ふたり暮らし

ダイナマイト・キッド

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第3話 ふたり暮らし

 住み慣れた街から、遠く離れたこのアパートに引っ越して二ヶ月。季節は夏真っ盛りだ。
 俺は近所のガソリンスタンドでアルバイトとして働き始めた。このご時世に高校中退の身では中々仕事は見つからなかったけど、どうにかこのスタンドに雇ってもらう事ができた。先生は失業保険があるとかで働こうとしてくれないし。もっとも今の生活費のほとんどは、先生の貯金なんだけれど。
「ああ、拓」
 そろそろ仕事に出かけようとささやかな下駄箱で靴を履いていた僕を、先生が呼び止めた。
「なあに?」
「気をつけてな」
 それだけ言うと先生は僕に軽くキスをして、くるりと振り返って台所に向かい、冷蔵庫から良く冷えた麦茶をとりだしてラッパ飲みした。先生の喉元にこぼれたお茶が伝って、汗ばんだシャツの胸元に吸い込まれていった。

 それを見てどうにも辛抱たまらなくなってきた。まだ付き合って一年と少しだもん。いいよね! と自分で勝手に納得して、麦茶を飲み終えた先生の唇に強く吸い付いた。驚きながらも目を閉じてる顔が、かーわいいんだ。
 わんわんと鳴り響く蝉時雨と、くちゅくちゅと唇がこすれあう音だけが、しばらくの間部屋の中に響いていた。ぷはっと顔を離したけど、息を吸い込んでもう一度先生に口付けた。今度は背中に手を回して強く抱きしめて、ソファに崩れ落ちるみたいにして倒れこんだ。
 上に乗った先生の汗が俺の顔にぽたっぽたっと落ちてくる。妙に興奮してしまったせいかズボンが上手くおろせない。下でモジモジしている俺のシャツのボタンを乱暴に外した先生が胸板に吸い付いてくる。くすぐったい……。

 ひどく汗ばんだ私に組しかれるようにして、拓は身体を横たえていた。可愛らしい顔に私の汗が数滴、小さな音を立ててこぼれ落ちた。拓はそれを愛おしそうに舌を伸ばして舐め取ると、少しはにかんだ笑みを浮かべた。その表情はあどけない少年のようで、妖しい光を放つ瞳はまるで娼婦のようだ。
 胸元のボタンを外して薄桃色の乳首に吸い付くと、デオドラントスプレーの青い香りが鼻を突いた。思春期の少年らしい、ちょっとした身だしなみに目覚めた可愛らしさが感じられて、私を一層魅了した。
「歩、ね、早く…もう行かなきゃ」
 下から両腕を伸ばして抱きつきながら、拓は恥じらいながら私のズボンのファスナーを降ろしてきた。私は拓の額に軽くキスをすると、彼の作業着のズボンとグレーのボクサータイプの下着を一度に下ろした。もう一度、拓と深く口付けを交わしながら私もズボンを脱ぎ捨てた。下着はつけない主義だから話は早い。拓の両足を開かせながら圧し掛かり、私は拓の中に滑り込んだ。熱い感触が私の骨の芯まで包み込むようで、思わず低くうめき声を上げてしまう。同時に拓も、少し苦しそうな声を上げてのけぞった。
 苦悶にも似た表情で、高潮した顔を少し左に背けた拓が私の名を呼んだ。
「あ……ゆむ……」
「なんだい?」
 私は身体を止めることなく、拓の下腹部に腰を打ちつけながらそれに応えた。拓は身体を貫かれ、上下に激しく揺すられながら言葉を続けた。
「ね、俺、ね、歩が  好き……」
 普段は活発で、努めて生意気に振舞う拓の、このギャップといったらどうだ。私は、この手にいつも弱いのだ…分かっていても、どうにもならない。
「ああ、拓……私もだよ」
「うん、先生」
 長い付き合いのためか、時おり彼は私をこう呼ぶ。そんな関係の時もあったな……と、ふと思い出した。初めて拓と結ばれた時は、放課後、美術室の絵の具やキャンバス、絵筆の乱雑に転がった大きなテーブルの上だった。あれから1年と少しか。
「ね、初めてのこと……覚えてる……?」
 短い喘ぎ声やうめき声をはさみながら不意に拓が聞いた。私と同じ事を考えていたらしい。
「ああ、覚えているとも。あの時テーブルに散らばっていた絵の具の色も、君の下着の色もね」
「な……に色、だっ……た?」
「黒」
 拓の熱い身体が私をぎゅっと締め付けた。どうやら正解だったようだ……実は少し曖昧だったのだが。

