95 / 174
第四章
4-2 RPG①雨辺家へ
しおりを挟む
菫のマンションまでやってきた蕾生は大きな溜息を吐いていた。
「はあー……」
「そんなあからさまに「めんどくせー」みたいな顔すな!」
梢賢が発破をかけるけれども、蕾生は全くやる気が出なかった。
「だってよ、あの女、怖えよ……」
「だぁいじょぶ!このオレが一生かけてでも正気に戻したんねん!」
ドンと胸を叩く梢賢を、蕾生は改めて尊敬しようと思った。ただ、見習いたくはない。
「……お前のそういうとこ、マジですげえと思う」
「オレの愛は器がでかいんや!さあ、行くで!」
威勢よく梢賢がインターホンを鳴らすと、すぐに菫がドアを開けた。
「あら、こずえちゃん、いらっしゃい。今日も来てくれたのね」
「いやあ、昨日の藍ちゃんの様子が気になりましてえ」
蕾生が恐怖すら覚える相手に喜んで会いに来る梢賢は本当に凄いと蕾生は思った。もちろん嫌味的な意味で。
「まあ、そのことなら心配ないわ。今日はケロッとしてるもの」
「そうでっか、そら良かったですぅ」
鼻の下を伸ばしてデレデレしている梢賢を綺麗に無視して、菫は後ろの蕾生に注目していた。
「まあ!蕾生様までいらしてくださったのに、長話してすみません。さ、どうぞどうぞ」
名前呼びに「様」までつけられて、蕾生は度肝を抜かれたが、なんとか平静を見せながら短く挨拶する。
「お、おはようございます……」
「我慢や、我慢やで!」
だがその嫌悪感は梢賢にはばっちり伝わっており、小声で注意されてしまった。
リビングに入ると、藍と葵が並んでテーブルの前に座っていた。それを確認した梢賢は嬉しそうに二人に近寄る。
「おお、藍ちゃんに葵くんもお揃いで、おはようさん!」
「おはようございます……」
葵は少しはにかみながら小声で挨拶をしたが、藍はキツい視線で梢賢を睨んでいた。
「葵、そろそろ午前のお勉強の時間よ」
「はい」
菫が声をかけると、葵は立ち上がって二人に一礼した後自室へ向かった。藍もまたその後を不機嫌な顔のままついていった。
「今日は永様と鈴心様は?御一緒ではありませんの?」
冷たい麦茶を出しながら菫が聞くので、蕾生は何の気なく答えた。
「あー、あいつらは村で別の用事があって」
「ええ!?」
すると突然豹変した菫は恐ろしい顔で蕾生を見ていた。その事態に蕾生が戸惑っている間に梢賢がすかさずフォローをいれる。
「あっ、バカ!あの、大した用事やないですわ。実は鈴心ちゃんが熱中症ぎみで、永くんが看病してるんですわ」
それを聞くと菫はまた穏やかな顔に戻って話し始めた。蕾生はこれでは心臓がもたないと思い、発言は全て梢賢に任せようと思った。
「まあ、そうなの?今年も暑いですからねえ。失礼だけど麓紫村の医療レベルで大丈夫なの?大事な御身ですのに」
「医者が必要な程じゃないですよ!療養すれば大丈夫でしょ」
「そうね。使徒様の大切なお体を麓紫村の医者なんかにはそもそもお見せできないわ。あれなら有宇儀様に言いましょうか?」
「ああ、いやいや!そんな大袈裟にされたら鈴心ちゃんも困るでしょうから!」
こちらが二人だけと見てチャンスだとでも思ったのか、今日の菫は更に積極的だった。
===============================
お読みいただきありがとうございます
感想、いいね、お気に入り登録などいただけたら嬉しいです!
「はあー……」
「そんなあからさまに「めんどくせー」みたいな顔すな!」
梢賢が発破をかけるけれども、蕾生は全くやる気が出なかった。
「だってよ、あの女、怖えよ……」
「だぁいじょぶ!このオレが一生かけてでも正気に戻したんねん!」
ドンと胸を叩く梢賢を、蕾生は改めて尊敬しようと思った。ただ、見習いたくはない。
「……お前のそういうとこ、マジですげえと思う」
「オレの愛は器がでかいんや!さあ、行くで!」
威勢よく梢賢がインターホンを鳴らすと、すぐに菫がドアを開けた。
「あら、こずえちゃん、いらっしゃい。今日も来てくれたのね」
「いやあ、昨日の藍ちゃんの様子が気になりましてえ」
蕾生が恐怖すら覚える相手に喜んで会いに来る梢賢は本当に凄いと蕾生は思った。もちろん嫌味的な意味で。
「まあ、そのことなら心配ないわ。今日はケロッとしてるもの」
「そうでっか、そら良かったですぅ」
鼻の下を伸ばしてデレデレしている梢賢を綺麗に無視して、菫は後ろの蕾生に注目していた。
「まあ!蕾生様までいらしてくださったのに、長話してすみません。さ、どうぞどうぞ」
名前呼びに「様」までつけられて、蕾生は度肝を抜かれたが、なんとか平静を見せながら短く挨拶する。
「お、おはようございます……」
「我慢や、我慢やで!」
だがその嫌悪感は梢賢にはばっちり伝わっており、小声で注意されてしまった。
リビングに入ると、藍と葵が並んでテーブルの前に座っていた。それを確認した梢賢は嬉しそうに二人に近寄る。
「おお、藍ちゃんに葵くんもお揃いで、おはようさん!」
「おはようございます……」
葵は少しはにかみながら小声で挨拶をしたが、藍はキツい視線で梢賢を睨んでいた。
「葵、そろそろ午前のお勉強の時間よ」
「はい」
菫が声をかけると、葵は立ち上がって二人に一礼した後自室へ向かった。藍もまたその後を不機嫌な顔のままついていった。
「今日は永様と鈴心様は?御一緒ではありませんの?」
冷たい麦茶を出しながら菫が聞くので、蕾生は何の気なく答えた。
「あー、あいつらは村で別の用事があって」
「ええ!?」
すると突然豹変した菫は恐ろしい顔で蕾生を見ていた。その事態に蕾生が戸惑っている間に梢賢がすかさずフォローをいれる。
「あっ、バカ!あの、大した用事やないですわ。実は鈴心ちゃんが熱中症ぎみで、永くんが看病してるんですわ」
それを聞くと菫はまた穏やかな顔に戻って話し始めた。蕾生はこれでは心臓がもたないと思い、発言は全て梢賢に任せようと思った。
「まあ、そうなの?今年も暑いですからねえ。失礼だけど麓紫村の医療レベルで大丈夫なの?大事な御身ですのに」
「医者が必要な程じゃないですよ!療養すれば大丈夫でしょ」
「そうね。使徒様の大切なお体を麓紫村の医者なんかにはそもそもお見せできないわ。あれなら有宇儀様に言いましょうか?」
「ああ、いやいや!そんな大袈裟にされたら鈴心ちゃんも困るでしょうから!」
こちらが二人だけと見てチャンスだとでも思ったのか、今日の菫は更に積極的だった。
===============================
お読みいただきありがとうございます
感想、いいね、お気に入り登録などいただけたら嬉しいです!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
エレンディア王国記
火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、
「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。
導かれるように辿り着いたのは、
魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。
王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り――
だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。
「なんとかなるさ。生きてればな」
手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。
教師として、王子として、そして何者かとして。
これは、“教える者”が世界を変えていく物語。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる