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40.ミサンガ
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『あ…』
アレックスさんの眉間の皺はレベル5。また嫌な汗が出てきて、エリックさんを見上げると普通だ。兄弟だからレベル5でも見慣れているのだろうか…
「部屋に戻ったのではないのか!」
「ハルカが怖がっていたからサロンでお茶を飲ませて落ち着かせていたんだ」
「あの…エリックさんありがとうございます。下して…」
って言ったら余計にがっちり抱きかかえられた。
『お願い下ろしてアレックスさん怖すぎるから!』
無言でアレックスさんは私の部屋の扉を開けて顎でエリックさんに入室するように促す。少し嫌な顔をしながら入室するエリックさん。ソファーに下してくれて、当たり前の様に隣に座ります。超不機嫌なアレックスさんは
「春香に話がある。席をはずせ」
「兄貴…そんなに殺気立ってはハルカは怖くて何も言えないよ。俺が側にいてやらないと」
「春香。俺が怖いか?」
面と向かって『はい』なんて言えないじゃん!
「え…と。私が悪かったのは分かりますが…少し…」
せめてレベル2位にして欲しい。レベル5は何も言えないから…私の視線が眉間にあるのに気づいたアレックスさんは眉間を指で押さえて
「怖がらせるつもりは無かった。今回の事はちゃんと話しておきたいから怖がらないでくれ」
「分かりました。エリックさん。ありがとうございました。もう大丈夫です。ちゃんとアレックスさんと話をしますので」
遠回しな言い方になったが退室をお願いした。
エリックさんは私の手を握ってこの場に居たそうだったが、恐らくテクルスの話も出てくるだろうからエリックさんが居ては話が出来ない。
「また、グリフの話を聞かせて下さいね」
これで意図が分かった様で溜息を吐きながら立上り、額に口付け
「兄貴。あまりハルカをいじめるなよ」
「分かっている」
「何かあったら俺を呼べよ」
エリックさんは部屋を出るとき名残惜しそうに出て行った。
やっと?二人きりになったが沈黙がイタイ。取りあえず謝らないと…
「アレックスさんあの…」
「すまなかった。どうも俺はお前に対して感情を抑える事が出来ない様だ。また同じ事をしてしまうところだった。きちんと冷静に話あおう」
アレックスさんから謝られ驚き
「私こそすみません、確かに危険だから窓に近づくなと言われていたのに… あの銀色のグリフが気になってしまって… アレックスさんは私の身を案じ怒って下さった。完全に私が悪いんです。ごめんなさい」
「エリックが言うようにグリフの生態が分かり大きな進展だが、俺はお前の身の安全の方が大切だ。お前に何かあっては殿下やテクルスに顔向けできない」
改めて軽率な行動に反省し
「はい」
「お前は平和な世界で育ち危険をあまり感じた事がないようだ。テクルスからお前に世界の事を見せてもらって知っていたはずなのに、そこは俺の落ち度だ。ここはお前の世界とは違う。危険な所も人もいる気を付けて欲しい」
「はい…」
そして視線を外したアレックスさんは
「あと、エリックを許して欲しい。アイツは本当にグリフが好きで研究をしている。銀色の発見で興奮しての事だ。次はあのような事が無い様に注意しておく」
「あのような事?」
「その…抱き上げたり、額にそのだなぁ…」
「キスですか?」
「注意しておく」
意外にアレックスさんはシャイなのかもしれない。何故か話題を変えたくなり
「アレックスさん。外にも出れなくて暇です。何かお手伝いすることは有りませんか?」
「本でも読んでのんびりすればいいだろう」
「屋敷のお手伝いとかありませんか?」
「そうか春香は元は平民なのだなぁ… しかし手は足りているし、春香が手伝うと他の者の仕事がなくなる」
結局何もする事がない様だ。諦めモードでアレックスさんと雑談をしていたら誰か来た。
今目の前に満面の笑みのマニュラ夫人が座っています。先程部屋に来たのはマニュラ夫人の侍女さんでお茶のお誘いだった。失礼だが夫人の微笑みは何言われるか分からないから不気味だ。
「春香さん私ね、ずっと娘が欲しかったの。一緒にお買い物して髪を結ってあげてお茶をしながらお話出来るじゃない。男の子は何も付き合ってくれなくて寂しいわ。レイシャルに嫁ぐことが決まった時点で、女の子を授かれないのは分かっていてけどやっぱり女の子が欲しくてね」
「はい…」
「そうなると私の夢を叶えてくれるのは息子が婚姻するしかないの!」
「そうですね?」
雲行きが怪しくなって来たよ!
