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第一章 最強パーティ、一夜にして糞雑魚パーティへ
第30話 プライベートのお誘い
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「あー……えーっと……そう、なんですか旦那」
デュランスは困惑しているようだった。
無理もない。まだデュエル&ドラゴンズ初心者だもんな。
「そうなんだよ。今や時代はドラゴンデッキって風潮を俺はぶっ壊したいんだ! 確かにドラゴンは強いよ!? でもさあ!」
「いやあの、あの。レベルドレインの方です」
「ああ。そっちか。本当参ったもんだよ。俺達のレベルを吸い取った野郎には是非ともツケを払わせないとな!
そのツケが溜まってる奴が鼠の王なのかどうかは定かではないがな。
「じゃ、じゃあベルティーナの姉さんは元々は最高位の魔法を使えてたんスか!?」
ソニアが人懐っこい犬のようにピョンピョンと跳ねながらベルティーナに詰め寄る。
「まあ? その気になれば? 一日三回は使えてたわね。朝起きた時に『今日は隕石招来とデーモン召喚と津波にしようかしら』みたいに気分でコーディネートしてたかしら?
「すっげえっス! パねっスよ姉さん!」
「暖かくなってきた春は魔界植物召喚とか。季節に合わせた呪文コーディネート。出来るエルフのイマドキスペルっていうの?」
「パパパパパねっス! 超パねっス姉さん!」
ま~たベルティーナがソニアのヨイショに気持ちよくなっている。
なんだよ出来るエルフのイマドキちょいツヨ呪文コーデって。
とはいえこいつの最高位魔法には何度も助けられた。
ベルティーナの魔法で水洗便所のように流されていく吸血鬼の群れは今思い出すだけで爽快だ。
異形との戦いでもこいつの魔法の矢マジック・ミサイルが活躍したし、鼠の王と戦うことになるのなら鍵はこいつが握っているだろうな。
「それじゃあ一旦街に戻ろう。全員消耗している。特に前衛がね」
「ああ。それがええわいええわい。アイザック。ローストチキンはまた今度じゃな」
「スライムの憂鬱はまた今度か~。残念だ」
「う、うむ。そのスラ……ローストチキンは次の機会に楽しみにしておいてくれ」
オスカーの言う通り俺もギフンもソニアも相当消耗している。
あの異形とまた出会ってはたまらない。探索は打ち切って退却が最善だ。
「僕が先行する。接敵は出来る限り避けていこう」
「ああ。オスカー頼む」
オスカーが先導してくれたおかげで俺達はモンスターと出くわさずに迷宮の出口へとたどり着けた。
陰鬱な迷宮から気持ちのいい風が吹きすさぶ外へ開放されるこの瞬間はやはり気持ちがいいもんだ。
「ヴァァァ! 疲れだあああ!」
ベルティーナが腰を降ろしてとてもエルフとは言えない声を喉から振り絞る。
お前本当エルフなのか? お前に会うまではエルフってもっとこう……神聖な種族だと思ってたよ。
あーあーあーがに股だよこのダークエルフ! おはしたないことで! まだドワーフのギフンの方がおしとやかだぜ!
「んじゃ……今日は解散だな。明日も朝一でここに集合」
「僕はアイテムをコーヘイの所に売り払ってくよ。お金は明日みんなに等分で分けるよ。じゃあね」
「ワシはとにかく帰って寝るぞい。流石に今日は張り切りすぎたわい」
「私も帰って寝るー!」
オスカーは戦利品の売却。ギフンは宿屋で爆睡。ベルティーナも家で休むようで三人ともそそくさと帰ってしまった。ドライな奴らだよ全く。
そんな三人の背中を見ながら俺はどうしようか悩んでいた。
確かに疲れてはいるがまだ夕刻。寝るには早いし。かといって腹も減ってないしなあ。
「あの、アイザックの旦那」
どうしたものかと途方に暮れていた所デュランスが話しかけてきた。
「ん?どうしたデュランス。それにソニア。お前達は帰らないのか?」
間髪入れずにソニアが顔をグイッと近づけてくる。近い近い近いかわいい近い!
「アイザックさん! うちに遊びに来ないっスか!?」
「お、お前らの?」
「そうッス!」
なんとも意外な申し出だった。でもいいのかなあ同棲カップルの家にお邪魔って。完全に除け者ムーブじゃないのか?
そんな俺の心配をよそにソニアはグイグイと迫る。
「いいじゃないっスか! パーティの仲間をおうちに呼ぶの夢だったんスよ!」
「そ、それは何よりだがなんで俺だけなんだ?」
「だってオスカーの旦那はアイテム売却しなきゃですし、ギフンの旦那とベルティーナの姉さんはすごいお疲れに見えたんで……」
「あ~それでまだ体力残ってた俺なら誘ってもいっかって感じのやつ?」
「その通りです。どうでしょう? 粗末ですけど飯も出せますよ」
そういうことか。何もパーティの面々と親交を深めるのは迷宮だけじゃない。
街や酒場でコミュニケーションを取ることでパーティ間の相互理解を深めて戦力の増強に繋がる。
それに若い奴らが勇気を出して誘ってくれたんだ。ここで断るのは男じゃない。
「それじゃお邪魔しようかな。でもいいのか本当に。ソニアお前は疲れてないのか?」
「大丈夫っス! 自分魔力はないけど体力だけは人一倍エルフ十倍あるんス!」
「そうか。俺と同じだな。やっぱ前衛は体力ないとな!」
「二人共タフだなあ……」
俺とソニアを見ながらデュランスがぼやく。
わかってないなデュランス。戦闘技術? 力? 前衛に必要なのはまず第一にタフさなんだよ!
