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第五話 Castel del Monte
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店内に入ると、当然暖房があったりするかもなのだけど、それ以上に気持ちまで暖かくなる雰囲気。実際には特に広くもないはずなのに、天井が真っ白で壁が水色だからパーッと明るくなってなんだか空中にいるような雰囲気。テーブルや椅子、カウンターなどの調度品が趣のある古い感じの木製で、窓はないけど、壁にはそれ風にアーチ状のデザインが施されている。この店はイタリア料理店なのだけど、いかにもイタリアといった趣ではなく、なんとなくイタリアの地方都市のような雰囲気。後で聞いたけど、お店の名前である「カステル・デル・モンテ(Castel del Monte)」はイタリア南部にある町の名前だそうだ。また、十人くらいいるお客さんの半数ほどがほんとにイタリア人で、素朴な感じでやたら明るい。シェフ兼オーナーは日本人だったが――。
「いきなり魔女の宅急便みたいな世界でしょ?」
とカンナは言うが、あれは確かスウェーデンだよ。こういうボケがカンナの特徴なのだけど。
予約されていたのはカウンター席だった。席に座ると、左隣にカンナ、右には白人の大柄な男性。ヒゲモジャで、顔がまっかっか。そんなに酔ってる雰囲気はなかったけど、とにかく真赤。簡単に会釈だけしたけど、隣の席の似たような男性と喋る声がでかい。
「カンナさん、久しぶり」
カウンターの奥から、シェフの人がこちらの前にやってきてに声を掛けた。
「そんなに久しぶりかなぁ? ハイネケン2つお願いね」
「はーい。……おーい、こちらさん、ハイネ2本ね」とそのシェフさんが、店内を忙しそうに動き回るエプロン姿の女の子に声をかける。
「カンナさん、この前はありがとうね、無理なお願い聞いてもらってさぁ」
「いいわよ、そんなの。今日はただでお食事させてもらえるしさ」
へー、今日は無料なのか。カンナはここのシェフとどういう関係なんだろう、と話の続きを聞いていると、これがまたよくわからないカンナの人間関係で、このシェフの友人がフランス人の演劇家で、日本に来るときに色々カンナが手伝ったのだという。カンナの仕事は聞かないことにしているが、それにしても世界中に顔が広いらしい。
ビールをグラスに注いで、二人乾杯すると、すぐにカンナが私の顔を、あの大きな瞳でじっと見つめながら、私へのカウンセリングを初めた。
「何なの? 海来の悩みって」
「それ、ここで話すの?」
だって、こんな賑やかで明るい雰囲気の場所で話すようなことではない。
「ここだからいいんじゃない。どんだけ暗い話でも、ここならダークサイドに沈まなくていいでしょ?」
「ダークサイドって。……そうだなぁ、だけど仕事の話だからさ、なかなかね、流石にカンナにでも話はできないわ」
「また、お客さんに同情しちゃったの? 駄目じゃん、ビジネスなんだからさ」
「ビジネスっつっても、私の仕事知ってるじゃん。カンナも最初は――」
「分かってるわよ。でもさ、海来の性格知ってるだけに、ビジネスはビジネスって割り切ってやらないと、感情をコントロールするの難しくなるじゃない、特にあなたの仕事は」
「……そりゃそうなんだけどさぁ。でも流石に今回はかなり堪えてる」
「珍しいわね? いつもなら自信たっぷりなのに」
「いつもならね。だけど今度のは、多分、初めてかもしれないから」
「難しそうなの?」
「うん」
「あらま。でもやる気ってことなんでしょ?」
流石だ。カンナは私のことよく分かってる。そう、知ったからにはもう後には引けない。さっきまであんなに自分自身躊躇してたのに。
「やる気っていうか……それはそうなんだけど、今回ばかりは相手が悪いっていうか。相手については言えないけどね」
「そうなんだ。私もあまり無茶はして欲しくないけど、そのお客さんを助けたいんでしょう? 私みたいに」
「うん……まぁ」
「だったらそんなに悩むな。助けてあげなよ」
「そんな気安く言わないで!」
カンナの言葉にムッとした私は、空になったグラスに残りのハイネケンを全部注いて、カンナのそれも奪って、一気飲みした。隣の例のまっかっかの白人男性がそれを見て、拍手した。カンナはハイネケンの追加を頼むとそれっきり黙った。私も空になったグラスをそのまま片手に持って、カウンターに頬杖をついて黙った――。
最初の料理が運ばれてきた。ローストチキン風のその店オリジナル料理なのだという。でもこれって……。
「前々から疑問なんだけど、カンナってヴィーガンだよね?」
「だから?」
「私がお肉食べてても、なんか文句言ったこと一度もないし」
「私が口にしなきゃいーの。そんなこといちいち言ってたら、そこら中の肉屋を叩き潰さないといけないじゃないの」
「そんなもんなの?」
「そんなもんだよ。まぁいいから、それ一口食べてみな、今の海来にぴったりだから」
「ピッタリ?」
「うん、ほら、切ってあげるから」
だからっつって、肉料理をわざわざ勧めたり、そうやって私が食べるのを協力するのがよくわからないんだけどな。
そして、丸焼きにされているその鶏の足あたりの肉を、カンナが切り分けて小皿に入れて私の前に置いた。それを一口で放り込む。――普通じゃん。これのどこが今の私に……って、えっ? 何これ?
「ほらほら、海来の目が丸くなってきた。あはは、あんたって人は正直でいい」
「――って、これ、普通のローストとぜんぜん違う」
ジューシーかつさっぱりな食感と、香味野菜をふんだんに使ったのだろうか、香りが口の中いっぱいに広がって、皮の部分はパリッとしたまた別の食感も楽しめ、全体の味付けになっているソースの味が絶品だった。
「ね? 凄いでしょ。それが本場、魔女の宅急便の味よ。このお店の一番の人気なんだって」
違うってば、それはスウェーデンだって。
その後も絶品料理は続き、ダイエットが気になるくらいに美味しく頂いて、隣のまっかっかの白人さんやその他のお客さんとも意気投合、飲みすぎたかなと思うくらいで、大満足のうちにお店を後にしたのだった。
「ちょっと大丈夫? ちゃんと自分でタクシー乗んなさい」
カンナに放り込まれたタクシーの後部座席で、座席にうまく座ることが出来ず、その下に腰を下ろして填まってしまった。
「うぅ、畜生、……よっと」
フラフラになりながらなんとか重い尻を上げて、座席に座る。カンナはその隣で呆れた顔で私を眺めている。すぐにタクシーは走り出した。フラフラな私は、狭い後部座席で天井を仰ぐ。
「お客さん、どちらまで?」
「あーそうだな、えっと……ちょっと待って、海来、今日はどうする?」
「うう、か、帰りたくにゃい」
「にゃい、ってあんた面白いな。じゃぁしょうがない、ええと運転手さん――」
カンナは運転手に、カンナの自宅まで行くように告げた。
「あんた、ほんとに大丈夫? 気持ち悪かったらすぐ言いなよ?」
「うん、大丈夫」
全然大丈夫じゃなかった。正直少し気持ち悪かった。だけど、隣にカンナがいると思うと……。
「カンナ、大好き!」
飛びつくように私はカンナの胸に突進して抱きついた。
「こ、こら! や、やめろ! このコートいくらフェイクつったって高いんだからさ、あっち行け」
「駄目だ、離さない! うぷっ」
「わっ、お客さん、吐くんだったら止めますよ?」
出発してほんの数百メートルでタクシーは道端に停車、カンナに抱きかかえられるようにして車を一旦降り、路肩の排水口に――。
流石に、最悪の状態になった私はカンナに抱きつこことも出来ず、タクシーの後部座席でグッタリしつつ、30分程でカンナのマンション前に到着。そのままカンナに抱きかかえられて部屋へと。
「はい、お水」
部屋に入るなり、トイレに駆け込んで再び吐いた。そして、二十帖はあるかという広いリビングの真ん中あたりのある、コの字型に配置されたソファーにしばらく横になっていた。上体をゆっくり起こして渡されたグラスの水を一口。
「ありがとう」と、それをソファー手前のガラステーブルの上に置く。カンナは私の隣に腰を下ろした。
「今日はどうだった?」と優しく微笑むカンナ。
「うん、楽しかったよ。料理もすごく美味しかったし」
「そう、よかったわ。私も嬉しかった」
「どうして?」
「そうね……私も頼りにされてるんだなーって」
その言葉に私は心がときめいた。だって私は、いつも孤独だから。
「カンナもさ、私を頼りにしてね」
「うん、十分頼りにしてる。海来がいなかったら私――」
私は、カンナの唇を右手人差し指でさっと優しく抑えた。
「言わないで。分かってる。だから……」
そのまま私は、カンナにゆっくり顔を近づけて、おでこを合わせると鼓動の高まりを感じる。直ぐ側で見つめ合って、なぜだか二人とも同時に笑い、やがて目を閉じ、そして唇が交差する。
チュッっと、合わせる度に軽く音がなる。離れる度に見つめ合って、重ねる度に目を閉じる。そしてどちらからともなく、舌が絡み合う――。最初はソフトに、そしてだんだんとしつこく。
二人の唇と舌が溶け合って、唾液が混ざり合い、どんどん一つになっていく感覚。少し唇を離すと、カンナとの間にしずくの糸が架け橋となって、私達を結んでいる気がした。たまらず私は激しくカンナに唇を、まるで獣のように絡める。
ああっ。……はあっ。
カンナは唐突に、私を優しくソファーの上に押し倒すと、着ていたセーターを脱ぎ捨て、ブラを外して上半身裸になる。そして、私のブラウスのボタンを外し始めたので、私は彼女のその両腕の外側から彼女の胸に両手を回し、私の小さな掌には余るそれを抑えるようにして触れる。
