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第一章 最強パーティ、一夜にして糞雑魚パーティへ
第13話 救助要請
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「流石に蝙蝠コウモリとムカデくらいならなんとかなるもんだな。特に蝙蝠は美味しく頂けちゃうくらいまである!」
「つってもワシ、蝙蝠と戦うのは昔は結構苦手じゃったわ」
「あ~。昔は動きが全く理解できなかったのよね。全然火矢が当たらなくて私も苦手だったわ」
突然距離を詰めつつ獲物の回りを旋回。隙があれば噛み付いてくる。それが蝙蝠の習性だ。
この”いつ来るか?”ってのがガキの頃は全然わかんなかったんだよなあ。
こっちが押せば引いて。こっちが引いたら押してきやがる。どっちつかずの蝙蝠野郎!
そんでさ、わかりやすいスキを見せて反撃に徹すれば簡単に倒せるってことに気づいたのは冒険者何年目の頃だったっけな。
「レベルは下がってもモンスターの知識はそのままなのがせめてもの救いだね。お、短刀だ。ベルティーナ持っておきなよ」
「所謂いわゆる初見殺しにはなんとか対応できそうよね。目を見たら操られる~なんてモンスターはどうとでもなるけど。それよりも力押しのシンプルな奴が一番危険よね。ゴーレムとか出てきたらアイザックとギフン。あんたら大丈夫なの?」
ベルティーナが俺とギフンを交互に見やる。うーん! プレッシャー!
そうなんだよなあ。下手に技量や絡め手に頼る敵よりも、それこそ大ネズミみたいにシンプルに強いやつの方が圧倒的に辛い。
結局最後は実力勝負、ってことになると実力がガタ落ちしている俺たちが圧倒的に不利なんだよなあ。
ゴーレム、スケルトンナイト、ジャイアントビートル、ああそれに狼の集団なんかもそうか。
あれ? 結構多くね? シンプルかつ力押しなモンスターって多くね?
「地力のある奴への対策を考えとかないと詰みかねないんだよなあ俺たち」
「地力のある奴への対抗策は地力をつけるしかないよアイザック」
オスカーが解錠道具である鍵束をクルクル回しながらツッコミを入れてくる。
「仰る通りでござんす」
わかってんだよ! んなこたぁ十年以上その手の奴らに散々ボコられてわかってんだけどね。
それでもね……なんかこう……ね? 楽? したいじゃん?
となると取れる対策は一つしかない。
「それと……やっぱりあと二人面子が欲しいね」
「それな!」
「前衛三の後衛三じゃないと地下二階ですら行き詰まるだろうね僕らは。といってもそう簡単にはいかないだろうね」
俺が考えていたことをオスカーはそのまま口にしてくれた。
それなんだよ。やっぱ四人はキツいんだよ
実際のところ迷宮に潜るパーティは六人が基本とされている。前衛に三人。後衛に三人だ。
それ以上は通路の幅も狭く連携も取りづらい。
”迷宮は六人で潜れ”新人冒険者はギルドで一番最初にこの教えを学ぶ。俺もそう学んだ。
「とは言えなあ。面子増やすにしても結構壁高いぜえオスカーよお」
「そうなんだよね……」
レベルドレインの事実を不特定多数に知られたくない俺たちは他の面子を募集することも出来ず、四人で迷宮に潜ることになったのだ。
あと俺もベルティーナもギフンもオスカーも友達が全然いない。
コネとか冒険者同士の絆とか……もっと大切にしてればよかった! でも知らない人に話しかけるの恥ずかしいし……
「仲間は欲しいが事情は迂闊に話せないぞ。元々俺たちのことを知っていて”あれ? 皆さんレベル20じゃありませんでした?”となりかねない」
「君の言う通りだよアイザック。とはいえこの四人でまたあのネズミとやり合うことを考えると実に厳しいね」
「そうねえ。またあのネズミに襲われたらうちの底辺ファイターと底辺サムライが秒でぶっ殺されちゃうわよ」
「そうじゃのう。先のネズミとの戦い。ワシは偶然クリティカルが出たお陰で倒せたが、そうでなければアイザックよりもひどい目にあってたかもしれんわい」
「クリティカル! ギフンクリティカル出してたのか!? へー! ふーん!」
ついつい声が上ずってしまった。