「だから息子達が付き合わせに参加できる年齢になると、すぐに参加するように言ったわ。しかしアレクは殿下の迷い人が見つかるまで参加しないと言うし、エリックはグリフの研究に忙しいとずっと参加してくれなかったわ。流石に20歳になると友人も婚約者が決まったり、周囲からの圧もありやっと参加してくれて婚約者を決めて帰ってきた。やっと来てくれた婚約者を全く構うことなく冷たく接し、5日も持たず皆ゴラスに帰って行ったわ」
「はぁ…」
「もしかしたらウチの息子たちは男色なのでは想う様になって、お嫁さんを諦めかけていたの」
「えぇ…」
ヤバいなぁ…確実に…
「そこにこんなに可愛い春香さんが来てくれたじゃなぃ!嬉しくて嬉しくて!その上、グリフしか興味が無かったエリックも満更でもない感じだし!春香さんは我が家の救世主だわ」
「あの・・・話の腰を折って申し訳ないのですが、私は王都から一時避難でこちらにお世話になっている訳で、アレックスさんとその恋仲とかではないんですよ!避難が終われば王都に戻ります」
「えぇ…理解しているわ。でもこの10日の間に息子にもチャンスがあるって事は変わらないわ! 少しでも気に入ったら夫の一人にしてやって」
「…」
だめだこりゃ!嫁が欲し過ぎて色んな事がおかしい。少しでも失言すると帰る頃には婚約者が増えそうだ。
お茶を飲みながら夫人の話を聞いていたら、侍女がお伺いに来た。どうやら業者が納品に来て品の確認をして欲しいらしい。お暇するチャンスとばかりに退室許可をもらおうとしたら、夫人が業者をここに案内する様に侍女さんに指示している。帰るチャンスが…
結局この後も夫人の嫁が欲しいトークをずっと聞かされて精魂尽きて来た。
そして侍女さんに案内されて業者が入室してくる。木箱を2つ抱えた下僕とイケおじの業者さん。
「奥様。お引き立て頂きありがとうございます。ご希望のお品をお持ちしました。ご確認下さい」
「ありがとう」
退室許可が出ないから帰れない私はぼーと夫人と業者さんを見ていた。納品されたものはハンカチや綺麗な布、そして彩鮮やかな刺繍糸だった。
「マニュラ夫人。何か作られるのですか?」
「えぇ!年1回開催される領地の教会のバザーに出す物の材料よ。私はお料理は全くダメだけど裁縫は得意でね。毎年刺繍ハンカチと小物入れを出しているの。売れた収益は領地の孤児院に寄付されるからやりがいがあるのよ!」
「へぇ・・・見せて頂いていいですか?」
「いいわよ。春香さんも何か作ってみる?」
私は裁縫はそんなに得意ではないけど、収益が孤児院に寄付されるならお手伝いしたい。刺繍はあまり上手ではないし…
「あっ!刺繍糸をいくつかいただけますか?」
「いいわよ。足りない様ならまた頼むから。刺繍でもするの?」
「いえ、ミサンガなら作れるので」
「ミサンガ?初めて聞くわ。どの様なモノ?」
「カラフルな糸を編み上げたブレスレットやアンクレットです。着けるときに願いかけをし肌身離さず着け、ミサンガが切れればその願いが叶うと言われています。どこまで叶うかはよく知りませんが。私の世界で流行っていたものです」
大したものではないけどマニュラ夫人は興味があるらしく見本で一つ作る事になった。色とりどりの刺繍糸から深緑・黄色・こげ茶・臙脂色の4本をもらった。業者のイケおじがミサンガに興味を持ってみたいで質問攻めにあった。
ミサンガを作る事になり手持ち無沙汰は解消され侯爵邸の生活も少し楽しくなってきた。中学生の時に好きな子にあげる為に必死で色んな編み方を覚えて編んだなぁ…
覚えているかなぁ?
