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第三章
3-21 荒ぶる星弥
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永が皓矢に電話をかけるとすぐに繋がった。動画通話に切り替えて、その画面を三人で覗き込む。
「ああ、早かったね。大丈夫なのかい?」
画面の向こうの皓矢は本棚を背に映っていた。薄暗いのでおそらく研究所の書庫だろう。
「うん。今公園なんだけど、周りは誰もいないし、念のため梢賢くんは外してもらった」
「そうか。それなら話しやすい」
「そう言えば、ホテルのことはいろいろ、あ、ありがとな」
永は珍しく小声で呟いた。銀騎に対しては下手に出たくない意地があるので素直になれないんだな、と蕾生は思った。
皓矢の方もそれを充分察しているので苦笑しながら頷く。
「どういたしまして。不自由はないかい?」
「大丈夫です、お兄様」
鈴心が少し身を乗り出して返事をすると、皓矢もにっこりと笑った。
「やあ、鈴心。元気そうだね」
「はい。おかげさまで」
その声を聞きつけたのか、最初からいたのかはわからないが突然星弥の顔が画面に飛び込んできた。
「すずちゃーん!!」
その弩級の大声は永と蕾生の鼓膜をつんざいた。
「せ、星弥……」
「すずちゃん、そっちはどうなの!?暑いんじゃないの!?熱中症は大丈夫なの!?」
鈴心に関する星弥に洞察の鋭さに永も蕾生も少し怖くなった。鈴心はその剣幕に押されて少し口篭っている。
「ええっと、昨日少しアレでしたが、今日はもう慣れました」
「ええ!?気をつけてよ、もう!蕾生くんっ!わたし言ったよねっ!?」
「も、申し訳ない」
とばっちりだったが、星弥の雰囲気に逆らえず蕾生は思わず謝った。
「すずちゃんもすずちゃんだよ!毎日電話してって言ったのに、兄さんにばっかり電話してずるいったらない!」
「ハル様、あれは気にせずお兄様と会話してください」
ついに鈴心は永の後ろに引っ込んだ。しかし星弥の方は更に画面に近づいてどアップで迫る。
「あ、ちょっと、すずちゃん?すずちゃーん!」
その変態性が更に増しているので蕾生もつい一歩後ずさる。画面の奥から皓矢の溜息と呟きが聞こえた。
「ルリカ」
するとその声に反応して青い大きな鳥が甲高い声とともに現れた。鳥は星弥の首根っこを嘴で掴んで部屋の奥へ引きずっていった。
「あっ、ちょっと、ルリちゃん、待って!もう少しだけえぇぇ……」
「その鳥──」
何度か見たことはあったけれど、皓矢が何かを攻撃したり守ったりする以外にも出てくるのかと蕾生は驚いた。
「ああ、そういえば色々忙しくてきちんと紹介してなかったね。あの子は瑠璃烏と言う僕の式神だ。気軽にルリカと呼んでるけどね。今は修行中の星弥のお目付役をさせている」
「そうか。まあ元気そうで良かった」
蕾生にはその形容しか穏便に言えることがなかった。
「星弥も修行がだいぶキツくてね。ストレスが溜まってあんなことに」
「いやあ、元からだよねえ」
遠慮しない永は星弥のあれがストレスからではないことをはっきり言う。星弥は陰陽師の修行をするためについてこなかったので、蕾生は一応その進捗を気にした。
「皓矢……サンが、修行をつけてるンスか?」
「最初はそのつもりだったけど、僕は妹を甘やかしてしまうようでね。僕の師匠にそれがばれて、今は師匠に指導してもらっているよ。師匠は厳しいから、ストレスが溜まって……」
困ったように笑いながら言う皓矢に永はもう一度言い切った。
「だから、元からだって」
「まあ、その辺は帰ったら教えてあげよう。本題に入るけどいいかな?」
「もちろん。何かわかった?」
