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第一章
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四匹と数が多いナイトアント相手にどう立ち回るのか。
さすがに先ほどのように単騎でアサシネイトする気はないのか、キャスは気配を消しつつも前には出ない。
双子の姉妹だからなのか。言葉も交わさずになにやら画策しているようだ。
その様子を読み解くと、おそらくこうだろう。
「お姉さま! 私が一発大きいのを撃つから、残って接近してきたヤツを蹴散らして」
「分かりました。でも、魔力のムダ使いはダメよ?」
「はーい!」
その予想どおり、シスが先に動く。
ナイトアントは盾を持っていないが、その甲殻は金属の鎧と同等の強度をもつ。
最初に放ったあの刃くらいでなければつらぬけないが、どう攻めるか。
「えい、やぁ! 『エアロバースト』!」
『エアロバースト』、風の爆発魔法だ。圧縮した空気を打ち出し、破裂させ打撃をあたえる。先ほどまでの斬撃重視とは違う。
俺が上層でスタンピードを一掃した魔法だが、まさかこの短期間で斬撃と打撃の両方を使い分けるようになるとは……。
「まだまだーー!!」
爆発し、ナイトアントたちの体勢を崩す。それで終わるかと思った『エアロバースト』だが、爆発後も効果があるようでナイトアントたちの動きが目に見えてにぶる。
何をしたのか……。
「闇属性は生命力を魔力に転換! だったら、相手の生命力も魔力に変えられるよね!!」
は?
なんだって?
「おまえ、いまなにを?」
「相手の生命力を魔力に変えて空気中に発散させてるの!」
つまり意図的に魔力もれの症状を引き起こしている?
こいつ、発想がこえぇよ!
それたぶん禁術じゃないのか!?
「取りついた! わたしの! 風から! 生命力を! 魔力に! 転換!」
「わかった! わかったからそれ以上口に出すな!」
「はーい!! おりゃーー!!」
デタラメだな。
チート能力をもっている俺でさえ気づかなかった闇魔法の使い方だ。生命力を魔力に転換できるのは、自分の生命力だけ。
普通は相手に使っても、抵抗されて終わる。魔力の抵抗に加えて、生命力の抵抗もかかって、二倍大変なんだから当たり前だ。逆を言えば、生命力の抵抗を突破しているのであれば、あとは単純に魔力同士のぶつかり合い。質の高い方が勝つ。
めんどうで手間がかかるが、理論上はたしかに可能だ。
「それを、表面を傷つける風魔法と併用して実現するとは……。末恐ろしいヤツだ」
「えへへー」
ほめてないぞ。
ほめてないぞ!?
「システィ、トドメをさしに行きます。もうじゅうぶん弱っているでしょうから」
「はーい! 気を付けてねー」
まるで近所にプリンを買いにいく気軽さだな!
ちょっとコンビニまで! いてらー! みたいな!?
そしてその気楽さのとおりに、スポポポポンとナイトアントの首を狩った。
ますますNINJAじみてきた。
異様なまでの戦闘力をほこる姉妹に、若干及び腰になる。
だが、これは俺にとっても成長できるかもしれない、いい機会だ。
俺からは生まれない発想。そこから来る、意外性の高い魔法。その組み合わせ。
自分でも結構がんばって魔法を習得していたと思う。命をかけてサバイバル生活もして、もうこれ以上は中々出てこないレベルまで魔法の腕を磨いた。
神からもらったチートでも、もう限界は近いのかとうぬぼれていた。
だが、だが!
「さぁ、次に行くぞ」
ああ、俺の才能は今程度で収まるようなものじゃない!
なんせ素質だけならカンストだ!
まだまだ俺の中には、才能が眠っている!
それを知れた!
こいつぁ、気分がいいな!
「ついてこい!」
こいつらとなら、もしかすると、俺はテッペンまで行けるかもしれない!!
「「はい!!」」
次々とアントを撃破していく。
スタンピードが起こっていた場所だけは俺が処理し、残りはすべて姉妹が処理をした。
肩を並べるほどではないが、雑魚を除去するのには役に立つ。
それに柔軟な発想から生まれる一風変わった魔法も、俺のカテとなる。
「風が燃えているだと!? なんだそれ!?」
「んにーって風をこすってたら、燃えた!」
「キャス!? 今壁を走って……?」
「シュバッ! ササササッ。足の裏から対象の生命力を吸い出す闇の吸盤を作ってみました」
「今度は、風が凍った!? 何をしたんだ、シス!」
「風を、んもーって止めたら、凍った!」
「キャ、キャス? 今、ワープしなかったか?」
「空間の生命力を抜いて魔力に転換していたらできました。亜空間の応用ですが、うまくいったようで安心しました。これで短距離なら空間を渡れるようです」
こ、こいつら。
でたらめだーーーーー!!
「私も自分がここまでできるとは知らなくて、おどろいています」
「旦那様はもっとすごいって知ってるから! だからわたしもがんばるの!」
キャスはいいが、常識人だと思っていたシスがぶっ飛んでるのはなぜだ!?
