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27.誰?
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今ラウンジでジョシュさんと向き合っている。ジョシュさんはいきなり立ち上がり、私の前に跪き手をとって
「ジョシュ・シュナイダーは今ここにハルカ嬢に婚姻を申し込む」
「じょうだん?」
「春香ちゃん冗談じゃなく俺は真剣に貴女にプロポーズしている」
どうしていいか分からず押し黙ると
「春香ちゃん。俺ね、父上から全て聞いたよ。春香ちゃんが迷い人で兄上がローランド殿下と同じ加護持ちである事も。そして春香ちゃんが心から自分の世界に帰るたいと願いその思いに答えたテクルスの使いが現れたことも…」
あれ?確かミハイルさんの加護持ちはジョシュさんに内緒だったのでは? それに私が迷い人ってバラされているし、何か考えがあったんですかレイモンド様⁈ それより昨日から連続登場しているテクルスは何なの?
「“テクルスの使い”て何ですか?最近ゴラスの神のテクルスの名を皆さんからよく聞きますが、私と何の関係があるんですか?」
「ごめん。それは俺の口からは話せない。明日舞踏会の席でアレックスから聞くといい」
またアレックスさんだ。ここ数日アレックスさんと神テクルスがセットで出てくる。
「春香ちゃん…返事を欲しい」
「ジョシュさんは大好きだけど結婚するほどの愛情なのかは分からない…」
「なら!」
ジョシュさんがぐっと私に身を寄せてきて両手で私の頬を優しく包み顔を近づけてきた。
『キスされる』咄嗟に顔を背けた。
「はぁ…ごめんね…いきなりで驚いたよね。でもこれで春香ちゃんの気持ちが分かったよ。俺には恐らく家族としての親愛はもってくれているんだろう。でもそれは男女の愛ではないって事だ」
「ごめんなさい…」
「謝らないで。これで俺も吹っ切れた。これからは兄上を応援して春香ちゃんがこの世界に留まってくれる様に兄上を助けになるよ」
この後、ジョシュさんと遅くまで色々話しをした。ジョシュさんが女性を苦手になった原因はアビー様らしい。アビー様はゴラスの王女の近衛隊長を務める位剣の腕たち豪快な性格。ジョシュさんはアビー様に女性らしさを感じた事がなかったそうだ。
「母上は着飾れば美しいが、日常があれだからね…ほかの令嬢にも同じだと思う様になっていったよ」
なんかアビー様が可哀想…
「そこに可愛さしかないの春香ちゃんが来たんだ。もう好きになるに決まっているじゃないか!」
『そんな事無いと思うよ・・・』
ジョシュさんは付き合わせでゴラスの令嬢とも交流をもったが全く関心が持てなかった。そこに私が来て女性に好意を感じる様になったそうだ。
「俺ね。今日春香ちゃんが俺を選んでくれたら、公爵家から独立し爵位は男爵まで落ちるけど春香ちゃんと家庭を持とうと思っていた」
「そんな事まで考えていたんですか⁈」
「うん。加護持ちの兄上を差し置いて迷い人を奪っておいてシュナイダー家に居れない。でも春香ちゃんが居てくれたら公爵の爵位は必要ないんだよ」
「…レイモンド様には相談したんですか⁈」
「勿論。父上は春香ちゃんが選んだのなら一切口出しはしないと約束してくれたよ。でも恐らく春香ちゃんが断ると分かっていて、俺の好きにさせてくれたんだ。父上は偉大だよ」
結局、恐れ多くも私がジョシュさんをふった形になったけど、変な蟠りは無く反対に気を使わずなんでも話せるようになって、友達?兄弟が出来たみたいで嬉しい。
「何かジョシュさんお兄ちゃんみたい」
