町の図書館に保管されていてそれを偶然、事件後に道長君が読みその接点に気付いた。
たった二つの偶然だけどこうも都合よくそんなことが起きるだろうか?
まるであらかじめ用意されたシナリオのようなスムーズさだ。
不気味な本。
睨むように本を眺めていると、図書館の入り口から誰かが入ってくる気配がした。
「こんばんは。神山先生」
「道長君」
道長君は軽く会釈をすると私の座る机、その目の前の机に腰を下ろした。
「読んだみたいですね、その本。どうでした?興味深い内容だったのではないですか?」
答えにくい内容をズバリと聞いてくるなこの子は。
「読んだよ。内容は楽しいとは言えない物だったけど」
「でしょうね。今の状況でこの内容を楽しいと思える人はなかなかに壊れていると思います。そういった意味では貴方の精神は正常だということですね」
私の手元にあった『断罪への道』をひったくると道長君は適当なページを開き読みだす。
「そんな本よく知ってたね。まだ君が生まれる前の本でしょ」
「ええ、たまたま同じ本を手元に持ってたんですよ。この町でこの本を見かけるのは意外なことだったんでついつい手元に取ったんです」
こちらには一瞥もせず視界はあくまで文字の世界に向けたまま話してくれる。
「それじゃ、君はこの事件がこの本と関係あるかもって早いうちから思っていたの?」
「はい。最初から」
最初から?
それはどういった意味なのかよく理解できなかった。
「そう?・・・えっとそれで今日も本を借りに来たの?」
私の声、うわずってる。
変だな、何で私この子相手にこんなに緊張してるんだろう?
何でこんなにも喉が渇くんだろう?
空気が乾燥しているせいだきっと。
「違います。今日は報告をしに来ました」
「報告?なんの」
道長君はパラリとページをめくると、ここに来て初めて私の顔をしっかりと見つめてきた。
ドキリと鼓動が高鳴ったのが自分でもわかった。
言っとくがこれは別に私が道長君に対して恋心を抱いているとかそんな話ではない、ただ見るたびに生まれ変わるかのように変貌。
本当に変わっていく。
その、大きな瞳も長い髪も白い肌も華奢の体も声もどれも女の子のようで、その美しさはあの子、金城百合にも引けを取らない。
いや、最近は道長君のほうがより美しく見えるのは私の気のせいではないだろう。
男の子である道長君が女の子より可愛いなんて言われて喜ぶとは思えないけど。
なぜ、この二人を引けあいに出すかというとそれは今まで気づかなかったことなのだけど、この二人はなんだか似ているように見えた。
そりゃ双子っていうほど似通っているわけじゃないけど目元に口元といった風に所々の造形がよく似ていた。
コレはただの偶然なんだろうか?
けど、道長君、昔はこんな顔じゃなかったような気がする。
そんなことを考えている道長君はどこからか取り出したビデオカメラを机の上に置いた。
そしていつものように冷静な口調で告げるのだった。
「金城百合が襲われました」
「それは一体いつ?」
頭の混乱とは別に私は言ったって冷静な口調でそう尋ねた。
道長君はこんな冗談を言う子ではないつまりこれは本当のこと、なら変に取り乱すわけにはいかない。
「意外と平静を装いますね。時間はつい先ほどですよ。詳細はこのビデオを見てください」
道長君は図書館に設置されていたテレビにカメラをつなぐと再生ボタンを押した。
そこに映っていたのはまさに肥溜めを除いたかのような醜悪な映像だった。
始めに映ったのは画面いっぱいに広がった肌色。
最初はそれが何なのか分からなかったけど画面がその物体からゆっくりと距離をとることでやっとその全体像が見てとれた。
そこにいたのは紛れもなく金城百合その人だった。
その姿は全身の着衣が脱がされ生まれたままの姿で両手両足を縛られ目隠しに口にはガムテープだろうか?