「わたしたちの『サモンボール』を維持しつつ、四属性五属性を同時に使ってる旦那様に言われたくないよー!!」
俺のは神からもらったチートだから、いいんだよ。
さすがに先ほどのように単騎でアサシネイトする気はないのか、キャスは気配を消しつつも前には出ない。
双子の姉妹だからなのか。言葉も交わさずになにやら画策しているようだ。
その様子を読み解くと、おそらくこうだろう。
「お姉さま! 私が一発大きいのを撃つから、残って接近してきたヤツを蹴散らして」
「分かりました。でも、魔力のムダ使いはダメよ?」
「はーい!」
その予想どおり、シスが先に動く。
ナイトアントは盾を持っていないが、その甲殻は金属の鎧と同等の強度をもつ。
最初に放ったあの刃くらいでなければつらぬけないが、どう攻めるか。
「えい、やぁ! 『エアロバースト』!」
『エアロバースト』、風の爆発魔法だ。圧縮した空気を打ち出し、破裂させ打撃をあたえる。先ほどまでの斬撃重視とは違う。
俺が上層でスタンピードを一掃した魔法だが、まさかこの短期間で斬撃と打撃の両方を使い分けるようになるとは……。
「まだまだーー!!」
爆発し、ナイトアントたちの体勢を崩す。それで終わるかと思った『エアロバースト』だが、爆発後も効果があるようでナイトアントたちの動きが目に見えてにぶる。
何をしたのか……。
「闇属性は生命力を魔力に転換! だったら、相手の生命力も魔力に変えられるよね!!」
は?
なんだって?
「おまえ、いまなにを?」
「相手の生命力を魔力に変えて空気中に発散させてるの!」
つまり意図的に魔力もれの症状を引き起こしている?
こいつ、発想がこえぇよ!
それたぶん禁術じゃないのか!?
「取りついた! わたしの! 風から! 生命力を! 魔力に! 転換!」
「わかった! わかったからそれ以上口に出すな!」
「はーい!! おりゃーー!!」
デタラメだな。
チート能力をもっている俺でさえ気づかなかった闇魔法の使い方だ。生命力を魔力に転換できるのは、自分の生命力だけ。
普通は相手に使っても、抵抗されて終わる。魔力の抵抗に加えて、生命力の抵抗もかかって、二倍大変なんだから当たり前だ。逆を言えば、生命力の抵抗を突破しているのであれば、あとは単純に魔力同士のぶつかり合い。質の高い方が勝つ。
めんどうで手間がかかるが、理論上はたしかに可能だ。
「それを、表面を傷つける風魔法と併用して実現するとは……。末恐ろしいヤツだ」
「えへへー」
ほめてないぞ。
ほめてないぞ!?
「システィ、トドメをさしに行きます。もうじゅうぶん弱っているでしょうから」
「はーい! 気を付けてねー」
まるで近所にプリンを買いにいく気軽さだな!
ちょっとコンビニまで! いてらー! みたいな!?
そしてその気楽さのとおりに、スポポポポンとナイトアントの首を狩った。
ますますNINJAじみてきた。
異様なまでの戦闘力をほこる姉妹に、若干及び腰になる。
だが、これは俺にとっても成長できるかもしれない、いい機会だ。
俺からは生まれない発想。そこから来る、意外性の高い魔法。その組み合わせ。
自分でも結構がんばって魔法を習得していたと思う。命をかけてサバイバル生活もして、もうこれ以上は中々出てこないレベルまで魔法の腕を磨いた。
神からもらったチートでも、もう限界は近いのかとうぬぼれていた。
だが、だが!
「さぁ、次に行くぞ」
ああ、俺の才能は今程度で収まるようなものじゃない!
なんせ素質だけならカンストだ!
まだまだ俺の中には、才能が眠っている!
それを知れた!
こいつぁ、気分がいいな!
「ついてこい!」
こいつらとなら、もしかすると、俺はテッペンまで行けるかもしれない!!
「「はい!!」」
次々とアントを撃破していく。
スタンピードが起こっていた場所だけは俺が処理し、残りはすべて姉妹が処理をした。
肩を並べるほどではないが、雑魚を除去するのには役に立つ。
それに柔軟な発想から生まれる一風変わった魔法も、俺のカテとなる。
「風が燃えているだと!? なんだそれ!?」
「んにーって風をこすってたら、燃えた!」
「キャス!? 今壁を走って……?」
「シュバッ! ササササッ。足の裏から対象の生命力を吸い出す闇の吸盤を作ってみました」
「今度は、風が凍った!? 何をしたんだ、シス!」
「風を、んもーって止めたら、凍った!」
「キャ、キャス? 今、ワープしなかったか?」
「空間の生命力を抜いて魔力に転換していたらできました。亜空間の応用ですが、うまくいったようで安心しました。これで短距離なら空間を渡れるようです」
こ、こいつら。
でたらめだーーーーー!!
「私も自分がここまでできるとは知らなくて、おどろいています」
「旦那様はもっとすごいって知ってるから! だからわたしもがんばるの!」
キャスはいいが、常識人だと思っていたシスがぶっ飛んでるのはなぜだ!?
「わたしたちの『サモンボール』を維持しつつ、四属性五属性を同時に使ってる旦那様に言われたくないよー!!」
俺のは神からもらったチートだから、いいんだよ。
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