マジな恋愛はアラフィフから

いろは

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38. 怪しい

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盛大な勘違いをしている田沢さん。何度も違うと言っているが聞いてくれない。
そのやりとりを聞いていた愛華が

「咲に言い寄ってるのはジークさんだけじゃ無いからね。今咲はモテモテなの。だから田沢さんが入る隙はないよ」
「いえ!俺結構しつこいので諦めません」
「とりあえず食事も終わったので帰ります」

席を立つと愛華も立ち上がり扉に向かうと
田沢さんが駆け寄り手を取られ

「送りますよ」
「愛華の車で来ているので結構です」
「俺にチャンスを下さい。必ず惚れさせますから」
「凄い自信家ですね」

手を振り解き伝票を探すが無い。レジで言うパターンか?
愛華も冷ややかな視線を田沢さんに送っている。そして愛華が私の手を引っ張り個室を出てレジに向かい精算を頼むとレジの男性が

「オーナーから特別なお客さまなので…」

追いついた田沢さんが

「私が無理にご案内したので本日はサービスさせていただきます」
「えっ!マジで!ご馳走様でした」

あれだけ冷ややかに見ていたのに、奢りとなった瞬間に態度が変わる愛華。貴女らしいけどね…

「そういう訳には…」
「そう思われるなら送らせて下さい」
「ご馳走様でした!」

これ以上渋るとマジ家まで送られる事になりそうだ。田沢さんに最敬礼し愛華の手を取り店を出た。車は店から一番遠くに停めているから足早に車に向かう。

「梶井ちゃん?」
「へっ?社長?」

振り向くと社長のケイコさんが手を振っている。思わぬ人と会い声が裏返った。
ケイコさんは息子さんと来ているようだ。久しぶりに会った息子さんは背も高くなり青年となり逞しくなっていた。

『息子もかわいいなぁ…もし息子がいたら賢斗に似ていたのかしら⁈』

そんな事を考えながら立ち話をして直ぐに別れた。
車に乗り込み別のカフェに移動している道中にジークさんに電話したら…直ぐ切れ即かかってきた。

「すみません。先程は出れなくて」
「いえ。メールで話せる状況か確認せずかけた私が悪いんです」
「何かありましたか?」
「あっ大した事では…先程ランディが戻りました。中立だったランディが私の味方をしてくれまして」

どうらや帰国したランディさんがジークさんに加勢したらしく、状況か好転しているようだ。良かったと安心しつつ、まだ自身はまだ何も考えていなくて焦ってきた。
そんな状況なのに新たな刺客が…思わず溜息をつくとジークさんが

「何かありましたか?」
「いえ…少し忙しかったので疲れてて…」
「そうですか…早くお休み下さいね」
「はい。ありがとうございます」

こうして電話を終えるといつものカフェに着き入店する。精神的疲れがMAXな私は珍しく生クリームたっぷりのケーキを頼んだ。
目の前に座った愛華は只管スマホを触り何かを調べている。
ドラマ展開の出来事があると興奮し楽しむ愛華にしては珍しく静かだ。何か不気味…

愛華は楽天家で好奇心旺盛だが、友達の中でも一番平穏な生活をしている。会社を経営し温厚な旦那さんに旦那さんに似て温厚で真面目な子供達。絵に描いたよう幸せな家庭だ。
だからか私や他の友達の話が刺激的な様で積極的に話に入ってくるのに今回は様子が違う。ジークさんや古川さんの時はあんなに楽しそうだったのに、今回の田沢さんに対しては対応が違う様な…

「愛華?」
「私の第六感が田沢さんは怪しいと告げてるの。今さ田沢さんリサーチしたけど怪しい内容はヒットしなくてさ。絶対何かあるよ」
「怖い事言わないで!」

愛華の調べた限りでは名刺の肩書きは本当で詐欺では無さそうで安心する。
それにしてもこんな年上を好きになるなんて思惑があるとしか思えない。社長のケイコさんみたいに財や地位があれば分かるけど…
愛華もスマホを置いて他愛無い話を始め、ようやくホッとできた。この後夕方までのんびりして愛華に送ってもらい家に着いた。

