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52.恐怖
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やっと侯爵邸に着くと先に戻っていたジョシュさんが迎えてくれた。ジョシュさんは優しく抱きしめてくれ
「春香ちゃん無茶はやめてくれ!寿命が縮むよ」
「ごめんなさい…」
ジャン王太子は側近の尋問の為に足早に屋敷入って行った。ミハイルさんが走って来てジョシュさんに私の護るように伝え、頬に口付けし侯爵様の元に行ってしまった。
ジョシュさんに付き添われ部屋に戻り、侍女さんに手伝ってもらい湯浴みをし着替えた。
ジョシュさんとお茶をいただいて雑談をしていたら、ミハイルさんが部屋に来る。
「ハル…王太子が側近の尋問と証拠を探しているが難航している。王太子がハルに協力を求めているが断っていいよ…いや断れ。嫌な予感がする。これはヴェルディアの問題だ。我らが関与する必要はない」
やっぱり王からの指示書が見つからないか…ヴェルディアに置いて来たとは考えにくい。自分を守る切札になるからきっと持ち歩いているはず。こんな時推理モノのアニメならどんなトリックをつかっていたっけ⁈
ミハイルさんは隣に座り抱きしめてくる。ミハイルさんは不安な様子。でもヴェルディアの為にもう一肌ぬぎましょうか!ジャン王太子に要請に応える事にし、ミハイルさんに付き添われ王太子の元に向かう。
ライナーの尋問している部屋へ移動中。右横を歩くミハイルさんは不機嫌だ。どうやら私がジャン王太子の協力的なのが気に食わないらしい。
確かに求婚されたがそこには恋愛感情はない。全てヴェルディアの為だけどミハイルさんに王太子の許し無く詳細は話せない。
繋いだ右手をぎゅっとして見上げたら、アレックスさんのレベル程ではないが眉間に皺が…
笑顔のミハイルさんを見たくて微笑んだら微笑み返してくれた。
恋人繋ぎをして機嫌良くミハイルさんと歩いていたら尋問している部屋に着く。部屋に入ると拘束されたライナーの他に側近の男性が数名拘束されている。部屋には他にジャン王太子とバルカンさんはじめヴェルディアの騎士が5名、侯爵様と王家騎士団員が数名いて部屋の空気が重い。これだけ男性が居たら男臭くなりそうだが案外臭くない事にホッとする。
部屋を見渡すとテーブルの上にライナーの物だろうか?大きなトランクとトランクから出した荷物が並んでいる。
「春香嬢。済まない。ライナーはコールマン領の事前調査に来た事は認めたがそれ以上は否定している。話していた証拠らしき物も見つからなく難航している。何か気付く事はないだろうか⁈」
おかしい。絶対証拠を持っている筈だ。でも王太子とバルカンさんが調べても荷物に指示書は無い。ライナーのトランクをぼんやり見ていて違和感を覚える。かなり年期のはいったトランクなのに中布が新しい。汚れたとかで中布を張り替えたのだろうか…張り替える?もしかして…
「殿下荷物を見せて頂いたいいですか?」
了解をもらいトランクの中布に手をかけてライナーさんの顔をみたら一瞬表情を変えた。
『やっぱり…』
トランクの中布を手の平で満遍なくさわり確認する。すると何かある!薄い封筒?らしきもの…
反対側の中布も確認するとこちらにも封筒らしきものがある。
「どなたか小刀を貸して下さい!」
「何か分かったか⁈」
バルカンさんから小さいナイフを貸してもらいトランクの中布の四方にナイフを入れて無理やり布を剥ぎ取った。後ろでライナーが何か文句を言っているが、弁償は王太子にしてもらって下さい。
すると左右のトランクの中布の中に手紙が左右に1通ずつ入っていた。
「この印璽は…陛下の物だ。もう一通は宰相のアントン」
さっきまで声を荒げて文句を言っていたライナーは青い顔をして黙り込んでしまった。
殿下は震える手で陛下の手紙を読んで表情を失くす。殿下はバルカンさんに手紙を渡し、殿下に許可をもらったバルカンさんも手紙を読み青い顔をしている。
次に殿下は次に宰相の手紙を読み、顔を真っ赤にして震えだした。そうしてライナーの胸倉を掴み怒気を含んだ声で問いただす。
「ライナー!アントンから預かった薬はどこにある!」
「俺は持っていない。宰相が安全の為に他の誰かに預けていると言っていた。乙女を拉致が成功したらその者から受け取り殿下と乙女に盛るつもりだった」
「薬を持つ者の名を言え!」
大柄な殿下に胸倉を掴まれたライナーは顔を真っ赤にして苦しそうだ。
「だから!知らない。アントンは狡猾な奴だ。俺が失敗した時の為に別に手を打ったのだろう」
どうやら共犯者?がいるみたいで、お互い存在を知らないようだ。ライナーの視線や言動からは探れそうにない。
何か見落としているかもしれないから一度情報を整理しよう。
今回のヴェルディア一行は・・・
殿下、側近が5名(内2名が陛下の指示で前乗りしている密偵犯)とリリアン様と侍女。それに騎士が8名。その中で怪しい動きをした人居たっけ…
初めは殿下とリリアン様がかなり衝撃的だったけどいい人認定したから除外。
『ゔ…ん…ん?』
そういえばあの人の行動は意味が分からない。
『あの時なぜ私に近寄ったの?もしかして…』
その人物はこの部屋にいる。さりげなくその人物を見ると異常に汗をかいていて心なしか挙動不審だ。その人物を注視していたら、仕切りにある物に触れ気にしている。それは勤務中に気にする物ではない。
『めっけ!』
間違いないと思うけど鎌をかけてみる。
バルカンさんの後ろにいる一番若い騎士の前に行きこう言ってみた。
「騎士様の剣に付いている組紐は変わったデザインで素敵ですね。私趣味でブレスレットや組紐をとか編むので参考に見せてもらえませんか?」
「へ?いや…これは婚約者からもらった物で…」
「だからグリフの森でもあんなに気になさっていたのですね」
私の意図に気付いたバルカンさんが騎士に組紐を私に見せる様に命じた。観念したように騎士さんは組紐を剣の鞘から外して私に渡した。
『!』
手に取って直ぐに分かった。組紐の中に硬い筒状の物がはいっている。揺らすと”ちゃぽんちゃぽん”と液体独特な音がする。言質を取る為にワザと
「あれ?組紐の中に何か入っているわ。婚約者様が何か騎士様を想い何か入れたのかしら?」
顔を青くした騎士さんは観念して話し出した。
「宰相のアントン様から預かった組紐です。ライナー殿が乙女の拉致に成功したらライナー殿に渡すように言われました。それ以外にも指示を受け組紐の中の睡眠薬を乙女が無防備な時にかけるように言われました。乙女が眠ったらそれ以降はライナー殿が対応してくれると聞いています」
騎士が加担していた事に怒りが爆発したバルカンさんが、若い騎士さんを殴り騎士さんは吹っ飛んだ。
「何故騎士ともあろう者がこんな事に加担した!」
若い騎士は床に這いつくばりか細い声で話し出した。彼は長年恋焦がれていた女性とやっと婚約出来た。しかし彼女は地位のある男性を好み婚約中に手柄をたて陞爵しないと婚約破棄すると言われ焦る。そう彼の爵位は男爵。せめて子爵になれば破棄されないと考えていた時に、宰相のアントンから今回の任務を打診され受けた。
成功すれば世継ぎのいない伯爵家との養子縁組を約束してくれたそうだ。爵位を餌にした様だ。
男の動機を聞いている間に別の騎士さんが組紐から薬は取り出された。その薬をみて男性陣は驚愕し言葉を失くす。
「騎士様の言ったとおり睡眠薬ですか⁈」
この時この薬を知らない私は睡眠薬だと思ってあまり深く考えてなかった。すると開き直ったライナーは笑いながらこう言った
「乙女よ。それはこの世界で禁止されている強力な媚薬だ。この媚薬で殿下と乙女をまぐわせ既成事実をつくる事が俺の任務。乙女はテクルスが召喚した女だから、媚薬が効く保証がなく一番強い薬をアントンが用意した。これなら初めての乙女でもデカイ殿下も余裕で受け入れれるさ。この媚薬は女性が飲めば子を孕むまで効果は切れない。発情した雌のよう…」
「黙れ‼︎」
部屋にミハイルさんの怒号が響き、次の瞬間ミハイルさんは抜刀しライナーに斬りかかる。
“カッ‼︎”
ジャン王太子がライナーを庇いミハイルさんの剣を受け止めた。激昂したミハイルさんはいつもと違い怖く、殺気立ち凄い力で剣を振り下ろしている。ミハイルさんが片腕に対して殿下は両手で受け止めている。体格は殿下の方が大きいのに…
怖くて震えが止まらない。『やめて!』と言いたいのに声が出ない!