「それじゃ案内しますよ旦那! すぐそこなんです!」
二人の愛の巣か。なんだかこそばゆい気持ちを胸に俺達は迷宮入り口から離れ街へと向かった。
デュランスは困惑しているようだった。
無理もない。まだデュエル&ドラゴンズ初心者だもんな。
「そうなんだよ。今や時代はドラゴンデッキって風潮を俺はぶっ壊したいんだ! 確かにドラゴンは強いよ!? でもさあ!」
「いやあの、あの。レベルドレインの方です」
「ああ。そっちか。本当参ったもんだよ。俺達のレベルを吸い取った野郎には是非ともツケを払わせないとな!
そのツケが溜まってる奴が鼠の王なのかどうかは定かではないがな。
「じゃ、じゃあベルティーナの姉さんは元々は最高位の魔法を使えてたんスか!?」
ソニアが人懐っこい犬のようにピョンピョンと跳ねながらベルティーナに詰め寄る。
「まあ? その気になれば? 一日三回は使えてたわね。朝起きた時に『今日は隕石招来とデーモン召喚と津波にしようかしら』みたいに気分でコーディネートしてたかしら?
「すっげえっス! パねっスよ姉さん!」
「暖かくなってきた春は魔界植物召喚とか。季節に合わせた呪文コーディネート。出来るエルフのイマドキスペルっていうの?」
「パパパパパねっス! 超パねっス姉さん!」
ま~たベルティーナがソニアのヨイショに気持ちよくなっている。
なんだよ出来るエルフのイマドキちょいツヨ呪文コーデって。
とはいえこいつの最高位魔法には何度も助けられた。
ベルティーナの魔法で水洗便所のように流されていく吸血鬼の群れは今思い出すだけで爽快だ。
異形との戦いでもこいつの魔法の矢マジック・ミサイルが活躍したし、鼠の王と戦うことになるのなら鍵はこいつが握っているだろうな。
「それじゃあ一旦街に戻ろう。全員消耗している。特に前衛がね」
「ああ。それがええわいええわい。アイザック。ローストチキンはまた今度じゃな」
「スライムの憂鬱はまた今度か~。残念だ」
「う、うむ。そのスラ……ローストチキンは次の機会に楽しみにしておいてくれ」
オスカーの言う通り俺もギフンもソニアも相当消耗している。
あの異形とまた出会ってはたまらない。探索は打ち切って退却が最善だ。
「僕が先行する。接敵は出来る限り避けていこう」
「ああ。オスカー頼む」
オスカーが先導してくれたおかげで俺達はモンスターと出くわさずに迷宮の出口へとたどり着けた。
陰鬱な迷宮から気持ちのいい風が吹きすさぶ外へ開放されるこの瞬間はやはり気持ちがいいもんだ。
「ヴァァァ! 疲れだあああ!」
ベルティーナが腰を降ろしてとてもエルフとは言えない声を喉から振り絞る。
お前本当エルフなのか? お前に会うまではエルフってもっとこう……神聖な種族だと思ってたよ。
あーあーあーがに股だよこのダークエルフ! おはしたないことで! まだドワーフのギフンの方がおしとやかだぜ!
「んじゃ……今日は解散だな。明日も朝一でここに集合」
「僕はアイテムをコーヘイの所に売り払ってくよ。お金は明日みんなに等分で分けるよ。じゃあね」
「ワシはとにかく帰って寝るぞい。流石に今日は張り切りすぎたわい」
「私も帰って寝るー!」
オスカーは戦利品の売却。ギフンは宿屋で爆睡。ベルティーナも家で休むようで三人ともそそくさと帰ってしまった。ドライな奴らだよ全く。
そんな三人の背中を見ながら俺はどうしようか悩んでいた。
確かに疲れてはいるがまだ夕刻。寝るには早いし。かといって腹も減ってないしなあ。
「あの、アイザックの旦那」
どうしたものかと途方に暮れていた所デュランスが話しかけてきた。
「ん?どうしたデュランス。それにソニア。お前達は帰らないのか?」
間髪入れずにソニアが顔をグイッと近づけてくる。近い近い近いかわいい近い!
「アイザックさん! うちに遊びに来ないっスか!?」
「お、お前らの?」
「そうッス!」
なんとも意外な申し出だった。でもいいのかなあ同棲カップルの家にお邪魔って。完全に除け者ムーブじゃないのか?
そんな俺の心配をよそにソニアはグイグイと迫る。
「いいじゃないっスか! パーティの仲間をおうちに呼ぶの夢だったんスよ!」
「そ、それは何よりだがなんで俺だけなんだ?」
「だってオスカーの旦那はアイテム売却しなきゃですし、ギフンの旦那とベルティーナの姉さんはすごいお疲れに見えたんで……」
「あ~それでまだ体力残ってた俺なら誘ってもいっかって感じのやつ?」
「その通りです。どうでしょう? 粗末ですけど飯も出せますよ」
そういうことか。何もパーティの面々と親交を深めるのは迷宮だけじゃない。
街や酒場でコミュニケーションを取ることでパーティ間の相互理解を深めて戦力の増強に繋がる。
それに若い奴らが勇気を出して誘ってくれたんだ。ここで断るのは男じゃない。
「それじゃお邪魔しようかな。でもいいのか本当に。ソニアお前は疲れてないのか?」
「大丈夫っス! 自分魔力はないけど体力だけは人一倍エルフ十倍あるんス!」
「そうか。俺と同じだな。やっぱ前衛は体力ないとな!」
「二人共タフだなあ……」
俺とソニアを見ながらデュランスがぼやく。
わかってないなデュランス。戦闘技術? 力? 前衛に必要なのはまず第一にタフさなんだよ!
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