もう週末は何も考えず心の安定を図る。
そして何も無くのんびり過ごし月曜の朝。バスの時間に朝から悩む。いつもの時間と2本早いバス。どちらも避けた方が良さそうだ。悩んだ末にいつもより1本早いバスにする。
家を出て大通りに出て角からバス停が見える。ふと立ち止まり見ると田沢さんがいる。

『まさかもう1本前からいるの?』

そこで足を止めて様子を窺う。もしかしたら1本早いバスなのかもしれない。その線を期待しつつバスが来るのを待っていたら…

『乗らないの⁈』

バスが到着しても辺りを見渡すだけで乗車しない田沢さん。その瞬間背中に冷たいものがつたう。

『待ち伏せ?』

困っていると例のOLが来て話しかけ出した。彼女は田沢さんの横をキープし只管話しかけている。どうしよう…ギリギリに駆け込みドア付近でやり過ごせるかなぁ…
いつも月曜は学生が多く混んでいるはず、上手くいけそうな気がするし、今から電車に変更したら確実に間に合わない。一か八かギリギリを狙う事にした。
田沢さんはOLの相手をしつつ辺りを見渡している。時間を確認すると到着時間だ。遠くにバスが見えてきた。タイミングが難しい…

『あっ!』

いつも同じ時間のサラリーマンが私の横を走って行った。彼はいつもギリギリにバス駆け込む常習者だ。彼について行けばギリギリには乗れるはずだ!久しぶりに全力疾走し息が苦しい!
案の定ギリギリに乗れドア付近に陣取れた。バスの前方に田沢さんとOLさんがいて、混んでいる事を口実にOLさんは田沢さんに密着している。混んでいて田沢さんの位置から私は見えない筈だ。ほっと胸を撫で下ろす。
しかし安心したのも束の間…明日からどうしようか悩む。

『暫く電車しか無いか…』

電車は歩く・混む・時間かかるのトリプルパンチで週明けから気分テンションはだだ下がりだ。

降りるバス停に着いて後ろから降りる。IC定期券の人は後ろの乗車口からも降りれるので助かった。降りるとバスを見ないように足早に会社に向かった。
出社していつもの通りコーヒーを飲みデスクで一息吐くと社長が出社して来た。

『社長がこの時間は珍しいなぁ…』

ぼんやりしていたら社長に呼ばれる。

「失礼します」
「あっ座って待ってて。直ぐ済むから」
「はい。失礼します」

ソファーに座り待つ。何の話か胸騒ぎしている。ドキドキしながら待っていると用を済ました社長が向かい座り

「土曜に会ったレストランのオーナー田沢さんと知り合いだったのね」
「へ?」
「あの後入店し田沢さんに聞いたわ」
「出勤時のバスが同じで顔見知りくらいですが…何か?」
「前々から田沢様から業務依頼があり交渉中だったのよ」
「はぁ?」

また思わぬ所で繋がっていて驚愕する。
土曜にお店で会ったのもケイコさんが契約前にお店の感じを知っておきたくて行ったそうだ。猛烈に嫌な予感がして来た。先手必勝だ!

「私担当は…」
「大丈夫よ。もし契約しても梶井ちゃんは担当にしないから。田沢様は貴女を指名したけどね。また貴女が絡まれてる気がしてるんだけど私の感は合ってる?」

大きく頷きケイコさんの感の鋭さに驚く。

「彼は優秀な経営者だけど仕事に私情を挟むのは違うわ。私はそんなやろうに大切な部下はつけれないわ。交渉や打合せは私がするからデータ処理は梶井ちゃんに任せるわ」
「社長…」

頼りになる上司に感動していたら

「梶井ちゃん。一人で抱え込まず周りに頼りなよ!皆んな梶井ちゃんの味方よ」
「ありがとうございます」

仕事面は社長が盾になってくれたから後は朝の出勤手段だなぁ…やっぱり電車か…
何度目かな溜息を吐き遠い目をする。前みたいなお気軽のお一人様の日々は戻ってくるのか心配になって来た。
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