「くっ……」
彼女がビクッと反応した。そのまま、右手の親指と左手の中指で、彼女のその突起に優しく触れる。今度は彼女のからだが少し横に捩れた。
「ああっ! ……海来ったら」
ふふふ。今日は私が先だった。いつもはカンナにやられっぱなし。でも女同士、調教されてても、それを教わっていたようなものだから――と思っていたら、気付いたら私はショーツ一枚にされていた。流石、カンナ――。
「うまく、……なったわね」
カンナはニコッと微笑むと、そのまま私にゆっくり覆い被さってきた。そしてまたキス。いやらしい音が広いリビングに響き渡る激しいディープキス。ああっ、カンナ、私はあなたが欲しい――。
カンナに抱きつくと、カンナの右手が私の胸を襲う。
「……っ!」
唇で唇を塞がれて、声にならない喘ぎ声。それは優しく、ゆっくりと、私の快感を探るようにして動く。ああっ、駄目。そこはっ……。堪らず、カンナを抱きしめながら、そこから逃げるかのようにして体が勝手にくねる。やっぱりカンナは上手い、だけど今日は――。
「あっ! 海来、そこはっ……」
カンナは堪らずキスを中断して喘いだ。カンナの脱ぎかけのジーンズの中に左手を忍ばせて、ショーツの上から彼女のそこを指で触れたのだ。そしてその柔らかい外側の畝を優しく擦る。
「ああ、はぁっ」
――今日こそ私は彼女を先にイカせてみせる。
「……そ、あっ、……そうは、させない」
カンナはそう言って、私の上に被さったまま自分でジーンズを脱ぎ捨てると、そのまま私のショーツを一気にスルッと剥がす。やっぱりカンナは上手いなぁ。
そして、私に顔を間近に接近させるとカンナは優しく諭すようにこう言った。
「……海来、愛してるからね」
私はその言葉に頷いて、そしてカンナに今日も負けたと思った――。
「いきなり魔女の宅急便みたいな世界でしょ?」
とカンナは言うが、あれは確かスウェーデンだよ。こういうボケがカンナの特徴なのだけど。
予約されていたのはカウンター席だった。席に座ると、左隣にカンナ、右には白人の大柄な男性。ヒゲモジャで、顔がまっかっか。そんなに酔ってる雰囲気はなかったけど、とにかく真赤。簡単に会釈だけしたけど、隣の席の似たような男性と喋る声がでかい。
「カンナさん、久しぶり」
カウンターの奥から、シェフの人がこちらの前にやってきてに声を掛けた。
「そんなに久しぶりかなぁ? ハイネケン2つお願いね」
「はーい。……おーい、こちらさん、ハイネ2本ね」とそのシェフさんが、店内を忙しそうに動き回るエプロン姿の女の子に声をかける。
「カンナさん、この前はありがとうね、無理なお願い聞いてもらってさぁ」
「いいわよ、そんなの。今日はただでお食事させてもらえるしさ」
へー、今日は無料なのか。カンナはここのシェフとどういう関係なんだろう、と話の続きを聞いていると、これがまたよくわからないカンナの人間関係で、このシェフの友人がフランス人の演劇家で、日本に来るときに色々カンナが手伝ったのだという。カンナの仕事は聞かないことにしているが、それにしても世界中に顔が広いらしい。
ビールをグラスに注いで、二人乾杯すると、すぐにカンナが私の顔を、あの大きな瞳でじっと見つめながら、私へのカウンセリングを初めた。
「何なの? 海来の悩みって」
「それ、ここで話すの?」
だって、こんな賑やかで明るい雰囲気の場所で話すようなことではない。
「ここだからいいんじゃない。どんだけ暗い話でも、ここならダークサイドに沈まなくていいでしょ?」
「ダークサイドって。……そうだなぁ、だけど仕事の話だからさ、なかなかね、流石にカンナにでも話はできないわ」
「また、お客さんに同情しちゃったの? 駄目じゃん、ビジネスなんだからさ」
「ビジネスっつっても、私の仕事知ってるじゃん。カンナも最初は――」
「分かってるわよ。でもさ、海来の性格知ってるだけに、ビジネスはビジネスって割り切ってやらないと、感情をコントロールするの難しくなるじゃない、特にあなたの仕事は」
