女神の箱庭は私が救う【改編版】

いろは

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96.出会い シリウスside

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長い廊下を急ぐ。なんだろう…陛下直々の呼び出しとは嫌な予感がする。つい先日も呼ばれ陛下の執務室に赴けば絵姿を渡されて縁談を勧められた。
この年になれば年頃の令嬢は10も下になり、こんな年寄りおじさんでは令嬢が可哀想でずっと断っている。それに今まで心から望む縁は無かった。また縁談だろうか…

俺はシリウス・サザライス。サザライス公爵家嫡男だ。モーブル王国聖騎士隊副団長を拝命し王太子殿下の護衛を担っている。
モーブルの男は平民・貴族関係なく12歳で騎士訓練所に入り3年騎士道精神を学ぶ。退所後平民は実力があれば騎士に就き、それ以外は家業や職に就く。そして貴族の令息は殆どがアカデミーに進学する。
俺はアカデミーで学んだ地学に興味を持ち、王城お抱えの研究所に進む事を望んでいた。
しかし修士課程終了前の聖騎士試験に受かってしまい学者の道は断たれた。
聖騎士は王族の護衛を担う騎士で貴族から選ばれ、試験はアカデミー在籍者は必ず受けなければならない。
昨年には副団長を任され、いずれは宰相の補佐である軍部大臣を任される。それにより公爵家は弟が継ぐ事が決まった。
俺は後目を引継ぎアカデミーて学んだ地学を生かし、妖精の手を借り地質改良を行い品質の良い農作を作る事望んでいたのだ。だがその道も断たれた。

俺にはリリスの加護は無いらしい。今まで望みが叶った事がない。そして軍部大臣になるには対外的に妻を娶った方がいいらしく、半年前から縁談が増えていった。紹介される令嬢は皆美しく家柄も良い令嬢達だ。数名とお会いしたが素晴らしい女性達だった。
しかし心が欲する女性はいなかった。もう俺は生涯独身でいいと思っている。

重い足を進め陛下の執務室に着く。
入室許可を得て入ると幼馴染のグリード王弟殿下と宰相のエリアス様がいた。このメンバーなら縁談で無いと胸を撫で下ろす。

「女神の台座に召喚の扉が出現した。7日後にこの箱庭に異世界人が召喚される。今回は乙女だ。我がモーブルの乙女の相手はグリードしかおらん。シリウスよ。7日後の召喚時にグリードと乙女の護衛の任を命ず」
「拝命いたしました」

俺の記憶が正しければ300年ぶりの召喚で、確か前はレッグロッドに召喚されていた。
生きている間に召喚の儀式をこの目で見れると思わなかった。
『女神の乙女』異世界から来る女性。どんな方が来るか興味が湧いてくる。乙女の相手に選ばれたグリードを少し羨ましく思う。

しかし、グリードも可哀想な奴だ。想う女性を得れずその方を想って生涯独身を貫くと話していたのに、他に相手がおらず乙女を娶らねばならない。
どうやらグリードも自ら望んだものに縁が無いようだ…

それから数日はあっという間に過ぎ召喚の日になった。台座前には各国の伴侶候補が召喚が始まるのを待っている。
俺は櫓から遠見鏡で台座の我が国に黄色の扉を見ていたが

『消えた…』

我が国の扉が消えた。つまりモーブルは乙女に選ばれなかったのだ。櫓で待機していた者から落胆の声が上がる。そして台座前のグリードも肩を落としていた。

ふとレッグロッドのオーランド殿下が目に入ると、オーランド殿下は扉に触れようとし、レッグロッドの櫓で誰か叫んだ瞬間扉は消えた。
台座に響めきが起きる中アルディアの扉はまだ降下を続けている。
降下する扉を見ていたらアルディアの扉から誰かが飛び出た! 次の瞬間台座に芳しい香りが広がる。
遠見鏡を最大にし何が有ったのかアルディアのヒューイ殿下に照準を合わす。ヒューイ殿下の腕に艶やかな黒髪に真珠様な肌、黒曜石の様に輝いた瞳の女性がいた。箱庭の住人には無い彫りの浅い顔立ちをし愛らしくい女性だ。