マニュラ夫人のお茶会が終わり部屋に戻り早速ミサンガを作ります。
「あれ?こんなんだったけ?」
1本目はV字模様を編んでみたが前半柄がずれている。後半は感覚を思い出して綺麗に編めている。
ゔー失敗…次だ!集中し編み編み・・・
「できた!うーん案外うまく出来たかも。ブランク6年を感じさせない腕前!」
ただいま自画自賛中です。夫人に見てもらいOK貰ったらもっと編もう。刺繍糸をもっと欲しいし夕食の時間にお願いしてみよう。出来上がりミサンガを見ながらそんな事を考えていたら誰かが来たようだ。
返事をするとアレックスさんだった。夕食の時間なのに私が来ないから迎えに来てくれたようだ。
お礼を言い一緒に食堂に向かいます。特に話す事は無いけど案外気まずくない事に気付く。第一印象悪くて絶対仲良くなれないと思っていた。
まじまじ横顔を見ていたら
「なんだ?」
「第一印象最悪だったから、今こうやって一緒に過ごしているのが不思議で…」
アレックスさんは少し笑っている様に見える。不思議な感覚を感じながら食堂に着いた。
食堂の入るともうすでに皆さん食事を始められている。遅くなったお詫びをして着席し食事を始める。
いつもの如く完食は出来ず少し残してしまった。コックさんごめんなさい。
「マニュラ夫人!ミサンガ1本作ってみたんですが、出来を見てもらえますか? OKならバザーの為に沢山作りたいのですが…」
席を立ちマニュラ夫人の元にミサンガを持っていく。夫人の横に立ち緊張しながら夫人の評価を待つ。
「まぁ!刺繍糸でこんなに可愛いブレスレットが出来るなんて知らなかったわ!春香さんもっと作ってバザーに出しましょう!これは絶対売れるわ」
高評価に思わず顔が綻ぶ。
「本当に大丈夫ですか?厳し目で評価くださいね」
「バザーではなくお店でも売れるし私も欲しいわ。私のも作ってくれる?願い事があるから!」
「はい!ただ刺繍糸をもっと欲しいのですが、用意していただけませんか?」
「任せておいて。今日届いた刺繍糸から必要な分持って行っていいわ。明日また注文しておくから」
胸をなでおろした。良かった昔の経験が生きたわ。明日からガンガン作るぞ
見本のミサンガを返してもらいポケットに入れた。侯爵様にミサンガが何か聞かれたので説明したら、なんと侯爵様からも作成を依頼された。
結局エリックさんにも頼まれて気分良く部屋に戻ります。侍女さんに部屋に案外してもらっていたら、アレックスさんが追いかけてきた。
アレックスは侍女さんを下げアレックスさんが送ってくれるようだ。
何か話が有るのかと思ったが、待てど暮らせど話はない。でも何か言いたげなんだけどなぁ…
無言のまま部屋に着いた。お礼を言って部屋に入ろうとしたら
「春香。先程のミサンガを俺にくれないか?」
「はぃ?」
アレックスさんの眉間の皺はレベル5。また嫌な汗が出てきて、エリックさんを見上げると普通だ。兄弟だからレベル5でも見慣れているのだろうか…
「部屋に戻ったのではないのか!」
「ハルカが怖がっていたからサロンでお茶を飲ませて落ち着かせていたんだ」
「あの…エリックさんありがとうございます。下して…」
って言ったら余計にがっちり抱きかかえられた。
『お願い下ろしてアレックスさん怖すぎるから!』
無言でアレックスさんは私の部屋の扉を開けて顎でエリックさんに入室するように促す。少し嫌な顔をしながら入室するエリックさん。ソファーに下してくれて、当たり前の様に隣に座ります。超不機嫌なアレックスさんは
「春香に話がある。席をはずせ」
「兄貴…そんなに殺気立ってはハルカは怖くて何も言えないよ。俺が側にいてやらないと」
「春香。俺が怖いか?」
面と向かって『はい』なんて言えないじゃん!