「殿下俺を庇うな!どうせ死罪は免れない。それならここで切られた方ががいい!」
「うるさいライナー黙っていろ! ミハイル殿…其方の怒りは分かる。俺も愛する者がいてその女性をあの様な扱いをされれば激昂する。
だか!この男はヴェルディアを腐らせた我が父を王の座から引きずり下ろす為に必要な証言者だ!
必ず俺が王になりヴェルディアを再建し、必ず乙女拉致を企てた者を粛清すると誓う!だがら今は剣を収めてくれ!」
“バン!”
部屋の扉が開きジョシュさんとアレックスさんが入ってきて、ジョシュさんはミハイルさんを止めに入り、アレックスさんは私の元に。
アレックスさんは震えている私を抱き上げソファーに座らせ、前に跪き手を握りと気遣った。ミハイルさんを止めて欲しくて必死にアレックスさんの腕にしがみ付き
『やめてさせて』
あれ?声が出ない!もう一度
『やめて!』
アレックスさんは驚いた顔をして私を見ている。直ぐに私を抱きしめて額に口付けだ。そして立ち上がりミハイルさんの元に行き、降りおりした腕掴んでミハイルさんに何か言った。
ミハイルさんが振り返りると体が硬直し冷や汗が背中を伝う。分かっている私の為に怒ってくれた事は、でもミハイルさんが怖い…
ミハイルさんは剣を下ろし、汗だくになった王太子は腕を震わせながら剣を鞘に戻した。
やっと部屋が落ち着き出したと思ったら、何を思ったのかミハイルさんは手に持っていた剣をライナー目掛けて投げた。
「「「「「!」」」」」
突然のミハイルさんの行動に部屋にいた者は言葉を失う。剣はライナーの首横数センチの壁に突き刺さる。そして側近ライナーは失神しその場に倒れた。
私に駆け寄るミハイルさん。頭では分かっているが、殺気立ったミハイルさんが脳裏に浮かび肢体が強ばりミハイルさんの手を避けてしまった。
「ハル?」
『ごめんなさい。あれ?』
周りのみんなが固まっているが、私が一番驚いている。何度もチャレンジするが声がでない。どうしていいのか分からず只涙ばかり出てくる。
ミハイルさんは私の前で呆然としているが、気遣える余裕が今の私にはない。
「ミハイル殿。恐らく春香嬢はショックが大きいのでしょう。今は少し距離を置くべきです。母を呼び春香嬢を見てもらいますからご安心さい」
アレックスさんは私を抱き上げそのまま部屋から出て行った。
こうして私は拉致・強姦未遂が精神負担になり失語症になってしまった。
「春香ちゃん無茶はやめてくれ!寿命が縮むよ」
「ごめんなさい…」
ジャン王太子は側近の尋問の為に足早に屋敷入って行った。ミハイルさんが走って来てジョシュさんに私の護るように伝え、頬に口付けし侯爵様の元に行ってしまった。
ジョシュさんに付き添われ部屋に戻り、侍女さんに手伝ってもらい湯浴みをし着替えた。
ジョシュさんとお茶をいただいて雑談をしていたら、ミハイルさんが部屋に来る。
「ハル…王太子が側近の尋問と証拠を探しているが難航している。王太子がハルに協力を求めているが断っていいよ…いや断れ。嫌な予感がする。これはヴェルディアの問題だ。我らが関与する必要はない」
やっぱり王からの指示書が見つからないか…ヴェルディアに置いて来たとは考えにくい。自分を守る切札になるからきっと持ち歩いているはず。こんな時推理モノのアニメならどんなトリックをつかっていたっけ⁈
ミハイルさんは隣に座り抱きしめてくる。ミハイルさんは不安な様子。でもヴェルディアの為にもう一肌ぬぎましょうか!ジャン王太子に要請に応える事にし、ミハイルさんに付き添われ王太子の元に向かう。
ライナーの尋問している部屋へ移動中。右横を歩くミハイルさんは不機嫌だ。どうやら私がジャン王太子の協力的なのが気に食わないらしい。
確かに求婚されたがそこには恋愛感情はない。全てヴェルディアの為だけどミハイルさんに王太子の許し無く詳細は話せない。
繋いだ右手をぎゅっとして見上げたら、アレックスさんのレベル程ではないが眉間に皺が…
笑顔のミハイルさんを見たくて微笑んだら微笑み返してくれた。
恋人繋ぎをして機嫌良くミハイルさんと歩いていたら尋問している部屋に着く。部屋に入ると拘束されたライナーの他に側近の男性が数名拘束されている。部屋には他にジャン王太子とバルカンさんはじめヴェルディアの騎士が5名、侯爵様と王家騎士団員が数名いて部屋の空気が重い。これだけ男性が居たら男臭くなりそうだが案外臭くない事にホッとする。
