来世はきっと。

たなか

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初任務

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国家保安省に入隊して1年が経った。

最初の1年は訓練生としてひたすら訓練する日々だった。

銃火器の扱いにドローンの操作、車両の運転、人の殺し方。

そして実技だけでなく法律関係の座学もあった。

法律の勉強は為になった。うまく使うことができれば難癖つけてテロリスト供をいたぶることができる。

僕は1年間で吸収できるものは可能な限り吸収した。

そして今日は部隊配属初日。
訓練生の中でダントツの成績優秀者として僕は一番成果を上げている部隊への配属となった。

「この隊のリーダーの遠藤だ!
よろしくな!新入り!」

「よろしくお願いします。」

「いいか、我が隊は人命第一で動く!、敵性勢力以外への攻撃はしない。投降した敵は射殺ではなく拘束すること。いいな?」

「了解です。」

いくら優秀な隊とはいえ、正直言ってることが気に食わない。

過去に投降したテロリストを護送していた部隊が襲撃を受け、テロリストを逃すという事件があった。

その実例を考えるとその場で射殺するのがベストなはずだ。

全く理解が及ばない。

「ほかの隊は規律が緩みつつあってな、捕虜の扱いが法律に違反しているケースが増えてきている。我々は決してそんなことはしてはならない。」

(偽善者め。)

隊長の話を聞いていると駐屯地に警報が鳴り響く。

「旧山梨方面、大和工業の食糧生産施設が襲撃されました!現地の警備チームは急襲に対応できず被害が甚大です!至急増援に向かってください!」

「聞こえたな!いくぞお前ら!」

隊長が叫ぶ。

「「了解!!」」

隊員たちもそれに続く。

すぐに部隊はVTOLに乗り込み、現地へ向かう。

両翼にジェットエンジンが付いた重装甲の輸送機だ。ジェットエンジンの向きを操作することができ、垂直離陸してそのまま旅客機並みの速度で飛ぶことができる。

30mmガトリングガンとナパームミサイルを搭載している。まさに空飛ぶ装甲車だ。

「隊長!今日こそ射撃許可してくださいね!腕が鈍っちまいます!」

VTOLのオペレーターが言う。

こいつはどっちかというとテロリスト供をぶち殺したい派らしい。

「だめだ、お前の持ってくるものは毎回火力が高すぎる!本当にやばい時にしか呼ばない!」

「また、仕事ないのはごめんですよ!」

オペレーターはくだらない話をしながらVTOLを離陸させた。

機内で作戦の概要が話される。

「今すぐ対応できる部隊で近くにいたのが俺たちだ。俺たちが現地について1時間もすればドローン小隊と増援部隊が来る。それまで持ち堪えろ!いいな!」

「「イエッサー!」」

(足止めか。つまらない。)