テープのようなもので口をふさがれているという悲惨なものだった。
唯一の救いは音がはいっていなかったことで生々しさが少し減ったというところだけか。
カメラは金城さんの足元からナメクジが這うようにゆっくりと細い足を渡り折れそうな腰を歩き豊かな胸をのぼり顔までたどり着く。
そのさまは趣味の悪いグラビアのイメージ映像のようだった。
映像は画面が百合の顔までいったところでいったん暗転した。
それから約五秒ほどたった後だろうか先ほどの無音から一転今度ははちきれんばかりの音量がこの静かな図書館を襲った。
それが人の声だということは判別できたけど一体何を言っているのか分からなかった。
それはまさに絶叫。
自らの絶望嘆き怨嗟殺意悲しみあらゆる負の感情をそのまま吐露したかのようなその姿は見るものすべてを竦みあがせるものがあった。
「桐村くん」
私はその叫び声の主の名前を震える声で呟いた。
狂ったようにいや、たぶんもう狂って叫ぶ桐村くんは金城さんと同じように両手両足を縛られた状態で地べたに寝かされていた。
ただ、彼女と違って目隠しとさるぐわはされておらず、つまりは金城百合の惨劇を一番の特等席で見せつけられたというわけだ。
よほど抵抗したのだろう彼の体は無理に動こうとしたせいで地面とこすれ傷だらけで至る所から血が滲んでいる様子が画面越しからも見てとれた。
そんなあまりにもひどい光景のの中で清涼剤のように鈴音のような清らかな声が響いた。
『ずいぶんと酷い姿になりましたね桐村修。暴れて疲れたでしょう、眠りなさい』
その声とともに伸びてくる細く白い美しい手、その手が桐村君の頭に触れると、今までの騒がしさが嘘のように途絶えた。
なにかと思い画面を凝視すると桐村君は目をつぶったまま動かない、まさか死んだ?
そんな嫌なことが頭をよぎったが方が少し動いているあたり呼吸はあるみたいだった。
寝てる?
まさかこんな状況で?
それとも何か変な薬でも打たれた?
理由はよく分からないが桐村君が寝ているのは確かのようだった。
『良い夢を』
そう呟き桐村君から離れ再び金城さんの元へと戻る犯人。
だけどこの声、聞き覚えがある気がするのは私の勘違いだろうか?
『これで望みはかないましたか金城百合?』
それが合言葉だったのだろうか?
その言葉が終わると同時に先ほどまで強固に金城さんを束縛していた枷はそのすべてが外れ自由の身となった彼女はその体を起こした。
『うん。修はどうしてるの?』
『桐村修なら今は夢の中です。良い夢は見れていないでしょうけど』
『どうゆう意味?』
『アレの脳に少し暗示をかけました。この悲劇がアレの頭の中でループするように。目が覚める頃には人格崩壊でも起こしているでしょう』
『そう…』
呟きながら金城さんは俯く。
表情からして悲しんでいるのだろうか?
『願いがかなったのに随分と浮かない表情ですね』
『楽しいことじゃないから』
『そうですか。・・・それにしてもこの告白映像にいったい何の意味がありますか?せっかく全てのことがうまくいったのにこれじゃ自首と同じですよ』
『いいの、それで。これは私なりのけじめ自己満足だから。それにどっちにしたってもう潮時だよ』
そこで画面が少し揺れる。
どうやら金城さんが犯人からカメラを受け取ったようだ。
その目はいつものきらびやかに光る金城さんのものとはかけ離れた死人のように光を宿さない。
『みなさん。私は金城百合。今回の事件は私の自作自演、全ては桐村修くんを・・壊すために私が仕組んだことです。彼には・・彼にはそれだけの罪があったのだから』
正直金城さんが何を言っているのかは分からなかった。
だけどこれだけは言える。
彼女はなにかとても追いつめられていてそんな彼女を追い詰めているのは他でもない彼女自身だということが。
『最近の貴方はずいぶんと感情的になりましたね。昔では考えられなかったことですが』
犯人の声が聞こえ画面が乱れる。
どうやら再び犯人がカメラを持ったようだ。
そこに金城さんの切羽詰まった声が混じる。
『ちょっと!なにをする気なの?』
『なにをですか。そうですね、自分も顔出しをしようかと思いまして』
『どうして?』
『あなたの言う通りそろそろ潮時だと思いまして。終局には大きな混乱がつきものです。この行動がそのきっかけの一つになればいいと思いまして』
そして犯人はカメラを自分お顔へと向けた、そしてそこに映っていたのは。