クリティカルを出していたのか。だからネズミとの戦いでも軽傷だったんだな。
同じレベル1でも俺が大怪我でギフンが軽傷だから正直不安というか、そこまで実力が離れてたのか! って心配だったんだよね実は……
「あれ? あれあれ? アイザックお主もしかしてワシと違って大怪我負ってたから不安になっちゃってた? もしかして僕……ギフン様よりクソザコなんじゃ……? ってなっちゃってたら申し訳ないのう~」
ギフンが髭をクルクル弄りながら俺の回りを旋回しながら茶化してくる
「……っげーよ! そんなんじゃないっての!」
「ほんとかのう~」
「アイザックはそういう見栄というか負けず嫌いな所があるのよねえ~。よかったわね~アイザックちゃ~ん。ギフン君と比べてクソザコじゃなくてよかったわね~」
「っげーし! 全っ然っげーし! そんなんじゃねーし!」
「静かに!」
キャッキャウフフしていた俺たちを床に耳をつけたオスカーが戒める。
「敵か?」
隊列を整え剣の握りを確かめる。俺とギフンが前。
ベルティーナとオスカーが後ろだ。オッケェいつでも振れる
「南……南東で他の冒険者が襲われてる。二人だ。片方は男。もう片方は女だね。かなり劣勢だ」
「モンスターは?」
「数も種類もわからない。冒険者以外の音が聞こえない。蝙蝠かスライムだろうね」
「アイザックどうするの? 私別にどっちでもいいけど」
つまらなさそうに杖の煤を払いながらベルティーナが口を開く。
うーん……どうすっかなあ。俺たちは善人の完璧人間パーティなんかじゃないし
迷宮ってのは自己責任の世界だ。
最下層でドラゴンに殺されかけてるような状況なら見捨てて逃げ出しているだろうがここは地下一階。
それもモンスターは蝙蝠かスライムだ。それなら
「ん~……一応助けとこうか。走るぞ。道中ネズミに出くわしたら救助は断念。戦闘に集中って感じで」
「妥当なとこじゃと思うぞ。それじゃ行くかのう」
「ああ。少し南に行けばきっと君たちの耳にも届くはずだよ」
「んじゃ行きましょ。あ、私あと二回しか魔法使えないからそのつもりで」
俺たちはまだ見ぬ冒険者二人組に向けて走り出す。
死体を寺院に持っていくのもめんどいしでまだ生きててくれればいいけども。
「つってもワシ、蝙蝠と戦うのは昔は結構苦手じゃったわ」
「あ~。昔は動きが全く理解できなかったのよね。全然火矢が当たらなくて私も苦手だったわ」
突然距離を詰めつつ獲物の回りを旋回。隙があれば噛み付いてくる。それが蝙蝠の習性だ。
この”いつ来るか?”ってのがガキの頃は全然わかんなかったんだよなあ。
こっちが押せば引いて。こっちが引いたら押してきやがる。どっちつかずの蝙蝠野郎!
そんでさ、わかりやすいスキを見せて反撃に徹すれば簡単に倒せるってことに気づいたのは冒険者何年目の頃だったっけな。
「レベルは下がってもモンスターの知識はそのままなのがせめてもの救いだね。お、短刀だ。ベルティーナ持っておきなよ」
「所謂いわゆる初見殺しにはなんとか対応できそうよね。目を見たら操られる~なんてモンスターはどうとでもなるけど。それよりも力押しのシンプルな奴が一番危険よね。ゴーレムとか出てきたらアイザックとギフン。あんたら大丈夫なの?」
ベルティーナが俺とギフンを交互に見やる。うーん! プレッシャー!
そうなんだよなあ。下手に技量や絡め手に頼る敵よりも、それこそ大ネズミみたいにシンプルに強いやつの方が圧倒的に辛い。
結局最後は実力勝負、ってことになると実力がガタ落ちしている俺たちが圧倒的に不利なんだよなあ。
ゴーレム、スケルトンナイト、ジャイアントビートル、ああそれに狼の集団なんかもそうか。
あれ? 結構多くね? シンプルかつ力押しなモンスターって多くね?
「地力のある奴への対策を考えとかないと詰みかねないんだよなあ俺たち」
「地力のある奴への対抗策は地力をつけるしかないよアイザック」
オスカーが解錠道具である鍵束をクルクル回しながらツッコミを入れてくる。
「仰る通りでござんす」
わかってんだよ! んなこたぁ十年以上その手の奴らに散々ボコられてわかってんだけどね。
それでもね……なんかこう……ね? 楽? したいじゃん?
