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第十七話 喫茶リリアン
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それはNPO法人ウィメンズオフィス設立十周年記念を祝う式典での、懇親会の写真。数枚の写真が載っているそのページの一枚にそれは写っていた。
「これって、竹中真凛じゃないですか?」
これが行われた何処かのホテルの会場で、立食パーティが開かれていた時の、その1枚の写真には、何人かと談笑しているような様子で竹中真凛らしき女性が写っていた。
「おそらくね。横顔だから少しわかりにくいけど、そこに竹中が写っていることが、渡辺二瓶らのやっていることにウィメンズオフィスが何らかの関係があるという証明にもなってると思うわけ」
「……そっか、渡辺二瓶と香西、というか竹中真凛が港西警察署の玄関前で会話していたそのセリフの中に、「ウィメンズ」と渡辺が言っていたから、か。それ以外の部分は僕には明かされていないので、事件との結びつきがいまいちですが……」
「そうなんだけどね。……でも、渡辺二瓶は勤務状況から調べていくとして、ウィメンズオフィスの線も調べたいの」
「うーん……」
三島は小声で唸るようにそう言うと、腕組みをして、少し考え込むような素振りで立ち上がり、今までいた私のデスクの傍から、対面の自分のデスクに戻った。
「社長のお考えはなんとなく分かりますが、そこまで調べるって普通の探偵業務からは少し離れすぎてやしませんかね?」
「それはそうなんだけど、最終目標としては、出来るだけ強制売春の確実な証拠を暴かないとさぁ、弁護士先生に持っていけないからさ」
「つっても、今この事務所、僕と社長の二人しかいないんですよ? 僕も自分の仕事で手一杯だし……」
……なんだよなぁ。手嶋ちゃんはやめちゃったし、あの子は今更戻しにくいし。うーん、うーん……。私もそこが頭が痛いんだ。私は取り急ぎは別のことをやんなきゃなんないし。弱ったなぁ……、三島なら無理聞いてくれるかもとちょっと甘い期待をしたんだけどなぁ――。
「三島は今、案件いくつ持ってんだっけ?」
「五つですよ、五つ。今日もそのうち、二つの案件で尾行と盗聴器調査行かなきゃなんないですし」
「……だよなぁ。私も今日は午前中はストーカー被害調査行かなきゃだし……」
「……」
三島が自分の仕事に入ってしまった。私は一応社長なんだぞ……、やっぱこいつ私のこと舐めてんのかなぁ……、ここは一発ガツンとブラック社長のように――。
「……海来先輩、魂胆ミエミエですよ」
「えっ?」
「僕もう、なんだかんだ言って、大学時代から数えると海来先輩と足掛け八年くらい付き合ってませんでしたっけ?」
「あらま、そんなに長かったっけ?」
「やだなー、ちゃんと覚えておいてくださいよ。だから、分かるんですよ、海来先輩が何を考えているのか」
「何よー? お、思わせぶりしないでよ」
ていうか、私の魂胆ってなんだ? 私自身が知らんのだが……。
「あの人でしょ? そうやって他に選択肢がないことを、いちいち僕に言って「しょうがないなぁ」感出したいんでしょ? ……それで、別に良いんじゃないですか?」
「三島、それ何の話?」
「……」
くそっ。また沈黙かよ。……確かに、三島は私のことをよく知ってる。今じゃ片足としてなくてはならない存在だということは認める。しかし……、今回は何のことやらさっぱり。やっぱここはガツンと言って――。
「じゃぁ、さっき言ってた案件で出掛けてきますね」
と言って三島はデスクから立つと、既に用意していたのであろう、道具一式の入ったかばんを持って事務所から出ていこうとする。
「三島くん!」
「漆原さんで、良いんじゃないですか? 僕もあの人優秀だと思いますよ。じゃぁ」
「う、……漆原?」
ガコン、という古びた鉄製ドアの閉まる音とともに三島は仕事へ向かった。