「あーいいね!これからは兄様って呼んでよ。もし兄上と春香ちゃんが結ばれたら兄上が義弟になるのか?」
「タラればは止めて下さい。プレッシャーになります」
「明日は最後だから会場に入るまででいい、俺にエスコートさせてくれないか?」
「私はいいんですが、マナー的に大丈夫ですか?」
「兄上はいい顔しないだろうけどね」
ジョシュさんはそう言い楽しそうに笑った。
「失礼いたします。春香様そろそろ就寝のお時間です」
エリスさんが迎えに来た。楽しい時間はいつもアッという間に過ぎ去っていく…。ジョシュさんは手を差し伸べて立たせてくれ優しく抱きしめてくれる。
「頬に口付けても?」
頷くと頬と額に口付けてくれる。送ると言われたが断り部屋に向かった。
部屋の前にミハイルさんがいて、エレナさんは慌てて挨拶をして戻って行った。
「どうしたんですか?」
「ジョシュとの事が気になって来てしまった。迷惑だったか?」
「そんな事ないですよ」
「ジョシュは…」
「プロポーズされましたよ」
「それで…」
「お断りしました。どうやらジョシュさんは私にとってお兄ちゃんみたいな存在みたいです」
ミハイルさんが安心したみたいで抱きしめてくる。
「明日は朝から忙しい。早く休むといい…」
「ミハイルさん一つだけ聞いていいですか?」
「なんだ?」
「昨日から神テクルスとセットでアレックスさんの名前が出てくるのですが、私に関係あるんですか?凄い怖いんですけど」
「大いに関係あるよ。でも俺から話す事が出来ない。明日話を聞いてハルが決めなければならない」
「やっぱり、明日舞踏会行かないとかアリですかね⁈」
「明日は陛下もおいでになるから参加は絶対だ」
「こらこら!早く春香ちゃんを休ませてあげなさい!」
アビー様が様子を見に来て注意され、慌ててお2人に挨拶をして部屋に入る。
湯浴みは明日朝一に入るから今日はこのまま寝る事にした。アビー様が選んでくれた夜着に着替えたけど袖も裾も長い。改めてこの国では自分は小さい事を実感する。時計を見たら11時を過ぎている。急いで戸締りをしてベッドに潜り込んでだ。
「眩しい…」
昨晩カーテンを閉め忘れたようで、朝日が登る方角にある窓から朝日がさし眩しい。
はぁ…初めは迷い人のお助け貴族を探る為に張り切っていたのに、知らないところで何か起きてるみたいで、テンション駄々下りで行きたく無くたって来ている。急に腹痛とかならないらかなぁ…
夜着の上にガウンを着てソファーに座っていたら、アビー様が来た。部屋の鍵を開けると侍女さんを3人連れて来ている。
「おはよう!さぁ!今から舞踏会の準備を始めるわよ」
「あの舞踏会って夕方からでは?」
「そうよ。でも、今日は陛下の謁見があるからお昼過ぎには町屋敷を出るわよ。さぁ皆んなよろしくね!春香ちゃんをレイシャルで1番にして上げて」
「「「畏まりました!お任せ下さい」」」
腕まくりした侍女さんに浴室に連れて行かれ、それから約1時間半エステやマッサージを施され、虫の息の私はエリスさんに支えられて姿見の前に立っています。
「「「お綺麗ですわ」」」
侍女さん達は達成感に浸っています。鏡の中の私は別人だ。仕上がりを知っていたかの様にクリスさんが迎えに来た。
「・・・」
「あの。春香です。特殊メイク凄すぎて誰が分からなかったですか?」
「いえ…あまりにもお綺麗で言葉が出てきませんでした」
「気を使わなくていいですよ。自分でも侍女さんの技に驚きましたから」
「いえ、本当に美しい…」
“くぅ~”
不意に私のお腹が鳴った!そう言えば朝から何も食べてなかった。
「くすっ」
