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宴の後
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「――広陵散とは、思い切った曲ぶっ込んだな」
曲が終わった後、蒼は女狐に耳打ちした。
「そうね。広陵散はいわば仇討ちの曲。しかも、嵆康が讒言で死罪になる直前に弾いたいわくつき」
広陵散は春秋・戦国時代の頃、斉の聶政という義士が、恩人・厳仲子を失脚させた政敵・侠累を討ち、忠義を貫いた物語を謳った曲。そして琴の名手だった嵆康が、謂われなき罪で処刑される直前に弾いたのが他でもないこの広陵散だった。
琵琶といえばまだ四弦だった頃のこと。女狐の叔母が亀茲から渡ってきた珍しい五弦の琵琶を気に入り、琴の名曲広陵散を五弦の琵琶で弾くようになった。そしてそれを幼い彼女にも教え込んだのだ。
「解ってるけど、これしか名のある曲弾けないの。あとは簡単な練習曲しか知らない」
開き直ったその口調。めかし込んでいても中身はいつもの彼女だった。蒼はなぜかほっとした気持ちになった。
「……てことは、城代の前でもこれを弾くのか」
「仕方ないでしょ。どうせ西域人になんてこの曲の意味なんて知るわけないし、問題ない」
撥で顔を扇ぎながら、彼女はペロッと舌を出した。
「とにかく、やるしかない。ここから抜け出して西突厥に行くためにも、是が非でも城代に取り入らないと」
そう言って、彼女は練習曲を弾きだした。
「練習してるから、さっさと城代を呼んできて」
蒼は笑って頷くと、当主と交渉して城代を呼び寄せる手配をした。西域では珍しい漢の妓女に釣られた城代は、当主の招待を快く受けその日にうちに屋敷に姿を現した。
興に乗った夫人のおかげでさらにめかし込んだ女狐は、城代の期待に十二分に応えたようだった。公子や蒼の挨拶を適当に流すと、ずっと彼女を側に侍らせ談笑していた。彼女は彼女で、広陵散しか弾けないと言っていたわりに、即興でいろいろな曲を奏で、その場をいっそう盛り上げた。
城代に目通りする、その目的を達したはずなのに、蒼は気持ちが落ち着かなかった。特に女狐を片時も離さない城代の姿に、強い苛つきを感じていた。そしていつの間にか、女狐と城代の姿が見えなくなると、そのイライラは頂点に達した。
「大丈夫だよ」
蒼の様子に気づいた緑が、彼の背中をポンと叩いた。
「昔取った杵柄で、あいつなら上手い具合に城代を丸め込めるさ」
「あ、ああ……」
「これ以上ここにいても無駄だ。戻ろうぜ」
そう言う緑の声色には力が入っていなかった。蒼は慌てて彼の顔を見上げた。血の気がなく、瞳も濁って見えた。これはかなり調子の悪い証拠だ。公子も疲れている様子だったので、蒼は二人とともに離れに戻り、彼女の帰りを待つことにした。彼女のことだから、さっさと話をつけて戻ってくるに違いないと信じて。
しかし、夜半を過ぎても彼女は戻ってこなかった。
蒼は一睡もせず、窓辺で外の様子を眺めながらひたすら彼女の帰りを待っていた。
「――もしかしてずっと起きていたのか?」
空が白み始めた頃、緑が蒼のいる居間に入ってきた。彼は窓辺に腰掛け、外を凝視している蒼の姿を見て呆れたように言った。
「え? ああ……もう朝か?」
「いや、まだ夜が明けきってないだろ。畑に出るんじゃないし、まだ寝てる時間だよ」
「ああ、そうか。そうだよな」
まだ夜中なんだと、自分に言い聞かせるように蒼は答えた。
「隊長は、少しは寝れたのか?」
「ああ。さすがに横にならなきゃキツい。ただ、なかなか公子が寝かせてくれなくてさ」
「は?」
そこに決まり悪そうに公子も入ってきた。緑は玻璃の坏を二つ取ると、水差しの水を注ぎ一つを公子に手渡した。そして手元に残った一つを一気に飲み干したあと、深く息を吐いた。
「俺の話じゃ埒もあかない。ちょっとお前からも話してくれないか?」
「何を……?」
「狐姑娘が城代に色仕掛けしてんのは大丈夫かどうかって、公子がしつこく訊いてくるんだよ。寝てる俺の枕元で。知るかっつの。こっちは寝たいんだってのに」
「だって、詳しいだろ、そういうの」
緑の言葉に公子はかぶせるように言った。
「確かに譚家の女も色仕掛けはやるよ。ただ、諜報か敵の寝首を掻くのが目的だし、女といえども素地は戦士だから、最後は力任せになるし、当然、流す血も多い。だが狐姑娘の素地は妓女だ。うちの連中とやってることは全然違うって。そう何度も言ってるのに、ちっとも解っちゃくれない」
「だけど、結局は男相手に同じことしてるわけだろ? 危険なことに変わりは無いはずだ」
「だーかーらーっ、妓女と戦士はやること違うんだって」
「結局、閨でやることは同じだろ?」
「同じようでも違うんだって」
酒が入っているせいか、公子はいつもよりしつこくなっていた。終わらない堂々巡りのやり取りに、緑はだいぶ苛ついていた。
「――妓女?」
しかし蒼は、意外な顔をして呟いた。
「あいつって、妓女、なのか……?」
「――まさか、知らなかったのか!? あれだけ一緒にいたのに?」
緑は蒼も知ってるとばかり思っていたので、彼の様子に酷く驚きながら答えた。
「知ってるも何も、お互いのことは秘密だって、そういう約束だったじゃないか。だから何も聞いてない」
この生真面目野郎がと思いながら、緑は続けた。
「それは暗黙の了解、だろ。あいつだって、こっちの事情はある程度の見込みながら知らないふりしてる。俺たちの間柄って、そういうもんだろ」
「そういうもの、なのか……。そうか、お前は知ってたんだ。アイツの素性」
ここでやっと蒼は腑に落ちた。女狐に教養があるのに常識が無い理由。それなりの男たちの相手をするには、それなりの教養が必要だったからだ。そして、妓楼という隔絶された世界で育ったから、市井の常識が欠けていたのも至極納得できる。
「だからか……」
どうしてそこを飛び出し、この西域に来たのだろうか。どこであの仙術を得たのだろうか。本当に彼女のことを何も知らないということ、蒼は改めて気づかされた。
黙って考え込んでいる蒼の様子を見て、緑と公子は言い合いを止め互いの顔を見合わせた。長い付き合いで、お互いの性格は熟知している。こんな時は、彼の生真面目さが空回りするに決まってる。
「若先生、取りあえず休もうか」
緑は蒼を窓辺から引き離そうとした。その時、窓の向こうで黎明の中をこちらに向かってくる二つの影が目に飛び込んできた。女狐と城代だ。
