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第八話 凄腕女詐欺師
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そしてまたその三ヶ月前。海来は漆原麟太郎の報告を待って2日経った。
「つーか、ナンパ師が尾行なんかするわけないわよね。やっぱあたしが行けばよかった」
対面のデスクで事務仕事に没頭する三島は、いかにもめんどくさそうにボールペンを持った右手で頭を掻いている。
「……社長、何度も何度も同じことばっかり呟いてますよ?」
「だってさぁ、気になるじゃん」
どーしても思い出せない、香西雪愛。あれから散々調べたが、仕事関係の資料にも文書ファイルの文字検索でも、一切どこにも出てこなかった。ぼんやりと、その名前を知ったのはそんな昔の話ではないような気がするだけだった。
「そういうのってよくありますよ。僕だって小中学生の頃の友だちの名前なんか大半は覚えてないし、そんなのであれ? あの名前って小中学生の頃の友達にいなかったかなぁ? とかありますよ?」
うーん、そうなのかなぁ。でもなぁ、なんかこう、引っ掛かるんだよね。背中の痒いとこ掻けないような、でもどうにかして掻きたいような、そんな感覚……。
「そうかもだけどさ。あたしってば、んとにしつこい性格だからね」
「……ですよねぇ」
むっ。
「いてっ。……社長ぉ、そんな小学生みたいなことやめてくださいよ」
消しゴムちぎって投げてやった。
「そういうのは普通「そんなことありませんよ」とかって否定すんの」
「だからって、……あ、電話。……はい、藤堂海来探偵社です。お電話ありがとうございます――」
ったく、漆原麟太郎の野郎、あたしのこと気に入ったとか、調子の良い事いうから少しは信用したのになぁ。やっぱナンパ師なんか最低の男の――。
「社長、電話回します。今社長が一番求めてる人からですよ」
「えっ? カンナ?」
「……出ればすぐ分かりますって」
んだよ、三島のやつニヤニヤいやらしい笑いしてさ……。
「はい、お電話変わりました。藤堂――」
「君のあの素敵な笑顔が忘れられなくて」
げっ。こいつまた……てか、やっと掛けてきたか、漆原麟太郎。
「遅いじゃない。で、どうだったの? 気付かれなかった?」
「……それがさぁ」
「尾行失敗か。まぁいいよ、かけた時間適当に言ってくれたら時給払うからさ」
「いやいや、うまく行ったよ、うん、行った。頼まれてた住所も分かったよ。それに他にも色々」
「えっ? それってマジで?」
「うん、天真爛漫、杏樹さんのためにしっかり働いたってことさ」
「やるじゃん、漆原麟太郎くん」
「それでさ、今、そのビルの下にいるんだけどそっちに上がっていいかな? お邪魔?」
わっ。あいつそこまで来てるのか。ナンパ師ここに入れるの嫌だけど……まぁいいか。
「じゃぁ、上がってきて」
と言って電話を切った。へー、大したもんだな。あんな慎重そうだった香西雪愛の尾行に成功したんだな。探偵の私でもどうかなぁって直感したのに、よくやったぞ漆原。
「漆原麟太郎さん、ここに来るんですか?」
「そうそう、今上がってくるところ。悪いけど、アイスコーヒー入れてきてくれる?」
と、三島が給湯室へ行こうと、事務所のドアを開けたと同時に、漆原が入ってきた。
「わぉ、探偵事務所ってこんな感じなんだ」
「わざわざ来てくれてありがとう。そこのソファーに座ってくれる?」
私がそういうと、漆原はソファーに座る前に着ていた麻製のテーラードジャケットを脱ぎながら、その内ポケットからスマホを取り出した。
「ちゃんとさぁ、探偵っぽく写真まで撮ってやったぜ、ほら」
と、いつものように自分のデスクの椅子をソファーの方に向けて座る私に、そのスマホの画面を向けた。
「わぉ。すごーい。それが香西雪愛の顔?」
「うん」
「えー、すごいすごい。真正面から撮れてる……って、あれ? それちょっと貸して」
漆原からそのスマホを受け取って……、これはあり得ない。だって、この写真、ばっちりカメラ目線で笑ってんじゃん。しかもめっちゃブレもなく構図も決まってて、尾行でこんな写真撮れるわけねーっつーの。
「ちょっとさぁ、冗談よしてよ。これ別の女の写真でしょ?」
「いや、マジだって。それが香西雪愛さんの顔だって。間違いなく。何なら写真の日付調べてくれたっていいぜ。あの日の次の日の朝だから」
「いやだからって、こんな写真撮れるわけ……、何? 次の日の朝?」
って、こいつまさか――。
「うん、尾行なんてめんどくさいからナンパした」
マジでか。……漆原、なんて奴。
「ははっ、それは確かに。尾行なんかより、漆原くんにとっちゃナンパが簡単ってわけね。おみそれいたしました。……ていうか、次の日の朝ってどういうこと?」
「うーん、それはなんというかその、雪愛さんにお泊りさせていただいたというか」
あー、なるほどね。そういうことね。自分の目的を果たしたと。ったくもう、ナンパ師って男共は最低だな……。
「ちょっとさぁ、漆原くん、女性に対して見境なさすぎなんじゃない?」
と、私は、女性を自分の性欲を満たすだけの存在にしか見ていないような漆原に腹が立ったので、少々責めるような言い方をしてしまった。
「見境ないって……、何もそんな言い方しなくても。別に女の子を襲ったりしてるわけじゃないぜ?」
「それは違うわ。いくら合意の上だからって、あなたみたいなナンパ師さんって、結局その場限りでしょ?」
「……そりゃそうなるけどさ。……なんか、気分悪いな。まるで母親みたいだ」
「母親って……、別にそんなつもりじゃ」
すると、漆原はソファーの上に掛けていた自分のジャケットを掴むようにして手に取ると、私が持っていた漆原のスマホを引っ手繰るようにして自分に戻し、席を立った。
「漆原くん?」
「香西雪愛の写真と住所、後でメールしとくからさ。悪いけど帰るよ」
そう漆原が少し不機嫌そうに言ったと同時に、三島が給湯室から戻ってきた。
「すみません、遅くなって。アイスコーヒー切れてて、コンビニに買いに行っていたので……って、あれ? もうお帰りなんですか?」
ところが、漆原はソファーからじっと立ったまま、動かない。私と三島はただただポカンと、そんな漆原を眺めていた。
「……はぁ。まぁいいや、せっかくアイスコーヒーも入れてくれたし、もう少し話してくよ」
そういうと、漆原は再びソファーに腰を下ろし、少し前屈みになって、両膝の上に両手を組んで俯いた。三島は客用テーブルの上に2つアイスコーヒーのグラスを置いた。
「ありがとう。……なんかかっこ悪かったな」
「何が?」
「……俺さ、小さい頃に母親を亡くしてて」
「へぇ、そうなんだ」
「だから、母親のこと知らなくてさ。一瞬だけ、杏樹さんが自分の母親みたいな気がして」
ドキッ。何なのよそれ? あたしがあんたの母親? 意味がわからないけど、なんでだろう? 急に体が熱くなってきちゃって――。
アイスコーヒーのグラスをさっと掴むと、差してあるストローで飲まず、直接口つけて半分ほど飲むと、氷を一つ口に入れた。
「杏樹……、さん?」
「そんな話はいいわよ、香西雪愛についての話、色々あるんでしょう?」
「うん、色々ね」
ふぅ、暑い暑い……。
「例えばどんな?」
「雪愛さんさぁ、凄いんだよ。……でも、これ、杏樹さんに言っていいのかなぁ?」
「いいよ、言って。こっちは探偵なんだからさ、口は死ぬほど硬いよ?」
「うーん……、さっきの見境ないって話じゃないけど、雪愛さんには流石に俺は負けるっつーか、そういう話だけど」
「ああ、あっちの話? セックスの話なら平気だよ。仕事で相当酷いのも知ってるからさ」
「そうだったな、探偵さんだから大丈夫か。あの人ね、なんつーか、淫乱とか痴女ってわけじゃないけど、セックスがタフすぎるっつーか、何回でもやろうとするんだよ」
「ほうほう、つまりあれか、セックス依存症っぽいって感じ?」
「うーん、どうかなぁ。専門家じゃないからわかんないけど、セックスしたいって感じじゃないんだ、それが」
はぁ? 何だそりゃ? セックスしたい感じでもないのに何回でもやろうとする?
