マジな恋愛はアラフィフから

いろは

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18.ジークヴァルト 〜 前世8 〜

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やっと今晩禁書を読める!今日は一日時間が進まない。やっと日が落ちた!部屋の窓際に座り月を眺めていた。

『あっ!』

外に人影が見えた。迎えが来た。部屋から飛び出して小屋を出た。迎えに来た神官は驚き後退りした。

「お迎えありがとうございます。では行きましょう」
「あっはい」

少しでも早く読みたくて早足になる。すると息を切らし神官が

「すっすみません!もう少しゆっくり…」
「すまん!心はやった」

振り向くと神官は荒い息遣いで額に汗をかいている。謝り神官のペースに合わす。

『やっと教会に着いた』

法王の執務室に着くと聖騎士が扉を開けてくれ入室する。法王はまたデスクに座り禁書を読んでいた。

「アルフレッド殿。ご機嫌よう」
「法王様。今日も読みにきました」
「はい。ではどうぞ」

法王は席を立ち代わってくれた。座り第13回目の儀式記録の頁を開く。法王は静かに退室して行った。

巫女と騎士は前回読んだから…

13回目の儀式は無事終わり褒美として巫女は田舎の親の病気治療と弟の進学費用を願った。騎士は伯爵家の存続だった。騎士のサイモンの伯爵家は隣国との訴訟トラブルを抱えていた。伯爵家領地の農作物を隣国に輸出していたがその年は不作。収入が欲しい伯爵は収穫には早い芋を収穫し出荷した。
その芋は熟さないと毒素が抜けない品種だった。その芋を食べた隣国の民は中毒症が多数出て、隣国から訴えられ破産寸前だった。

「よくある話だ。財政的に逼迫した貴族がやりがちな事だ…」

ここまで読んで特におかしい所は無い。しかし違和感が…以前聞いた話を思い出した。
確か巫女を護る為に巫女を一番深く愛する男が騎士に選ばれる筈。伯爵家嫡男とメイド?初めの方はまだそんな決まりは無かったのか?
そんな疑問を抱いたまま次頁へと読み進める。

「これは!!」

次頁には衝撃の事実が書かれていた。伯爵家嫡男サイモンはケインと同様に不正を働き騎士になり“渡りの扉”をくぐっていた。
一瞬息が止まり頭が真っ白になる。全身から汗が噴き出し身震いが止まらない。時渡りの儀式がフラッシュバックした。

「はぁ!!ゴホゴホっつ!」

一杯息をしたら咳き込み胸が苦しい。ゆっくり呼吸を整え椅子に深く座り自分を落ち着かせた。どのくらい経っただろう。やっと続きを読む気力が出て来て禁書に向き合う。

「この不正はどうやって発覚したんだ…」

読み進めると伯爵家に仕える庭師見習いのエバスが教会に懺悔してことから発覚した。実はエバスが騎士に選ばれ印を受けていた。エバスとルィーゼは将来を約束した恋人で、時渡り儀式が終わったら互いの両親に結婚の許しを得に行く予定をしていた。
ルィーゼが巫女に決まり自室で打ちひしがれていたエバスの元に伯爵が来て騎士の印を見せる様に命令した。意味が分からないエバスは左胸の表れた印を見せると、伯爵は大きな皮袋をエバスに渡す。中には金貨がぎっしり入っていてこう言った。

『伯爵家を救うために協力しなさい。騎士はサイモンがなり褒美として伯爵家を立て直してもらうのだ。お前は生涯騎士である事を隠しその金で親と兄弟を養い、二度と王都に顔を見せるな。約束を破った時は身内の安全は保障しない』と脅した。
実はサイモンは心の病気を患っていて何度も自殺未遂をしていた。伯爵は嫡男の厄介払いと家の存続が一度に出来ると鼻息荒くエバスに詰め寄った。
元々気の弱いエバスは死ぬのも怖いし、なにより身内を危険な目に合わせたくない一心で伯爵の申し出を受け入れた。
こうして伯爵は執事にエバスの印を見ながらサイモンの胸に絵の具で印を書き、サイモンに時渡りに騎士になれば確実に死ねると吹き込みサイモンは了承させた。そして深夜の内にエバスは王都を離れ田舎に帰った。
そして慣例通りに儀式に執り行われ巫女と似ニセ騎士サイモンは渡りに扉をくぐったのだ。