部屋を見渡すとテーブルの上にライナーの物だろうか?大きなトランクとトランクから出した荷物が並んでいる。
「春香嬢。済まない。ライナーはコールマン領の事前調査に来た事は認めたがそれ以上は否定している。話していた証拠らしき物も見つからなく難航している。何か気付く事はないだろうか⁈」
おかしい。絶対証拠を持っている筈だ。でも王太子とバルカンさんが調べても荷物に指示書は無い。ライナーのトランクをぼんやり見ていて違和感を覚える。かなり年期のはいったトランクなのに中布が新しい。汚れたとかで中布を張り替えたのだろうか…張り替える?もしかして…
「殿下荷物を見せて頂いたいいですか?」
了解をもらいトランクの中布に手をかけてライナーさんの顔をみたら一瞬表情を変えた。
『やっぱり…』
トランクの中布を手の平で満遍なくさわり確認する。すると何かある!薄い封筒?らしきもの…
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バルカンさんから小さいナイフを貸してもらいトランクの中布の四方にナイフを入れて無理やり布を剥ぎ取った。後ろでライナーが何か文句を言っているが、弁償は王太子にしてもらって下さい。
すると左右のトランクの中布の中に手紙が左右に1通ずつ入っていた。
「この印璽は…陛下の物だ。もう一通は宰相のアントン」
さっきまで声を荒げて文句を言っていたライナーは青い顔をして黙り込んでしまった。
殿下は震える手で陛下の手紙を読んで表情を失くす。殿下はバルカンさんに手紙を渡し、殿下に許可をもらったバルカンさんも手紙を読み青い顔をしている。
次に殿下は次に宰相の手紙を読み、顔を真っ赤にして震えだした。そうしてライナーの胸倉を掴み怒気を含んだ声で問いただす。
「ライナー!アントンから預かった薬はどこにある!」
「俺は持っていない。宰相が安全の為に他の誰かに預けていると言っていた。乙女を拉致が成功したらその者から受け取り殿下と乙女に盛るつもりだった」
「薬を持つ者の名を言え!」
大柄な殿下に胸倉を掴まれたライナーは顔を真っ赤にして苦しそうだ。
「だから!知らない。アントンは狡猾な奴だ。俺が失敗した時の為に別に手を打ったのだろう」
どうやら共犯者?がいるみたいで、お互い存在を知らないようだ。ライナーの視線や言動からは探れそうにない。
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殿下、側近が5名(内2名が陛下の指示で前乗りしている密偵犯)とリリアン様と侍女。それに騎士が8名。その中で怪しい動きをした人居たっけ…
初めは殿下とリリアン様がかなり衝撃的だったけどいい人認定したから除外。
『ゔ…ん…ん?』
そういえばあの人の行動は意味が分からない。
『あの時なぜ私に近寄ったの?もしかして…』
その人物はこの部屋にいる。さりげなくその人物を見ると異常に汗をかいていて心なしか挙動不審だ。その人物を注視していたら、仕切りにある物に触れ気にしている。それは勤務中に気にする物ではない。
『めっけ!』
間違いないと思うけど鎌をかけてみる。
バルカンさんの後ろにいる一番若い騎士の前に行きこう言ってみた。
「騎士様の剣に付いている組紐は変わったデザインで素敵ですね。私趣味でブレスレットや組紐をとか編むので参考に見せてもらえませんか?」
「へ?いや…これは婚約者からもらった物で…」
「だからグリフの森でもあんなに気になさっていたのですね」
私の意図に気付いたバルカンさんが騎士に組紐を私に見せる様に命じた。観念したように騎士さんは組紐を剣の鞘から外して私に渡した。
『!』
手に取って直ぐに分かった。組紐の中に硬い筒状の物がはいっている。揺らすと”ちゃぽんちゃぽん”と液体独特な音がする。言質を取る為にワザと
「あれ?組紐の中に何か入っているわ。婚約者様が何か騎士様を想い何か入れたのかしら?」
顔を青くした騎士さんは観念して話し出した。
「宰相のアントン様から預かった組紐です。ライナー殿が乙女の拉致に成功したらライナー殿に渡すように言われました。それ以外にも指示を受け組紐の中の睡眠薬を乙女が無防備な時にかけるように言われました。乙女が眠ったらそれ以降はライナー殿が対応してくれると聞いています」