なんだ!胸が苦しい…乙女から目が離せない。
近くに行き彼女の瞳に映りたいと心が叫んでいる。こんな感覚は初めてだ。
グリードが戻って来るまで俺は動けずにいた。

召喚の日からふとした時に乙女の姿が脳裏に浮かび、あの芳しい香りを思い出す。今まで公爵家嫡男である俺は令嬢達に好意を寄せられる事が多かったが、女性にここまで心が震えたのは初めてだ。
またあの方に会いたい…

召喚の日から数日経ったある日グリードが私の執務室来た。人払いをし話し始め、その話に心が震えた!
何と女神の乙女はアルディアだけで無くリリスの箱庭全てを救済してくれ、更に後世のために各国の男性を夫に迎えるらしい。
モーブルはグリードが候補だ。俺は目の前のグリードに羨望の念を抱く。グリードは国の為、あの方の幸せの為に乙女を娶るんだ。グリードも哀しい奴だ…

その後何度か乙女の話を耳にし、事件に巻き込まれたと聞き青ざめた。乙女の誘拐だとアルディアの騎士は何をしているのだ!叶うなら身分も職も捨てて俺が乙女の側でお守りしたい…

乙女への想いを募らせ何も無い日々を過ごしていた。訓練後に疲れ切った体を引きずり執務室に着くとグリードが来ていた。

「3日後にアルディアで行われる舞踏会の為にアルディアに向かう。お前も同行しろ」

「俺は王太子殿下の護衛がある。俺が着く任務では無い」
「これは王命だ」

王命とあらば拒否権はない。すると楽しそうなグリードは

「乙女に会えるなぁ」
「あ…そうだなぁ」
「嬉しく無いのか?」

意味深な言い方をするグリードにイラつくが、当たっているだけに言い返せない、こういう時のグリードは意地悪そうな顔をする。そうこの表情は何が企んでいる時の顔だ。アルディアでやらかさなければいいか…

あっという間にアルディアに向かう日を迎え、モーブル国境の村のキラスの宿で1泊する。王都に向かう途中にキラスの森が抜けるが、この森は夜行性の野犬や狼が多く、モーブル王都から早朝に出てもキラスも森に着くのは日が暮れる時間になる為1泊する。
宿主のダルクは男だが繊細なところがあり宿の料理も部屋も細やかな配慮が施され快適だ。
モーブル王城を出発し日が暮れる少し前にダルクの宿に着いた。宿の前でダルクと妹君のルカ嬢が言い争いをしている。
グリードが仲裁にはいり事情を聞いている。どうやらアルディアの祭りでルカ嬢と間違えて貴族の令嬢を連れ帰ったようだ。
何を間違えたら妹君と他の令嬢を間違えるのだ…

ダルク曰くアーサー殿下が祭りの広場に現れた事で広場がパニックになり、ルカ嬢を探していたダルクがルカ嬢と似た格好をした令嬢を妹君と間違えたようだ。祭りに王子が現れるとかありえないだろ!大丈夫かアルディアは…乙女が心配になって来た。

グリードが貴族令嬢とある程度面識がある。令嬢を確認しグリードがアルディアと交渉する事になった。幌馬車の荷台にいる令嬢を確認する事になり幌馬車に近づく

「?」

なんだろうこの感覚。女神の台座で感じた感覚に似ている。あの芳しい香りまで感じて来た…どうやら俺は重症らしい。
グリードが幌馬車の入口の布を開け放つとあの乙女の香りが漂い身震いする。
女性の顔を見なくても分かる私が求めてやまない乙女が居るのが分かる。
目の前が鮮やかな色を放ちグリードが乙女を抱えて馬車から降りて来た。熱望していた乙女の黒曜石の様な瞳に俺が映される。
乙女と再会を果たし彼女への想いを自覚し、俺の全てが色づいていくのを感じていた。
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