クリスさんは小さく笑い私に手を差し伸べエスコートしてくれる。今日は少し高めヒールを履いているからいつも以上に歩くのが遅い。早く食堂に行きたいのに進まない。そして階段に来た時には歩き始めた幼子の様にプルプルしている。
「失礼します」
クリスさんに抱き上げられた。クリスさんは軽快に階段を降りそのまま食堂に向かう。
「あの自分で」
「お腹のベルを早く止めてあげましょう」
「…あっはい」
どうやら隣のクリスさんにお腹音が聞こえていたようだ。恥ずかしい…
クリスさんは食堂の前で下ろしてくれた。中に入るとミハイルさんが駆け寄って来て、私の少し前で止まり熱の籠った眼差しを向けてくる。
「ハル!きれ…」
「春香ちゃん!こっちに来てよく見せて!」
アビー様に手を引かれレイモンド様の前に行く。
レイモンド様は立ち上がりハグをしてくれ優しい笑顔を向けてくれた。
「レイモンド様。素敵なドレスありがとうございます」
「春香よく似合うよ。今からダンスが楽しみだ」
「春香ちゃん!」
振り返るとジョシュさんが立っていた。白を基調とした金糸が施された騎士服に紅色のマントを纏っていてカッコいい。
「ジョシュさんカッコいいです!」
「あ…あ…俺は春香ちゃんを諦めるの早すぎたかもしれない。今日は害虫が春香ちゃんに付かない様に春香ちゃんの騎士になるよ」
「ありが…うっわ!」
急に腕を取られて後ろに引っ張られ変な声を上げてしまった。
「ジョシュ!春香は諦めたのだろう!横恋慕するな!」
ミハイルさんが私を抱え込んだ。ミハイルさんの装いは黒のロングジャケットだ。袖口や襟元に銀糸の刺繍がされていて胸元は紅色のタイをしている。ジョシュさんと対照的でダンディで凛々しい。
「ミハイルさんの赤い髪とジャケットが合っていてカッコいいです!」
「ありがとう」
ミハイルさん照れ笑いは可愛らしいくて好きだ。
「皆んな早く食事しないと出発の時間がくるわ」
アビー様が皆んなの着席を促しが始まった。
燃料満タンで元気になった。お化粧を少し直して登城します。馬車に乗り町屋敷を出発!
馬車内は皆さんと雑談し楽しい時間を過ごす。暫くすると馬が嘶き止まった。1番にレイモンド様が降りアビー様をエスコートされ、次にミハイルさん、ジョシュさんと続き私が一番最後になった。
「!」馬車を降りて仰天する。馬車から城の入口まで赤絨毯が…絨毯の先に陛下と王妃様、ローランド殿下が待っている。それに絨毯の両サイドに騎士か並んでいて大事になっている。
尻込みする私をジョシュさんがエスコートしてくれる。緊張している私にジョシュさんは微笑んでくれた。長い赤絨毯を歩きやっと陛下の前に来た。レイモンド様が陛下に挨拶されている間、頭を下げて陛下のお言葉を待つ。
「よく来てくれた。まずは春香嬢に話をしたい。貴賓室て待つ様に。ローランド!春香嬢をエスコートしなさい」
ローランド殿下は私の前に来て手を差し伸べた。
何だろう…久しぶりに殿下に会ったけど、別人の様だ。凄く落ち着いたし紳士だ。殿下の手に私の手を重ねると殿下は安堵の表情をする。
殿下の反応に違和感を覚えながら貴賓室に向かった。貴賓室に入ると深々と頭を下げてた男性がいた。
「まずは春香嬢に謝罪をさせていただきたい」
「へ?」
誰かに謝ってもらう事なんて有ったけ?私が謝る事は沢山あると思うけど…
男性が顔を上げた。あれ見たこと有る様なない様な…
「あの失礼ですが…」
「春香。アレックスだよ。少し容姿が変わったから判らなかったかなぁ?」
「うそ!」
そう言われればアレックスさんにもみえる。
でもアレックスさんさ深緑の長髪に茶色い瞳だった。今目の前の男性は緑の髪に黄色の瞳をしている。容姿もだけど話し方や仕草も違う。
「本当にアレックスさんですか?別人みたい!
