#不思議系小説 ニューシネマ・パラダイスシティ

ダイナマイト・キッド

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「真夏の昼下がりはスージー・ウォンの世界でファンク大作戦」

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虹色のベルが飛ぶ
七色のベルが鳴る
クレーンゲームの
中は狭くて堅い空
真夏の陽射しで灼けた舗装路
杏仁豆腐味のソフトクリームが溶けて垂れた指
べたつく甘さに汗が混じって
陽炎が揺れるチャイナタウンストリート
意味もなく声を上げ笑いながら
走ってくるチャイナタウンバッドボーイズ
駆け抜けた空気と時間の色が溶けて混じって
虹色のベルが飛ぶ
七色のベルが鳴る
クレーンゲームの
中の狭くて高い空

翼の生えた豚が飛ぶ
天使になった豚が往く
ディスコティックの
中は暗くて深い夜
熱帯夜をじわじわ運ぶ京浜東北線
ポケットのクレイジーケン流れては溶けてく窓の外は
桜木町、関内、石川町で
降りたらそこがチャイナタウンストリート
理由もなく声を上げ泣きながら
走りゆくチャイナタウンサッドガールズ
立ち止まれば電氣と電波のチューニング合わせ
翼の生えた豚が飛ぶ
天使になった豚が往く
ディスコティックの
外は暗くて罪な夜

この街の夏が死んだことを
振り向いて確かめるような
緩慢に跳ねるアイドリング
とっくに死んでる夏でした
点滴のあぶく越しの青い空
青い青い青い空が歌ってる
この街は夏に死んだってさ
振り向いて確かめるのなら
ゆっくり伸びるヒコーキ雲
手を伸ばしても届きません
大粒の雨で何も見えないよ
真っ白な線路の向こうまで
京浜東北線が消えていった
この街の夏は死んだってさ
振り向いて確かめてご覧よ

黒猫が歩く
灼けたアスファルト
一人ぼっちで歩く
陽炎の踊る坂道
横切って飛び込んだ植え込み
むせかえるような甘くて
湿った土の匂い
死んだ街に置き去りの時代が
古いタイルになって
四角い建物になって
そのまま墓標のように
立ち尽くす1980年に勿論僕は生まれてない
お金と希望と明るさが有り余ってたおとぎ話
お金と欲望と浅はかさで腐りはてた地獄絵図
黒猫は歩く
濡れたアスファルト
一人ぼっちで歩く
水たまりにうつる青空
横切って飛び込んだ道路に
むせかえるような赤くて
生臭い命の滴り
死んだ街に置き去りの時代は
青いタイルになって
四角いコンクリになって
さながら磔のように
呆然とした1990年代に今でも僕ら縛られて
お金も希望も明るさも搾り取ってくつくり話
お金と欲望は浅はかだと決めつけた地獄絵図

聞き覚えはないけれど
懐かしい歌が聞こえる
体のどこか奥の方から
心のなぜか奥の方から
手を伸ばしてみたくて
ずっと聞いていたくて
誰の何て歌なんだろう
誰の為の歌なんだろう

 陽炎が踊る真昼の中華街。真夏の陽射しが路肩の植え込みに投げ捨てられた空き缶からこぼれたビールに煌めいて、むわっとしたやるせない香りを放つ。気の抜けたビール、缶底に残って腐れたビールの匂いは、そのまま幼少時代に味わった地獄の匂いそのものだった。
 何かと言えば手が飛んで、息をするように罵倒され侮辱的な言葉を投げつけられて生きていた。今思えば手っ取り早く、遺書にバッチリ名前を残して死んでやらなかったのが不思議なくらいの精神状態で生活していた。何がそんなに生かしていたのか、どうしてそんなに生きなきゃならなかったのか。実は未だによくわからない
 とにかく毎日毎日、消えたかった
 朝が来るのが嫌で夜も眠れなくなるくらい毎日毎日毎分毎秒の憂鬱三昧を如何して乗り越えられたんだろう。ぎらつく陽射しがらせんを描いて、湿った心の表面だけ乾いた薄皮一枚で覆っただけのドブ臭い部分に深々と突き刺さる
 中華街の青くてド派手な門を潜って、此処ではない何処かへトリップする。現実を超えたところにあって日常に非ず。現実を超えたものが非日常であるならば、超現実的非日常というのは一体何処から何処までのことなのだろうか。子供の頃に意味もなくただ機嫌が悪かっただけで殴られ続けてきた日々はとても現実とは思えなかったし、その逆に日常では出会えなかったであろう美人と中華街なり心斎橋なりを歩いているのもまた立派な非日常であるだろう。好ましいことも、好ましからざることも、現実を超えてしまえば全て夢にしてしまえる。いつか悪いことが終わるために、今イイことが続いているようできっとすぐに終わる。それも出来るだけ唐突に、深い傷を残す形で
 良いことも悪いことも残る傷跡の深さが同じなら、良いことが終わってしまって付く傷がいい
 傷は傷だ、なら膿んだり腐ったりしないほうがいいに決まっている
 良しにつけ悪しにつけ目の前に出た話に
「そうとは限らない」
だの
「こういうケースもありますよ」
 だの一見すると何か考えてるように見えるだけの安い反対言葉を並べるしか能のない奴は、やっと掴んだと思った幸運ですらかつての不運と同じくらいの傷跡が残ることを知って呆然としたこともないような眠たい奴等だ
 酔いが回って来た。白昼夢だろうか、汚い定食屋の店先で白いヨレヨレのランニングを着たゴマシオ頭で中年太り丸出しのオヤジが縞パンの裾から睾丸をでろりと垂らしながら坊主頭のガキを一心不乱に殴りつけている。ガキは鼻血を垂らし額も切れて流血してるが、とびきりのスマイルでオヤジの拳を浴び続けていた
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