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第147回。マザー2の話をもう一度しよう
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掲載日2017年 07月01日 01時00分
何度でもしよう。
伊集院光さんが大変いいことを言っていた。
ファイナルファンタジーにもドラクエにも居場所がなかったけど、MOTHERに行くことが出来て良かった、と。
私だ。
物心ついたとき、母親が初代マザーをやっていた。
あの真っ黒な画面のなかでクルクル回る地球。
シンプルだけど心に残る音楽。
おにいさん、おじさん、バッファロー。スターマン。
みんなみんなカッコ良くてステキで、なんだか知らないけど楽しそうだった。
ライブハウスの歌が聞きたくて、いつもあの街へ行ってもらってた。
マザー2が出た時は94年、もう小学生だったので自分でもプレイした。
ドコドコ砂漠の5匹のモグラで挫折した。最後の一匹が見つからずにウロウロしてたら、デカいアリに食い殺されてばかりだった。
クリアは出来なかったけど、砂漠もフォーサイドも、それまでの街も隅々まで歩き回った。ツーソンのホテルに居る男性に散々話しかけると50ドル貰えるのを自力で見つけたときは嬉しかったな。
ちゃんとクリアしたのは小学5年か6年だった。
もう家庭にも学校にも居場所が無くて近所の団地に住んでた祖父母の家に逃げ込んで、じいちゃんに学校に電話して
「もしもし、あのー今日は孫が風邪で…」
って言ってもらって、そのままやり倒したマザー2。
何度も徹夜で進めたマザー2。
でもギルガメッシュないとの時間だけはセーブして中断してた。
乳拳。
ドラクエにもファイナルファンタジーにも家にも学校にも居場所が無くて、いつもあの子たちと一緒に居た。
彼らは10歳のまま画面の中に居た。
画面の外の ぼく は30歳になった。
マザー2は、まだおもしろい。
あの子たちは、今日も10歳のまま。
小さな心が張り裂けそうなことも、近道も回り道も、ギターピックがすり減ってくみたいに繰り返して覚えた。
中学生になっても、マザー3を待ち続けていた。
ファイナルファンタジーやドラクエは新作が出るたびに良くも悪くも話題を振りまいていた。
ファイナルファンタジー8を、家で父親がよくやっていた。だから、あの作品だけは少しだけ知っている。
ドラクエは6をやってみた。はぐれメタルまで全部職業を極めたし、アイテムも集めたけど、やっぱり自分の中ではしっくりこなかった。
マザー2に関しては恐らく20回はクリアして、その都度、街中の人に、ホテルの新聞、ヒント屋さん、終わったダンジョンやイベントもくまなく探して話しかけた。ハッピーハッピー村のどせいさん、どっかで戻ると話しかけられるんだよな。
すきなこんだて、かっこいいもの、迷ったり決めてたりしたな。
あの入力画面の音楽って好きなんだよ。ガヤガヤしてるやつ。
隅々まで行き届いてて、心地よい。
あの世界にたまに帰りたくなる。
マザー2ならツーソンが好きだな。
心のふるさとなのかも知れない。
終盤、あのゲームは無口になる。
グミ族じゃなくて、ゲームの雰囲気が緊張するんだよね。
どこからだろう。フォーサイドからサマーズにわたって、ピラミッド辺りでちょっとこれは取り返しがつかないなって感じがしてくる。
スカラベ砂漠の市場までは、多分マザー2の明るいところの比率が高いんだ。
ダンジョンおとこ、とか、どうかしてるけどさ。
魔境に入り、地底に潜る。
あの陽気なグミ族、小さな主人公たち、謎の彫刻と不思議なBGMはせめてもの救い。容赦なく心の奥底を見透かされるような冒険が続く。自分の心の悪を討ち、過去の世界へ。
真夜中の街に朝日がさして、あんなに鮮やかだった世界が最後はモノクロームになる。音楽というよりは絶望と不安と焦燥を駆り立てるような音が鳴り響く。
その中を、ロボットになってしまったあの子たちがガションガションと歩く。間抜けなようだが、実は二度と元に戻れないかもしれないという苛烈な決断をしたうえでロボットに魂を預けている。