漆原? って……、だからさ、あのナンパ野郎なんか……、くそっ、確かに、ちらっと考えたことは認める。認めるけど、そんな魂胆なんて……、でも、他に人が……、あー! もう! それしかないじゃんか。……でも、やだなぁ、ナンパ師になんか頼らないといけないなんてさぁ……、でもしょうがないなぁ。
――「しょうがないなぁ」感だしたいんでしょ?――
……か。あいつ、無意識に私が自覚してることまで当てたんだな。やっぱ八年も付き合ってると、そこまで読めるようになるのかなぁ? 私はいまだに三島がよくわからないんだけど。ともかく、漆原に電話してみるか……。
〈おかけになった電話番号は電波の届かないところに……〉
繋がらんな。まぁいいや、着信履歴でかかってくるだろう――。
午前中にストーカー案件の被害調査をした後、午後になってから、武蔵川女子大学のキャンパスに赴いた。仲西麗華と京極菖蒲の通う大学である。目的は、仲西麗華の尾行である。調査依頼主の身辺調査を内々に行うことは時々あるが、尾行調査などはしない。警察ならば、疑わしいのならば被害者も捜査の対象にすることはあるが、探偵はあくまでの依頼主の雇われであるに過ぎず、依頼主の期待に沿った調査しかしないからである。
彼女達から調査依頼の話を聞いた時に、三島が「売春行為の相手を調べてはどうか?」との提案もあったが、そのために仲西麗華の行動確認を行うのは、仲西が渡辺に脅迫を受けていることなどから危険と判断し、断念していた。張り込みや尾行は常にそれがばれるリスクを考慮しなければならない。今回はそのバレた時のリスクが高すぎると思われたのだ。
では、そのリスクを犯してまで、仲西麗華自身にまで伏せて尾行を行うのは、彼女が妊娠しているという京極菖蒲からの情報があったからである。京極菖蒲にその情報を得て、どうして仲西麗華が妊娠したのか、どうしても腑に落ちず、ずっと考えていて、あるおぞましい理由を思いついたのである。まさか現実にそんな事があるとは到底信じられなかったが――。
仲西麗華が、今日、来ているのかどうかすらも知らない状態で大学に来たので、とりあえず大学の正門と道路を隔ててちょうど向かい側にある古い喫茶店「喫茶リリアン」で、正門から出てくる学生を監視することにした。こういう場合は、下手に怪しまれないように、お店の人に伝えておく必要がある。
「お客さん、ご注文は?」と、60台半ばくらいの年配の女性店員が注文を取りに来た。
「そうね、えーっと、いちご&チョコレートパフェ貰えますか? あと、それとお店には申し訳ないんですけど、何時間か長居することになるかもしれませんがよろしいですか?」
「あ、はい。今日は暇ですからねぇ。よろしいですよ? 何なら閉店までごゆっくり」とその女性店員はにっこり微笑むと、その場から立ち去った。
仲西麗華は、電車通学だと言っていたので、駅に近い正門から出てくる筈だとの読みであるが、……くそっ、ここのウィンドウに貼ってある、この無駄なビール宣伝ポスター邪魔だな。……外が見難い。勝手に剥がしたら駄目だろうか? ……駄目だろうな。しょうがない、ちょっと椅子を後ろに下げよう。
しばらくすると、いちご&チョコレートパフェが運ばれてきた……、で、でかい! 高さ40センチ以上あるんじゃないか? ……でも、美味そうだ。よし、食べよう……、って、と、届かん! ……しょうがない、パフェのグラスを手に持って、……駄目だ、重すぎる! ……くそっ、ならばスプーンを伸ばして、……あっ、落とした! あっちゃー……。ちきしょう、この落ちた塊を掬って――。
「お客さん、どうかしましたか?」と、あの60台半ばくらいの女性店員。
「あ……、い、いえ、その別に。ちょっとテーブルを汚してしまいまして」
「ああ、それならこちらでテーブルを拭かせていただきますので、そのままで結構ですよ。……あれ? お客さん、どうしてそんなに椅子を後ろに?」
「えっ……、それはその、なんていうか、ちょっと外の景色見たいなーと、あはは」
「あらま、私としたことが。何ということでしょう、すっかり忘れていましたねぇ。そのポスターですね?」
「えっ?」
すると、その60台半ばくらいの女性店員は、私に「すみません」と断って、椅子とテーブルの間に入り、そのポスターをきれいに剥がしてくれたのである。