女狐は、絡みついてくる城代を適当にあしらいながら、ゆっくりとこちらに向かっていた。その様を見て、うまいことやるもんだと緑は感心した。
(譚家の女だったら、途中でぶち切れて刃傷沙汰になってるようなうざい絡み方だ。それをあんなに容易くいなすなんて、すごいヤツだ)
彼女がずっと当主の側にいてくれたら、譚家も安泰なんだがと考えながらふと横を見た。蒼が険しい表情で二人が歩いてくる様を見てた。まずいと思ったと同時に、先に公子が動いた。
「狐姑娘、大丈夫か!?」
城代と別れ、ひっそりと部屋に入ってきた彼女を、公子は大声を上げて出迎えた。その出迎えに彼女は驚き、裏返ったような声を上げた。
「うわ、ビックリした。何? みんなまだ起きてたの?」
「心配だったから――」
「心配する必要なんてないよ。昔取った杵柄だし」
公子と女狐が話しているすきに、緑は蒼を連れてその場を立ち去ろうとした。蒼が爆発する前に、彼女から離れた所で気を落ち着けさせようと思ったのだ。
しかし、そうことは上手くは運ばなかった。
「あ、蒼さん!!」
女狐は蒼を呼びとめると、嬉しそうに彼に駆け寄った。
「ねえ、聞いて聞いて」
焦る緑を尻目に、女狐は嬉しそうに蒼の袖を掴んだ。
「城代がね……」
「触るな! 穢らわしい」
蒼は反射的に大声を上げ、女狐の手を払いのけた。
その場が一瞬凍り付いた。
そして、誰より傷ついた顔をしていたのは、「穢らわしい」という言葉を発した蒼本人だった。言われた当の女狐は、ただキョトンとした顔で、蒼を見つめていた。
蒼は彼女の顔を見てハッと我に返った。そして呻き声を上げ外へ飛び出していった。
女狐はただ黙ってその様子を見ていた。
「狐姑娘、あれはアイツの本心じゃないから」
緑は女狐の肩をポンと叩きながらそう言った。
「あの拗らせ野郎はこっちに任せてくれ」
そのまま彼は蒼の後を追って表へ出て行った。女狐は返事をする代わりに掌をヒラヒラ振って合図を送った。口元に静かな笑みを浮かべながら。
「申し訳ない!」
緑が出ていったあと、今度は公子が謝ってきた。
「――今度は公子? どうして謝るの?」
不思議そうに女狐は言った。
「だって、蒼さんの言っていることは正しいんだから」
「え?」
「だって、私はそういう存在なんだもの」
自分に言い聞かせるように彼女は続けた。
「ここ数ヶ月、みんながごく普通に接してくれてたからすっかり忘れてた。自分が忌み嫌われる存在だってこと」
天帝にすらその存在を嫌われている妖。それが本来の自分だ。
「そんなこと」
「あるんだって」
女狐は淡々と言葉を続けた。
「やっぱり蒼さんはすごいね。ちゃんと本質を見ててくれた。根本的にあなたたちと私は違う。それはどうしようもないことだって、忘れちゃいけないことを思いだせた」
「違う!」
公子は彼女の言葉を遮るように大きな声で言った。
「私は、本当の私の名は、麹智興。高昌王国の第三王子だ」
「公子! それは言わない約束……」
いきなり名乗りを上げはじめた公子に、彼女は慌てた。
「どうせ知っているだろう? どうでもいい。聞いてくれ」
公子はかまわず続けた。
「私は物心ついた頃は、“可汗の子”のように育てられていた。それがある日突然、高昌国の王太子のようなものになって、今は謀反人のようなものだ」
「公子……」
「でも結局、周りがそう決めつけただけで、私自身は何ら変わりない。この先だって、私がなんであるかは周りが決めるんだ。だけど、私自身は私自身で、この先、何があろうと変わることはない。狐姑娘、お前だってそうだろ」
「……」
「私にとって、今この目の前にいるお前の姿がすべてだ。生まれも育ちも関係ない。出会ったときから、身体を張って私たちを助けてくれた。それだけで十分だ」
それは思いがけない言葉だった。思いもよらないほど、嬉しい言葉だった。
「そう、身体張りすぎなんだよ」
そう言って公子は深い溜め息を吐いた。
「今回だって……大丈夫なのか?」
「何が?」
「何がって……その……あれだ、その」
真っ赤になって口ごもる公子の様子で、女狐は言わんとすることを察した。そして彼の様子がとても可愛らしく感じて、思わず吹き出した。
「大丈夫よ、生娘じゃないんだし。それに、酒が入りすぎて、適当に撫でて話しただけで相手は満足したよ」
ケラケラと笑いながら答えた彼女を見て、公子は更に顔を赤くした。
「でも、ありがとう。心配してくれて」
「あ、ああ。そうか」
公子はふうっと大きく息を吐いた。この人は本当に良い人だ、女狐はそう思いながら公子の顔色が変わる様子を面白そうに眺めていた。
「礼を言うのはこちらの方だ。首尾良くいったのかだろう?」
女狐はこくりと頷いた。
「ああ、やっと終わるのか」
彼女はもう一度頷いた。
「――もちろん、狐姑娘も一緒に来てくれるよな。この先もずっと」
今度は頷かなかった。黙って彼の顔を見ていた。
「……考えとく」
しばらく経ってから、彼女はそう答えた。妖狐崩れの自分は、一つ所に留まってはいけないと思う気持ちと、まだ彼らと一緒にいたい気持ちに揺れていた。頭の中には、先ほどの蒼の言葉が繰り返し響いていた。
「やっぱりここか」
緑は、植え込みの中に蹲っている蒼を見つけるや否や、そう声をかけた。
「そうやって蟻とか見てるんだよな。五歳の頃から変わってねえな」
「……黙れ」
二人が初めて出会った頃――高昌から西突厥へ逃れる道中、蒼はちょくちょく癇癪を起こして隊列から逃げ出した。しかし彼の護衛についていた緑にすぐ見つけられ、あっという間に隊列に戻された。
「なんですぐ解るんだよ」
「何でかな、解るんだよ」
緑の頭をクシャクシャと撫でながら緑は答えた。
「止めろ」
蒼は緑の手を払いのけながら言った。
「もう、五歳のガキじゃない」
「五歳のガキの方がマシだよ。この拗らせ野郎が」
「拗らせ野郎ってなんだよ」
「拗らせてるだろ、充分に。さっさと抱けば良かったんだよ」
「抱けって……誰を」
「狐姑娘」
緑の言葉に、蒼は真っ赤になって顔をヒザに埋めた。
「ほら、拗らせてる」
そう言いながら、緑は蹲っている蒼の横に腰を下ろした。
「拗らせてねえよ。狐姑娘とデキてるのはお前だろ」
そう言いながら、手を伸ばして緑の身体をグッと押した。
「デキてる!? アイツと俺が? んなわけないだろ」
「んなわけあるだろ。明け方、お前の部屋から出てくるのを何回か見た」