となると取れる対策は一つしかない。
「それと……やっぱりあと二人面子が欲しいね」
「それな!」
「前衛三の後衛三じゃないと地下二階ですら行き詰まるだろうね僕らは。といってもそう簡単にはいかないだろうね」
俺が考えていたことをオスカーはそのまま口にしてくれた。
それなんだよ。やっぱ四人はキツいんだよ
実際のところ迷宮に潜るパーティは六人が基本とされている。前衛に三人。後衛に三人だ。
それ以上は通路の幅も狭く連携も取りづらい。
”迷宮は六人で潜れ”新人冒険者はギルドで一番最初にこの教えを学ぶ。俺もそう学んだ。
「とは言えなあ。面子増やすにしても結構壁高いぜえオスカーよお」
「そうなんだよね……」
レベルドレインの事実を不特定多数に知られたくない俺たちは他の面子を募集することも出来ず、四人で迷宮に潜ることになったのだ。
あと俺もベルティーナもギフンもオスカーも友達が全然いない。
コネとか冒険者同士の絆とか……もっと大切にしてればよかった! でも知らない人に話しかけるの恥ずかしいし……
「仲間は欲しいが事情は迂闊に話せないぞ。元々俺たちのことを知っていて”あれ? 皆さんレベル20じゃありませんでした?”となりかねない」
「君の言う通りだよアイザック。とはいえこの四人でまたあのネズミとやり合うことを考えると実に厳しいね」
「そうねえ。またあのネズミに襲われたらうちの底辺ファイターと底辺サムライが秒でぶっ殺されちゃうわよ」
「そうじゃのう。先のネズミとの戦い。ワシは偶然クリティカルが出たお陰で倒せたが、そうでなければアイザックよりもひどい目にあってたかもしれんわい」
「クリティカル! ギフンクリティカル出してたのか!? へー! ふーん!」
ついつい声が上ずってしまった。
クリティカルを出していたのか。だからネズミとの戦いでも軽傷だったんだな。
同じレベル1でも俺が大怪我でギフンが軽傷だから正直不安というか、そこまで実力が離れてたのか! って心配だったんだよね実は……
「あれ? あれあれ? アイザックお主もしかしてワシと違って大怪我負ってたから不安になっちゃってた? もしかして僕……ギフン様よりクソザコなんじゃ……? ってなっちゃってたら申し訳ないのう~」
ギフンが髭をクルクル弄りながら俺の回りを旋回しながら茶化してくる
「……っげーよ! そんなんじゃないっての!」
「ほんとかのう~」
「アイザックはそういう見栄というか負けず嫌いな所があるのよねえ~。よかったわね~アイザックちゃ~ん。ギフン君と比べてクソザコじゃなくてよかったわね~」
「っげーし! 全っ然っげーし! そんなんじゃねーし!」
「静かに!」
キャッキャウフフしていた俺たちを床に耳をつけたオスカーが戒める。
「敵か?」
隊列を整え剣の握りを確かめる。俺とギフンが前。
ベルティーナとオスカーが後ろだ。オッケェいつでも振れる
「南……南東で他の冒険者が襲われてる。二人だ。片方は男。もう片方は女だね。かなり劣勢だ」
「モンスターは?」
「数も種類もわからない。冒険者以外の音が聞こえない。蝙蝠かスライムだろうね」
「アイザックどうするの? 私別にどっちでもいいけど」
つまらなさそうに杖の煤を払いながらベルティーナが口を開く。
うーん……どうすっかなあ。俺たちは善人の完璧人間パーティなんかじゃないし
迷宮ってのは自己責任の世界だ。
最下層でドラゴンに殺されかけてるような状況なら見捨てて逃げ出しているだろうがここは地下一階。
それもモンスターは蝙蝠かスライムだ。それなら
「ん~……一応助けとこうか。走るぞ。道中ネズミに出くわしたら救助は断念。戦闘に集中って感じで」
「妥当なとこじゃと思うぞ。それじゃ行くかのう」
「ああ。少し南に行けばきっと君たちの耳にも届くはずだよ」
「んじゃ行きましょ。あ、私あと二回しか魔法使えないからそのつもりで」
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