何処悪いの?お医者さんには診てもらいました?」
「傷つけられた相手すら心配するんだな…お前は…」
自称アレックスさんは優しい眼差しを向けてくる。
周りを見渡すけど驚いているのは私だけ! みんな知っていたの? 私だけ置いてきぼりなんだけど。誰が説明して!
「ジョシュ・シュナイダーは今ここにハルカ嬢に婚姻を申し込む」
「じょうだん?」
「春香ちゃん冗談じゃなく俺は真剣に貴女にプロポーズしている」
どうしていいか分からず押し黙ると
「春香ちゃん。俺ね、父上から全て聞いたよ。春香ちゃんが迷い人で兄上がローランド殿下と同じ加護持ちである事も。そして春香ちゃんが心から自分の世界に帰るたいと願いその思いに答えたテクルスの使いが現れたことも…」
あれ?確かミハイルさんの加護持ちはジョシュさんに内緒だったのでは? それに私が迷い人ってバラされているし、何か考えがあったんですかレイモンド様⁈ それより昨日から連続登場しているテクルスは何なの?
「“テクルスの使い”て何ですか?最近ゴラスの神のテクルスの名を皆さんからよく聞きますが、私と何の関係があるんですか?」
「ごめん。それは俺の口からは話せない。明日舞踏会の席でアレックスから聞くといい」
またアレックスさんだ。ここ数日アレックスさんと神テクルスがセットで出てくる。
「春香ちゃん…返事を欲しい」
「ジョシュさんは大好きだけど結婚するほどの愛情なのかは分からない…」
「なら!」
ジョシュさんがぐっと私に身を寄せてきて両手で私の頬を優しく包み顔を近づけてきた。
『キスされる』咄嗟に顔を背けた。
「はぁ…ごめんね…いきなりで驚いたよね。でもこれで春香ちゃんの気持ちが分かったよ。俺には恐らく家族としての親愛はもってくれているんだろう。でもそれは男女の愛ではないって事だ」
「ごめんなさい…」
「謝らないで。これで俺も吹っ切れた。これからは兄上を応援して春香ちゃんがこの世界に留まってくれる様に兄上を助けになるよ」
この後、ジョシュさんと遅くまで色々話しをした。ジョシュさんが女性を苦手になった原因はアビー様らしい。アビー様はゴラスの王女の近衛隊長を務める位剣の腕たち豪快な性格。ジョシュさんはアビー様に女性らしさを感じた事がなかったそうだ。
「母上は着飾れば美しいが、日常があれだからね…ほかの令嬢にも同じだと思う様になっていったよ」
なんかアビー様が可哀想…
「そこに可愛さしかないの春香ちゃんが来たんだ。もう好きになるに決まっているじゃないか!」
『そんな事無いと思うよ・・・』
ジョシュさんは付き合わせでゴラスの令嬢とも交流をもったが全く関心が持てなかった。そこに私が来て女性に好意を感じる様になったそうだ。
「俺ね。今日春香ちゃんが俺を選んでくれたら、公爵家から独立し爵位は男爵まで落ちるけど春香ちゃんと家庭を持とうと思っていた」
「そんな事まで考えていたんですか⁈」
「うん。加護持ちの兄上を差し置いて迷い人を奪っておいてシュナイダー家に居れない。でも春香ちゃんが居てくれたら公爵の爵位は必要ないんだよ」
「…レイモンド様には相談したんですか⁈」
「勿論。父上は春香ちゃんが選んだのなら一切口出しはしないと約束してくれたよ。でも恐らく春香ちゃんが断ると分かっていて、俺の好きにさせてくれたんだ。父上は偉大だよ」
結局、恐れ多くも私がジョシュさんをふった形になったけど、変な蟠りは無く反対に気を使わずなんでも話せるようになって、友達?兄弟が出来たみたいで嬉しい。
「何かジョシュさんお兄ちゃんみたい」
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「私はいいんですが、マナー的に大丈夫ですか?」