こういう、一見なんでもないようで実はえげつないのって目が離せない。
最後の最後は内臓のような洞窟のような、さしずめ肉洞とでも言うべき場所にヤツが居る。そして彼も居る。
おともだち、になれたかもしれないのに。
私には、彼の心持や寂しさがわかる気がする。
自分もあんなだった時があるから。
私にはいい先生や友達がいた。そしてどうにか、自分で自分を変えられたと思う。そこには環境や心情の変化を助けてくれる人と、教えてくれる人と、いろんな人がいた。そのおかげだった。
彼にはそれがなく。そしてたどり着いた先は全てを呑み込む悪の巣窟の、その最奥だったというわけだ。
ゲームの中の彼は、今日も寂しそうだ。
そして、誰にも何の救いようもなくどこぞへと消えて行ってしまった。
初代も2も3も大好きだけど、やっぱり自分と一番長い間いっしょに居たのが2だから、2がいちばん思い出深いな。この辺りは発売年月とか環境に左右されるんだろうね。
何もかも思い出深い。今は実機でやる方が難しいというか手間がかかるというか、でもやっぱり、物置からスーパーファミコンを引っ張り出すところから始めたいんだよな。そこが、私もいい年の取り方できたんじゃないかな。
それを人に押し付けちゃダメだけど。
ゴエモンの話でも書いたけど、あの頃、限られた容量でこんなに頑張った人たちが沢山居て、そのことに今更だけど凄く驚くし、有難い事だなあと思う。散々、マザー2に関していえば骨の髄まで楽しませてもらったもの。
あと新桃とクロノトリガーも。
だけど今は、その偉大な遺産がもっと手軽に楽しめて、これでより未来にまで残されて欲しいし、形や見た目は変わっても生き続けるって実は凄いことなんだって気付くね。
デジタル化されずに、カセットのまま消えてったソフトの方が当然ながら物凄く沢山あるわけで。
燦然と輝くドラクエ!ファイナルファンタジー!という巨大な山の少し向こうの方で、ぼんやり光っててほしい。こっちもあるよ、よかったらおいで。そういう感じで。
ゲームなら何でも好きで楽しめるのが一番いいけど、好みの問題で言うなら私はMOTHERシリーズだったなあ。
何度でもしよう。
伊集院光さんが大変いいことを言っていた。
ファイナルファンタジーにもドラクエにも居場所がなかったけど、MOTHERに行くことが出来て良かった、と。
私だ。
物心ついたとき、母親が初代マザーをやっていた。
あの真っ黒な画面のなかでクルクル回る地球。
シンプルだけど心に残る音楽。
おにいさん、おじさん、バッファロー。スターマン。
みんなみんなカッコ良くてステキで、なんだか知らないけど楽しそうだった。
ライブハウスの歌が聞きたくて、いつもあの街へ行ってもらってた。
マザー2が出た時は94年、もう小学生だったので自分でもプレイした。
ドコドコ砂漠の5匹のモグラで挫折した。最後の一匹が見つからずにウロウロしてたら、デカいアリに食い殺されてばかりだった。
クリアは出来なかったけど、砂漠もフォーサイドも、それまでの街も隅々まで歩き回った。ツーソンのホテルに居る男性に散々話しかけると50ドル貰えるのを自力で見つけたときは嬉しかったな。
ちゃんとクリアしたのは小学5年か6年だった。
もう家庭にも学校にも居場所が無くて近所の団地に住んでた祖父母の家に逃げ込んで、じいちゃんに学校に電話して
「もしもし、あのー今日は孫が風邪で…」
って言ってもらって、そのままやり倒したマザー2。
何度も徹夜で進めたマザー2。
でもギルガメッシュないとの時間だけはセーブして中断してた。
乳拳。
ドラクエにもファイナルファンタジーにも家にも学校にも居場所が無くて、いつもあの子たちと一緒に居た。
彼らは10歳のまま画面の中に居た。
画面の外の ぼく は30歳になった。
マザー2は、まだおもしろい。
あの子たちは、今日も10歳のまま。
小さな心が張り裂けそうなことも、近道も回り道も、ギターピックがすり減ってくみたいに繰り返して覚えた。
中学生になっても、マザー3を待ち続けていた。
ファイナルファンタジーやドラクエは新作が出るたびに良くも悪くも話題を振りまいていた。
