ダンジョンズ&かませ犬s

気づいたら寝てた

文字の大きさ
30 / 62
第一章 最強パーティ、一夜にして糞雑魚パーティへ

第30話 プライベートのお誘い

しおりを挟む
「あー……えーっと……そう、なんですか旦那」

 デュランスは困惑しているようだった。

 無理もない。まだデュエル&ドラゴンズ初心者だもんな。

「そうなんだよ。今や時代はドラゴンデッキって風潮を俺はぶっ壊したいんだ! 確かにドラゴンは強いよ!? でもさあ!」
「いやあの、あの。レベルドレインの方です」
「ああ。そっちか。本当参ったもんだよ。俺達のレベルを吸い取った野郎には是非ともツケを払わせないとな!

 そのツケが溜まってる奴が鼠の王なのかどうかは定かではないがな。

「じゃ、じゃあベルティーナの姉さんは元々は最高位の魔法を使えてたんスか!?」

 ソニアが人懐っこい犬のようにピョンピョンと跳ねながらベルティーナに詰め寄る。

「まあ? その気になれば? 一日三回は使えてたわね。朝起きた時に『今日は隕石招来とデーモン召喚と津波にしようかしら』みたいに気分でコーディネートしてたかしら?
「すっげえっス! パねっスよ姉さん!」
「暖かくなってきた春は魔界植物召喚とか。季節に合わせた呪文コーディネート。出来るエルフのイマドキスペルっていうの?」
「パパパパパねっス! 超パねっス姉さん!」

 ま~たベルティーナがソニアのヨイショに気持ちよくなっている。
 なんだよ出来るエルフのイマドキちょいツヨ呪文コーデって。
 とはいえこいつの最高位魔法には何度も助けられた。
 ベルティーナの魔法で水洗便所のように流されていく吸血鬼の群れは今思い出すだけで爽快だ。
 異形との戦いでもこいつの魔法の矢マジック・ミサイルが活躍したし、鼠の王と戦うことになるのなら鍵はこいつが握っているだろうな。

「それじゃあ一旦街に戻ろう。全員消耗している。特に前衛がね」
「ああ。それがええわいええわい。アイザック。ローストチキンはまた今度じゃな」
「スライムの憂鬱はまた今度か~。残念だ」
「う、うむ。そのスラ……ローストチキンは次の機会に楽しみにしておいてくれ」

 オスカーの言う通り俺もギフンもソニアも相当消耗している。
 あの異形とまた出会ってはたまらない。探索は打ち切って退却が最善だ。

「僕が先行する。接敵は出来る限り避けていこう」
「ああ。オスカー頼む」

 オスカーが先導してくれたおかげで俺達はモンスターと出くわさずに迷宮の出口へとたどり着けた。
 陰鬱な迷宮から気持ちのいい風が吹きすさぶ外へ開放されるこの瞬間はやはり気持ちがいいもんだ。

「ヴァァァ! 疲れだあああ!」

 ベルティーナが腰を降ろしてとてもエルフとは言えない声を喉から振り絞る。
 お前本当エルフなのか? お前に会うまではエルフってもっとこう……神聖な種族だと思ってたよ。
 あーあーあーがに股だよこのダークエルフ! おはしたないことで! まだドワーフのギフンの方がおしとやかだぜ!

「んじゃ……今日は解散だな。明日も朝一でここに集合」
「僕はアイテムをコーヘイの所に売り払ってくよ。お金は明日みんなに等分で分けるよ。じゃあね」
「ワシはとにかく帰って寝るぞい。流石に今日は張り切りすぎたわい」
「私も帰って寝るー!」

 オスカーは戦利品の売却。ギフンは宿屋で爆睡。ベルティーナも家で休むようで三人ともそそくさと帰ってしまった。ドライな奴らだよ全く。 
 そんな三人の背中を見ながら俺はどうしようか悩んでいた。
 確かに疲れてはいるがまだ夕刻。寝るには早いし。かといって腹も減ってないしなあ。

「あの、アイザックの旦那」

 どうしたものかと途方に暮れていた所デュランスが話しかけてきた。

「ん?どうしたデュランス。それにソニア。お前達は帰らないのか?」

 間髪入れずにソニアが顔をグイッと近づけてくる。近い近い近いかわいい近い!

「アイザックさん! うちに遊びに来ないっスか!?」
「お、お前らの?」
「そうッス!」

 なんとも意外な申し出だった。でもいいのかなあ同棲カップルの家にお邪魔って。完全に除け者ムーブじゃないのか?
 そんな俺の心配をよそにソニアはグイグイと迫る。

「いいじゃないっスか! パーティの仲間をおうちに呼ぶの夢だったんスよ!」
「そ、それは何よりだがなんで俺だけなんだ?」
「だってオスカーの旦那はアイテム売却しなきゃですし、ギフンの旦那とベルティーナの姉さんはすごいお疲れに見えたんで……」
「あ~それでまだ体力残ってた俺なら誘ってもいっかって感じのやつ?」
「その通りです。どうでしょう? 粗末ですけど飯も出せますよ」

 そういうことか。何もパーティの面々と親交を深めるのは迷宮だけじゃない。
 街や酒場でコミュニケーションを取ることでパーティ間の相互理解を深めて戦力の増強に繋がる。
 それに若い奴らが勇気を出して誘ってくれたんだ。ここで断るのは男じゃない。

「それじゃお邪魔しようかな。でもいいのか本当に。ソニアお前は疲れてないのか?」
「大丈夫っス! 自分魔力はないけど体力だけは人一倍エルフ十倍あるんス!」
「そうか。俺と同じだな。やっぱ前衛は体力ないとな!」
「二人共タフだなあ……」

 俺とソニアを見ながらデュランスがぼやく。
 わかってないなデュランス。戦闘技術? 力? 前衛に必要なのはまず第一にタフさなんだよ!

「それじゃ案内しますよ旦那! すぐそこなんです!」

 二人の愛の巣か。なんだかこそばゆい気持ちを胸に俺達は迷宮入り口から離れ街へと向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...