女神の箱庭は私が救う【改編版】

いろは

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108.眼病

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控室が落ち着きフィラはリリスの元に行ってしまった。フィラは「また後処理が…」と疲れた顔をしていた。全部落ち着いたらいっぱいぎゅうしてあげよう。

暫くするとキース様の指示しで大量の騎士が控え室にやって来た。薬を持っていた侍女は騎士に牢に連行され、ビビアン王女は第1騎士団の女騎士さんが監視する事になった。暫くするとグリード殿下とシリウスさんが控室に来た。

視点が合わず呆然とソファーに座るビビアン王女。グリード王弟殿下が目の前に来ても反応がない。
大丈夫かぁ…精神壊れたりとかしてない⁈

『多恵。大丈夫よ。恐らく中和剤が効いて来てるのよ。あの侍女はビビアン王女と多恵に薬を盛るつもりだったのでしょう』
『ありがとうボリス』
『また多恵に会えて嬉しいわ。てんを可愛がってくれているのね。あの子の成長を感じるわ』

やっぱりボリスはお母さんです。

「ビー!大丈夫か⁈私が分かるか!」

グリード殿下が必死にビビアン王女に話しかけている。ボリスと話していてすっかり王女の事を忘れていた。

「安心してください殿下。フィラがくれた中和剤が効いているのだと思います。暫くすると戻るそうですよ」

グリード殿下、シリウスさんとウィルソンさんは跪き深々と頭を下げられる。

「多恵様に感謝を…やっとビーを元に戻してあげれる」

グリード殿下の表情が穏やかになり、殿下の美しい瞳から涙が零れ落ちた。


会場ではキース様がエルバスに詰め寄り、エルバスが大暴れしたらしく舞踏会は中止となった。会場は無茶苦茶だったらしい。陛下!絶対迷惑料バスグルに請求しましょう!
デュークさんによって拘束されたエルバスから侍女が持っていた小瓶と同じものが見つかり、第2騎士団によって騎士棟の牢屋に連行された。後でナタリー様に聞いた話だと美丈夫のエルバスはアルディアの女性の目を釘付けにしていたが、捕まった時の下衆っぷりに令嬢達が引いていたらしい。
えっと…少し前に同じような人が居たような気がするのは気のせいか?

こうして波乱の舞踏会は終わった。
私がダンスすると何かが起きる気がする。これを理由にこれからダンスを拒否できないかなぁ…

7刻半になりやっと城内は落ち着いてきた。
ビビアン王女の侍女とエルバスは騎士棟地下の牢屋に収監され、ビビアン王女は貴賓室で監視されている。その他のバスグルの家臣や貴族は数名毎に騎士の監視下部屋に待機する事になった。私は一旦部屋に戻り湯浴みし、着替え陛下の執務室に向かっています。

第1、2騎士団はバスグルの監視で忙しく、第3騎士団の騎士さんが護衛に付いてくれた。

「キース様…あまりくっつくと歩き辛いです」
「歩き辛いならお抱きしましょうか⁉︎」
「えっと…このままで」

部屋を出た所でキース様に会い一緒に執務室に向かう事に。キース様も夜会服からグレーの三つ揃スーツにお着替え。男性の三つ揃いのスーツはめっちゃ好きで私の萌えポイントです。スマホが今ここに有れば絶対撮っているし、待ち受けにしたいくらいだ。
キース様も少し窶れている。ビビアン王女が来てからお休み無しだもんなぁ…ふと目が合う。

「どうかされましたか?」
「いえ…お疲れ様だなぁって思って」
「貴女が口付けをくれたら何日でも徹夜できますよ」
「不健康になるなら(キスは)もうしません」
「!」
「へへ♪」

いつもドキドキさせられるから、ちっちゃい仕返しをしてやった。
やっと執務室に着くと皆さんお揃いだ。陛下が立ち上がり私の前に来て、当たり前の様に私の手を取り陛下の横に座らされた。その様子にキース様が唖然としている。そうだった陛下は父(仮)だった。
キース様も着席しイザーク様がグリード殿下に今回騒動の説明を求める。
グリード殿下は何か吹っ切れた表情をしていて、落ち着いた声で話し出した。