「もうすぐ予定ポイントだ!いってらっしゃーい!!」

VTOLオペレーターがそう言うと、 VTOLの後方ハッチが開き、隊員たちがラベリングの準備をする。

そして遠藤隊長が先陣を切る。

「いくぞ~!、降下!!!」

次々と隊員が降りていく。

それに僕も続く。

食糧生産施設は高さ10mほどの巨大な壁に囲われていて壁の中は広大な畑になっている。畑では品種改良された小麦のようなものが大量に植えられていた。

その畑を踏み荒らすようにテロリストたちは次々と流れ込んでくる。
 
僕たちは食糧生産施設の監視塔に降り、警備ルームへ向かった。

施設内はひどい有様だった。

畑には施設の作業員、テロリスト、警備チームの隊員たちが入り混じって倒れていた。

もう警備チームでまともに動けるのはもう3人だけで、それに対してテロリスト共はわんさかと正面ゲートから入ってくる。

「増援に来たぞ!しっかりしろ!!」

「くそ…物量に物を言わせてすげえ数で襲ってきやがる…ぐふっ…」

警備チームの隊員が血を吐き、そのまま動かなくなった。

「俺らが前線に出る!警備チームは負傷者を運んで一旦引くんだ!」

隊長に続いて隊員たちが前線へ向かう。

実際の戦場は酷かった。

死体で足の踏み場がない。

部隊は警備ルームや作業台、壁の足場に展開し、敷地内に侵入したテロリストを高所からひたすら撃ち続ける。

「死ね、死ね、死ね!」

僕は容赦なくテロリストに銃弾を撃ち込む。

向かってくる者も被弾して這いつくばりながら逃げようとする者も容赦なく殺す。

「クソ!思ったより数が多いな!新入り!死ぬんじゃねーぞ!」

「大丈夫です。訓練通りやります。」

僕は淡々とテロリストを殺し続けた。

30分ほど銃撃戦が続くと、すごい数のプロペラの音が聞こえてきた。

増援部隊だ。

7機の無人攻撃ヘリが編隊を組んで飛んできた。

無人攻撃ヘリから無誘導ナパーム弾が放たれる。

ナパームがテロリストに直撃し、炎に包まれる。

全身が火だるまになりながらもこちらに向かってくるものもいれば、焼かれてもがき苦しむ者、自分に纏わりつく炎を必死に払おうとする者たち。

そしてそんなテロリストたちに対して無人攻撃ヘリが無慈悲に銃弾の雨を浴びせる。

無人攻撃ヘリの編隊が攻撃を終えると共に2機のVTOLが着陸する。

増援部隊が降りてきた。

辺りは火薬と肉の焦げる臭いで満たされてた。



増援部隊と合流すると生存者の捜索が始まった。

僕は生存者を探しながらまだ息のあるテロリストにトドメを刺していた。

「…ぁぁ…」

黒焦げになって原型の無いテロリストが呻き声をあげる。

「虫の息だな。殺す価値もない。」

「趣味悪いね~新入り~」

増援部隊の奴が言う。

「奴らは苦しんで死ぬべきだ。そのまま野犬にでも食われればいい。」

「お~、こっわ。」

「…」

「ん?なんか子供の声しないか。」

確かにどこからかすすり泣く声が聞こえる。

「おい!近くに子供がいるはずだ!探せ!子供を優先で救助しろ!テロリストの始末はそのあとでいい!」

「ほらいくぞ新入り!人命最優先ってお前んとこの隊長よく言うだろ!」

先輩の隊員にケツを叩かれた。

渋々僕は子供の捜索にあたる。

しかし、その中にも当然逃亡を図ろうとするテロリスト供もいる訳だ。

ヘリの機銃掃射で足が吹き飛んだのだろう。

両足を失ったテロリストが這いずって逃げようとする。

「うぐっ、くそ、お、俺の足がぁ…」

「どこへいく気だ。」

「ひいっ!」

僕はただひたすらに何度もテロリストの頭をブーツで踏み付けづけた。

グシャッという嫌な音共にテロリストは動かなくなった。

「おーい、新入り~、子守できるか?!」

さっきの隊員だ。

「ガキは嫌いなんだ。」

「ずっと泣いてて困ったよ。」

4歳ぐらいの女の子だ。必死に戦闘から身を隠したのか全身が泥だらけだ。

所々擦りむいてもいる。

「うわぁぁぁん、パパァ~…うぅ、パパどこなのぉ…」

「とりあえず隊長の所へ連れて行きましょう。あの人なら子供の相手も出来そうだ。」

「お、それいいねぇ!」

僕ともう1人の隊員でその子を怪しながら、隊長のところへ向かった。

「遠藤隊長すんません、俺ら子守苦手みたいで…えへへっ」

「ったく、お前らそんなんじゃ子供できた時苦労するぞ~」 

「い、いやぁ、まあいざとなったらねえ!」

「俺は結婚するつもりなんてない。」

「寂しいこと言うな新入り。よーし、お嬢ちゃん。もう大丈夫、おっちゃんたちが守ってやるからな!
お嬢ちゃんお名前は?」

「うわぁぁぁん、パパがぁ、パパどこなのぉ…!」

「大丈夫、おっちゃんたちが探してやるから!君の名前わかればパパも見つけやすい。だからお名前教えてくれるかな?」

「うぅ…燃えちゃってどれがパパなのか…グスッ…わからないの…」

その瞬間僕は嫌な予感がした。

遠藤隊長も同じ物を感じ取っただろう。

少女のカバンから垂れている不自然な紐。

まずい、少女の持ち物を確認するべきだった。

「おじさんたちのせいだ。」

「そ、総員退避!!!」

遠藤隊長が叫ぶ。

すでに少女はカバンの紐を引いていた。

紐の先端に針金状のものが見えた。

おそらくグレネードの安全ピンだ。

次の瞬間、全ての音が聞こえなくなった。
至近距離での爆発で脳が揺れる。



すぐに伏せたお陰でなんとか軽い怪我で済んだ。

「く、くそ、子供が自爆特攻だなんて…」

辺りを見渡した。

そこに少女の姿はなかった。

「た、隊長?」

上半身を無くした下半身だけの隊員が目の前に崩れ落ちる。

立ち位置から考えると間違いなく隊長だろう。

隣にいた減らず口の先輩は顎が抉れて喋れなくなっている。

そしてまた遠くから声が聞こえる。

他の隊員たちだ。

「おーい!、ここにも生き残りがいる!
小ちゃな子供だ!優先して避難させてくれ!」

子供たちはよく見ると皆同じカバンを持っている。

まずい…

「…だ、ダメだ…、こ、子供を…殺せ…」

しかし、どんなに声を振り絞っても他の隊員たちには聞こえない。

そして次の瞬間。

色んなところで爆発音が連続する。

子供たちが自爆し始めたのだ。

今回の食糧生産施設への攻撃での死者は
警備チーム18名、増援部隊34名。

増援部隊は僕の隊を含め3部隊。合計45名だった。

そのうち子供たちの自爆攻撃で死亡した隊員が警備チーム3名、増援部隊31名という結果になった。

初任務で子供すら兵器として扱うこの残虐非道な奴らの実態を知り、流石の僕も胸糞悪かった。
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