「兄上はいい顔しないだろうけどね」
ジョシュさんはそう言い楽しそうに笑った。
「失礼いたします。春香様そろそろ就寝のお時間です」
エリスさんが迎えに来た。楽しい時間はいつもアッという間に過ぎ去っていく…。ジョシュさんは手を差し伸べて立たせてくれ優しく抱きしめてくれる。
「頬に口付けても?」
頷くと頬と額に口付けてくれる。送ると言われたが断り部屋に向かった。
部屋の前にミハイルさんがいて、エレナさんは慌てて挨拶をして戻って行った。
「どうしたんですか?」
「ジョシュとの事が気になって来てしまった。迷惑だったか?」
「そんな事ないですよ」
「ジョシュは…」
「プロポーズされましたよ」
「それで…」
「お断りしました。どうやらジョシュさんは私にとってお兄ちゃんみたいな存在みたいです」
ミハイルさんが安心したみたいで抱きしめてくる。
「明日は朝から忙しい。早く休むといい…」
「ミハイルさん一つだけ聞いていいですか?」
「なんだ?」
「昨日から神テクルスとセットでアレックスさんの名前が出てくるのですが、私に関係あるんですか?凄い怖いんですけど」
「大いに関係あるよ。でも俺から話す事が出来ない。明日話を聞いてハルが決めなければならない」
「やっぱり、明日舞踏会行かないとかアリですかね⁈」
「明日は陛下もおいでになるから参加は絶対だ」
「こらこら!早く春香ちゃんを休ませてあげなさい!」
アビー様が様子を見に来て注意され、慌ててお2人に挨拶をして部屋に入る。
湯浴みは明日朝一に入るから今日はこのまま寝る事にした。アビー様が選んでくれた夜着に着替えたけど袖も裾も長い。改めてこの国では自分は小さい事を実感する。時計を見たら11時を過ぎている。急いで戸締りをしてベッドに潜り込んでだ。
「眩しい…」
昨晩カーテンを閉め忘れたようで、朝日が登る方角にある窓から朝日がさし眩しい。
はぁ…初めは迷い人のお助け貴族を探る為に張り切っていたのに、知らないところで何か起きてるみたいで、テンション駄々下りで行きたく無くたって来ている。急に腹痛とかならないらかなぁ…
夜着の上にガウンを着てソファーに座っていたら、アビー様が来た。部屋の鍵を開けると侍女さんを3人連れて来ている。
「おはよう!さぁ!今から舞踏会の準備を始めるわよ」
「あの舞踏会って夕方からでは?」
「そうよ。でも、今日は陛下の謁見があるからお昼過ぎには町屋敷を出るわよ。さぁ皆んなよろしくね!春香ちゃんをレイシャルで1番にして上げて」
「「「畏まりました!お任せ下さい」」」
腕まくりした侍女さんに浴室に連れて行かれ、それから約1時間半エステやマッサージを施され、虫の息の私はエリスさんに支えられて姿見の前に立っています。
「「「お綺麗ですわ」」」
侍女さん達は達成感に浸っています。鏡の中の私は別人だ。仕上がりを知っていたかの様にクリスさんが迎えに来た。
「・・・」
「あの。春香です。特殊メイク凄すぎて誰が分からなかったですか?」
「いえ…あまりにもお綺麗で言葉が出てきませんでした」
「気を使わなくていいですよ。自分でも侍女さんの技に驚きましたから」
「いえ、本当に美しい…」
“くぅ~”
不意に私のお腹が鳴った!そう言えば朝から何も食べてなかった。
「くすっ」
クリスさんは小さく笑い私に手を差し伸べエスコートしてくれる。今日は少し高めヒールを履いているからいつも以上に歩くのが遅い。早く食堂に行きたいのに進まない。そして階段に来た時には歩き始めた幼子の様にプルプルしている。
「失礼します」
クリスさんに抱き上げられた。クリスさんは軽快に階段を降りそのまま食堂に向かう。