その言葉に、緑はああと頷くと、ニヤリと笑った。
「妬いてくれて嬉しいがな、色艶ごとなんて一切ないよ。ありゃ、多分仙術の一種だ」
「仙術?」
「毎朝、なんかやってくれてた。俺がこんな身体だからな。おかげで多少は調子が良くなった。焉耆に来てからはさっぱりだけどな。あの村の空気が良かったのかな」
「そうか……」
「しかし、お前も気づいてたんだな。狐姑娘、誰にも気づかれてないと思ってるんだぞ、いまだに」
その口ぶりから、公子も気づいてたことがうかがえた。
「アイツらしいな」
蒼はゆっくりと顔を上げた。緑はその表情を見て、コイツはベタ惚れじゃないかと思った。
「あんな噂が立ってたんだ、お前が色恋事に慎重になるのも解る」
「ああそれな」
緑の言葉にかぶせ気味に言った。
「多分、本当、らしい」
「――なのか?」
「真相は、本人達にも解らないかもしれない。だけど、伯父貴はそのつもりだよ」
蒼の母親は、もともとは張将軍と恋仲だった。しかし家同士の取り決めで、張将軍には彼女の姉が嫁ぐことになり、彼女は張将軍の弟――つまり蒼の父に嫁いだ。兄弟姉妹の長幼の序で娶されたのだ。
そして張将軍夫妻は子どもに恵まれず、弟夫婦の子どもの中から末子の蒼が選ばれ、総領息子として育てられた。彼がなぜ選ばれたのか……実は張将軍との不義の子だからなのだと、口さがない連中の噂になっていた。幼かった彼らの耳にも届くぐらいに。
だから、蒼は女性関係にはとても慎重だった。草原の乙女達の奔放な誘いにも一切乗らなかった。「不義の子」という重しが彼にあったからだ。
「だからって、もう張家とは縁を切ったんだろ。お前は自由だ。好きな女と好きなことして良いんだよ」
「簡単に言うな」
「簡単だよ。好きなら好きでいいんだ。変な思惑が絡むと、うちのお袋みたいになる」
「重いこと言うな」
蒼は溜め息を吐くと、膝に顔を埋めた。
「……許してくれるかな」
「許すも何も、マジ怒りだったら、お前蹴っ飛ばされて屋敷の反対側まですっ飛んでるよ」
「そうかな」
「とりあえず謝れ。女と上手くいくコツは、とにかくまず謝ることだ」
生真面目に言う緑に、蒼は思わず吹き出した。彼が過去に色事であったことを思いだしたからだ。
「解った。戻って謝るよ。無理させて悪かった」
そう言って蒼は立ち上がった。
二人が離れに戻ると、中はそれなりに騒ぎになっていた。
「あ、蒼さん、良いところに戻ってきた」
先ほどのことは全く意に介さない様子で、女狐が聞いてきた。
「化粧って、どう落とすの?」
彼女の顔はびしょびしょのドロドロで、見るも無惨な有様になっていた。
「水で落ちないの……」
「落ちないって、今までどうしてたんだよ」
「どうしてたって……(妖力で)ぴゅーっとやってパッと落としてた」
「男の俺には全く想像できんぞ、そう言われても。日が昇ったら夫人に落としてもらえ」
「もう、顔が重いのよ、今すぐ落としたい、何とかして」
「何とかって、乳とか?」
「そうだ、草原ではだいたい乳で何とかしてたな!」
蒼の言葉に公子はポンと手を叩くと厨房へ走って行った。使用人が朝餉の支度をしている時分だから、乳も手に入ると考えたからだ。女狐も公子の後を追って走って行った。
結局、この騒ぎで蒼は彼女に謝りそびれた。あまりにもいつもの彼女だったせいもあった。
そして、使用人達も巻き込んで化粧を落とした彼女は、いつもの格好になると蒼に言った。
「明後日、城代が西突厥の使者を連れてきてくれる」
長い旅の終わりが見えたと、蒼は思った。
しかし、当日離れに訪れたのは、西突厥の使者ではなかった。
「伯父上――」
城代に連れられ、母屋から離れに向かってくる人影に蒼は驚いた。西突厥の属国同士としてかろうじて争ってはいないが、両国間の中は決して良くはなかった。だからこの二人が通じているのは夢にも思っていなかった。
「やられたな」
緑も同じ考えのようだった。
「裏から逃げるか?」
「いや、恐らく囲まれてるだろう。状況が解らない中でむやみに動くのは危険だ」
張将軍の影が近づいてくる中で、蒼は必死に考えた。
「狐姑娘」
「何? 熨してくる?」
その言葉に蒼は彼女らしいな、と笑った。
「大事になるからそれは止めてくれ。あと、絶対に伯父の前に姿を現すな。お前は重要な手駒だ。伯父に絶対に知られたくない。頼みたいのは、いつでも出られるように支度をしてほしいことだ」
「解った」
この時彼女は、公子を逃がすための準備を指示されたのだとばかり思っていた。たった一人、泣きながら村へ――阿兎の元へと行くことになるなんて夢にも思っていなかった。
供の者を一人もつけず、張将軍は離れに入ってきた。そして、公子に臣下の礼を取った後、身内の話をしたいと許しを請い、蒼と別室に通してもらった。張将軍を案内した城代は漢の妓女――女狐の姿が見えないことに気づくと、そそくさと本邸に戻っていった。おそらく彼女を探しているのだろう。
「綰曹郎中ともあろう人が、供の者一人もつけずにこんなところに一人で来るとは……」
二人きりになった後、しばしの沈黙のあとに口を開いたのは蒼だった。それは彼の精一杯の虚勢だった。
「久しぶりに息子と会うのに、なぜ供が必要なのか?」
相変わらず食えない人だと、蒼は思った。
「まあ、お前は私に会いたくなかったようだがな。――ここまで行方が掴めぬとは思わなかったよ。しかし、運が良かった。たまたま外交で訪れた先にお前たちがいるとはな。ちょうど篤進に着いたときに、城代から報せが来て驚いたよ」
「伯父上が、城代と誼を通じているとは知りませんでしたよ」
「王家同士に軋轢がある上、うちの分家は使えないからな。私が動くしかないだろ」
伯父の話を聞きながら、長年の根回しが、ここで差になったのかと蒼は唇を噛んだ。
「案外近くにいたのだな。漠北へ行った気配がなかったから、漢地に行ったかとも思っていたのだがな」
(これは、詰んだか……)
運は伯父の方にあった。そしてその運を引き寄せたのは、伯父が長年してきたことの結果だ。蒼は打つ手を必死に考えていたが、何も思い浮かばなかった。
「しかし、上手くやったな」
「こうやって見つかったのに、ですか?」
「すんなり西突厥に戻っていれば、王子の罪をそのまま事実にできたんだがな。こうまで時が経ち、西突厥も動いていないとあれば、王子に謀反の罪をかぶせるには少し難しくなった」
(まだ手はあるのか?)
