転生帰録2──鵺が嗤う絹の楔

城山リツ

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エピローグ

8-6 後始末

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 梢賢しょうけんの態度が康乃やすのの心を動かした訳ではないのだろうが、眞瀬木ませきを放免するきっかけになったことは確かだった。

 分家扱いの眞瀬木の嫡男が行ったことは許されざる事である。康乃には里人への体面があり、独断で放免することは出来なかった。そこへ中立の雨都うとからの申し出は渡りに舟だったのだ。

 雨都は客人とは言え里の宗教面で深い所まで食い込んでいる。そこの嫡男が責を負うと言えば里人も納得せざるを得ない。梢賢は気づいていないが、麓紫村ろくしむらにおける彼の地位は本人が思っているよりも遥かに高い。

 その日のうちに康乃による大号令が敷かれ、眞瀬木ませき家当主墨砥ぼくと、長女瑠深るみ、分家の大柿おおがき鋼一こういち──とは八雲やくもの本名だが、その三人は無罪放免とされた。
 
 そして眞瀬木家嫡男のけいは大罪人として指名手配となり、その追討を雨都梢賢に任ずるということも発布された。

 これで今回の件は一応の決着をつけたのだが、真面目が服を着て歩く墨砥は自主謹慎を続けている。瑠深も体調不良として自宅からは出て来ず、八雲のみが通常通り作業場にて里人のために生活雑貨などを作成している。

 一連の堅苦しいやり取りを側から眺めていたはるかは「ほんと時代劇みたい」と毒付いていた。
 蕾生らいおは梢賢が立ち直ったことを喜んでおり、村のしきたり云々はどうでも良かった。ただ、珪以外の眞瀬木の者達もすぐに許されたのでそこは安心した。
 鈴心すずね皓矢こうや銀騎しらきと麓紫村の相違点を見出しては「興味深い」と事あるごとに言い合っていた。

 あおいはまだ目覚めない。
 
 それで皓矢も麓紫村にもう一泊することになった。優杞ゆうこが熱心に引き留めたからではあるが。

 

 そして翌日の朝、雨都家に藤生ふじき剛太ごうたが息を切らせて駆け込んできた。
 
「銀騎様!銀騎様はいらっしゃいますか!?」
 
「まあ、剛太様。そんなに慌ててどうしたんです?」
 
 玄関で彼を迎えた橙子とうこは驚きで目を丸くしていた。こんなに活発に動く剛太を初めて見たからだ。
 
「あの、あの、すぐに銀騎様に来ていただきたくて!あの子が目を覚ましたんです!」
 
「何やてえ!?ほんまか、剛太くん!」
 
 騒ぎを聞きつけた梢賢が興奮して言うと、橙子の鋭い視線が飛んでくる。
 
「梢賢!!」
 
「……様、えろうすんまへん」
 
 わざとらしく寸劇のように体をすぼめる梢賢に、剛太は焦れていつにない大声を出す。
 
「そんなことはどうでもいいです!早く来てください!」
 
 次いでやってきた皓矢は直ぐに玄関を降りて靴を履き始めた。
 
「わかりました、行きましょう」
 
 皓矢と剛太の後に続いて、永、蕾生、鈴心も当然のように玄関を飛び出した。梢賢もそれを追おうとした所で姉に引き止められる。
 
「待って、梢賢!」
 
「僕らも行っていいかい?」
 
「へ?」
 
 優杞だけでなく、楠俊なんしゅんもやって来てそう言うので、梢賢はつい首を傾げてしまった。だが考えている時間も惜しいのでそのまま三人で藤生家と向かった。







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