「俺の時と同じだ…」

ずっと動悸が激しく胸が苦しいが読み進める。エバスは何故懺悔に来たのだろう。
儀式が終わり半年たったある日。やせ細り精気の無いエバスが法王の前に現れ懺悔したと願って来た。初めは断った神官だったがあまりにも異様な雰囲気のエバスが気になり枢機卿に相談。枢機卿が話を聞くとになった。するとエバスがこう言った

「毎晩ルィーゼが夢に出て俺を責めるんです。そして許さないと…私はクロノスを裏切り、将来を誓ったルィーゼをも裏切った。全て話しますからこの悪夢から救って下さい!」

そう言ってエバスは左胸の騎士の印を枢機卿に見せた。驚いた枢機卿は直ぐに法王に報告し、エバスは法王の前で懺悔する事になり不正が発覚した。

「嘘は関わった者を不幸にする…」

気が付くと俺は泣いていた。
『涙は尽きたと思っていたがなぁ…』

涙を袖で拭い続きを読む。
結末はこうだ。伯爵家は取り潰しの上、伯爵は自害を命じられ夫人と令嬢は身分はく奪のうえ国外追放となった。共犯となったエバスは…罰せられる前に気がふれ自害してしまった。
これをきっかけに巫女と騎士に対する褒美が与えられる事は秘匿とされることになった。褒美欲しさに騎士になる者が出ないようにだ。また自己申告だった騎士に関しては神官や聖騎士が立ち会い印が表れるのを確認する事が決められ今日まで続いている。
この時の法王は責任を感じ儀式の改革後に法王を退いた。
ここまで読んだが渡りの扉をくぐる方法がまだ出てこない。不安に感じながらまだ続く記録を読み進む。
時渡りの儀式後、新法王の元に聖騎士から緊急の連絡が入る。教会敷地内の巡回に出ていた聖騎士が渡りの扉が少し開いている事に気付く。
報告を受けて法王と枢機卿が扉に向かい確認すると確かにこぶし大一つ分開いて居る。儀式以外は固く閉ざされていた開かない扉が…
扉の間からは芳しい花の香りがした。困惑した教会は色々検討したが理由が分からず静観する事しか出来ず、翌日には扉はまた閉まった。
それ以降何をしても扉は開かなかった。
これについては歴代の法王や学者は研究考察をしたが明確な答えは出ていない。その中でも一番有力な見解は…
“異界に渡ったにせ騎士は巫女の傍に行けず、巫女を護る者がいなくなり本当の騎士を呼ぶために開いたのではないか”というものだった。

「本当の騎士…俺だ!」

唖然としていたら扉を誰かが叩く。窓の外を見たがまだ夜は明けそうにないのに誰だろう…返事をすると法王が入って来た。

「13回目の記録は読みましたか?」
「はい…法王様これは…」
「今貴方が思っている通りです。巫女エミリアと渡ったのは偽物の騎士です。恐らく巫女エミリアと離れて転生している筈。そして巫女エミリアの身が危うくなった時に渡りの扉が開く可能性があるという事です。しかしそれは何時か分かりません。もしかしたら60年後かもしれないし、明日かもしれません。それは誰にも分かりません」
「それでも可能性がゼロではないと…」
「その通りです。貴方は生涯扉が開くのを待ちますか?それとも新しい人生を送りますか?」

立上り深々と法王に礼をして

「俺にはエミリア以外考えられないです。生涯をかけても渡りの扉から離れません」
「分かりました。私が就任しこの禁書を読んでから渡りの扉は絶えず監視を着けています。少しでも何か変化があれば知らせる様にしている。教会敷地内なら聞こえる笛を鳴りますから敷地からは出ないで下さい」
「はい。ご配慮いただきありがとうございます」
「もうすぐ夜が明けます。また私が居るときに使いを出しましょう」

お礼を言い聖騎士に付き添われ小屋に戻った。小屋のベッドに寝転がると自然と涙が出て来た。

「生きる目的が出来た…もう、自害したいなんて言わない。エミリアに会うまで諦めない」

翌日からは体を鍛え世話になるばかりでは申し訳なくて、教会内で人目に付かない作業を手伝い日々を過ごす。
そんな日々が続いて半年経った頃になんの前触れも無くエリアス殿下がふらっとやって来た。俺の顔を見て安堵しているのが分かる。そして少し申し訳なさそうにレジーナ嬢との成婚が決まったと知らせてくれ、殿下に祝いの言葉を述べる。