伯父の話を注意深く聞きながら、蒼は思案を巡らせていた。
「だから王子と二人で高昌に戻ってこい」
伯父に口から出た答えに、蒼は虚を衝かれた。
「……どういうことですか」
「新しい筋書きを作った。謀反の企ては譚家。お前と王子は拐かされ、脅されていた。焉耆城の近くで再度謀反を計っていたところを一網打尽にし、救い出したと。首謀者の譚兄弟は高昌城にて処刑。王子は予定どおり田地公となり、お前はしばらく王子を補佐した後、綰曹府に入り私の跡を継ぐといい」
「祥吉も処刑するのですか」
祥吉は阿兎の幼名である。
「譚の血を継いでいる以上、仕方あるまい」
「祥吉はここにはいませんよ。途中で別れました」
「かまわんさ。そのうち見つかるだろう。器はないから、彼奴だけで譚家を再興し反旗を翻す力はないしな。惜しむらくは長男の方だな。まあ、余命が限られているようだから、最後はお前たちの役に立ってもらえばそれで良いではないか」
蒼は下を向き、拳をギュッと握りしめ、肩をフルフルと震わせた。そして大声で笑い出した。
驚く張将軍を尻目に、蒼は気が済むまで笑い続けると、大きく息を吐いた。そして顔を上げて張将軍の目をじっと見据えた。
「伯父上、叔母上が二人目のお子をお産みになったそうですが、息災ですか?」
張将軍の先妻――つまり蒼の母の実姉は身体が弱く、子を生さぬまま亡くなった。そして先だって将軍が向かえた後妻は、蒼と年がそう変わらず、若く壮健であった。そして彼女は嫁いで数年のうちに男の子を二人産んでいた。
「ああ、身体の弱い長子に比べ、次子は今のことろ病気らしい病気もせず、元気にしている」
「そうですか。それは僥倖」
蒼は目を瞑り、深呼吸をした。ここから、自分が打てる最後の手だ。
「私自身、詰めが甘いと思っていましたが、伯父上も甘いですね」
「何?」
「すでに二人も実子がいる中で、まだ私を後継者に押すのですか? いらぬ諍いの種を蒔いたままにするとは伯父上らしくない。ここは、私を首謀者にして消してしまうのが一番ではないですか」
「……定和」
「第一、譚建武長史は戦事には長けてますが、謀は今ひとつなのですよ。こんな大がかりな策、私以外、誰が計るというのですか」
そして蒼は椅子から立ち上がると、張将軍の前に膝をつき、頭を垂れた。
「私は、己の諍いに智興王子を巻き込みたくはありません」
「それが本心か」
「ええ」
「私の目の黒いうちはそうはさせない」
「そうでなくなったときに起こる諍いですよ、伯父上。ここで私を重用すれば、不義の子であるという疑惑に真実味が出てしまいます。むしろ、実子の誕生に焦った甥が起こした事変であるなら、伯父上の名誉は守られましょう」
「お前は……」
張将軍は椅子に深く座り直すと、溜め息を吐き天を仰いだ。
「昔から意固地な奴だったな」
「意固地ついでに、伯父上から頂いた定和という諱も、そして張という家名も返上いたします」
「何と?」
「私のことは、ただの“蒼”とお呼びください」
「蒼?」
「ある人が私につけてくれたんです。結構気に入っているんですよ。この呼び名」
彼は嬉しそうにそう言った。
張将軍配下の兵は本邸とその周囲に配置されていると、将軍自らが告げた。そして用意をしてくるからと、一度離れを後にした。それは逃げるなと言う脅しでもあり、幼なじみ三人に別れを惜しむ暇を与えるという恩情でもあった。
「伯父上」
蒼は出て行こうとする張将軍に声をかけた。
「――我が子として育てていただいた恩、決して忘れません」
張将軍の歩みが一瞬止まった。
「ありがとうございました、父上」
蒼は深々とお辞儀をした。張将軍は振り向かぬまま黙って出て行った。
「……意固地な親子だ」
その様子を見て、緑はぽつりと呟いた。そこへ隠れていた女狐が姿を現した。その顔を見て緑はギョッとした。泣き顔の彼女を初めて見たからだ。
「蒼さん、何考えてるのよ」
彼女は隠れながら全ての話を聞いていた。
「私が囮になる。その隙に村へ逃げよう。あそこなら気づかれずに過ごせる」
蒼はゆっくりと首を振った。
「いつかは気づかれる。そうしたら、五郎さんや婉さん、それに生まれてくる子どもはどうなる?」
その言葉に、女狐はハッとした。
「それに、今の状態では西突厥にも公子の居場所はない。だから、自分の命と引き換えに居場所を作る時間を稼ぐ」
「どういうことよ」
蒼は答える前に緑の方を見た。
「俺はどっちにしろあとわずかな命だからな。最後に華々しく散れるんでむしろ良いさ」
緑の言葉に蒼は苦笑いを浮かべた。ここにいる全員、身内の話に聞き耳を立てていたわけだ。説明の手間が省けてちょうど良い。
「村に集めた譚家の残党はどれくらいだ」
彼らが焉耆に向かうのと入れ違いに、緑が手配していた譚家の残党が村に集まってきていた。
「主力は高昌との戦いで潰されたからな。後方支援と諜報部隊が中心だが、そのうちまだ譚家としてやりたいイカれた連中は大して残っていない。十を少し超えればマシな方だな」
緑の言葉に蒼は頷いた。
「狐姑娘、急いで村に戻れ。そして阿兎と一緒に新たな譚家をまとめ上げ、公子を救い出して北へ逃がしてくれ」
それは一朝一夕でできることではない。
「簡単なことではないのは解っている。阿兎一人でも無理だ。お前の力が絶対必要なんだ。時間は私が稼ぐ。私の命と引き換えに、公子の命は当面保障されるはずだ」
この人、なに無茶苦茶なことを言っているんだろうと、涙を堪えながら女狐は思った。だけど――
「急げ、狐姑娘。捕縛の手が来る前に、ここを抜け出せ」
蒼の勢いに気圧され、女狐は大した別れの挨拶もできぬまま離れを出て行った。
「若先生は勝手だな」
女狐が出て行き、捕縛の者たちが来るまでの少しの間、とても静かだった。
「なんで、勝手に決めてしまうんだ」
その静けさの中、公子は悲しそうに言った。
「公子をあの草原に帰すためです。可汗家の者でも王家の者でもなく、ただの牧民として」
公子は悲しそうなまま微笑んだ。
「そうか、なら草原では興爺とでも名乗るか」
公子の頬に一筋の涙が伝った。
「代償が大きすぎる」
「公子」
蒼は公子の手を取った。
「私は草原での生活、結構好きでした。特に夏の草原で、羊の番をしながら、なんとはなしに始まる宴は楽しかった」
草原の夏はのんびりと時が過ぎる。できたての乳酒でいつの間にか宴会が始まる、そんな季節だった。
「そうだな。私も粉黛でむせ返る都市より、風薫る草原の宴が好きだ」