「どうもどうも、失礼しました。もう20年くらい貼りっぱなしで全然気付きもしませんでしたわ。そりゃそうですわね、お客さんだってお外の景色も見たいってもんですよね。まったく、店主の私がそんなことも気が付かないなんて。店主失格ですわね、おほほほ」
そう言って、その店主だった60台半ばの女性はポスターをくるくるっと丸めて一旦立ち去ったかと思うと、ガラスクリーナーとタオルを持ってきて、そのウィンドウの内外をきれいに拭き上げてくれたのである。
「どうですか? きれいにお外の景色が見えるようになりましたですか?」
こんなにスッキリまるで窓すらないが如くにまでしてくれるとは思わなかった。めっちゃくちゃ見やすい。
「ありがとうございました。すごく助かります」
「助かります?」
……あ、やべ。大学の正門を監視しているとまでは他人には知られたくない。
「いえいえ、外がきれいに見えるようになったので、なんか開放されたような気分で、ありがとうございます」
「それはよかった。何かありましたらまた言ってくださいね」と言って店主は立ち去った。私はいちご&チョコレートパフェを美味しく戴くために椅子をテーブルに寄せた。そして、スプーンで救おうとしたその時――、ブブブッとスマホがバイブ。
「んだよ、このタイミングで……、あ、漆原だ。はいはい、漆原くん電話ありがとう」
〈杏樹さん、久しぶりー。お元気ですか?〉
「一応ね、漆原くんは?」
〈絶好調ですよ。今日なんか既に三人も――〉
「いいよ、そんな話は」
ったく、分かってたけど、やっぱこの男はナンパばっかしてるんだな。
「じゃぁ、今日はどんな話でお電話を?」
「うん、ちょっとね。漆原くん、前言ってたじゃん、私の仕事なら喜んで手伝うからいつでも呼んでくれって」
「仕事っすか? やったー! また杏樹さんと一緒に仕事できるんだ! 俺さぁ、マジな話、女の子とエッチしてるより、杏樹さんと一緒に仕事してるほうが全然楽しいからさ」
そうかそうか。それは良かった。ただな、漆原麟太郎くんには申し訳ないんだけど、今回は基本一人で動いてもらうつもりなんだよな――。
「これって、竹中真凛じゃないですか?」
これが行われた何処かのホテルの会場で、立食パーティが開かれていた時の、その1枚の写真には、何人かと談笑しているような様子で竹中真凛らしき女性が写っていた。
「おそらくね。横顔だから少しわかりにくいけど、そこに竹中が写っていることが、渡辺二瓶らのやっていることにウィメンズオフィスが何らかの関係があるという証明にもなってると思うわけ」
「……そっか、渡辺二瓶と香西、というか竹中真凛が港西警察署の玄関前で会話していたそのセリフの中に、「ウィメンズ」と渡辺が言っていたから、か。それ以外の部分は僕には明かされていないので、事件との結びつきがいまいちですが……」
「そうなんだけどね。……でも、渡辺二瓶は勤務状況から調べていくとして、ウィメンズオフィスの線も調べたいの」
「うーん……」
三島は小声で唸るようにそう言うと、腕組みをして、少し考え込むような素振りで立ち上がり、今までいた私のデスクの傍から、対面の自分のデスクに戻った。
「社長のお考えはなんとなく分かりますが、そこまで調べるって普通の探偵業務からは少し離れすぎてやしませんかね?」
「それはそうなんだけど、最終目標としては、出来るだけ強制売春の確実な証拠を暴かないとさぁ、弁護士先生に持っていけないからさ」
「つっても、今この事務所、僕と社長の二人しかいないんですよ? 僕も自分の仕事で手一杯だし……」
……なんだよなぁ。手嶋ちゃんはやめちゃったし、あの子は今更戻しにくいし。うーん、うーん……。私もそこが頭が痛いんだ。私は取り急ぎは別のことをやんなきゃなんないし。弱ったなぁ……、三島なら無理聞いてくれるかもとちょっと甘い期待をしたんだけどなぁ――。
「三島は今、案件いくつ持ってんだっけ?」
「五つですよ、五つ。今日もそのうち、二つの案件で尾行と盗聴器調査行かなきゃなんないですし」
