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第1章 ヤンデレホイホイRTA
2 平手の同級生①
棺桶先輩がいなくなり一人棺桶の中に取り残された僕は、しばらく棺桶先輩を呼んだりしてみたが返事はなく、まあ初手首絞めの大男と顔を突き合わせて過ごすのも怖いし良いかと横になり、このまま出られなくなったりしないよな? と心配になったりもしたがそこはさすがの貧乏根性というか強かさで気づいたら眠っていた。
棺桶の中は薄暗くて眠気を誘ったし、眠れる時に眠るというのが一家言でもあった。
それから数時間ぐっすりと眠りこけたようだった。
「出ていいよ」
ぼんやりとした頭に棺桶先輩の低い声が遠くで聞こえたような気がした、瞬間。
「いったぁ!?」
棺桶が開き、ドタリと廊下に転び落ちた。
ろくな受け身も取れず打ちつけた右腕と胸が痛い。
二の腕をさすりながら辺りを見渡すと、もうすっかり夜になっているようだ。
しんとして闇の落ちた校舎はなんだか不気味だった。
隣にいる棺桶先輩はやはり棺桶の姿のまま黙り込んで僕を見下ろしている。
いや目が無いから見下ろしているかは分からないのだが。
夜の学校に浮かぶ棺桶。普通に怖い。
「うう、痛いし暗い……棺桶先輩、もっと優しく出してくださいよ。怖いし……」
一人怖がってキョロキョロと目を動かしていると、ひたひたと人の足音のようなものを耳が拾った。
それも、徐々に近づいて来ている。
「えっえっ、棺桶先輩、足音してますよね? 聞こえてる? えっ、棺桶先輩! 僕だけに聞こえてるパターンじゃないですよね! 第一って幽霊出るんですか!? かんおけせんぱ!」
後輩が怖がって必死に声をあげているというのにこの棺桶、だんまりである。
棺桶に引っ付いてガタガタしていると、足音はもうすぐ目の前まで差し迫っていた。
暗くて見えないが、大きな人影のように見える。人影、ということは人である。人であれ。
「あっ、あっ、警備の人? ですか? 僕たちすぐ帰るから……!」
「もうすぐ消灯の時間だ。寮に戻れ」
声が返って来た。静かな男の声だ。ひとまず人である。
「入るか?」
だんまりしていた棺桶先輩が突如声をかけた。棺桶が開いている。
「入らない。消灯の時間になる。君も早く寮に戻るべきだ」
棺桶先輩は黙って棺を閉じると、揺らめいたかと思えば次には姿を消していた。
ハイランク魔族しか使えない転移魔法というものだろうか。初めて見た。
魔力の残滓がきらきらと宙を舞っていて綺麗だ。
それにしてもやけにあっさりと棺桶先輩は引いた感じがする。
僕のことはめちゃくちゃ棺桶の中に拘束してたよね??
「うわあ!?」
考え込んでいると突如がっしりと腰を掴まれ、浮遊感。
気付けば僕は男に担ぎ上げられていた。そのまま走り出すので、揺れとともに男の肩に腹がめり込んで痛い。
「ちょ、いぃっ……ぅぐ」
痛みに呻き声しか出せず、抗議もできない間に寮室に辿り着いていた。
寮部屋は二人一組。ベッドは二個ある。
男は僕をベッドに放り投げると、もう一つのベッドに足早に潜り込んだ。
どうやら同室の男が消灯時間に迎えに来てくれたらしかった。まだ顔を合わせたことはなかったのだが、なぜ僕のことがわかったのだろう。
「あー、あの、ちょっと運び方痛かったけど迎えきてくれたみたいでありがとう。同じ部屋なんですね。よろしく」
「消灯だ。寝ろ」
被せ気味で言われた。
わざわざ迎えに来る辺り親切な男なのかと思ったが違うのかもしれない。
放課後棺桶先輩の中で寝たけれど、寝られる状況であればすぐに眠れる方なのですぐに瞼を閉じた。
「寝たか?」
「え、まだ……」
直後に尋ねられる。そんなすぐは寝られるか!
「消灯の時間なんだから寝ないと駄目だろうが!」
「ひっ、え、な、なにっ!?」
予想外の大声に狼狽える。怒号とともに荒々しい足音を立てて男は僕のベッドサイドまで来ていた。
「消灯だ! 寝ろ!」
「い゛ぃっ……!?」
ばちんと乾いた音が自分の右頬から鳴ったと認識して、一拍遅れでジンジンと熱が集まり痛みだした。
平手打ちをくらったということは分かったが、状況は理解できなかった。目を見開いて男を見上げる。
いかった肩が上下に大きく揺れていて、僕を見下ろす眼つきは親の仇でも見るかのように鋭い。
視線から逃れるように、身を守るように布団を被り丸まるとぎゅっと目を瞑った。
「……寝たか?」
「……」
寝られるか! という叫びは心のうちに留め黙り込む。
男は黙ってそこに立ち僕を見下ろしていたようだが、三十秒ほど経つと自分のベッドに戻ったような足音と衣擦れの音が聞こえた。
棺桶先輩といいこの同室の男といい、なぜ初対面でバイオレンスなんだ?
