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第554回。黄色い悪夢
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今回はリイド社さんより発売中の
黄島点心先生作「黄色い悪夢」
について感想を書かせて頂いております。
ネタバレあります。
ご注意ください。
以前、黄島点心先生の黄色い円盤を拝見して大変素晴らしかったもので。
勢いに乗って買ってみました!黄色い悪夢!!
黄色い円盤の前に発売されていた短編集で、黄色い円盤よりも濃くてやや粗削りな画風になっている。
そして内容も、黄色い円盤よりさらに濃い!ぶっ飛んでいるうえ血の気も多いときて、ああ黄色い円盤はあれでもかなり整えられた作品だったんだと今更ながら痛感しました。
一発目の断末夢。宣伝ツイートなどでも多用される真空パックの画。
繰り返し繰り返し見る夢。芸術と殺意。
金魚の気持ちになって考えればいい…金魚の気持ちになって。
内側と外側を遂に逆転させる、概念の転換。
だんだん早くなっていく断末夢と覚醒のサイクル。
どこからが夢でどこまでが現実なのかわからなくなる、ずっと夢のなか、死ぬ寸前の走馬燈のなかにいたのかもしれない。
チカチカする視界、遠のく意識の描写がとてもいい。幾何学模様の迷路。印象的なフレーズが凝縮された一瞬。
そして密平くんの断末魔を繋ぎ合わせて逆再生すると…あっ!そうだったんだ!!と気づかされます。なるほど面白い…。これが一番トップに来ているのは大正解で、次からの絵柄はもっと濃くて太くて、密度が半端ないです。
二番目の人面葬。
とある日本海側の小さな町に伝わる人面葬という伝承。
これをめぐる人間の多面性を抉る作品。
色んな自分を使い分けて周囲の望む通りに接することで関係性を繋いでいくあぐりちゃんと、それを暴こうとする志那子ちゃん。
あぐりちゃんは見るからにヒロインで、可愛らしい女の子。だけど彼女は接する男性によって様々なキャラを見せては虜にしてしまういわば魔性の女と言える。ちやほやされたい、みんなの中心にいたい、愛されたい。
志那子はその真逆、地味でそばかすのある影キャラといった感じの女の子。
この志那子ちゃんの故郷に伝わっているのが人面葬。人の顔は一面であるべし、偽りの顔は溶けてなくなり、本当の顔が暴かれる夜。
そして剥がれ落ちる上っ面。
冒頭の事件から悲劇の結末、そしてそれを嘲笑うかのような、巨大な上っ面。
デカイ面しやがって!の一言が最後に効いている。
ああ、本当に本当の自分を明かさず死んでいったんだ。だけど、どうして本当の自分、本心から付き合わなくちゃいけないの?というあぐりちゃんの言葉もまた真理だと思う。
ちょうどそんなふうな人間関係で煮詰まり、自己嫌悪に苛まれていたキッドさん、サイナマイトキッド化していた私の心にも響きました。要するにサジ加減だよな、なんてつまらない結論を仮面の代わりにぱこっと顔に貼り付けて。
三つ目!私のイチオシ作品。
渚満月美女涙。
カメとすっぽんと美女の顛末と、それを聞かされる旅の侍。
荒れ果てた小屋と美しい女。この絵柄、和風なようで、古いドイツ映画「カリガリ博士」みたいな背景と相まって独特の雰囲気を醸し出している。沼の底、空、初めはカメを苛め抜く女だったが、やがて飢饉に見舞われたときに本当の気持ちに気付く。スッポンは便利な存在だった、その対価のようなもので優遇していた。だけど心の底ではカメを愛おしく思っていた。その歪んだ感情がピークに達した時、カメの怒張もまた甲羅を突き破るほど巨大になった。
そうして愛し合い、スッポンとカメのエキスを吸い尽くした女が生み出した美しい宝玉。
男は性欲に、そして金銭欲に駆られてそれに夢中になる。だが、その美しい宝玉から生み出されてきたものは…!?
