不定期エッセイ キッドさんといっしょ。

ダイナマイト・キッド

文字の大きさ
733 / 1,319

第718回。伊集院さんの「ヤギのバケモノの話」が大好きです。

しおりを挟む
ちょっと前に私の大好きなラジオ番組
「月曜JUNK伊集院光 深夜の馬鹿力」
で、伊集院光さんが話していたヤギのバケモノの話。発端は伊集院光さんが出演しているNHKの「100分de名著」という番組で、SF小説のSolarisを取り上げたこと。
そのトークの中で伊集院さんは、自分もかつてスクールエスケイパーとなり、心に影が差した時期に
世の中の全てを巨大なヤギが食いつくしてしまえばいい
という妄想を抱いていたことをリスナーに告白する。
自分の過去を消したくて、子供のころの写真を荒川遊園地のヤギに次々と食べさせて、それが見つかって怒られてからは燃やしてしまって、だけどその時の強烈なインスピレーションがやがて伊集院さんの中に巨大なヤギのバケモノを産み出し
「このヤギが全てを食いつくして、何もかも無くなった世界で俺とヤギだけになったらどんだけ楽だろう」
と思った…というもの。

私はこの話が伊集院さんのトークの中でも五指に入るぐらい大好きで、オンラインでダウンロード販売とかしてくれたら即刻購入して時折思い出したら聞きたいと切に願っている。
そして伊集院さんの心の中で巨大に育ったヤギのようなものが、私の心の中にもハッキリ蠢いているのを今も感じている。私は、この人のこういうところに共感を覚えたし、暗く落ちこぼれた気分で生きていても、初めて深夜の馬鹿力を聞いたとき、伊集院さんだからじゃないけどまさに光が差した気持ちになった。

もっとも私の場合はもうちょっと具体的というか、在り物を借りている感じなのだけれど。

それはこれまた私の大好きなウルトラマンレオの第40話に登場する
円盤生物シルバーブルーメ
という、生き物なんだかUFOなんだかよくわからない巨大なバケモノ。
こいつはウルトラマンレオの中でも、いや下手をするとウルトラシリーズを通して最大にして最悪の大虐殺を行ったトンデモ怪獣でもあり、その悪行の数々はもはや伝説となっている。
始め透明なアタマ?に台座のようなものがついた円盤として地球防衛軍MACの基地に接近し、瞬く間に巨大化。基地を丸呑みにしようとした。中に居た隊員たちは(また折しも女性隊員のお誕生会なんかやってるんだこれが)一瞬で地獄絵図に叩きこまれ、次々に殉職していく。触手が基地の隔壁をブチ破り、丸っこい翼が可愛い赤い戦闘機マッキーに乗って脱出しようとした隊員たちは、そのマッキーごと飲み込まれてしまう。断末魔と悲鳴がこだまするMAC基地で、変身能力を失ったウルトラセブンことモロボシ・ダン隊長に一括され断腸の思いで脱出するウルトラマンレオ。

やがてシルバーブルーメは地球上に飛来し、都心のど真ん中に着陸。ビルも百貨店も地下道も破壊し尽くし、その場に居合わせた大勢の人々をも殺戮した。
その被害者の中には、ウルトラマンレオことおゝとりゲン隊員の恋人モモコさん、弟分でもあるタケシ、さらにこれまたゲンを兄のように慕う少年トオル君のたった一人の家族である妹のカオルちゃんまで含まれていたのだ。3人はちょうど揃って買い物をしているときにシルバーブルーメの襲撃を受け、一瞬で命を奪われてしまう。
このシーンの残酷さは段違いで、命からがら地上にやってきたゲンと合流したトオル君が一縷の望みを託して3人を捜索しているときに死亡者リストが張り出され、そこにモモコさん、タケシ、






の名前が映し出される。

この史上最大にして最悪の大惨事の背景には色んな大人の事情もあるのだがそれはともかく、私は子供のころ何も知らずにただウルトラマンレオが好きでレンタルビデオ店に通いつめ(当時まだ一本300円ぐらいして高かったのだ)コレをマトモに見てしまった。
シルバーブルーメというバケモノは最終的には真っ白いクラゲのようなアタマに真っ赤な胴体と長い触手を持つカタチになる。顔も目玉もなく、クラゲのように胴体の下に口があってそこからシュルシュルと触手を伸ばしている。
ギャースとかグエーとか鳴き声もなく、ヒューーンという飛行音?だけを響かせて、ただそこに佇んでいる。無表情どころかなんの感情も意思も見せず、破壊の限りを尽くしている恐るべき円盤生物シルバーブルーメ。

最後は学校に出現するも、怒りに燃えるウルトラマンレオによって内臓を引きずり出され倒された。
このときに内臓と一緒に引きずり出されたのが、あの赤い戦闘機マッキーだった。だがそれは溶解液らしき黄色い液体によってドロドロに溶かされており、無残な姿となっていた。
雷雨のなか、学校から避難した子供たちの無事を確認したレオの光線技を受けて爆発炎上するシルバーブルーメ。

だがシルバーブルーメは死んではいなかった。いつしか私の心の中にコイツが住み着いていたのだ。
イヤなことがあったり、辛いことがあると、視界の奥を、視神経の裏側を、シルバーブルーメがスイーっと横切って行った。まるであの触手と巨大な口で、全てを飲み込んで溶かしてしまおうとしているかのように。

シルバーブルーメは時折ひどく暴れまわり、肥大化し過ぎて手に負えないときもある。
だけど、私は間違いなく何度もコイツに命を救われているし、心を助けられている。
私一人ではどうにもできない、誰に話してもどうにもならない、そんなときに。
シルバーブルーメは何も言わず、鳴き声ひとつあげずにそこにいた。
私が元気で、コイツのことを忘れているとき、どこでどうしているのか今でもわからない。
だけど間違いなく、私の心の中の暗黒宇宙、ブラックスターの中でシルバーブルーメは今日も元気に?ふよふよ漂っているのだ。

これは一種のイマジナリーフレンドなのか?
高校生ぐらいまで、いや下手をするとつい最近まで心のなかにお友達がいたタイプのキッドさんにとっての、一種の破壊神みたいなもんなのだろうか。

いつか本当にどうしようもない、何もかも嫌になっていらなくなってしまったら。
シルバーブルーメは真っ先にどこに現れて、何を壊し、誰を殺してくれるのだろう。
私の枕元に現れて、私の心と体を壊し、私を殺してくれるのだろうか。
そうして辿り着いた暗黒宇宙で、私は私とシルバーブルーメ以外だあれも居なくなった世界で、一体なにを思うのだろう。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...