僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ/Ⅱ

MITARASI_

文字の大きさ
2 / 37
I

第1話「僕の彼氏」

しおりを挟む

 佐伯陸は、恋人の高瀬匠と並んで歩きながら、胸の奥が少しだけ落ち着かないのを感じていた。



 放課後の駅前。
 すれ違う制服姿の高校生たちが楽しそうに笑い合う中、隣にいる匠は相変わらず無表情でスマホをいじっている。



 ――彼氏、なんだよね。
 自分にそう言い聞かせるように、陸はそっと匠の袖をつまんだ。



「ねえ、今日楽しかった?」
「……別に」
 画面から目を離さずに返された短い答えに、心臓がひゅっと縮む。



 匠はそういう人だ。
 不器用で、優しさを言葉にできない。
 分かっている。分かっているのに――不安が拭えない。



「匠って、全然『好き』って言ってくれないよな」
 小声でつぶやくと、返ってきたのはまた「別に」という淡々とした声。

 陸は笑ってごまかす。けれど、胸の奥に小さな棘が残る。



 そのとき、後ろから明るい声が飛んできた。
「おーい、陸!」

 振り向くと、幼なじみの桐生颯馬が自転車を押しながら駆け寄ってくる。
 日に焼けた笑顔は、子どもの頃から何も変わっていない。



「また一緒に帰ってんのか。仲いいな」
 冗談めかして言う颯馬に、陸は照れ隠しのように笑った。
 匠は表情を変えず、ちらりと視線をよこすだけ。



 ――どうしてだろう。
 隣にいてくれるのに、遠い。
 笑いかけても、手を伸ばしても、届かない気がする。



 陸の胸の奥に、不安という名の影がじわりと広がっていった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。

手の届かない元恋人

深夜
BL
昔、付き合っていた大好きな彼氏に振られた。 元彼は人気若手俳優になっていた。 諦めきれないこの恋がやっと終わると思ってた和弥だったが、仕事上の理由で元彼と会わないといけなくなり....

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

その部屋に残るのは、甘い香りだけ。

ロウバイ
BL
愛を思い出した攻めと愛を諦めた受けです。 同じ大学に通う、ひょんなことから言葉を交わすようになったハジメとシュウ。 仲はどんどん深まり、シュウからの告白を皮切りに同棲するほどにまで関係は進展するが、男女の恋愛とは違い明確な「ゴール」のない二人の関係は、失速していく。 一人家で二人の関係を見つめ悩み続けるシュウとは対照的に、ハジメは毎晩夜の街に出かけ二人の関係から目を背けてしまう…。

僕は今日、謳う

ゆい
BL
紅葉と海を観に行きたいと、僕は彼に我儘を言った。 彼はこのクリスマスに彼女と結婚する。 彼との最後の思い出が欲しかったから。 彼は少し困り顔をしながらも、付き合ってくれた。 本当にありがとう。親友として、男として、一人の人間として、本当に愛しているよ。 終始セリフばかりです。 話中の曲は、globe 『Wanderin' Destiny』です。 名前が出てこない短編part4です。 誤字脱字がないか確認はしておりますが、ありましたら報告をいただけたら嬉しいです。 途中手直しついでに加筆もするかもです。 感想もお待ちしています。 片付けしていたら、昔懐かしの3.5㌅FDが出てきまして。内容を確認したら、若かりし頃の黒歴史が! あらすじ自体は悪くはないと思ったので、大幅に修正して投稿しました。 私の黒歴史供養のために、お付き合いくださいませ。

【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

【BL】無償の愛と愛を知らない僕。

ありま氷炎
BL
何かしないと、人は僕を愛してくれない。 それが嫌で、僕は家を飛び出した。 僕を拾ってくれた人は、何も言わず家に置いてくれた。 両親が迎えにきて、仕方なく家に帰った。 それから十数年後、僕は彼と再会した。

末っ子王子は婚約者の愛を信じられない。

めちゅう
BL
 末っ子王子のフランは兄であるカイゼンとその伴侶であるトーマの結婚式で涙を流すトーマ付きの騎士アズランを目にする。密かに慕っていたアズランがトーマに失恋したと思いー。 お読みくださりありがとうございます。

処理中です...