公子は蒼と緑の肩を抱いて顔を寄せた。
「草原の空の蒼、草海原の緑を見るたび、私はお前たちを思い出すよ」
そして扉が開き、捕縛の者たちが蒼と緑を捕らえていった。これが彼らの今生の別れだった。
曲が終わった後、蒼は女狐に耳打ちした。
「そうね。広陵散はいわば仇討ちの曲。しかも、嵆康が讒言で死罪になる直前に弾いたいわくつき」
広陵散は春秋・戦国時代の頃、斉の聶政という義士が、恩人・厳仲子を失脚させた政敵・侠累を討ち、忠義を貫いた物語を謳った曲。そして琴の名手だった嵆康が、謂われなき罪で処刑される直前に弾いたのが他でもないこの広陵散だった。
琵琶といえばまだ四弦だった頃のこと。女狐の叔母が亀茲から渡ってきた珍しい五弦の琵琶を気に入り、琴の名曲広陵散を五弦の琵琶で弾くようになった。そしてそれを幼い彼女にも教え込んだのだ。
「解ってるけど、これしか名のある曲弾けないの。あとは簡単な練習曲しか知らない」
開き直ったその口調。めかし込んでいても中身はいつもの彼女だった。蒼はなぜかほっとした気持ちになった。
「……てことは、城代の前でもこれを弾くのか」
「仕方ないでしょ。どうせ西域人になんてこの曲の意味なんて知るわけないし、問題ない」
撥で顔を扇ぎながら、彼女はペロッと舌を出した。
「とにかく、やるしかない。ここから抜け出して西突厥に行くためにも、是が非でも城代に取り入らないと」
そう言って、彼女は練習曲を弾きだした。
「練習してるから、さっさと城代を呼んできて」
蒼は笑って頷くと、当主と交渉して城代を呼び寄せる手配をした。西域では珍しい漢の妓女に釣られた城代は、当主の招待を快く受けその日にうちに屋敷に姿を現した。
興に乗った夫人のおかげでさらにめかし込んだ女狐は、城代の期待に十二分に応えたようだった。公子や蒼の挨拶を適当に流すと、ずっと彼女を側に侍らせ談笑していた。彼女は彼女で、広陵散しか弾けないと言っていたわりに、即興でいろいろな曲を奏で、その場をいっそう盛り上げた。
城代に目通りする、その目的を達したはずなのに、蒼は気持ちが落ち着かなかった。特に女狐を片時も離さない城代の姿に、強い苛つきを感じていた。そしていつの間にか、女狐と城代の姿が見えなくなると、そのイライラは頂点に達した。
「大丈夫だよ」
蒼の様子に気づいた緑が、彼の背中をポンと叩いた。
「昔取った杵柄で、あいつなら上手い具合に城代を丸め込めるさ」
「あ、ああ……」
「これ以上ここにいても無駄だ。戻ろうぜ」
そう言う緑の声色には力が入っていなかった。蒼は慌てて彼の顔を見上げた。血の気がなく、瞳も濁って見えた。これはかなり調子の悪い証拠だ。公子も疲れている様子だったので、蒼は二人とともに離れに戻り、彼女の帰りを待つことにした。彼女のことだから、さっさと話をつけて戻ってくるに違いないと信じて。
しかし、夜半を過ぎても彼女は戻ってこなかった。
蒼は一睡もせず、窓辺で外の様子を眺めながらひたすら彼女の帰りを待っていた。
「――もしかしてずっと起きていたのか?」
空が白み始めた頃、緑が蒼のいる居間に入ってきた。彼は窓辺に腰掛け、外を凝視している蒼の姿を見て呆れたように言った。
「え? ああ……もう朝か?」
「いや、まだ夜が明けきってないだろ。畑に出るんじゃないし、まだ寝てる時間だよ」
「ああ、そうか。そうだよな」
まだ夜中なんだと、自分に言い聞かせるように蒼は答えた。
「隊長は、少しは寝れたのか?」
「ああ。さすがに横にならなきゃキツい。ただ、なかなか公子が寝かせてくれなくてさ」
「は?」
そこに決まり悪そうに公子も入ってきた。緑は玻璃の坏を二つ取ると、水差しの水を注ぎ一つを公子に手渡した。そして手元に残った一つを一気に飲み干したあと、深く息を吐いた。
「俺の話じゃ埒もあかない。ちょっとお前からも話してくれないか?」
「何を……?」
「狐姑娘が城代に色仕掛けしてんのは大丈夫かどうかって、公子がしつこく訊いてくるんだよ。寝てる俺の枕元で。知るかっつの。こっちは寝たいんだってのに」
「だって、詳しいだろ、そういうの」
緑の言葉に公子はかぶせるように言った。
「確かに譚家の女も色仕掛けはやるよ。ただ、諜報か敵の寝首を掻くのが目的だし、女といえども素地は戦士だから、最後は力任せになるし、当然、流す血も多い。だが狐姑娘の素地は妓女だ。うちの連中とやってることは全然違うって。そう何度も言ってるのに、ちっとも解っちゃくれない」
「だけど、結局は男相手に同じことしてるわけだろ? 危険なことに変わりは無いはずだ」
「だーかーらーっ、妓女と戦士はやること違うんだって」
「結局、閨でやることは同じだろ?」
「同じようでも違うんだって」
酒が入っているせいか、公子はいつもよりしつこくなっていた。終わらない堂々巡りのやり取りに、緑はだいぶ苛ついていた。
「――妓女?」
しかし蒼は、意外な顔をして呟いた。
「あいつって、妓女、なのか……?」
「――まさか、知らなかったのか!? あれだけ一緒にいたのに?」
緑は蒼も知ってるとばかり思っていたので、彼の様子に酷く驚きながら答えた。
「知ってるも何も、お互いのことは秘密だって、そういう約束だったじゃないか。だから何も聞いてない」
この生真面目野郎がと思いながら、緑は続けた。
「それは暗黙の了解、だろ。あいつだって、こっちの事情はある程度の見込みながら知らないふりしてる。俺たちの間柄って、そういうもんだろ」
「そういうもの、なのか……。そうか、お前は知ってたんだ。アイツの素性」
ここでやっと蒼は腑に落ちた。女狐に教養があるのに常識が無い理由。それなりの男たちの相手をするには、それなりの教養が必要だったからだ。そして、妓楼という隔絶された世界で育ったから、市井の常識が欠けていたのも至極納得できる。
「だからか……」
どうしてそこを飛び出し、この西域に来たのだろうか。どこであの仙術を得たのだろうか。本当に彼女のことを何も知らないということ、蒼は改めて気づかされた。
黙って考え込んでいる蒼の様子を見て、緑と公子は言い合いを止め互いの顔を見合わせた。長い付き合いで、お互いの性格は熟知している。こんな時は、彼の生真面目さが空回りするに決まってる。
「若先生、取りあえず休もうか」
緑は蒼を窓辺から引き離そうとした。その時、窓の向こうで黎明の中をこちらに向かってくる二つの影が目に飛び込んできた。女狐と城代だ。