『こんばんは皆さん。自分はヒルと申します。今、一番最初にこの映像を見ている神山京子はこの顔を知ってますね』
「道長君・・・」
そこに映っていた彼はいつもにまして無表情でまるで別人のよういや人間というよりは人形のようにも見えたけれど間違いなくそこにいたのは道長慶介そのひとだった。
『皆さん、断罪事件はもう大詰めです。残念ですが貴方たちには止めることは出来ません。ですが抵抗ぐらいはしてください。でないと犠牲者はさらに増えます。コレは貴方たちに対する挑発だと受け取ってもらって構いません。自分もこうして姿を現したんです断罪事件を追っている皆さん決着をつけましょう。もちろん。林田恵子、近衛大志あなた方二人もですよ。でわ』
そこでビデオは切れた。
ビデオが終わってしばらくは全く動けずただただ画面とにらめっこをするだけ、それを何秒ほどやってから今一番重大なことこのビデオに映っていた犯人、道長慶介今この場にいることを思いだし振り返るがそこに彼の姿はなく、辺りを見渡しても影一つ見つけることが出来なかった。
そして私は、混乱する頭のまま図書館の旋錠もせずにカメラを持ちこの場を飛び出したのだった。
生きるということはこうも苦しい、生きているということはそれこそが病のようにこの体を蝕み続ける。
けれど、この苦しみがあるからこそ私たちは自らの生を実感でき苦しみがあるからこそ幸せを感じることが出来る。
なら最後に訪れる死はこれ以上苦しみをいだかなくてよいという救いなのか、それともこれ以上幸せは得られないという最大の罰なのか?
それは、各々の最後に得られる答えなのだろう。
断罪への道。
そう書かれた書籍は今から20年前に黒絵聖那という人物によって書かれた小説だった。
今回、この町で起きている断罪事件はこの小説に似ている、そう道長君に言われ読んではみたが、似ているなんてもんじゃないこれは予言だ。
断罪事件は完全にこの小説をなぞっている。
これはもう、犯人が故意的にやっているとしか考えられない。
だけどなんで犯人はわざわざそんなことを?
直ぐに作者である黒絵聖那について調べてみたがこの人物については何も判明することは無かった。
この作者が犯人ってのはいくら何でも出来過ぎだけど話を聞く価値はあると思って調べたがすべて徒労に終わった。
けれど分かった事実もある。
この本は今から二十年前に黒絵聖那が自主出版したもので発行部数がとても少なく扱っていた書店もほとんど無かったという幻の本。
もちろん知名度もまったくない、そんな本がこんな図書館にあったことが奇跡なのだが。
「なんでこんな古くて知名度もない本、道長君は読んだんだろう?」
なによりもそれが奇跡的に出来過ぎていた。
そもそもあの子がこの本を借りて読まなければこの本と事件の関連性に気付くなんてこと無理だったろう。
だって、こんな地味で薄汚れた本、ここで働いている私ですら知ることのなかった本を読もうだなんて誰が思うだろう。
けど、何のいたずらか偶然この本は断罪事件の発端であるこの三丸町の図書館に保管されていてそれを偶然、事件後に道長君が読みその接点に気付いた。
たった二つの偶然だけどこうも都合よくそんなことが起きるだろうか?
まるであらかじめ用意されたシナリオのようなスムーズさだ。
不気味な本。
睨むように本を眺めていると、図書館の入り口から誰かが入ってくる気配がした。
「こんばんは。神山先生」
「道長君」
道長君は軽く会釈をすると私の座る机、その目の前の机に腰を下ろした。
「読んだみたいですね、その本。どうでした?興味深い内容だったのではないですか?」
答えにくい内容をズバリと聞いてくるなこの子は。
「読んだよ。内容は楽しいとは言えない物だったけど」
「でしょうね。今の状況でこの内容を楽しいと思える人はなかなかに壊れていると思います。そういった意味では貴方の精神は正常だということですね」
私の手元にあった『断罪への道』をひったくると道長君は適当なページを開き読みだす。
「そんな本よく知ってたね。まだ君が生まれる前の本でしょ」
「ええ、たまたま同じ本を手元に持ってたんですよ。この町でこの本を見かけるのは意外なことだったんでついつい手元に取ったんです」
こちらには一瞥もせず視界はあくまで文字の世界に向けたまま話してくれる。
「それじゃ、君はこの事件がこの本と関係あるかもって早いうちから思っていたの?」
「はい。最初から」
最初から?