救いのない、でもカタルシスを感じる作品です。
サディスティックにカメを罵倒し暴力をふるう彼女ですが、コミカルな一面も見せるなどとても表情豊かで、それゆえに後半ぐっと色んな期待が高まります。ポルポルしたくなります。そしてそれは見るも無残に裏切られます。カメのように長く、スッポンのようにしつこく生きてきた美女と、旅の侍の最期は圧巻です。
私と同じ期待を抱いた人は、きっと沼の渚で同じ美女と出会ったら、同じ末路を辿ると思います。
お次はこの本の中でもっとも濃密で、隔靴掻痒という言葉が色んな意味でぴったりな、気が狂いそうな連作。
血に落ちる~ザ・ブラッディ・ブライダル~
PART1とPART2はそれぞれ表裏一体、輪廻転生の関係にある。
戦時中、南方のどこかの島に取り残された一隊。
そこで上官の隠し持った食糧や薬物を発見した蚊取の蚊にまつわるお話。
蚊帳の外、痒い所に手が届く、隔靴掻痒の輪廻転生。
圧倒的なスピード感と、蒸し暑さで描かれた物語。
作中ずっと飛んでいる蚊。
序盤で蚊取を襲う蚊柱。
そのとき蚊取が飲み込んだ蚊。
蚊取の体内で繁殖する蚊。
蚊取の思い人カヤ姉。
全てが繋がって、南国の島の片隅でついに結実を迎える。
それはあまりに醜い姿の蚊取と、その体の内外で起こった蚊たちによる、文字通り小さな小さなドラマが結び付く瞬間。
ああ、こうなるんだ…と思わず呟く、奇想ホラーの真骨頂。
最高でした。
特別収録の鉋屑。
薄っぺらい友情、信頼。
いいようにダシにされてしまう大工のなっさんの情念が暴走するスプラッタホラー。
内容な全然薄くない、でもどんどん家が薄くなる!?
遂げられない思いが鉋を走らせる。
黄島点心先生は蠱惑的でちょっと意地悪な美人を描かせたら絶品だと思う。
というか黄島先生が描く女の子が可愛ければ可愛いほど、何かしら抱えてて一筋縄ではいかない性格をしていてサイコー。
なっさんの心の恋人である鉋のカンナちゃん。
カンナちゃんの暴走を止めるべく乗り込んだ先で、なっさんが手に持っていたものとは…!?
そこでこのお話は終わらない。きっちりと最後まで鉋掛けをしてくれる。
奇想ホラーの決定版、黄色い悪夢。
是非おススメです。皆さんも是非!
黄島点心先生作「黄色い悪夢」
について感想を書かせて頂いております。
ネタバレあります。
ご注意ください。
以前、黄島点心先生の黄色い円盤を拝見して大変素晴らしかったもので。
勢いに乗って買ってみました!黄色い悪夢!!
黄色い円盤の前に発売されていた短編集で、黄色い円盤よりも濃くてやや粗削りな画風になっている。
そして内容も、黄色い円盤よりさらに濃い!ぶっ飛んでいるうえ血の気も多いときて、ああ黄色い円盤はあれでもかなり整えられた作品だったんだと今更ながら痛感しました。
一発目の断末夢。宣伝ツイートなどでも多用される真空パックの画。
繰り返し繰り返し見る夢。芸術と殺意。
金魚の気持ちになって考えればいい…金魚の気持ちになって。
内側と外側を遂に逆転させる、概念の転換。
だんだん早くなっていく断末夢と覚醒のサイクル。
どこからが夢でどこまでが現実なのかわからなくなる、ずっと夢のなか、死ぬ寸前の走馬燈のなかにいたのかもしれない。
チカチカする視界、遠のく意識の描写がとてもいい。幾何学模様の迷路。印象的なフレーズが凝縮された一瞬。
そして密平くんの断末魔を繋ぎ合わせて逆再生すると…あっ!そうだったんだ!!と気づかされます。なるほど面白い…。これが一番トップに来ているのは大正解で、次からの絵柄はもっと濃くて太くて、密度が半端ないです。
二番目の人面葬。
とある日本海側の小さな町に伝わる人面葬という伝承。
これをめぐる人間の多面性を抉る作品。
色んな自分を使い分けて周囲の望む通りに接することで関係性を繋いでいくあぐりちゃんと、それを暴こうとする志那子ちゃん。
あぐりちゃんは見るからにヒロインで、可愛らしい女の子。だけど彼女は接する男性によって様々なキャラを見せては虜にしてしまういわば魔性の女と言える。ちやほやされたい、みんなの中心にいたい、愛されたい。