「え…と。私が悪かったのは分かりますが…少し…」
せめてレベル2位にして欲しい。レベル5は何も言えないから…私の視線が眉間にあるのに気づいたアレックスさんは眉間を指で押さえて
「怖がらせるつもりは無かった。今回の事はちゃんと話しておきたいから怖がらないでくれ」
「分かりました。エリックさん。ありがとうございました。もう大丈夫です。ちゃんとアレックスさんと話をしますので」
遠回しな言い方になったが退室をお願いした。
エリックさんは私の手を握ってこの場に居たそうだったが、恐らくテクルスの話も出てくるだろうからエリックさんが居ては話が出来ない。
「また、グリフの話を聞かせて下さいね」
これで意図が分かった様で溜息を吐きながら立上り、額に口付け
「兄貴。あまりハルカをいじめるなよ」
「分かっている」
「何かあったら俺を呼べよ」
エリックさんは部屋を出るとき名残惜しそうに出て行った。
やっと?二人きりになったが沈黙がイタイ。取りあえず謝らないと…
「アレックスさんあの…」
「すまなかった。どうも俺はお前に対して感情を抑える事が出来ない様だ。また同じ事をしてしまうところだった。きちんと冷静に話あおう」
アレックスさんから謝られ驚き
「私こそすみません、確かに危険だから窓に近づくなと言われていたのに… あの銀色のグリフが気になってしまって… アレックスさんは私の身を案じ怒って下さった。完全に私が悪いんです。ごめんなさい」
「エリックが言うようにグリフの生態が分かり大きな進展だが、俺はお前の身の安全の方が大切だ。お前に何かあっては殿下やテクルスに顔向けできない」
改めて軽率な行動に反省し
「はい」
「お前は平和な世界で育ち危険をあまり感じた事がないようだ。テクルスからお前に世界の事を見せてもらって知っていたはずなのに、そこは俺の落ち度だ。ここはお前の世界とは違う。危険な所も人もいる気を付けて欲しい」
「はい…」
そして視線を外したアレックスさんは
「あと、エリックを許して欲しい。アイツは本当にグリフが好きで研究をしている。銀色の発見で興奮しての事だ。次はあのような事が無い様に注意しておく」
「あのような事?」
「その…抱き上げたり、額にそのだなぁ…」
「キスですか?」
「注意しておく」
意外にアレックスさんはシャイなのかもしれない。何故か話題を変えたくなり
「アレックスさん。外にも出れなくて暇です。何かお手伝いすることは有りませんか?」
「本でも読んでのんびりすればいいだろう」
「屋敷のお手伝いとかありませんか?」
「そうか春香は元は平民なのだなぁ… しかし手は足りているし、春香が手伝うと他の者の仕事がなくなる」
結局何もする事がない様だ。諦めモードでアレックスさんと雑談をしていたら誰か来た。
今目の前に満面の笑みのマニュラ夫人が座っています。先程部屋に来たのはマニュラ夫人の侍女さんでお茶のお誘いだった。失礼だが夫人の微笑みは何言われるか分からないから不気味だ。
「春香さん私ね、ずっと娘が欲しかったの。一緒にお買い物して髪を結ってあげてお茶をしながらお話出来るじゃない。男の子は何も付き合ってくれなくて寂しいわ。レイシャルに嫁ぐことが決まった時点で、女の子を授かれないのは分かっていてけどやっぱり女の子が欲しくてね」
「はい…」
「そうなると私の夢を叶えてくれるのは息子が婚姻するしかないの!」
「そうですね?」
雲行きが怪しくなって来たよ!
「だから息子達が付き合わせに参加できる年齢になると、すぐに参加するように言ったわ。しかしアレクは殿下の迷い人が見つかるまで参加しないと言うし、エリックはグリフの研究に忙しいとずっと参加してくれなかったわ。流石に20歳になると友人も婚約者が決まったり、周囲からの圧もありやっと参加してくれて婚約者を決めて帰ってきた。やっと来てくれた婚約者を全く構うことなく冷たく接し、5日も持たず皆ゴラスに帰って行ったわ」
「はぁ…」
「もしかしたらウチの息子たちは男色なのでは想う様になって、お嫁さんを諦めかけていたの」
「えぇ…」
ヤバいなぁ…確実に…
「そこにこんなに可愛い春香さんが来てくれたじゃなぃ!嬉しくて嬉しくて!その上、グリフしか興味が無かったエリックも満更でもない感じだし!春香さんは我が家の救世主だわ」
「あの・・・話の腰を折って申し訳ないのですが、私は王都から一時避難でこちらにお世話になっている訳で、アレックスさんとその恋仲とかではないんですよ!避難が終われば王都に戻ります」
「えぇ…理解しているわ。でもこの10日の間に息子にもチャンスがあるって事は変わらないわ! 少しでも気に入ったら夫の一人にしてやって」
「…」
だめだこりゃ!嫁が欲し過ぎて色んな事がおかしい。少しでも失言すると帰る頃には婚約者が増えそうだ。
お茶を飲みながら夫人の話を聞いていたら、侍女がお伺いに来た。どうやら業者が納品に来て品の確認をして欲しいらしい。お暇するチャンスとばかりに退室許可をもらおうとしたら、夫人が業者をここに案内する様に侍女さんに指示している。帰るチャンスが…