「……だよなぁ。私も今日は午前中はストーカー被害調査行かなきゃだし……」
「……」
三島が自分の仕事に入ってしまった。私は一応社長なんだぞ……、やっぱこいつ私のこと舐めてんのかなぁ……、ここは一発ガツンとブラック社長のように――。
「……海来先輩、魂胆ミエミエですよ」
「えっ?」
「僕もう、なんだかんだ言って、大学時代から数えると海来先輩と足掛け八年くらい付き合ってませんでしたっけ?」
「あらま、そんなに長かったっけ?」
「やだなー、ちゃんと覚えておいてくださいよ。だから、分かるんですよ、海来先輩が何を考えているのか」
「何よー? お、思わせぶりしないでよ」
ていうか、私の魂胆ってなんだ? 私自身が知らんのだが……。
「あの人でしょ? そうやって他に選択肢がないことを、いちいち僕に言って「しょうがないなぁ」感出したいんでしょ? ……それで、別に良いんじゃないですか?」
「三島、それ何の話?」
「……」
くそっ。また沈黙かよ。……確かに、三島は私のことをよく知ってる。今じゃ片足としてなくてはならない存在だということは認める。しかし……、今回は何のことやらさっぱり。やっぱここはガツンと言って――。
「じゃぁ、さっき言ってた案件で出掛けてきますね」
と言って三島はデスクから立つと、既に用意していたのであろう、道具一式の入ったかばんを持って事務所から出ていこうとする。
「三島くん!」
「漆原さんで、良いんじゃないですか? 僕もあの人優秀だと思いますよ。じゃぁ」
「う、……漆原?」
ガコン、という古びた鉄製ドアの閉まる音とともに三島は仕事へ向かった。
漆原? って……、だからさ、あのナンパ野郎なんか……、くそっ、確かに、ちらっと考えたことは認める。認めるけど、そんな魂胆なんて……、でも、他に人が……、あー! もう! それしかないじゃんか。……でも、やだなぁ、ナンパ師になんか頼らないといけないなんてさぁ……、でもしょうがないなぁ。
――「しょうがないなぁ」感だしたいんでしょ?――
……か。あいつ、無意識に私が自覚してることまで当てたんだな。やっぱ八年も付き合ってると、そこまで読めるようになるのかなぁ? 私はいまだに三島がよくわからないんだけど。ともかく、漆原に電話してみるか……。
〈おかけになった電話番号は電波の届かないところに……〉
繋がらんな。まぁいいや、着信履歴でかかってくるだろう――。
午前中にストーカー案件の被害調査をした後、午後になってから、武蔵川女子大学のキャンパスに赴いた。仲西麗華と京極菖蒲の通う大学である。目的は、仲西麗華の尾行である。調査依頼主の身辺調査を内々に行うことは時々あるが、尾行調査などはしない。警察ならば、疑わしいのならば被害者も捜査の対象にすることはあるが、探偵はあくまでの依頼主の雇われであるに過ぎず、依頼主の期待に沿った調査しかしないからである。
彼女達から調査依頼の話を聞いた時に、三島が「売春行為の相手を調べてはどうか?」との提案もあったが、そのために仲西麗華の行動確認を行うのは、仲西が渡辺に脅迫を受けていることなどから危険と判断し、断念していた。張り込みや尾行は常にそれがばれるリスクを考慮しなければならない。今回はそのバレた時のリスクが高すぎると思われたのだ。
では、そのリスクを犯してまで、仲西麗華自身にまで伏せて尾行を行うのは、彼女が妊娠しているという京極菖蒲からの情報があったからである。京極菖蒲にその情報を得て、どうして仲西麗華が妊娠したのか、どうしても腑に落ちず、ずっと考えていて、あるおぞましい理由を思いついたのである。まさか現実にそんな事があるとは到底信じられなかったが――。
仲西麗華が、今日、来ているのかどうかすらも知らない状態で大学に来たので、とりあえず大学の正門と道路を隔ててちょうど向かい側にある古い喫茶店「喫茶リリアン」で、正門から出てくる学生を監視することにした。こういう場合は、下手に怪しまれないように、お店の人に伝えておく必要がある。
「お客さん、ご注文は?」と、60台半ばくらいの年配の女性店員が注文を取りに来た。