騎士が加担していた事に怒りが爆発したバルカンさんが、若い騎士さんを殴り騎士さんは吹っ飛んだ。
「何故騎士ともあろう者がこんな事に加担した!」
若い騎士は床に這いつくばりか細い声で話し出した。彼は長年恋焦がれていた女性とやっと婚約出来た。しかし彼女は地位のある男性を好み婚約中に手柄をたて陞爵しないと婚約破棄すると言われ焦る。そう彼の爵位は男爵。せめて子爵になれば破棄されないと考えていた時に、宰相のアントンから今回の任務を打診され受けた。
成功すれば世継ぎのいない伯爵家との養子縁組を約束してくれたそうだ。爵位を餌にした様だ。
男の動機を聞いている間に別の騎士さんが組紐から薬は取り出された。その薬をみて男性陣は驚愕し言葉を失くす。
「騎士様の言ったとおり睡眠薬ですか⁈」
この時この薬を知らない私は睡眠薬だと思ってあまり深く考えてなかった。すると開き直ったライナーは笑いながらこう言った
「乙女よ。それはこの世界で禁止されている強力な媚薬だ。この媚薬で殿下と乙女をまぐわせ既成事実をつくる事が俺の任務。乙女はテクルスが召喚した女だから、媚薬が効く保証がなく一番強い薬をアントンが用意した。これなら初めての乙女でもデカイ殿下も余裕で受け入れれるさ。この媚薬は女性が飲めば子を孕むまで効果は切れない。発情した雌のよう…」
「黙れ‼︎」
部屋にミハイルさんの怒号が響き、次の瞬間ミハイルさんは抜刀しライナーに斬りかかる。
“カッ‼︎”
ジャン王太子がライナーを庇いミハイルさんの剣を受け止めた。激昂したミハイルさんはいつもと違い怖く、殺気立ち凄い力で剣を振り下ろしている。ミハイルさんが片腕に対して殿下は両手で受け止めている。体格は殿下の方が大きいのに…
怖くて震えが止まらない。『やめて!』と言いたいのに声が出ない!
「殿下俺を庇うな!どうせ死罪は免れない。それならここで切られた方ががいい!」
「うるさいライナー黙っていろ! ミハイル殿…其方の怒りは分かる。俺も愛する者がいてその女性をあの様な扱いをされれば激昂する。
だか!この男はヴェルディアを腐らせた我が父を王の座から引きずり下ろす為に必要な証言者だ!
必ず俺が王になりヴェルディアを再建し、必ず乙女拉致を企てた者を粛清すると誓う!だがら今は剣を収めてくれ!」
“バン!”
部屋の扉が開きジョシュさんとアレックスさんが入ってきて、ジョシュさんはミハイルさんを止めに入り、アレックスさんは私の元に。
アレックスさんは震えている私を抱き上げソファーに座らせ、前に跪き手を握りと気遣った。ミハイルさんを止めて欲しくて必死にアレックスさんの腕にしがみ付き
『やめてさせて』
あれ?声が出ない!もう一度
『やめて!』
アレックスさんは驚いた顔をして私を見ている。直ぐに私を抱きしめて額に口付けだ。そして立ち上がりミハイルさんの元に行き、降りおりした腕掴んでミハイルさんに何か言った。
ミハイルさんが振り返りると体が硬直し冷や汗が背中を伝う。分かっている私の為に怒ってくれた事は、でもミハイルさんが怖い…
ミハイルさんは剣を下ろし、汗だくになった王太子は腕を震わせながら剣を鞘に戻した。
やっと部屋が落ち着き出したと思ったら、何を思ったのかミハイルさんは手に持っていた剣をライナー目掛けて投げた。
「「「「「!」」」」」
突然のミハイルさんの行動に部屋にいた者は言葉を失う。剣はライナーの首横数センチの壁に突き刺さる。そして側近ライナーは失神しその場に倒れた。
私に駆け寄るミハイルさん。頭では分かっているが、殺気立ったミハイルさんが脳裏に浮かび肢体が強ばりミハイルさんの手を避けてしまった。
「ハル?」
『ごめんなさい。あれ?』
周りのみんなが固まっているが、私が一番驚いている。何度もチャレンジするが声がでない。どうしていいのか分からず只涙ばかり出てくる。
ミハイルさんは私の前で呆然としているが、気遣える余裕が今の私にはない。
「ミハイル殿。恐らく春香嬢はショックが大きいのでしょう。今は少し距離を置くべきです。母を呼び春香嬢を見てもらいますからご安心さい」
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