《完結済》獣人王国の四男に生まれましたが、何故か人間でめちゃくちゃ愛されてます!?

MITARASI_

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第一章

第5話 月の夜のぬくもり

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 春が終わり、初夏の風が王都を包みはじめた。
 昼は陽射しが強く、夜には冷たい風が吹く――そんな季節の変わり目だった。
 人間の子どもであるリクにとって、この気温の揺らぎは少しきつい。
 暖かな毛に覆われた獣人たちとは違い、
 彼の肌は薄く、体温の調整も苦手だった。
 それでも、彼は外の世界が大好きだった。
 その日も兄姉たちに手を引かれて、城の中庭へ出ていた。
 陽だまりの中で笑いながら、小さな花冠を頭に乗せて。
「リク、風が冷たくなってきたから、そろそろ中へ戻りましょう」
「まだあそぶ……!」
 レオナードが苦笑しながら抱き上げる。
「まったく元気だな、ちび王子」
 けれどその笑顔は長くは続かなかった。
 日が落ちたころ、リクの頬は赤く染まり、息が荒くなっていた。
「リク? どうしたの、苦しいの?」
 エレナが慌てて声をかける。
 リクは何か言おうとしたが、唇が震えるだけで声にならなかった。
 その瞬間、風を切る音が響いた。
 銀の影が走る。
「失礼いたします」
 シリウスがすばやく駆け寄り、リクを抱き上げた。
 その腕に伝わる体温の異常。
 小さな額が灼けるように熱い。
「高熱です。すぐに医師を」
 冷静な声。だが、その奥には焦りがあった。
 
 夜。
 王妃の間の空気は、重く静まり返っていた。
 セレナが濡らした布を絞り、リクの額を拭う。
 その隣で、シリウスは無言で立ち尽くしていた。
「季節の変わり目だから……」
 セレナの声が震える。
 「この子はいつも、気温が変わる時期に弱いのです」
 シリウスはその言葉に小さく頷いた。
 そして、再び布を水に浸し、冷たい手つきでリクの頬を拭った。
 何度も繰り返すうちに、夜は深くなっていく。
 彼の心に、焦りと祈りが交錯していた。
(こんなに小さな体で……)
 静かな部屋の中、リクが苦しげに寝返りを打つ。
 シリウスは反射的にその手を取った。
 「……大丈夫です、私はここにいます」
 小さな手が、弱々しく彼の指を握り返す。
 その瞬間、胸の奥が熱くなった。
「……離れません、どんな時でも」
 言葉は、誓いのように落ちていった。
 
 夜が明けるころ、熱は少しずつ引いていった。
 頬の赤みがやわらぎ、静かな寝息が戻る。
 シリウスはほっと息を吐き、手をそっと離そうとした――が、
 その小さな指が彼の手を掴んだまま離れなかった。
「……しりうすさん」
 夢の中のような声。
 「……ありがと……」
 その言葉に、シリウスはただ小さく微笑むしかなかった。
 
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