事の始まりはビビアン王女がモーブルに留学し、グリード殿下がビビアン王女の世話役を務めた事からはじまる。グリード殿下はビビアン王女が自分に淡い恋心を向けているのに気づいていた。しかし殿下には想い人がいてビビアン王女とは友人関係を保たれていた。
そんな時モーブルの第一王子(グリード殿下からしたら甥)が目病にかかり、視力が低下して眼鏡をしてもぼんやりしか見えな状態に。医師にはこのままいけば失明だと告げられ王家は絶望する。

モーブル王家総出で治療方法を探していた時に、ビビアン王女からバスグルに秘薬があると聞かされた。主だった産業もないバスグルだか、はるか昔から『目薬の木』と呼ばれる紫の変わった実がなる木があり、その実から作られた目薬はどんな眼病でも治すといわれている。本来なら閉鎖的なバスグルから薬の輸入が難しい。グリード殿下は藁にもすがる思いでビビアン王女に薬を譲って欲しいと願い出た。

その対価として殿下はビビアン王女が困った時は協力を惜しまないと約束をし、ビビアン王女はバスグル王に気付かれない様にグリード殿下に目薬を送り続け、薬のお陰で第一王子の視力は回復。ほぼ眼鏡無しで見える様になる。

そして第一王子の完治後暫くしてビビアン王女から文が届く。どうやら縁談が持ち上がり回避したいとの相談だった。だがグリード殿下は助ける手段がない。何故ならバスグルは閉鎖的で干渉する手段が全く無かった。そこでグリード殿下は王女がバスグルの次期王に選ばれれば、伴侶は自分で選ぶ事が出来ると助言した。何故ならバスグル王の決定は絶対だから。

それ以降ビビアン王女は次期王になるべく精力的に諸外国に渡り知識や技術を取り入れていった。
努力の甲斐があり国も少しずつ豊かになり、国内の貴族から支持を得て次期王に近付いて行った。

しかしベイグリー公国の建国祭に出てから、ビビアン王女の様子がおかしくなりだした。
丁度この頃からエルバスが側近に付いている。
ビビアン王女の側近がどんどん辞めていき、エルバスの配下の者が増え出し、次第に周り者の話を聞かない様になっていった。
グリード殿下も文のやり取りし忠告し続けたが、殿下のは届かなかった。
悩む日々を過ごしていたある日。女神の乙女が召喚された。そして召喚されてからビビアン王女の手紙が増え、その大半が乙女(多恵)との繋ぎを求めるものだった。

「この頃から王女の手紙の内容に乖離が見られ、彼女の身に何か起こっているのを感じておりました。しかし陛下もご存知の通りバスグルに干渉出来る訳もなく、もどかしい日々を送っておりました」

殿下が危惧していた通り王女は事前連絡も無くアルディアに来た。グリード殿下の不安は当たってしまい、殿下は身を呈してビビアン王女を止めようとしていたらしい。

全てを話し終えたグリード殿下は席を立ち、陛下に向かって跪き胸に手を当てて深々と頭を下げて

「アルディア王。この度、アルディアに多大な迷惑をお掛けして陳謝したします。私が個人的に動いた事でモーブル王は一才関与されておられません。お咎めは私1人に課していただきたい。
そして多恵様。貴女に対する非礼をお詫びし、私とビビアン王女を救って頂いた事に感謝致します」

グリード殿下の謝罪を静かに聞きていた陛下は

「グリード殿よ。謝罪はお受けした。直接関与していないとはいえ、多恵殿の身を危険に晒した事は免れない。協議の上何らかの賠償は求む事になる。多恵殿は謝罪を受けられるか⁈」
「はい。お受けします。グリード殿下。明日お話するお時間をいただきたいです」

すると殿下はやっと表情を緩め、優しい眼差しを向け

「いつでも貴女のために時間を作りましょう」

憑き物が取れた様に穏やかなグリード殿下。本来はこんなふうに穏やかな人なんだろうなぁ…
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