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第146回。#リプで来たものについて語る「ケーキ」

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掲載日2017年 06月30日 01時00分

ケーキ。美味しい。

近所に、お米のケーキ屋さんがあった。
今は店主の梶浦さんが東京へ行ってしまい、店舗も残っていたのが取り壊されて民家になってしまった。
小さなお店で、それ自体は長いことあったけど通ったのは最後の2年か3年だった。

それまでは表から中が見づらく、なんとなく「お店だな」くらいにしか思ってなかった。
ある日気まぐれに入ってみてびっくり。
何を食べても美味しいし、店主の梶浦さんは話し好きで気さくな方だった。

何度か通ううちに顔見知りになって、友達に贈り物をするときもこのお店の米粉クッキーを買っていた。
これが大変に評判が良くて重宝していたのだ。

梶浦さんは元々洋食のコックさんでスイーツも作っていたが、ある日突然、小麦アレルギーになってしまったという。それまでの常識が一切合切覆された生活の中で、米粉だけを使った食品に活路を見出した。

ラーメンも、うどんも、お好み焼きもタコ焼きも、下手をすればその辺で手に入る食べ物の大半に薬なしでは近寄ることも出来ない。もし自分がそうなってたら、一体どうしていただろうか。

お店では米粉を使ったケーキのほかに、お好み焼きミックス、パンケーキミックス、それにクレープも作っていた。これら殆どは同じアレルギーのお客さんに向けたもので、私のような一般のお客さんがフツーにケーキ屋さんとして訪れることの方が割合としては少なかったのだそうな。米粉のパンも焼いてたなあ。アレルギーの人は遠方からも訪れるようで、だから表からは見えにくくアレルギーの人が安心して来店できるようにしていたとのこと。
秘境に集まる妖精を守る番人のような梶浦さんであった。

生地がモチモチっとしてほんのり甘い米粉のクレープはとても好評で、カフェ向けにレシピの考案をしたり、米粉のクレープ屋さんのチェーン展開を始めたりもしていた。事業が加速して勢いづくと梶浦さんも雄弁になった。
1時間でも2時間でも店先で話し込んだ。私も聞いてて楽しかった。
当時はTPPが農業界の話題で、国産の農作物に付加価値を付けようということになっていた。そこで、米粉のブランドを作って工場も作って…小田原評定を繰り返す世の中にあって梶浦さんは着実に前進していた。

東京進出の計画を聞かされたのもその頃で、でも当初は東京と愛知を行ったり来たりするつもりだったようだ。何か月か行ったら、また戻る。アレルギーのお客さんのためにお店は開けておきたい。
そう言っていたので安心してたけど、そのうちに通販だけの取り扱いになり、ある日店の前を通るを閉店のお知らせが。どうやら店舗は閉鎖して本格的に通販のみ、あとは東京での事業に専念するらしい。
残念だが、今でも応援しているので頑張ってほしい。

リトルバード、という店名だった。お米のクレープ屋さんは、ジャパンクレープといった。
ジャパンクレープは今でも近所で健在だ。
東京にお住まいの方、お越しの方は原宿辺りで探してみては如何でしょうか。
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