「いや待て、漆原くん、それじゃ辻褄が合わないよ。あなたも何回もセックスしたわけ? 香西雪愛と」
「うん、した。あの晩、延々ずっと朝までやった。休憩はしたけどさ」
「えー。そんなにずっとやってたんだ。よく付き合えたね。漆原くん、そんなに溜まってたの?」
「まぁ、それもあるけど……、でもどっちかっつーと、雪愛さんが誘ってくるんだよな。んでさ、メッチャクチャ上手いんだ、セックス」
いやいや、話がおかしいぞ。それのどこが「セックスしたい感じじゃない」んだ?
「ねぇねぇ、漆原くん、セックスが上手くて何回もするし自分から誘ってくるような人が、セックスしたい感じじゃない、って一体どうしてそう思ったの?」
「……、それが、どうもさ、全部演技っぽいんだよね」
「演技? って、どうしてナンパされて、雪愛自身の家に連れてってもらって、セックスしまくって、演技する必要あるのさ? それって雪愛がそういう感じ方っつーか、反応の仕方に見えるだけなんじゃないの?」
「いや、それはない。伊達に俺は二千人以上もナンパしてない」
「えっ? に、二千人? って、確か三百人じゃ?」
「それは半年分。もう十年くらいずっとやってっからさ。だからさ、そんだけ女性経験あると、演技くらい分かるんだよ。例えば、感じさせようとしてもいないのにオーバーに感じるとかさ。半端なAV女優を超えるくらい感じ方も上手いんだけど、あれは多分、違う」
なんだか、よくわからん話だな。変な話でもっと聞きたい気もするけど、どうでもいいような気もしてきた。
「分かった。で、他には?」
「いや、まだ話は終わってない。俺さぁ、ちらっと聞いたことあるんだ」
「何を?」
「そういう、凄腕の女詐欺師がいるって」
「詐欺師?」
「うん、セックスがめちゃくちゃ上手くて、男を虜にしてしまって、全財産かっさらうくらいの凄い女詐欺師。一度も捕まったことはないらしい」
「いや、私はそんな詐欺師聞いたことない。こういう業界だからさ、そういう情報は――あっ、そっか!」
私は、慌てて、事務所に保管してあった学生時代のノートを、書棚に積んであったダンボールの中をぶちまけて取り出した。
「あった! これだ! 香西雪愛! こいつ大学の同級生だ!」
「つーか、ナンパ師が尾行なんかするわけないわよね。やっぱあたしが行けばよかった」
対面のデスクで事務仕事に没頭する三島は、いかにもめんどくさそうにボールペンを持った右手で頭を掻いている。
「……社長、何度も何度も同じことばっかり呟いてますよ?」
「だってさぁ、気になるじゃん」
どーしても思い出せない、香西雪愛。あれから散々調べたが、仕事関係の資料にも文書ファイルの文字検索でも、一切どこにも出てこなかった。ぼんやりと、その名前を知ったのはそんな昔の話ではないような気がするだけだった。
「そういうのってよくありますよ。僕だって小中学生の頃の友だちの名前なんか大半は覚えてないし、そんなのであれ? あの名前って小中学生の頃の友達にいなかったかなぁ? とかありますよ?」
うーん、そうなのかなぁ。でもなぁ、なんかこう、引っ掛かるんだよね。背中の痒いとこ掻けないような、でもどうにかして掻きたいような、そんな感覚……。
「そうかもだけどさ。あたしってば、んとにしつこい性格だからね」
「……ですよねぇ」
むっ。
「いてっ。……社長ぉ、そんな小学生みたいなことやめてくださいよ」
消しゴムちぎって投げてやった。
「そういうのは普通「そんなことありませんよ」とかって否定すんの」
「だからって、……あ、電話。……はい、藤堂海来探偵社です。お電話ありがとうございます――」
ったく、漆原麟太郎の野郎、あたしのこと気に入ったとか、調子の良い事いうから少しは信用したのになぁ。やっぱナンパ師なんか最低の男の――。
「社長、電話回します。今社長が一番求めてる人からですよ」
「えっ? カンナ?」
「……出ればすぐ分かりますって」
んだよ、三島のやつニヤニヤいやらしい笑いしてさ……。
「はい、お電話変わりました。藤堂――」
「君のあの素敵な笑顔が忘れられなくて」