女狐は、絡みついてくる城代を適当にあしらいながら、ゆっくりとこちらに向かっていた。その様を見て、うまいことやるもんだと緑は感心した。
(譚家の女だったら、途中でぶち切れて刃傷沙汰になってるようなうざい絡み方だ。それをあんなに容易くいなすなんて、すごいヤツだ)
彼女がずっと当主の側にいてくれたら、譚家も安泰なんだがと考えながらふと横を見た。蒼が険しい表情で二人が歩いてくる様を見てた。まずいと思ったと同時に、先に公子が動いた。
「狐姑娘、大丈夫か!?」
城代と別れ、ひっそりと部屋に入ってきた彼女を、公子は大声を上げて出迎えた。その出迎えに彼女は驚き、裏返ったような声を上げた。
「うわ、ビックリした。何? みんなまだ起きてたの?」
「心配だったから――」
「心配する必要なんてないよ。昔取った杵柄だし」
公子と女狐が話しているすきに、緑は蒼を連れてその場を立ち去ろうとした。蒼が爆発する前に、彼女から離れた所で気を落ち着けさせようと思ったのだ。
しかし、そうことは上手くは運ばなかった。
「あ、蒼さん!!」
女狐は蒼を呼びとめると、嬉しそうに彼に駆け寄った。
「ねえ、聞いて聞いて」
焦る緑を尻目に、女狐は嬉しそうに蒼の袖を掴んだ。
「城代がね……」
「触るな! 穢らわしい」
蒼は反射的に大声を上げ、女狐の手を払いのけた。
その場が一瞬凍り付いた。
そして、誰より傷ついた顔をしていたのは、「穢らわしい」という言葉を発した蒼本人だった。言われた当の女狐は、ただキョトンとした顔で、蒼を見つめていた。
蒼は彼女の顔を見てハッと我に返った。そして呻き声を上げ外へ飛び出していった。
女狐はただ黙ってその様子を見ていた。
「狐姑娘、あれはアイツの本心じゃないから」
緑は女狐の肩をポンと叩きながらそう言った。
「あの拗らせ野郎はこっちに任せてくれ」
そのまま彼は蒼の後を追って表へ出て行った。女狐は返事をする代わりに掌をヒラヒラ振って合図を送った。口元に静かな笑みを浮かべながら。
「申し訳ない!」
緑が出ていったあと、今度は公子が謝ってきた。
「――今度は公子? どうして謝るの?」
不思議そうに女狐は言った。
「だって、蒼さんの言っていることは正しいんだから」
「え?」
「だって、私はそういう存在なんだもの」
自分に言い聞かせるように彼女は続けた。
「ここ数ヶ月、みんながごく普通に接してくれてたからすっかり忘れてた。自分が忌み嫌われる存在だってこと」
天帝にすらその存在を嫌われている妖。それが本来の自分だ。
「そんなこと」
「あるんだって」
女狐は淡々と言葉を続けた。
「やっぱり蒼さんはすごいね。ちゃんと本質を見ててくれた。根本的にあなたたちと私は違う。それはどうしようもないことだって、忘れちゃいけないことを思いだせた」
「違う!」
公子は彼女の言葉を遮るように大きな声で言った。
「私は、本当の私の名は、麹智興。高昌王国の第三王子だ」
「公子! それは言わない約束……」
いきなり名乗りを上げはじめた公子に、彼女は慌てた。
「どうせ知っているだろう? どうでもいい。聞いてくれ」
公子はかまわず続けた。
「私は物心ついた頃は、“可汗の子”のように育てられていた。それがある日突然、高昌国の王太子のようなものになって、今は謀反人のようなものだ」
「公子……」
「でも結局、周りがそう決めつけただけで、私自身は何ら変わりない。この先だって、私がなんであるかは周りが決めるんだ。だけど、私自身は私自身で、この先、何があろうと変わることはない。狐姑娘、お前だってそうだろ」
「……」
「私にとって、今この目の前にいるお前の姿がすべてだ。生まれも育ちも関係ない。出会ったときから、身体を張って私たちを助けてくれた。それだけで十分だ」
それは思いがけない言葉だった。思いもよらないほど、嬉しい言葉だった。
「そう、身体張りすぎなんだよ」
そう言って公子は深い溜め息を吐いた。
「今回だって……大丈夫なのか?」
「何が?」
「何がって……その……あれだ、その」
真っ赤になって口ごもる公子の様子で、女狐は言わんとすることを察した。そして彼の様子がとても可愛らしく感じて、思わず吹き出した。
「大丈夫よ、生娘じゃないんだし。それに、酒が入りすぎて、適当に撫でて話しただけで相手は満足したよ」
ケラケラと笑いながら答えた彼女を見て、公子は更に顔を赤くした。
「でも、ありがとう。心配してくれて」
「あ、ああ。そうか」
公子はふうっと大きく息を吐いた。この人は本当に良い人だ、女狐はそう思いながら公子の顔色が変わる様子を面白そうに眺めていた。
「礼を言うのはこちらの方だ。首尾良くいったのかだろう?」
女狐はこくりと頷いた。
「ああ、やっと終わるのか」
彼女はもう一度頷いた。
「――もちろん、狐姑娘も一緒に来てくれるよな。この先もずっと」
今度は頷かなかった。黙って彼の顔を見ていた。
「……考えとく」
しばらく経ってから、彼女はそう答えた。妖狐崩れの自分は、一つ所に留まってはいけないと思う気持ちと、まだ彼らと一緒にいたい気持ちに揺れていた。頭の中には、先ほどの蒼の言葉が繰り返し響いていた。
「やっぱりここか」
緑は、植え込みの中に蹲っている蒼を見つけるや否や、そう声をかけた。
「そうやって蟻とか見てるんだよな。五歳の頃から変わってねえな」
「……黙れ」
二人が初めて出会った頃――高昌から西突厥へ逃れる道中、蒼はちょくちょく癇癪を起こして隊列から逃げ出した。しかし彼の護衛についていた緑にすぐ見つけられ、あっという間に隊列に戻された。
「なんですぐ解るんだよ」
「何でかな、解るんだよ」
緑の頭をクシャクシャと撫でながら緑は答えた。
「止めろ」
蒼は緑の手を払いのけながら言った。
「もう、五歳のガキじゃない」
「五歳のガキの方がマシだよ。この拗らせ野郎が」
「拗らせ野郎ってなんだよ」
「拗らせてるだろ、充分に。さっさと抱けば良かったんだよ」
「抱けって……誰を」
「狐姑娘」
緑の言葉に、蒼は真っ赤になって顔をヒザに埋めた。
「ほら、拗らせてる」
そう言いながら、緑は蹲っている蒼の横に腰を下ろした。
「拗らせてねえよ。狐姑娘とデキてるのはお前だろ」
そう言いながら、手を伸ばして緑の身体をグッと押した。
「デキてる!? アイツと俺が? んなわけないだろ」
「んなわけあるだろ。明け方、お前の部屋から出てくるのを何回か見た」