結局この後も夫人の嫁が欲しいトークをずっと聞かされて精魂尽きて来た。
そして侍女さんに案内されて業者が入室してくる。木箱を2つ抱えた下僕とイケおじの業者さん。
「奥様。お引き立て頂きありがとうございます。ご希望のお品をお持ちしました。ご確認下さい」
「ありがとう」
退室許可が出ないから帰れない私はぼーと夫人と業者さんを見ていた。納品されたものはハンカチや綺麗な布、そして彩鮮やかな刺繍糸だった。
「マニュラ夫人。何か作られるのですか?」
「えぇ!年1回開催される領地の教会のバザーに出す物の材料よ。私はお料理は全くダメだけど裁縫は得意でね。毎年刺繍ハンカチと小物入れを出しているの。売れた収益は領地の孤児院に寄付されるからやりがいがあるのよ!」
「へぇ・・・見せて頂いていいですか?」
「いいわよ。春香さんも何か作ってみる?」
私は裁縫はそんなに得意ではないけど、収益が孤児院に寄付されるならお手伝いしたい。刺繍はあまり上手ではないし…
「あっ!刺繍糸をいくつかいただけますか?」
「いいわよ。足りない様ならまた頼むから。刺繍でもするの?」
「いえ、ミサンガなら作れるので」
「ミサンガ?初めて聞くわ。どの様なモノ?」
「カラフルな糸を編み上げたブレスレットやアンクレットです。着けるときに願いかけをし肌身離さず着け、ミサンガが切れればその願いが叶うと言われています。どこまで叶うかはよく知りませんが。私の世界で流行っていたものです」
大したものではないけどマニュラ夫人は興味があるらしく見本で一つ作る事になった。色とりどりの刺繍糸から深緑・黄色・こげ茶・臙脂色の4本をもらった。業者のイケおじがミサンガに興味を持ってみたいで質問攻めにあった。
ミサンガを作る事になり手持ち無沙汰は解消され侯爵邸の生活も少し楽しくなってきた。中学生の時に好きな子にあげる為に必死で色んな編み方を覚えて編んだなぁ…
覚えているかなぁ?
マニュラ夫人のお茶会が終わり部屋に戻り早速ミサンガを作ります。
「あれ?こんなんだったけ?」
1本目はV字模様を編んでみたが前半柄がずれている。後半は感覚を思い出して綺麗に編めている。
ゔー失敗…次だ!集中し編み編み・・・
「できた!うーん案外うまく出来たかも。ブランク6年を感じさせない腕前!」
ただいま自画自賛中です。夫人に見てもらいOK貰ったらもっと編もう。刺繍糸をもっと欲しいし夕食の時間にお願いしてみよう。出来上がりミサンガを見ながらそんな事を考えていたら誰かが来たようだ。
返事をするとアレックスさんだった。夕食の時間なのに私が来ないから迎えに来てくれたようだ。
お礼を言い一緒に食堂に向かいます。特に話す事は無いけど案外気まずくない事に気付く。第一印象悪くて絶対仲良くなれないと思っていた。
まじまじ横顔を見ていたら
「なんだ?」
「第一印象最悪だったから、今こうやって一緒に過ごしているのが不思議で…」
アレックスさんは少し笑っている様に見える。不思議な感覚を感じながら食堂に着いた。
食堂の入るともうすでに皆さん食事を始められている。遅くなったお詫びをして着席し食事を始める。
いつもの如く完食は出来ず少し残してしまった。コックさんごめんなさい。
「マニュラ夫人!ミサンガ1本作ってみたんですが、出来を見てもらえますか? OKならバザーの為に沢山作りたいのですが…」
席を立ちマニュラ夫人の元にミサンガを持っていく。夫人の横に立ち緊張しながら夫人の評価を待つ。
「まぁ!刺繍糸でこんなに可愛いブレスレットが出来るなんて知らなかったわ!春香さんもっと作ってバザーに出しましょう!これは絶対売れるわ」
高評価に思わず顔が綻ぶ。
「本当に大丈夫ですか?厳し目で評価くださいね」
「バザーではなくお店でも売れるし私も欲しいわ。私のも作ってくれる?願い事があるから!」
「はい!ただ刺繍糸をもっと欲しいのですが、用意していただけませんか?」
「任せておいて。今日届いた刺繍糸から必要な分持って行っていいわ。明日また注文しておくから」
胸をなでおろした。良かった昔の経験が生きたわ。明日からガンガン作るぞ
見本のミサンガを返してもらいポケットに入れた。侯爵様にミサンガが何か聞かれたので説明したら、なんと侯爵様からも作成を依頼された。
結局エリックさんにも頼まれて気分良く部屋に戻ります。侍女さんに部屋に案外してもらっていたら、アレックスさんが追いかけてきた。
アレックスは侍女さんを下げアレックスさんが送ってくれるようだ。
何か話が有るのかと思ったが、待てど暮らせど話はない。でも何か言いたげなんだけどなぁ…
無言のまま部屋に着いた。お礼を言って部屋に入ろうとしたら
「春香。先程のミサンガを俺にくれないか?」
「はぃ?」
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