ファイナルファンタジー8を、家で父親がよくやっていた。だから、あの作品だけは少しだけ知っている。
ドラクエは6をやってみた。はぐれメタルまで全部職業を極めたし、アイテムも集めたけど、やっぱり自分の中ではしっくりこなかった。
マザー2に関しては恐らく20回はクリアして、その都度、街中の人に、ホテルの新聞、ヒント屋さん、終わったダンジョンやイベントもくまなく探して話しかけた。ハッピーハッピー村のどせいさん、どっかで戻ると話しかけられるんだよな。
すきなこんだて、かっこいいもの、迷ったり決めてたりしたな。
あの入力画面の音楽って好きなんだよ。ガヤガヤしてるやつ。
隅々まで行き届いてて、心地よい。
あの世界にたまに帰りたくなる。
マザー2ならツーソンが好きだな。
心のふるさとなのかも知れない。
終盤、あのゲームは無口になる。
グミ族じゃなくて、ゲームの雰囲気が緊張するんだよね。
どこからだろう。フォーサイドからサマーズにわたって、ピラミッド辺りでちょっとこれは取り返しがつかないなって感じがしてくる。
スカラベ砂漠の市場までは、多分マザー2の明るいところの比率が高いんだ。
ダンジョンおとこ、とか、どうかしてるけどさ。
魔境に入り、地底に潜る。
あの陽気なグミ族、小さな主人公たち、謎の彫刻と不思議なBGMはせめてもの救い。容赦なく心の奥底を見透かされるような冒険が続く。自分の心の悪を討ち、過去の世界へ。
真夜中の街に朝日がさして、あんなに鮮やかだった世界が最後はモノクロームになる。音楽というよりは絶望と不安と焦燥を駆り立てるような音が鳴り響く。
その中を、ロボットになってしまったあの子たちがガションガションと歩く。間抜けなようだが、実は二度と元に戻れないかもしれないという苛烈な決断をしたうえでロボットに魂を預けている。
こういう、一見なんでもないようで実はえげつないのって目が離せない。
最後の最後は内臓のような洞窟のような、さしずめ肉洞とでも言うべき場所にヤツが居る。そして彼も居る。
おともだち、になれたかもしれないのに。
私には、彼の心持や寂しさがわかる気がする。
自分もあんなだった時があるから。
私にはいい先生や友達がいた。そしてどうにか、自分で自分を変えられたと思う。そこには環境や心情の変化を助けてくれる人と、教えてくれる人と、いろんな人がいた。そのおかげだった。
彼にはそれがなく。そしてたどり着いた先は全てを呑み込む悪の巣窟の、その最奥だったというわけだ。
ゲームの中の彼は、今日も寂しそうだ。
そして、誰にも何の救いようもなくどこぞへと消えて行ってしまった。
初代も2も3も大好きだけど、やっぱり自分と一番長い間いっしょに居たのが2だから、2がいちばん思い出深いな。この辺りは発売年月とか環境に左右されるんだろうね。
何もかも思い出深い。今は実機でやる方が難しいというか手間がかかるというか、でもやっぱり、物置からスーパーファミコンを引っ張り出すところから始めたいんだよな。そこが、私もいい年の取り方できたんじゃないかな。
それを人に押し付けちゃダメだけど。
ゴエモンの話でも書いたけど、あの頃、限られた容量でこんなに頑張った人たちが沢山居て、そのことに今更だけど凄く驚くし、有難い事だなあと思う。散々、マザー2に関していえば骨の髄まで楽しませてもらったもの。
あと新桃とクロノトリガーも。
だけど今は、その偉大な遺産がもっと手軽に楽しめて、これでより未来にまで残されて欲しいし、形や見た目は変わっても生き続けるって実は凄いことなんだって気付くね。
デジタル化されずに、カセットのまま消えてったソフトの方が当然ながら物凄く沢山あるわけで。
燦然と輝くドラクエ!ファイナルファンタジー!という巨大な山の少し向こうの方で、ぼんやり光っててほしい。こっちもあるよ、よかったらおいで。そういう感じで。
ゲームなら何でも好きで楽しめるのが一番いいけど、好みの問題で言うなら私はMOTHERシリーズだったなあ。
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