「……そりゃそうなんだけどさぁ。でも流石に今回はかなり堪えてる」
「珍しいわね? いつもなら自信たっぷりなのに」
「いつもならね。だけど今度のは、多分、初めてかもしれないから」
「難しそうなの?」
「うん」
「あらま。でもやる気ってことなんでしょ?」
流石だ。カンナは私のことよく分かってる。そう、知ったからにはもう後には引けない。さっきまであんなに自分自身躊躇してたのに。
「やる気っていうか……それはそうなんだけど、今回ばかりは相手が悪いっていうか。相手については言えないけどね」
「そうなんだ。私もあまり無茶はして欲しくないけど、そのお客さんを助けたいんでしょう? 私みたいに」
「うん……まぁ」
「だったらそんなに悩むな。助けてあげなよ」
「そんな気安く言わないで!」
カンナの言葉にムッとした私は、空になったグラスに残りのハイネケンを全部注いて、カンナのそれも奪って、一気飲みした。隣の例のまっかっかの白人男性がそれを見て、拍手した。カンナはハイネケンの追加を頼むとそれっきり黙った。私も空になったグラスをそのまま片手に持って、カウンターに頬杖をついて黙った――。
最初の料理が運ばれてきた。ローストチキン風のその店オリジナル料理なのだという。でもこれって……。
「前々から疑問なんだけど、カンナってヴィーガンだよね?」
「だから?」
「私がお肉食べてても、なんか文句言ったこと一度もないし」
「私が口にしなきゃいーの。そんなこといちいち言ってたら、そこら中の肉屋を叩き潰さないといけないじゃないの」
「そんなもんなの?」
「そんなもんだよ。まぁいいから、それ一口食べてみな、今の海来にぴったりだから」
「ピッタリ?」
「うん、ほら、切ってあげるから」
だからっつって、肉料理をわざわざ勧めたり、そうやって私が食べるのを協力するのがよくわからないんだけどな。
そして、丸焼きにされているその鶏の足あたりの肉を、カンナが切り分けて小皿に入れて私の前に置いた。それを一口で放り込む。――普通じゃん。これのどこが今の私に……って、えっ? 何これ?
「ほらほら、海来の目が丸くなってきた。あはは、あんたって人は正直でいい」
「――って、これ、普通のローストとぜんぜん違う」
ジューシーかつさっぱりな食感と、香味野菜をふんだんに使ったのだろうか、香りが口の中いっぱいに広がって、皮の部分はパリッとしたまた別の食感も楽しめ、全体の味付けになっているソースの味が絶品だった。
「ね? 凄いでしょ。それが本場、魔女の宅急便の味よ。このお店の一番の人気なんだって」
違うってば、それはスウェーデンだって。
その後も絶品料理は続き、ダイエットが気になるくらいに美味しく頂いて、隣のまっかっかの白人さんやその他のお客さんとも意気投合、飲みすぎたかなと思うくらいで、大満足のうちにお店を後にしたのだった。
「ちょっと大丈夫? ちゃんと自分でタクシー乗んなさい」
カンナに放り込まれたタクシーの後部座席で、座席にうまく座ることが出来ず、その下に腰を下ろして填まってしまった。
「うぅ、畜生、……よっと」
フラフラになりながらなんとか重い尻を上げて、座席に座る。カンナはその隣で呆れた顔で私を眺めている。すぐにタクシーは走り出した。フラフラな私は、狭い後部座席で天井を仰ぐ。
「お客さん、どちらまで?」
「あーそうだな、えっと……ちょっと待って、海来、今日はどうする?」
「うう、か、帰りたくにゃい」
「にゃい、ってあんた面白いな。じゃぁしょうがない、ええと運転手さん――」
カンナは運転手に、カンナの自宅まで行くように告げた。
「あんた、ほんとに大丈夫? 気持ち悪かったらすぐ言いなよ?」
「うん、大丈夫」
全然大丈夫じゃなかった。正直少し気持ち悪かった。だけど、隣にカンナがいると思うと……。
「カンナ、大好き!」
飛びつくように私はカンナの胸に突進して抱きついた。
「こ、こら! や、やめろ! このコートいくらフェイクつったって高いんだからさ、あっち行け」
「駄目だ、離さない! うぷっ」
「わっ、お客さん、吐くんだったら止めますよ?」
