不定期エッセイ キッドさんといっしょ。

第３４８回。つまんねえ映画

つまんねえ映画、って難しい。
好きな映画ベスト１０を選ぶより、つまんなかった映画を決める方が難しい気がする。
嫌いな映画、見るのが凄く嫌な映画って、つまんないとはまた別でいいと思うんよ。たぶん。
こう、好きなんだけど物凄く見るのにエネルギーを使う映画とかあるじゃん。
私の場合、ライフ・イズ・ビューティフルがそれ。あの結末に至るまでの積み重ねに、もう耐えられない。後にも先にも枕に突っ伏してまで号泣した映画はアレだけだ。
他にも、ラスベガスをやっつけろ！もキツかったなあ。あれは劇中ひたすらヘロイン中毒の二人組を映してて、幻覚見まくってるわハチャメチャな行動をするわ、そのオンパレードだわ、で終盤でギブアップした。いつかリベンジしたいのだが…。

とまあ、見るのが大変な映画、見るのにあまり気乗りしない映画ってのはすぐ思いつく。
私はウルトラマンが大好きでジャミラもバードンもシルバーブルーメもノンマルトの使者も普通に見るけど、やっぱり帰ってきたウルトラマンの
怪獣使いと少年
だけは、最初からちゃんと見るのがちょっとしんどいもんな。あれも見るのに結構エネルギーが要る。
見ているこっちにカラータイマーが欲しいぐらいだ。
少年の孤独な日常を散々見せられて積みあがったモヤモヤを焼き尽くす怪獣ムルチ。メイツ星人を殺した民衆も、彼らの居場所を奪った街も、すべて灰になった土砂降りの雨の中で戦うウルトラマン。
戦い済んで朝が来て、少年は再び穴を掘る。この救いようのなさ。
ウルトラシリーズでも最高傑作にして最悪のエピソードであると言える。

ウルトラシリーズでいえば、つまんねえ話って何だろな。
映画より見倒してるし話も短いんで案外覚えてるかな…？
バラバの回とか、エースキラーもバラバも好きなんだけど、あの子役（特に弟）のクソっぷりが全部台無しにしてるよなあ。あれで台無しにされる程度のお話なら兄弟のくだりは全部要らなかったんじゃあ…？
エース、タロウ、レオだとエースが一番当たり外れがデカいよな。
色々とやり尽くしてきて、過剰なアイディアに技術が追い付いてないというか。
２代目ベロクロンの話とか、好きなんだよな。南夕子が居なくなっちゃった後だと。
あとカイテイガガン。

言いにくいけど、つまんねえ映画ったらもう絶対コレってのがある。
でも何故かこの映画をつまんねえって言いづらい空気が未だに結構濃いめに漂ってる気がする。
けど、いつまでもウルトラシリーズずっこけエピソードの話をしてたって仕方がない。
「ローマの休日」
私には、これはもうダントツでつまんなかった。
学校の授業で見せられて、そのあとでキチンと見ようとビデオを借りてきたけれど。

他に挙げるとするならばロボコップ３とかポリスアカデミーの終わりの方とか…１とか２はおもしろかったのにって映画が多いんだよな。
あとリッチー・リッチとかドク・ハリウッドとか別の作品で人気が出た俳優を使った、似たような路線の映画ね。前者はホームアローン、後者はバック・トゥ・ザ・フューチャー。
ローマの休日だけは、あれ一発で大作で名作呼ばわりされてる作品じゃん。
何か知らねえけど金字塔の上の方に飾っちゃってあって。

けどさ、冷静に見てアレそんな面白いか？
って思うわけだよ。
娯楽の少ない時代ならばいざ知らず、今の世の中でも面白いって、実は相当のものじゃないとそうはならないんであってさ。
まあ、そういいつつも黒澤明さんとか伊丹十三（いたみサーティーン）さんとかの映画は未だに大好きだし、後世に残って然るべきだと思っているので完全に私の独断と偏見であるのだけれど。

ローマの休日だけだなあ、文句なしに言い切れるのは。
オードリーヘップバーンに思い入れもないし、映画評論家とかならまだ見るべきところや面白いところもあるのかもしれないけれど。

見ずに文句言うのは良くないけど、見たものに対する感想が自由に言いづらいのもしんどいね。
もちろん、多くの人をわざわざ不快にさせることもないんだけども。
あれは名作！っていうレッテルは、時として冷静な批評を妨げると思うんだよ。
教科書に載ってて教材として用いられることと、作品の面白さって全然別じゃん？
高いところに上り過ぎちゃうと、かえって霞んだりぼやけたりでハッキリ見えなくなるってこともあるんじゃないかなあ。

故・淀川長治さんは映画を批評するとき、見るものが少ないと感じても必ず何かしらいいところを見つけてそこを褒めていたという。
お話や演技、風景、小道具、特撮、演出などではなく、この女性がここで足を組む仕草が絶品、とか言っている場合は、内容はお察しということでもあったらしい。

得るものがない、という判断は思考の停止を意味する。
そうじゃなくて、何かしら見つけようという姿勢が大切なのだな。
最も、それで引き際を誤ってヤケドすることも多いんだけど。
ヤケドの傷も痛みも、自分が恥かいたり命にかかわらないケガと病気する程度だったらいいかな。
全部ここに書くし。

皆さんにもこのエッセイを読んでいただいた後で面白かったらぜひ拡散・ご意見ご感想を頂きたいのと同様に、つまんねえときは、それはそれで教えてほしいです。
いつもいつもお好みの作品が書けるわけでは決してありませんが、やっぱり今はなんでもかんでも読まれて言われてナンボなので…。もっと沢山の方に読まれるように頑張るぞ。
ローマの休日なんか公開から何十年も経ってるのに、まだここで２０００文字も使って批評してる奴がいるぐらいの作品なんだから。上を見りゃキリがない、いくらでも昇っていけるんだ。