「殿下。俺は生きる目的を見つけたので大丈夫です。それに殿下を憎んでいませんし、反対に騎士に慣れなくて申し訳なく思っています。だから俺に罪悪感を持たないで下さい。殿下の幸せを純粋に願っていますから」
「アルフ…ありがとう。少し会わない間に強くなったな…見つけた“生きる目的”とは何なのだ?」
「親友の殿下にも言えません。強がりでもなんでもなくて…俺は大丈夫です」

こうしてそれ以降殿下は親友として時折ふらっと前触れも無く顔を見に来てくれ変化の無い日々に楽しみを齎してくれた。

そんな日々を過ごしてあっという間2年経った。あの後2回行われた時渡りの儀式では巫女は選ばれなかった。13回目の儀式時は2年経った時に渡りの扉は開いた。
密かに開くかもと期待し過ごしたが、結局扉は開く事は無かった。

5年目の年初め…1人部屋でぼんやり天井を見ていたら誰か来た。今日は法王に所にも行く予定も無いのにこんな夜更けに誰だ⁈
扉を開けると…

「イーサン?」
「アルフ!本当に生きていたんだな。再会できて嬉しいよ」

そこには訓練所で共に過ごしたイーサンが立っていた。イーサンはあの時から背が伸び体もひと回り以上大きくなっていて、いっちょ前に顎髭を貯えていて聖騎士の騎士服を着ている。お互い言葉も無く抱き合う。懐かしい顔に歓喜あまり泣きそうになる。

「久々の抱擁がやろうだとあまりいいもんじゃないな」
「それはこっちのセリフだ。抱き合うなら妻がいいに決まっている」
「お前、結婚したのか⁈」
「あぁ…昔話していた例の女性が今の妻だ。子も産まれた」

イーサンの話聞き時の流れを感じる。イーサンは訓練所を首席で出て王宮よりエリアス殿下の騎士を打診されてそうだ。しかし当初からの希望の聖騎士を志願しクロノスに仕える騎士になった。それから真面目に勤め法王の護衛騎士にまでなっていた。法王は俺と仲が良かったのを知り、事情は詳しく話していないが、生きている事を伝えてくれ会う事を許してくれたのだ。
イーサンは酒を持って来ていて二人で飲み明かした。それから時折イーサンと殿下が訪問してくれる。
とは言え、いつ開くか分からない扉を待ち続けるのは精神的に辛い。挫けそうになり精神的に不安定になる事もしばしばあった。そんな時は法王に願い、禁書を読み気持ちを持ち直す事を繰り返した。

そして6年目の年初めを迎え教会は時渡りの儀式の準備で忙しい。俺も人目に付かないところで手伝う。
そして今年も巫女は選ばれなかった。今マルラン王国はエリアス殿下が正式に王弟となり、騎士団をまとめて国は平和だ。王国の誰もが巫女が選ばれるなんて思っていない。
そして儀式も終わり教会が落ち着き俺も日常に戻ったある日。前日巻割をして疲れてぐっすり熟睡していた明け方。聞いたことも無い笛の音が聞こえた。驚き飛び起きる。

「今の…」聞き違いかと耳を澄ますと
「!!」

やはり笛の音が深夜の教会に響いている。直ぐに靴を履き扉に手をかけた時、机が目に入る。一番上の引出しに世話になった方々への手紙を書いてしまってあった。
渡の扉かいつ開くか分からない。もしかしたら別れを言う間が無いかもしれないと思い、書き溜めてあったのだ。
それを机の上に出して部屋から飛び出して渡の扉に急ぐ。空は少しづつ明るくなり星が消えていく。
渡の扉前に最近世話役になったトムが一生懸命笛を吹いている。

「トム!」
「アルフレッド様!扉から音がして見たら、少し開いているんです!」

トムが照らした渡の扉を見るとほんの少し空いている。扉に近づくと…

「あぁぁ…エミリア」

彼女が着けていた香水の香りがする。もう我慢ができず扉に手を掛けた

「アルフレッド様!直ぐに法王様と聖騎士が参りますからお待ち下さい!」
「トム。今までありがとう。俺の部屋の机に世話になった人達への手紙を置いて来たから渡してくれ」
「しかし!」
「もう6年待った!これを逃したら彼女の元に行けないんだ!」

思いっきり扉を開けそこへ飛び込んだ

「アルフ!今度は彼女エミリアを離すなよ…」
「イーサン?」

今イーサンの声が聞こえた気がした…

渡の扉の中は真っ暗で温かく窮屈だ。道の先に光が見える。あの先にエミリアがいるのか⁈
後少しの所で気を失ってしまった。
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