その言葉に、緑はああと頷くと、ニヤリと笑った。
「妬いてくれて嬉しいがな、色艶ごとなんて一切ないよ。ありゃ、多分仙術の一種だ」
「仙術?」
「毎朝、なんかやってくれてた。俺がこんな身体だからな。おかげで多少は調子が良くなった。焉耆に来てからはさっぱりだけどな。あの村の空気が良かったのかな」
「そうか……」
「しかし、お前も気づいてたんだな。狐姑娘、誰にも気づかれてないと思ってるんだぞ、いまだに」
その口ぶりから、公子も気づいてたことがうかがえた。
「アイツらしいな」
蒼はゆっくりと顔を上げた。緑はその表情を見て、コイツはベタ惚れじゃないかと思った。
「あんな噂が立ってたんだ、お前が色恋事に慎重になるのも解る」
「ああそれな」
緑の言葉にかぶせ気味に言った。
「多分、本当、らしい」
「――なのか?」
「真相は、本人達にも解らないかもしれない。だけど、伯父貴はそのつもりだよ」
蒼の母親は、もともとは張将軍と恋仲だった。しかし家同士の取り決めで、張将軍には彼女の姉が嫁ぐことになり、彼女は張将軍の弟――つまり蒼の父に嫁いだ。兄弟姉妹の長幼の序で娶されたのだ。
そして張将軍夫妻は子どもに恵まれず、弟夫婦の子どもの中から末子の蒼が選ばれ、総領息子として育てられた。彼がなぜ選ばれたのか……実は張将軍との不義の子だからなのだと、口さがない連中の噂になっていた。幼かった彼らの耳にも届くぐらいに。
だから、蒼は女性関係にはとても慎重だった。草原の乙女達の奔放な誘いにも一切乗らなかった。「不義の子」という重しが彼にあったからだ。
「だからって、もう張家とは縁を切ったんだろ。お前は自由だ。好きな女と好きなことして良いんだよ」
「簡単に言うな」
「簡単だよ。好きなら好きでいいんだ。変な思惑が絡むと、うちのお袋みたいになる」
「重いこと言うな」
蒼は溜め息を吐くと、膝に顔を埋めた。
「……許してくれるかな」
「許すも何も、マジ怒りだったら、お前蹴っ飛ばされて屋敷の反対側まですっ飛んでるよ」
「そうかな」
「とりあえず謝れ。女と上手くいくコツは、とにかくまず謝ることだ」
生真面目に言う緑に、蒼は思わず吹き出した。彼が過去に色事であったことを思いだしたからだ。
「解った。戻って謝るよ。無理させて悪かった」
そう言って蒼は立ち上がった。
二人が離れに戻ると、中はそれなりに騒ぎになっていた。
「あ、蒼さん、良いところに戻ってきた」
先ほどのことは全く意に介さない様子で、女狐が聞いてきた。
「化粧って、どう落とすの?」
彼女の顔はびしょびしょのドロドロで、見るも無惨な有様になっていた。
「水で落ちないの……」
「落ちないって、今までどうしてたんだよ」
「どうしてたって……(妖力で)ぴゅーっとやってパッと落としてた」
「男の俺には全く想像できんぞ、そう言われても。日が昇ったら夫人に落としてもらえ」
「もう、顔が重いのよ、今すぐ落としたい、何とかして」
「何とかって、乳とか?」
「そうだ、草原ではだいたい乳で何とかしてたな!」
蒼の言葉に公子はポンと手を叩くと厨房へ走って行った。使用人が朝餉の支度をしている時分だから、乳も手に入ると考えたからだ。女狐も公子の後を追って走って行った。
結局、この騒ぎで蒼は彼女に謝りそびれた。あまりにもいつもの彼女だったせいもあった。
そして、使用人達も巻き込んで化粧を落とした彼女は、いつもの格好になると蒼に言った。
「明後日、城代が西突厥の使者を連れてきてくれる」
長い旅の終わりが見えたと、蒼は思った。
しかし、当日離れに訪れたのは、西突厥の使者ではなかった。
「伯父上――」
城代に連れられ、母屋から離れに向かってくる人影に蒼は驚いた。西突厥の属国同士としてかろうじて争ってはいないが、両国間の中は決して良くはなかった。だからこの二人が通じているのは夢にも思っていなかった。
「やられたな」
緑も同じ考えのようだった。
「裏から逃げるか?」
「いや、恐らく囲まれてるだろう。状況が解らない中でむやみに動くのは危険だ」
張将軍の影が近づいてくる中で、蒼は必死に考えた。
「狐姑娘」
「何? 熨してくる?」
その言葉に蒼は彼女らしいな、と笑った。
「大事になるからそれは止めてくれ。あと、絶対に伯父の前に姿を現すな。お前は重要な手駒だ。伯父に絶対に知られたくない。頼みたいのは、いつでも出られるように支度をしてほしいことだ」
「解った」
この時彼女は、公子を逃がすための準備を指示されたのだとばかり思っていた。たった一人、泣きながら村へ――阿兎の元へと行くことになるなんて夢にも思っていなかった。
供の者を一人もつけず、張将軍は離れに入ってきた。そして、公子に臣下の礼を取った後、身内の話をしたいと許しを請い、蒼と別室に通してもらった。張将軍を案内した城代は漢の妓女――女狐の姿が見えないことに気づくと、そそくさと本邸に戻っていった。おそらく彼女を探しているのだろう。
「綰曹郎中ともあろう人が、供の者一人もつけずにこんなところに一人で来るとは……」
二人きりになった後、しばしの沈黙のあとに口を開いたのは蒼だった。それは彼の精一杯の虚勢だった。
「久しぶりに息子と会うのに、なぜ供が必要なのか?」
相変わらず食えない人だと、蒼は思った。
「まあ、お前は私に会いたくなかったようだがな。――ここまで行方が掴めぬとは思わなかったよ。しかし、運が良かった。たまたま外交で訪れた先にお前たちがいるとはな。ちょうど篤進に着いたときに、城代から報せが来て驚いたよ」
「伯父上が、城代と誼を通じているとは知りませんでしたよ」
「王家同士に軋轢がある上、うちの分家は使えないからな。私が動くしかないだろ」
伯父の話を聞きながら、長年の根回しが、ここで差になったのかと蒼は唇を噛んだ。
「案外近くにいたのだな。漠北へ行った気配がなかったから、漢地に行ったかとも思っていたのだがな」
(これは、詰んだか……)
運は伯父の方にあった。そしてその運を引き寄せたのは、伯父が長年してきたことの結果だ。蒼は打つ手を必死に考えていたが、何も思い浮かばなかった。
「しかし、上手くやったな」
「こうやって見つかったのに、ですか?」
「すんなり西突厥に戻っていれば、王子の罪をそのまま事実にできたんだがな。こうまで時が経ち、西突厥も動いていないとあれば、王子に謀反の罪をかぶせるには少し難しくなった」
(まだ手はあるのか?)