第一高等魔界学園の生徒ってこんなんばっかりなのか? 怖すぎる。
でも糞貧乏から脱却するためなんだから、棺桶先輩ともこの男ともうまくやってみせないと……!
散々な初日だったが、決意を新たに目を閉じた。寝れる時に寝る。極貧生活で得た一家言の通り、気付けばすやすやと眠りに落ちていた。
棺桶の中は薄暗くて眠気を誘ったし、眠れる時に眠るというのが一家言でもあった。
それから数時間ぐっすりと眠りこけたようだった。
「出ていいよ」
ぼんやりとした頭に棺桶先輩の低い声が遠くで聞こえたような気がした、瞬間。
「いったぁ!?」
棺桶が開き、ドタリと廊下に転び落ちた。
ろくな受け身も取れず打ちつけた右腕と胸が痛い。
二の腕をさすりながら辺りを見渡すと、もうすっかり夜になっているようだ。
しんとして闇の落ちた校舎はなんだか不気味だった。
隣にいる棺桶先輩はやはり棺桶の姿のまま黙り込んで僕を見下ろしている。
いや目が無いから見下ろしているかは分からないのだが。
夜の学校に浮かぶ棺桶。普通に怖い。
「うう、痛いし暗い……棺桶先輩、もっと優しく出してくださいよ。怖いし……」
一人怖がってキョロキョロと目を動かしていると、ひたひたと人の足音のようなものを耳が拾った。
それも、徐々に近づいて来ている。
「えっえっ、棺桶先輩、足音してますよね? 聞こえてる? えっ、棺桶先輩! 僕だけに聞こえてるパターンじゃないですよね! 第一って幽霊出るんですか!? かんおけせんぱ!」
後輩が怖がって必死に声をあげているというのにこの棺桶、だんまりである。
棺桶に引っ付いてガタガタしていると、足音はもうすぐ目の前まで差し迫っていた。
暗くて見えないが、大きな人影のように見える。人影、ということは人である。人であれ。
「あっ、あっ、警備の人? ですか? 僕たちすぐ帰るから……!」
「もうすぐ消灯の時間だ。寮に戻れ」
声が返って来た。静かな男の声だ。ひとまず人である。
「入るか?」
だんまりしていた棺桶先輩が突如声をかけた。棺桶が開いている。
「入らない。消灯の時間になる。君も早く寮に戻るべきだ」
棺桶先輩は黙って棺を閉じると、揺らめいたかと思えば次には姿を消していた。
ハイランク魔族しか使えない転移魔法というものだろうか。初めて見た。
魔力の残滓がきらきらと宙を舞っていて綺麗だ。
それにしてもやけにあっさりと棺桶先輩は引いた感じがする。
僕のことはめちゃくちゃ棺桶の中に拘束してたよね??
「うわあ!?」
考え込んでいると突如がっしりと腰を掴まれ、浮遊感。
気付けば僕は男に担ぎ上げられていた。そのまま走り出すので、揺れとともに男の肩に腹がめり込んで痛い。
「ちょ、いぃっ……ぅぐ」
痛みに呻き声しか出せず、抗議もできない間に寮室に辿り着いていた。
寮部屋は二人一組。ベッドは二個ある。
男は僕をベッドに放り投げると、もう一つのベッドに足早に潜り込んだ。
どうやら同室の男が消灯時間に迎えに来てくれたらしかった。まだ顔を合わせたことはなかったのだが、なぜ僕のことがわかったのだろう。
「あー、あの、ちょっと運び方痛かったけど迎えきてくれたみたいでありがとう。同じ部屋なんですね。よろしく」
「消灯だ。寝ろ」
被せ気味で言われた。
わざわざ迎えに来る辺り親切な男なのかと思ったが違うのかもしれない。
放課後棺桶先輩の中で寝たけれど、寝られる状況であればすぐに眠れる方なのですぐに瞼を閉じた。
「寝たか?」
「え、まだ……」
直後に尋ねられる。そんなすぐは寝られるか!
「消灯の時間なんだから寝ないと駄目だろうが!」
「ひっ、え、な、なにっ!?」
予想外の大声に狼狽える。怒号とともに荒々しい足音を立てて男は僕のベッドサイドまで来ていた。
「消灯だ! 寝ろ!」
「い゛ぃっ……!?」
ばちんと乾いた音が自分の右頬から鳴ったと認識して、一拍遅れでジンジンと熱が集まり痛みだした。
平手打ちをくらったということは分かったが、状況は理解できなかった。目を見開いて男を見上げる。
いかった肩が上下に大きく揺れていて、僕を見下ろす眼つきは親の仇でも見るかのように鋭い。
視線から逃れるように、身を守るように布団を被り丸まるとぎゅっと目を瞑った。
「……寝たか?」
「……」
寝られるか! という叫びは心のうちに留め黙り込む。
男は黙ってそこに立ち僕を見下ろしていたようだが、三十秒ほど経つと自分のベッドに戻ったような足音と衣擦れの音が聞こえた。
棺桶先輩といいこの同室の男といい、なぜ初対面でバイオレンスなんだ?
第一高等魔界学園の生徒ってこんなんばっかりなのか? 怖すぎる。
でも糞貧乏から脱却するためなんだから、棺桶先輩ともこの男ともうまくやってみせないと……!
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