「あの自分で」
「お腹のベルを早く止めてあげましょう」
「…あっはい」
どうやら隣のクリスさんにお腹音が聞こえていたようだ。恥ずかしい…
クリスさんは食堂の前で下ろしてくれた。中に入るとミハイルさんが駆け寄って来て、私の少し前で止まり熱の籠った眼差しを向けてくる。
「ハル!きれ…」
「春香ちゃん!こっちに来てよく見せて!」
アビー様に手を引かれレイモンド様の前に行く。
レイモンド様は立ち上がりハグをしてくれ優しい笑顔を向けてくれた。
「レイモンド様。素敵なドレスありがとうございます」
「春香よく似合うよ。今からダンスが楽しみだ」
「春香ちゃん!」
振り返るとジョシュさんが立っていた。白を基調とした金糸が施された騎士服に紅色のマントを纏っていてカッコいい。
「ジョシュさんカッコいいです!」
「あ…あ…俺は春香ちゃんを諦めるの早すぎたかもしれない。今日は害虫が春香ちゃんに付かない様に春香ちゃんの騎士になるよ」
「ありが…うっわ!」
急に腕を取られて後ろに引っ張られ変な声を上げてしまった。
「ジョシュ!春香は諦めたのだろう!横恋慕するな!」
ミハイルさんが私を抱え込んだ。ミハイルさんの装いは黒のロングジャケットだ。袖口や襟元に銀糸の刺繍がされていて胸元は紅色のタイをしている。ジョシュさんと対照的でダンディで凛々しい。
「ミハイルさんの赤い髪とジャケットが合っていてカッコいいです!」
「ありがとう」
ミハイルさん照れ笑いは可愛らしいくて好きだ。
「皆んな早く食事しないと出発の時間がくるわ」
アビー様が皆んなの着席を促しが始まった。
燃料満タンで元気になった。お化粧を少し直して登城します。馬車に乗り町屋敷を出発!
馬車内は皆さんと雑談し楽しい時間を過ごす。暫くすると馬が嘶き止まった。1番にレイモンド様が降りアビー様をエスコートされ、次にミハイルさん、ジョシュさんと続き私が一番最後になった。
「!」馬車を降りて仰天する。馬車から城の入口まで赤絨毯が…絨毯の先に陛下と王妃様、ローランド殿下が待っている。それに絨毯の両サイドに騎士か並んでいて大事になっている。
尻込みする私をジョシュさんがエスコートしてくれる。緊張している私にジョシュさんは微笑んでくれた。長い赤絨毯を歩きやっと陛下の前に来た。レイモンド様が陛下に挨拶されている間、頭を下げて陛下のお言葉を待つ。
「よく来てくれた。まずは春香嬢に話をしたい。貴賓室て待つ様に。ローランド!春香嬢をエスコートしなさい」
ローランド殿下は私の前に来て手を差し伸べた。
何だろう…久しぶりに殿下に会ったけど、別人の様だ。凄く落ち着いたし紳士だ。殿下の手に私の手を重ねると殿下は安堵の表情をする。
殿下の反応に違和感を覚えながら貴賓室に向かった。貴賓室に入ると深々と頭を下げてた男性がいた。
「まずは春香嬢に謝罪をさせていただきたい」
「へ?」
誰かに謝ってもらう事なんて有ったけ?私が謝る事は沢山あると思うけど…
男性が顔を上げた。あれ見たこと有る様なない様な…
「あの失礼ですが…」
「春香。アレックスだよ。少し容姿が変わったから判らなかったかなぁ?」
「うそ!」
そう言われればアレックスさんにもみえる。
でもアレックスさんさ深緑の長髪に茶色い瞳だった。今目の前の男性は緑の髪に黄色の瞳をしている。容姿もだけど話し方や仕草も違う。
「本当にアレックスさんですか?別人みたい!
何処悪いの?お医者さんには診てもらいました?」
「傷つけられた相手すら心配するんだな…お前は…」
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