伯父の話を注意深く聞きながら、蒼は思案を巡らせていた。
「だから王子と二人で高昌に戻ってこい」
伯父に口から出た答えに、蒼は虚を衝かれた。
「……どういうことですか」
「新しい筋書きを作った。謀反の企ては譚家。お前と王子は拐かされ、脅されていた。焉耆城の近くで再度謀反を計っていたところを一網打尽にし、救い出したと。首謀者の譚兄弟は高昌城にて処刑。王子は予定どおり田地公となり、お前はしばらく王子を補佐した後、綰曹府に入り私の跡を継ぐといい」
「祥吉も処刑するのですか」
祥吉は阿兎の幼名である。
「譚の血を継いでいる以上、仕方あるまい」
「祥吉はここにはいませんよ。途中で別れました」
「かまわんさ。そのうち見つかるだろう。器はないから、彼奴だけで譚家を再興し反旗を翻す力はないしな。惜しむらくは長男の方だな。まあ、余命が限られているようだから、最後はお前たちの役に立ってもらえばそれで良いではないか」
蒼は下を向き、拳をギュッと握りしめ、肩をフルフルと震わせた。そして大声で笑い出した。
驚く張将軍を尻目に、蒼は気が済むまで笑い続けると、大きく息を吐いた。そして顔を上げて張将軍の目をじっと見据えた。
「伯父上、叔母上が二人目のお子をお産みになったそうですが、息災ですか?」
張将軍の先妻――つまり蒼の母の実姉は身体が弱く、子を生さぬまま亡くなった。そして先だって将軍が向かえた後妻は、蒼と年がそう変わらず、若く壮健であった。そして彼女は嫁いで数年のうちに男の子を二人産んでいた。
「ああ、身体の弱い長子に比べ、次子は今のことろ病気らしい病気もせず、元気にしている」
「そうですか。それは僥倖」
蒼は目を瞑り、深呼吸をした。ここから、自分が打てる最後の手だ。
「私自身、詰めが甘いと思っていましたが、伯父上も甘いですね」
「何?」
「すでに二人も実子がいる中で、まだ私を後継者に押すのですか? いらぬ諍いの種を蒔いたままにするとは伯父上らしくない。ここは、私を首謀者にして消してしまうのが一番ではないですか」
「……定和」
「第一、譚建武長史は戦事には長けてますが、謀は今ひとつなのですよ。こんな大がかりな策、私以外、誰が計るというのですか」
そして蒼は椅子から立ち上がると、張将軍の前に膝をつき、頭を垂れた。
「私は、己の諍いに智興王子を巻き込みたくはありません」
「それが本心か」
「ええ」
「私の目の黒いうちはそうはさせない」
「そうでなくなったときに起こる諍いですよ、伯父上。ここで私を重用すれば、不義の子であるという疑惑に真実味が出てしまいます。むしろ、実子の誕生に焦った甥が起こした事変であるなら、伯父上の名誉は守られましょう」
「お前は……」
張将軍は椅子に深く座り直すと、溜め息を吐き天を仰いだ。
「昔から意固地な奴だったな」
「意固地ついでに、伯父上から頂いた定和という諱も、そして張という家名も返上いたします」
「何と?」
「私のことは、ただの“蒼”とお呼びください」
「蒼?」
「ある人が私につけてくれたんです。結構気に入っているんですよ。この呼び名」
彼は嬉しそうにそう言った。
張将軍配下の兵は本邸とその周囲に配置されていると、将軍自らが告げた。そして用意をしてくるからと、一度離れを後にした。それは逃げるなと言う脅しでもあり、幼なじみ三人に別れを惜しむ暇を与えるという恩情でもあった。
「伯父上」
蒼は出て行こうとする張将軍に声をかけた。
「――我が子として育てていただいた恩、決して忘れません」
張将軍の歩みが一瞬止まった。
「ありがとうございました、父上」
蒼は深々とお辞儀をした。張将軍は振り向かぬまま黙って出て行った。
「……意固地な親子だ」
その様子を見て、緑はぽつりと呟いた。そこへ隠れていた女狐が姿を現した。その顔を見て緑はギョッとした。泣き顔の彼女を初めて見たからだ。
「蒼さん、何考えてるのよ」
彼女は隠れながら全ての話を聞いていた。
「私が囮になる。その隙に村へ逃げよう。あそこなら気づかれずに過ごせる」
蒼はゆっくりと首を振った。
「いつかは気づかれる。そうしたら、五郎さんや婉さん、それに生まれてくる子どもはどうなる?」
その言葉に、女狐はハッとした。
「それに、今の状態では西突厥にも公子の居場所はない。だから、自分の命と引き換えに居場所を作る時間を稼ぐ」
「どういうことよ」
蒼は答える前に緑の方を見た。
「俺はどっちにしろあとわずかな命だからな。最後に華々しく散れるんでむしろ良いさ」
緑の言葉に蒼は苦笑いを浮かべた。ここにいる全員、身内の話に聞き耳を立てていたわけだ。説明の手間が省けてちょうど良い。
「村に集めた譚家の残党はどれくらいだ」
彼らが焉耆に向かうのと入れ違いに、緑が手配していた譚家の残党が村に集まってきていた。
「主力は高昌との戦いで潰されたからな。後方支援と諜報部隊が中心だが、そのうちまだ譚家としてやりたいイカれた連中は大して残っていない。十を少し超えればマシな方だな」
緑の言葉に蒼は頷いた。
「狐姑娘、急いで村に戻れ。そして阿兎と一緒に新たな譚家をまとめ上げ、公子を救い出して北へ逃がしてくれ」
それは一朝一夕でできることではない。
「簡単なことではないのは解っている。阿兎一人でも無理だ。お前の力が絶対必要なんだ。時間は私が稼ぐ。私の命と引き換えに、公子の命は当面保障されるはずだ」
この人、なに無茶苦茶なことを言っているんだろうと、涙を堪えながら女狐は思った。だけど――
「急げ、狐姑娘。捕縛の手が来る前に、ここを抜け出せ」
蒼の勢いに気圧され、女狐は大した別れの挨拶もできぬまま離れを出て行った。
「若先生は勝手だな」
女狐が出て行き、捕縛の者たちが来るまでの少しの間、とても静かだった。
「なんで、勝手に決めてしまうんだ」
その静けさの中、公子は悲しそうに言った。
「公子をあの草原に帰すためです。可汗家の者でも王家の者でもなく、ただの牧民として」
公子は悲しそうなまま微笑んだ。
「そうか、なら草原では興爺とでも名乗るか」
公子の頬に一筋の涙が伝った。
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「公子」
蒼は公子の手を取った。
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「そうだな。私も粉黛でむせ返る都市より、風薫る草原の宴が好きだ」
公子は蒼と緑の肩を抱いて顔を寄せた。
「草原の空の蒼、草海原の緑を見るたび、私はお前たちを思い出すよ」
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