不定期エッセイ キッドさんといっしょ。

ダイナマイト・キッド

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第389回。蒼天勇者伝~スカイデJr選手とぼくのこと~

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2018年2月25日は大阪・生野区民センターで大衆プロレス松山座の旗揚げ3周年記念公演
「松山珠玉」
を観戦してきました。
主にこのために23日金曜の午後に出発し、23日夜・24日・25日と大阪ミナミ界隈で色々お出かけしてきました。
その締めくくりが、25日15時からのプロレス観戦。

この記事では、その観戦した試合のうちのひとつ。
セミファイナルにラインナップされた対戦カード

男子タッグマッチ30分1本勝負
神田裕之選手
江利川祐選手
VS
斎藤了選手
スカイデJr選手

をご紹介。
この試合は4人ともかつて同じプロレスラー養成学校にいた選手たちによるタッグマッチ。
そう、私も2005年にちょっとだけ居たメキシコの闘龍門。
この当時はいったん神戸にあった日本の道場に入門し、そこから残った生徒がメキシコに渡れることになるというシステムだった。その狭き門をくぐり抜けてきた男たちの、スカイデJr選手のブログの言葉をお借りするところの
「最高の30分1本勝負」
が幕を上げた。

私はこの直前、22日の夜くらいまで本当に疲れ切ってしまっていた。
行くのをやめようか、それとも生きるのをやめようかと思っていた。
何もかもいらなくなっていたし、何もかも手に入らないのならそれでいいとも思っていた。
それをあるところに思いつくまま書いていたのだけれど、長年の友人が久しぶりに連絡をくれて、本当に心からの励ましの言葉を頂いてしまって。有難いやら申し訳ないやらですぐに削除してしまった。

だけど、実は消す前にそれを見つけて心配して下さっていたのが、ほかならぬスカイデJr選手だった。
私はほんのちょっとの間だけ後輩で、直接お会いしたのも、それを知ったのも松山座を見に行くようになってからだった。それでもいつも顔を見ると声をかけてくださって、何かとお話をするのが楽しみだった。

この日も売店で元気にデンデン太鼓を叩いて呼び込みをしていた(何故かそんな小道具があった)スカイデJr選手にご挨拶を…と近づいたところをすかさず発見され開口一番
「こら!生きろ!!」
何のことだかすぐにピンときた。ご覧になって下さったんだ…!
そのまま賑やかな物販の流れに押されて、試合開始を迎えた。
スカイデJr選手の入場時、ハイタッチを求めて手を上げる。会場のファンと手を交わして回るスカイデJr選手。
私の番が来た。
パチン!
と小気味よく掌が合わさった瞬間。
スパン
と頭にも一発。私を指さし、リングへと向かったスカイデJr選手。

試合は白熱。同門の先輩である斎藤了選手、神田裕之選手の激しい攻撃が続く。
人気・実力ともに現在でもトップクラスの選手で、私が闘龍門JAPAN(当時)を知った時にはすでにスターだった両選手を初めて間近で見ることが出来た。
最近では豆腐プロレスでもお馴染みの江利川祐選手の粘り、気迫も熱かった。
ずっと諦めずに怪我を乗り越え、リハビリを続け戦い続けた男の眼。
技の形や見た目の問題ではない、人間として・プロレスラーになった男としての強さを感じた。
私には、やっぱりあのロープの向こう側は最前列席からは間近でも、自分の足で上がるには遥か遠くの世界だった。その遥かな世界から、青き空の勇者が飛んできた。
スカイデJr選手のマスクにはウルトラマンタロウのようなツノと、闘龍門の創始者・すべての始まりであり礎のウルティモ・ドラゴン校長を象ったマークが。全身を包むバトルスーツも青いウルトラ戦士のよう。
その見た目に違わぬ身軽な動きで相手を攪乱し、要所で決めるメキシコ式の関節技や丸め込みで仕留める。さらに圧巻は、コーナーポスト最上段から場外へ炸裂させるラ・ケブラーダ。
ご自身のSNSやブログではノブハル・ムーンサルトとも称されている、この技こそがスカイデJr選手の真骨頂。まさに青き空の勇者。
全てはこの一瞬のために。

いつの日もスカイデJr選手の試合は明るく楽しく激しい。
そのどれでもなく、全部入っている。
それが太陽の国のプロレス。ルチャリブレだから。
この日の戦いは特に、私の心にバンバン刺さった。
勝手な事を言うと、私の悩みや苦しみや、迷いも、生きる力を失った心の隙間を埋める何もかもがスカイデJr選手の背中にあったように思えた。
戦っている人たちが居る。自分の夢見たあのリングで。
そして2018年2月25日の生野区民センターで、2005年の夢の続きが再び太陽の光の中で黄色く溶けて行こうとしている。
隣で友達が一緒に見てくれていなかったら号泣していたと思う。
頭を「しばいて」くれた優しい先輩は今、今日も「スカイデJr」を全うし、リングを降りた。

大会終了後にスカイデJr選手が改めて声をかけてくださった。
「君の人生でどんな決断をしてもいい、でも、心に芯だけは持っておいてほしい」
「自分にも色んなことがあったから、きっと君の悩みもわかると思う」
そう語り掛けてくれたのは、やっぱり優しい先輩だった。

試合の結果やこの試合が組まれた背景、松山座の3年間も勿論すごく大事だけれど。
自分もそのめでたい日をここで迎えるために、今日まで戦ってくることが出来ていたんじゃないか。
戦い抜いたからこそ、2018年の2月25日を生野で迎えられたんじゃないのか。
そう思った。

私ことキッドが、いや、12年前の佐野和哉があの街に置いてきた夢の続きは、他のどのプロレス団体でもなく、この松山座で時折姿を現してくれる。
それは私のなかで勝手に始まって勝手に終わるものなのだけれど、遥かなリングの上から場外に向かって飛び上がってくるスカイデJr選手がいる限り、そこに青空の架け橋があってくれるような気がして。

松山勘十郎座長の壮大な夢のなかにある松山座というリングが、あの日の僕と今の自分と、そして遠い先輩を引き寄せてくれたのかもしれない。
きっとイチプロレスファンとしてでも優しく接してくれたに違いない。
でも、そこに元後輩というのがあって。
自分でも申し訳ないぐらいの期間しか、僕はあそこに居られなかったけど。
それなのにもかかわらず、僕は本当に素晴らしい先輩に出会えたと思っています。
ありがとうございます。いつもお世話になっております。
ずっとずっと飛び続けてください。その空は、僕が夢見たメキシコのまぶしい太陽が照り付ける夢の空だから。
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