げっ。こいつまた……てか、やっと掛けてきたか、漆原麟太郎。
「遅いじゃない。で、どうだったの? 気付かれなかった?」
「……それがさぁ」
「尾行失敗か。まぁいいよ、かけた時間適当に言ってくれたら時給払うからさ」
「いやいや、うまく行ったよ、うん、行った。頼まれてた住所も分かったよ。それに他にも色々」
「えっ? それってマジで?」
「うん、天真爛漫、杏樹さんのためにしっかり働いたってことさ」
「やるじゃん、漆原麟太郎くん」
「それでさ、今、そのビルの下にいるんだけどそっちに上がっていいかな? お邪魔?」
わっ。あいつそこまで来てるのか。ナンパ師ここに入れるの嫌だけど……まぁいいか。
「じゃぁ、上がってきて」
と言って電話を切った。へー、大したもんだな。あんな慎重そうだった香西雪愛の尾行に成功したんだな。探偵の私でもどうかなぁって直感したのに、よくやったぞ漆原。
「漆原麟太郎さん、ここに来るんですか?」
「そうそう、今上がってくるところ。悪いけど、アイスコーヒー入れてきてくれる?」
と、三島が給湯室へ行こうと、事務所のドアを開けたと同時に、漆原が入ってきた。
「わぉ、探偵事務所ってこんな感じなんだ」
「わざわざ来てくれてありがとう。そこのソファーに座ってくれる?」
私がそういうと、漆原はソファーに座る前に着ていた麻製のテーラードジャケットを脱ぎながら、その内ポケットからスマホを取り出した。
「ちゃんとさぁ、探偵っぽく写真まで撮ってやったぜ、ほら」
と、いつものように自分のデスクの椅子をソファーの方に向けて座る私に、そのスマホの画面を向けた。
「わぉ。すごーい。それが香西雪愛の顔?」
「うん」
「えー、すごいすごい。真正面から撮れてる……って、あれ? それちょっと貸して」
漆原からそのスマホを受け取って……、これはあり得ない。だって、この写真、ばっちりカメラ目線で笑ってんじゃん。しかもめっちゃブレもなく構図も決まってて、尾行でこんな写真撮れるわけねーっつーの。
「ちょっとさぁ、冗談よしてよ。これ別の女の写真でしょ?」
「いや、マジだって。それが香西雪愛さんの顔だって。間違いなく。何なら写真の日付調べてくれたっていいぜ。あの日の次の日の朝だから」
「いやだからって、こんな写真撮れるわけ……、何? 次の日の朝?」
って、こいつまさか――。
「うん、尾行なんてめんどくさいからナンパした」
マジでか。……漆原、なんて奴。
「ははっ、それは確かに。尾行なんかより、漆原くんにとっちゃナンパが簡単ってわけね。おみそれいたしました。……ていうか、次の日の朝ってどういうこと?」
「うーん、それはなんというかその、雪愛さんにお泊りさせていただいたというか」
あー、なるほどね。そういうことね。自分の目的を果たしたと。ったくもう、ナンパ師って男共は最低だな……。
「ちょっとさぁ、漆原くん、女性に対して見境なさすぎなんじゃない?」
と、私は、女性を自分の性欲を満たすだけの存在にしか見ていないような漆原に腹が立ったので、少々責めるような言い方をしてしまった。
「見境ないって……、何もそんな言い方しなくても。別に女の子を襲ったりしてるわけじゃないぜ?」
「それは違うわ。いくら合意の上だからって、あなたみたいなナンパ師さんって、結局その場限りでしょ?」
「……そりゃそうなるけどさ。……なんか、気分悪いな。まるで母親みたいだ」
「母親って……、別にそんなつもりじゃ」
すると、漆原はソファーの上に掛けていた自分のジャケットを掴むようにして手に取ると、私が持っていた漆原のスマホを引っ手繰るようにして自分に戻し、席を立った。
「漆原くん?」
「香西雪愛の写真と住所、後でメールしとくからさ。悪いけど帰るよ」
そう漆原が少し不機嫌そうに言ったと同時に、三島が給湯室から戻ってきた。
「すみません、遅くなって。アイスコーヒー切れてて、コンビニに買いに行っていたので……って、あれ? もうお帰りなんですか?」
ところが、漆原はソファーからじっと立ったまま、動かない。私と三島はただただポカンと、そんな漆原を眺めていた。