それはどういった意味なのかよく理解できなかった。
「そう?・・・えっとそれで今日も本を借りに来たの?」
私の声、うわずってる。
変だな、何で私この子相手にこんなに緊張してるんだろう?
何でこんなにも喉が渇くんだろう?
空気が乾燥しているせいだきっと。
「違います。今日は報告をしに来ました」
「報告?なんの」
道長君はパラリとページをめくると、ここに来て初めて私の顔をしっかりと見つめてきた。
ドキリと鼓動が高鳴ったのが自分でもわかった。
言っとくがこれは別に私が道長君に対して恋心を抱いているとかそんな話ではない、ただ見るたびに生まれ変わるかのように変貌。
本当に変わっていく。
その、大きな瞳も長い髪も白い肌も華奢の体も声もどれも女の子のようで、その美しさはあの子、金城百合にも引けを取らない。
いや、最近は道長君のほうがより美しく見えるのは私の気のせいではないだろう。
男の子である道長君が女の子より可愛いなんて言われて喜ぶとは思えないけど。
なぜ、この二人を引けあいに出すかというとそれは今まで気づかなかったことなのだけど、この二人はなんだか似ているように見えた。
そりゃ双子っていうほど似通っているわけじゃないけど目元に口元といった風に所々の造形がよく似ていた。
コレはただの偶然なんだろうか?
けど、道長君、昔はこんな顔じゃなかったような気がする。
そんなことを考えている道長君はどこからか取り出したビデオカメラを机の上に置いた。
そしていつものように冷静な口調で告げるのだった。
「金城百合が襲われました」
「それは一体いつ?」
頭の混乱とは別に私は言ったって冷静な口調でそう尋ねた。
道長君はこんな冗談を言う子ではないつまりこれは本当のこと、なら変に取り乱すわけにはいかない。
「意外と平静を装いますね。時間はつい先ほどですよ。詳細はこのビデオを見てください」
道長君は図書館に設置されていたテレビにカメラをつなぐと再生ボタンを押した。
そこに映っていたのはまさに肥溜めを除いたかのような醜悪な映像だった。
始めに映ったのは画面いっぱいに広がった肌色。
最初はそれが何なのか分からなかったけど画面がその物体からゆっくりと距離をとることでやっとその全体像が見てとれた。
そこにいたのは紛れもなく金城百合その人だった。
その姿は全身の着衣が脱がされ生まれたままの姿で両手両足を縛られ目隠しに口にはガムテープだろうか?
テープのようなもので口をふさがれているという悲惨なものだった。
唯一の救いは音がはいっていなかったことで生々しさが少し減ったというところだけか。
カメラは金城さんの足元からナメクジが這うようにゆっくりと細い足を渡り折れそうな腰を歩き豊かな胸をのぼり顔までたどり着く。
そのさまは趣味の悪いグラビアのイメージ映像のようだった。
映像は画面が百合の顔までいったところでいったん暗転した。
それから約五秒ほどたった後だろうか先ほどの無音から一転今度ははちきれんばかりの音量がこの静かな図書館を襲った。
それが人の声だということは判別できたけど一体何を言っているのか分からなかった。
それはまさに絶叫。
自らの絶望嘆き怨嗟殺意悲しみあらゆる負の感情をそのまま吐露したかのようなその姿は見るものすべてを竦みあがせるものがあった。
「桐村くん」
私はその叫び声の主の名前を震える声で呟いた。
狂ったようにいや、たぶんもう狂って叫ぶ桐村くんは金城さんと同じように両手両足を縛られた状態で地べたに寝かされていた。
ただ、彼女と違って目隠しとさるぐわはされておらず、つまりは金城百合の惨劇を一番の特等席で見せつけられたというわけだ。
よほど抵抗したのだろう彼の体は無理に動こうとしたせいで地面とこすれ傷だらけで至る所から血が滲んでいる様子が画面越しからも見てとれた。
そんなあまりにもひどい光景のの中で清涼剤のように鈴音のような清らかな声が響いた。
『ずいぶんと酷い姿になりましたね桐村修。暴れて疲れたでしょう、眠りなさい』
その声とともに伸びてくる細く白い美しい手、その手が桐村君の頭に触れると、今までの騒がしさが嘘のように途絶えた。
なにかと思い画面を凝視すると桐村君は目をつぶったまま動かない、まさか死んだ?