堂々巡りになりそうな雑談から脱して、皓矢は少し真面目な顔に戻して話し始めた。
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「ああ、早かったね。大丈夫なのかい?」
画面の向こうの皓矢は本棚を背に映っていた。薄暗いのでおそらく研究所の書庫だろう。
「うん。今公園なんだけど、周りは誰もいないし、念のため梢賢くんは外してもらった」
「そうか。それなら話しやすい」
「そう言えば、ホテルのことはいろいろ、あ、ありがとな」
永は珍しく小声で呟いた。銀騎に対しては下手に出たくない意地があるので素直になれないんだな、と蕾生は思った。
皓矢の方もそれを充分察しているので苦笑しながら頷く。
「どういたしまして。不自由はないかい?」
「大丈夫です、お兄様」
鈴心が少し身を乗り出して返事をすると、皓矢もにっこりと笑った。
「やあ、鈴心。元気そうだね」
「はい。おかげさまで」
その声を聞きつけたのか、最初からいたのかはわからないが突然星弥の顔が画面に飛び込んできた。
「すずちゃーん!!」
その弩級の大声は永と蕾生の鼓膜をつんざいた。
「せ、星弥……」
「すずちゃん、そっちはどうなの!?暑いんじゃないの!?熱中症は大丈夫なの!?」
鈴心に関する星弥に洞察の鋭さに永も蕾生も少し怖くなった。鈴心はその剣幕に押されて少し口篭っている。
「ええっと、昨日少しアレでしたが、今日はもう慣れました」
「ええ!?気をつけてよ、もう!蕾生くんっ!わたし言ったよねっ!?」
「も、申し訳ない」
とばっちりだったが、星弥の雰囲気に逆らえず蕾生は思わず謝った。
「すずちゃんもすずちゃんだよ!毎日電話してって言ったのに、兄さんにばっかり電話してずるいったらない!」
「ハル様、あれは気にせずお兄様と会話してください」
ついに鈴心は永の後ろに引っ込んだ。しかし星弥の方は更に画面に近づいてどアップで迫る。
「あ、ちょっと、すずちゃん?すずちゃーん!」
その変態性が更に増しているので蕾生もつい一歩後ずさる。画面の奥から皓矢の溜息と呟きが聞こえた。
「ルリカ」
するとその声に反応して青い大きな鳥が甲高い声とともに現れた。鳥は星弥の首根っこを嘴で掴んで部屋の奥へ引きずっていった。
「あっ、ちょっと、ルリちゃん、待って!もう少しだけえぇぇ……」
「その鳥──」
何度か見たことはあったけれど、皓矢が何かを攻撃したり守ったりする以外にも出てくるのかと蕾生は驚いた。
「ああ、そういえば色々忙しくてきちんと紹介してなかったね。あの子は瑠璃烏と言う僕の式神だ。気軽にルリカと呼んでるけどね。今は修行中の星弥のお目付役をさせている」
「そうか。まあ元気そうで良かった」
蕾生にはその形容しか穏便に言えることがなかった。
「星弥も修行がだいぶキツくてね。ストレスが溜まってあんなことに」
「いやあ、元からだよねえ」
遠慮しない永は星弥のあれがストレスからではないことをはっきり言う。星弥は陰陽師の修行をするためについてこなかったので、蕾生は一応その進捗を気にした。
「皓矢……サンが、修行をつけてるンスか?」
「最初はそのつもりだったけど、僕は妹を甘やかしてしまうようでね。僕の師匠にそれがばれて、今は師匠に指導してもらっているよ。師匠は厳しいから、ストレスが溜まって……」
困ったように笑いながら言う皓矢に永はもう一度言い切った。
「だから、元からだって」
「まあ、その辺は帰ったら教えてあげよう。本題に入るけどいいかな?」
「もちろん。何かわかった?」
堂々巡りになりそうな雑談から脱して、皓矢は少し真面目な顔に戻して話し始めた。
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