「……はぁ。まぁいいや、せっかくアイスコーヒーも入れてくれたし、もう少し話してくよ」
そういうと、漆原は再びソファーに腰を下ろし、少し前屈みになって、両膝の上に両手を組んで俯いた。三島は客用テーブルの上に2つアイスコーヒーのグラスを置いた。
「ありがとう。……なんかかっこ悪かったな」
「何が?」
「……俺さ、小さい頃に母親を亡くしてて」
「へぇ、そうなんだ」
「だから、母親のこと知らなくてさ。一瞬だけ、杏樹さんが自分の母親みたいな気がして」
ドキッ。何なのよそれ? あたしがあんたの母親? 意味がわからないけど、なんでだろう? 急に体が熱くなってきちゃって――。
アイスコーヒーのグラスをさっと掴むと、差してあるストローで飲まず、直接口つけて半分ほど飲むと、氷を一つ口に入れた。
「杏樹……、さん?」
「そんな話はいいわよ、香西雪愛についての話、色々あるんでしょう?」
「うん、色々ね」
ふぅ、暑い暑い……。
「例えばどんな?」
「雪愛さんさぁ、凄いんだよ。……でも、これ、杏樹さんに言っていいのかなぁ?」
「いいよ、言って。こっちは探偵なんだからさ、口は死ぬほど硬いよ?」
「うーん……、さっきの見境ないって話じゃないけど、雪愛さんには流石に俺は負けるっつーか、そういう話だけど」
「ああ、あっちの話? セックスの話なら平気だよ。仕事で相当酷いのも知ってるからさ」
「そうだったな、探偵さんだから大丈夫か。あの人ね、なんつーか、淫乱とか痴女ってわけじゃないけど、セックスがタフすぎるっつーか、何回でもやろうとするんだよ」
「ほうほう、つまりあれか、セックス依存症っぽいって感じ?」
「うーん、どうかなぁ。専門家じゃないからわかんないけど、セックスしたいって感じじゃないんだ、それが」
はぁ? 何だそりゃ? セックスしたい感じでもないのに何回でもやろうとする?
「いや待て、漆原くん、それじゃ辻褄が合わないよ。あなたも何回もセックスしたわけ? 香西雪愛と」
「うん、した。あの晩、延々ずっと朝までやった。休憩はしたけどさ」
「えー。そんなにずっとやってたんだ。よく付き合えたね。漆原くん、そんなに溜まってたの?」
「まぁ、それもあるけど……、でもどっちかっつーと、雪愛さんが誘ってくるんだよな。んでさ、メッチャクチャ上手いんだ、セックス」
いやいや、話がおかしいぞ。それのどこが「セックスしたい感じじゃない」んだ?
「ねぇねぇ、漆原くん、セックスが上手くて何回もするし自分から誘ってくるような人が、セックスしたい感じじゃない、って一体どうしてそう思ったの?」
「……、それが、どうもさ、全部演技っぽいんだよね」
「演技? って、どうしてナンパされて、雪愛自身の家に連れてってもらって、セックスしまくって、演技する必要あるのさ? それって雪愛がそういう感じ方っつーか、反応の仕方に見えるだけなんじゃないの?」
「いや、それはない。伊達に俺は二千人以上もナンパしてない」
「えっ? に、二千人? って、確か三百人じゃ?」
「それは半年分。もう十年くらいずっとやってっからさ。だからさ、そんだけ女性経験あると、演技くらい分かるんだよ。例えば、感じさせようとしてもいないのにオーバーに感じるとかさ。半端なAV女優を超えるくらい感じ方も上手いんだけど、あれは多分、違う」
なんだか、よくわからん話だな。変な話でもっと聞きたい気もするけど、どうでもいいような気もしてきた。
「分かった。で、他には?」
「いや、まだ話は終わってない。俺さぁ、ちらっと聞いたことあるんだ」
「何を?」
「そういう、凄腕の女詐欺師がいるって」
「詐欺師?」
「うん、セックスがめちゃくちゃ上手くて、男を虜にしてしまって、全財産かっさらうくらいの凄い女詐欺師。一度も捕まったことはないらしい」
「いや、私はそんな詐欺師聞いたことない。こういう業界だからさ、そういう情報は――あっ、そっか!」
私は、慌てて、事務所に保管してあった学生時代のノートを、書棚に積んであったダンボールの中をぶちまけて取り出した。
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