「そうね、えーっと、いちご&チョコレートパフェ貰えますか? あと、それとお店には申し訳ないんですけど、何時間か長居することになるかもしれませんがよろしいですか?」
「あ、はい。今日は暇ですからねぇ。よろしいですよ? 何なら閉店までごゆっくり」とその女性店員はにっこり微笑むと、その場から立ち去った。
仲西麗華は、電車通学だと言っていたので、駅に近い正門から出てくる筈だとの読みであるが、……くそっ、ここのウィンドウに貼ってある、この無駄なビール宣伝ポスター邪魔だな。……外が見難い。勝手に剥がしたら駄目だろうか? ……駄目だろうな。しょうがない、ちょっと椅子を後ろに下げよう。
しばらくすると、いちご&チョコレートパフェが運ばれてきた……、で、でかい! 高さ40センチ以上あるんじゃないか? ……でも、美味そうだ。よし、食べよう……、って、と、届かん! ……しょうがない、パフェのグラスを手に持って、……駄目だ、重すぎる! ……くそっ、ならばスプーンを伸ばして、……あっ、落とした! あっちゃー……。ちきしょう、この落ちた塊を掬って――。
「お客さん、どうかしましたか?」と、あの60台半ばくらいの女性店員。
「あ……、い、いえ、その別に。ちょっとテーブルを汚してしまいまして」
「ああ、それならこちらでテーブルを拭かせていただきますので、そのままで結構ですよ。……あれ? お客さん、どうしてそんなに椅子を後ろに?」
「えっ……、それはその、なんていうか、ちょっと外の景色見たいなーと、あはは」
「あらま、私としたことが。何ということでしょう、すっかり忘れていましたねぇ。そのポスターですね?」
「えっ?」
すると、その60台半ばくらいの女性店員は、私に「すみません」と断って、椅子とテーブルの間に入り、そのポスターをきれいに剥がしてくれたのである。
「どうもどうも、失礼しました。もう20年くらい貼りっぱなしで全然気付きもしませんでしたわ。そりゃそうですわね、お客さんだってお外の景色も見たいってもんですよね。まったく、店主の私がそんなことも気が付かないなんて。店主失格ですわね、おほほほ」
そう言って、その店主だった60台半ばの女性はポスターをくるくるっと丸めて一旦立ち去ったかと思うと、ガラスクリーナーとタオルを持ってきて、そのウィンドウの内外をきれいに拭き上げてくれたのである。
「どうですか? きれいにお外の景色が見えるようになりましたですか?」
こんなにスッキリまるで窓すらないが如くにまでしてくれるとは思わなかった。めっちゃくちゃ見やすい。
「ありがとうございました。すごく助かります」
「助かります?」
……あ、やべ。大学の正門を監視しているとまでは他人には知られたくない。
「いえいえ、外がきれいに見えるようになったので、なんか開放されたような気分で、ありがとうございます」
「それはよかった。何かありましたらまた言ってくださいね」と言って店主は立ち去った。私はいちご&チョコレートパフェを美味しく戴くために椅子をテーブルに寄せた。そして、スプーンで救おうとしたその時――、ブブブッとスマホがバイブ。
「んだよ、このタイミングで……、あ、漆原だ。はいはい、漆原くん電話ありがとう」
〈杏樹さん、久しぶりー。お元気ですか?〉
「一応ね、漆原くんは?」
〈絶好調ですよ。今日なんか既に三人も――〉
「いいよ、そんな話は」
ったく、分かってたけど、やっぱこの男はナンパばっかしてるんだな。
「じゃぁ、今日はどんな話でお電話を?」
「うん、ちょっとね。漆原くん、前言ってたじゃん、私の仕事なら喜んで手伝うからいつでも呼んでくれって」
「仕事っすか? やったー! また杏樹さんと一緒に仕事できるんだ! 俺さぁ、マジな話、女の子とエッチしてるより、杏樹さんと一緒に仕事してるほうが全然楽しいからさ」
そうかそうか。それは良かった。ただな、漆原麟太郎くんには申し訳ないんだけど、今回は基本一人で動いてもらうつもりなんだよな――。
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