志那子はその真逆、地味でそばかすのある影キャラといった感じの女の子。
この志那子ちゃんの故郷に伝わっているのが人面葬。人の顔は一面であるべし、偽りの顔は溶けてなくなり、本当の顔が暴かれる夜。
そして剥がれ落ちる上っ面。
冒頭の事件から悲劇の結末、そしてそれを嘲笑うかのような、巨大な上っ面。
デカイ面しやがって!の一言が最後に効いている。
ああ、本当に本当の自分を明かさず死んでいったんだ。だけど、どうして本当の自分、本心から付き合わなくちゃいけないの?というあぐりちゃんの言葉もまた真理だと思う。
ちょうどそんなふうな人間関係で煮詰まり、自己嫌悪に苛まれていたキッドさん、サイナマイトキッド化していた私の心にも響きました。要するにサジ加減だよな、なんてつまらない結論を仮面の代わりにぱこっと顔に貼り付けて。
三つ目!私のイチオシ作品。
渚満月美女涙。
カメとすっぽんと美女の顛末と、それを聞かされる旅の侍。
荒れ果てた小屋と美しい女。この絵柄、和風なようで、古いドイツ映画「カリガリ博士」みたいな背景と相まって独特の雰囲気を醸し出している。沼の底、空、初めはカメを苛め抜く女だったが、やがて飢饉に見舞われたときに本当の気持ちに気付く。スッポンは便利な存在だった、その対価のようなもので優遇していた。だけど心の底ではカメを愛おしく思っていた。その歪んだ感情がピークに達した時、カメの怒張もまた甲羅を突き破るほど巨大になった。
そうして愛し合い、スッポンとカメのエキスを吸い尽くした女が生み出した美しい宝玉。
男は性欲に、そして金銭欲に駆られてそれに夢中になる。だが、その美しい宝玉から生み出されてきたものは…!?
救いのない、でもカタルシスを感じる作品です。
サディスティックにカメを罵倒し暴力をふるう彼女ですが、コミカルな一面も見せるなどとても表情豊かで、それゆえに後半ぐっと色んな期待が高まります。ポルポルしたくなります。そしてそれは見るも無残に裏切られます。カメのように長く、スッポンのようにしつこく生きてきた美女と、旅の侍の最期は圧巻です。
私と同じ期待を抱いた人は、きっと沼の渚で同じ美女と出会ったら、同じ末路を辿ると思います。
お次はこの本の中でもっとも濃密で、隔靴掻痒という言葉が色んな意味でぴったりな、気が狂いそうな連作。
血に落ちる~ザ・ブラッディ・ブライダル~
PART1とPART2はそれぞれ表裏一体、輪廻転生の関係にある。
戦時中、南方のどこかの島に取り残された一隊。
そこで上官の隠し持った食糧や薬物を発見した蚊取の蚊にまつわるお話。
蚊帳の外、痒い所に手が届く、隔靴掻痒の輪廻転生。
圧倒的なスピード感と、蒸し暑さで描かれた物語。
作中ずっと飛んでいる蚊。
序盤で蚊取を襲う蚊柱。
そのとき蚊取が飲み込んだ蚊。
蚊取の体内で繁殖する蚊。
蚊取の思い人カヤ姉。
全てが繋がって、南国の島の片隅でついに結実を迎える。
それはあまりに醜い姿の蚊取と、その体の内外で起こった蚊たちによる、文字通り小さな小さなドラマが結び付く瞬間。
ああ、こうなるんだ…と思わず呟く、奇想ホラーの真骨頂。
最高でした。
特別収録の鉋屑。
薄っぺらい友情、信頼。
いいようにダシにされてしまう大工のなっさんの情念が暴走するスプラッタホラー。
内容な全然薄くない、でもどんどん家が薄くなる!?
遂げられない思いが鉋を走らせる。
黄島点心先生は蠱惑的でちょっと意地悪な美人を描かせたら絶品だと思う。
というか黄島先生が描く女の子が可愛ければ可愛いほど、何かしら抱えてて一筋縄ではいかない性格をしていてサイコー。
なっさんの心の恋人である鉋のカンナちゃん。
カンナちゃんの暴走を止めるべく乗り込んだ先で、なっさんが手に持っていたものとは…!?
そこでこのお話は終わらない。きっちりと最後まで鉋掛けをしてくれる。
奇想ホラーの決定版、黄色い悪夢。
是非おススメです。皆さんも是非!
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