そんな嫌なことが頭をよぎったが方が少し動いているあたり呼吸はあるみたいだった。
寝てる?
まさかこんな状況で?
それとも何か変な薬でも打たれた?
理由はよく分からないが桐村君が寝ているのは確かのようだった。
『良い夢を』
そう呟き桐村君から離れ再び金城さんの元へと戻る犯人。
だけどこの声、聞き覚えがある気がするのは私の勘違いだろうか?
『これで望みはかないましたか金城百合?』
それが合言葉だったのだろうか?
その言葉が終わると同時に先ほどまで強固に金城さんを束縛していた枷はそのすべてが外れ自由の身となった彼女はその体を起こした。
『うん。修はどうしてるの?』
『桐村修なら今は夢の中です。良い夢は見れていないでしょうけど』
『どうゆう意味?』
『アレの脳に少し暗示をかけました。この悲劇がアレの頭の中でループするように。目が覚める頃には人格崩壊でも起こしているでしょう』
『そう…』
呟きながら金城さんは俯く。
表情からして悲しんでいるのだろうか?
『願いがかなったのに随分と浮かない表情ですね』
『楽しいことじゃないから』
『そうですか。・・・それにしてもこの告白映像にいったい何の意味がありますか?せっかく全てのことがうまくいったのにこれじゃ自首と同じですよ』
『いいの、それで。これは私なりのけじめ自己満足だから。それにどっちにしたってもう潮時だよ』
そこで画面が少し揺れる。
どうやら金城さんが犯人からカメラを受け取ったようだ。
その目はいつものきらびやかに光る金城さんのものとはかけ離れた死人のように光を宿さない。
『みなさん。私は金城百合。今回の事件は私の自作自演、全ては桐村修くんを・・壊すために私が仕組んだことです。彼には・・彼にはそれだけの罪があったのだから』
正直金城さんが何を言っているのかは分からなかった。
だけどこれだけは言える。
彼女はなにかとても追いつめられていてそんな彼女を追い詰めているのは他でもない彼女自身だということが。
『最近の貴方はずいぶんと感情的になりましたね。昔では考えられなかったことですが』
犯人の声が聞こえ画面が乱れる。
どうやら再び犯人がカメラを持ったようだ。
そこに金城さんの切羽詰まった声が混じる。
『ちょっと!なにをする気なの?』
『なにをですか。そうですね、自分も顔出しをしようかと思いまして』
『どうして?』
『あなたの言う通りそろそろ潮時だと思いまして。終局には大きな混乱がつきものです。この行動がそのきっかけの一つになればいいと思いまして』
そして犯人はカメラを自分お顔へと向けた、そしてそこに映っていたのは。
『こんばんは皆さん。自分はヒルと申します。今、一番最初にこの映像を見ている神山京子はこの顔を知ってますね』
「道長君・・・」
そこに映っていた彼はいつもにまして無表情でまるで別人のよういや人間というよりは人形のようにも見えたけれど間違いなくそこにいたのは道長慶介そのひとだった。
『皆さん、断罪事件はもう大詰めです。残念ですが貴方たちには止めることは出来ません。ですが抵抗ぐらいはしてください。でないと犠牲者はさらに増えます。コレは貴方たちに対する挑発だと受け取ってもらって構いません。自分もこうして姿を現したんです断罪事件を追っている皆さん決着をつけましょう。もちろん。林田恵子、近衛大志あなた方二人もですよ。でわ』
そこでビデオは切れた。
ビデオが終わってしばらくは全く動けずただただ画面とにらめっこをするだけ、それを何秒ほどやってから今一番重大なことこのビデオに映っていた犯人、道長慶介今この場にいることを思いだし振り返るがそこに彼の姿はなく、辺りを見渡しても影一つ見つけることが出来なかった。
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