出発してほんの数百メートルでタクシーは道端に停車、カンナに抱きかかえられるようにして車を一旦降り、路肩の排水口に――。
流石に、最悪の状態になった私はカンナに抱きつこことも出来ず、タクシーの後部座席でグッタリしつつ、30分程でカンナのマンション前に到着。そのままカンナに抱きかかえられて部屋へと。
「はい、お水」
部屋に入るなり、トイレに駆け込んで再び吐いた。そして、二十帖はあるかという広いリビングの真ん中あたりのある、コの字型に配置されたソファーにしばらく横になっていた。上体をゆっくり起こして渡されたグラスの水を一口。
「ありがとう」と、それをソファー手前のガラステーブルの上に置く。カンナは私の隣に腰を下ろした。
「今日はどうだった?」と優しく微笑むカンナ。
「うん、楽しかったよ。料理もすごく美味しかったし」
「そう、よかったわ。私も嬉しかった」
「どうして?」
「そうね……私も頼りにされてるんだなーって」
その言葉に私は心がときめいた。だって私は、いつも孤独だから。
「カンナもさ、私を頼りにしてね」
「うん、十分頼りにしてる。海来がいなかったら私――」
私は、カンナの唇を右手人差し指でさっと優しく抑えた。
「言わないで。分かってる。だから……」
そのまま私は、カンナにゆっくり顔を近づけて、おでこを合わせると鼓動の高まりを感じる。直ぐ側で見つめ合って、なぜだか二人とも同時に笑い、やがて目を閉じ、そして唇が交差する。
チュッっと、合わせる度に軽く音がなる。離れる度に見つめ合って、重ねる度に目を閉じる。そしてどちらからともなく、舌が絡み合う――。最初はソフトに、そしてだんだんとしつこく。
二人の唇と舌が溶け合って、唾液が混ざり合い、どんどん一つになっていく感覚。少し唇を離すと、カンナとの間にしずくの糸が架け橋となって、私達を結んでいる気がした。たまらず私は激しくカンナに唇を、まるで獣のように絡める。
ああっ。……はあっ。
カンナは唐突に、私を優しくソファーの上に押し倒すと、着ていたセーターを脱ぎ捨て、ブラを外して上半身裸になる。そして、私のブラウスのボタンを外し始めたので、私は彼女のその両腕の外側から彼女の胸に両手を回し、私の小さな掌には余るそれを抑えるようにして触れる。
「くっ……」
彼女がビクッと反応した。そのまま、右手の親指と左手の中指で、彼女のその突起に優しく触れる。今度は彼女のからだが少し横に捩れた。
「ああっ! ……海来ったら」
ふふふ。今日は私が先だった。いつもはカンナにやられっぱなし。でも女同士、調教されてても、それを教わっていたようなものだから――と思っていたら、気付いたら私はショーツ一枚にされていた。流石、カンナ――。
「うまく、……なったわね」
カンナはニコッと微笑むと、そのまま私にゆっくり覆い被さってきた。そしてまたキス。いやらしい音が広いリビングに響き渡る激しいディープキス。ああっ、カンナ、私はあなたが欲しい――。
カンナに抱きつくと、カンナの右手が私の胸を襲う。
「……っ!」
唇で唇を塞がれて、声にならない喘ぎ声。それは優しく、ゆっくりと、私の快感を探るようにして動く。ああっ、駄目。そこはっ……。堪らず、カンナを抱きしめながら、そこから逃げるかのようにして体が勝手にくねる。やっぱりカンナは上手い、だけど今日は――。
「あっ! 海来、そこはっ……」
カンナは堪らずキスを中断して喘いだ。カンナの脱ぎかけのジーンズの中に左手を忍ばせて、ショーツの上から彼女のそこを指で触れたのだ。そしてその柔らかい外側の畝を優しく擦る。
「ああ、はぁっ」
――今日こそ私は彼女を先にイカせてみせる。
「……そ、あっ、……そうは、させない」
カンナはそう言って、私の上に被さったまま自分でジーンズを脱ぎ捨てると、そのまま私のショーツを一気にスルッと剥がす。やっぱりカンナは上手いなぁ。
そして、私に顔を間近に接近させるとカンナは優しく諭すようにこう言った。
「……海来、愛してるからね」
私はその言葉に頷いて、そしてカンナに今日も負けたと思った――。
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