 二人の鼓動と息遣いが激しさを増し、互いに息を継ぎながら唇を貪りあった。出かける前なので歯を磨いた拓のミントのきつい口臭に、私のタバコのにおいが混じっている。乾いた粘液のにおいが淫靡な気配を色濃く浮き彫りにして、窓から溶け込む蝉時雨と強い陽射しが私と拓の罪深い愛を明らかにする。
 その時、下駄箱に置きっ放しだった拓の携帯電話が鳴り響いた。けたたましい着信音のセンスは若者のそれだが、この状況ではいただけない。私も拓も無視を決め込み、絶頂まで残り僅かかな営みを続ける事にした。

 
 やっべえ……店長だ! ケータイが鳴りっぱなしだ。でも、今はそれどころじゃない。先生も俺も……もう限界だ。恥ずかしいけど、たくさん名前を呼びたくなった。いっぱい抱きしめて欲しかった。仕事に行っている間は会えないしメールも出来ないし、帰ってくるまで寂しいから。
「歩、あゆ……む……好き……あゆ、んっ」
 先生は上から思いっきりキスしてきて、俺の前歯と先生の前歯が少しぶつかってカチっと鳴った。そして先生が身体をぎゅっと固くして、俺の中で少し震えた。短い、掠れた声を漏らしながら……俺も先生に強くしがみ付きながら、溢れてくる精液の感触を確かめた。

 私と拓はしばらくのあいだ抱き合っていた。そして唇と身体をほんの少し離れさせただけで、随分と涼しかった。ずっと密着していたせいだろう、二人とも頭の先から背中、胸、脚の付け根まで汗まみれだった。ソファのシーツにも大きなシミを幾つも作り、二人とも汗と唾液ともう一つ香りを混ぜた隠微なポプリのようになっていた。
 私はソファの乾いた部分に横になり、メンソール入りのタバコに火を点けた。拓はハっと我に返ると急いで身支度をし、下駄箱の携帯電話を引っ掴んでバタバタと出かけていった。その前にちゃんと
「いってきます」
「いってらっしゃい」
 のささやかな儀式を済ませて

 小早川の出勤時間は、とうに過ぎている。何の連絡もなく電話をかけても出やしない。また遅刻か……同じアパートに住んでいて、しかも部屋が一つ挟んで隣というよしみもあって今までは多めに見ていた。が、これでは他の従業員にもオーナーにも申し開きが立たない。ううむ、と時計を見ながらじりじりと考え込んでいたら、胸ポケットの携帯電話が震え出した。小早川だ。
 僕は少し苛立ちながら通話ボタンを握るように押した。
「はい、諸戸です」

 あっついなあ……口の中で毒づいても、相槌を返してくれる大介は居ない。最近は真面目に働いてくれて、朝から晩まで勉強して仕事したお陰で前の店長に見込まれてアルバイトで入って3年で店長になってますます張り切ってる。そんな大介を見るのは頼もしくって、素敵だけれど……なんとなく物足りないのは何故だろう。
 以前は私が働いて、彼はいつも家に居て。だから私の好きなときに好きなだけ相手をしてくれてた。だけど今は一日中お店に出ているから疲れてるし、私も働いてるからって気遣ってくれているのか、あまり抱いてもくれなくなった。せっかく手術をして、とりあえず摘出だけは済ませたのに。
 はあ、と溜め息をついて、扇風機のスイッチを切った。お風呂でも入ってスッキリしよう……汗ばんだ下着を外して脚から下ろすとき、不意に自分の指先が触れてしまった。
 熱くなった塊は先ほどから欲求不満を募らせて、切ないほど硬くそそり立っていた。どうしよう……だけど、やっぱり寂しいな。罪悪感にも似た気分のまま、右手をそっと添えてみる。ゆっくり握って、自分の体温と血の巡りを確かめるように。
(初夏、綺麗だよ)
 妄想の中の大介が私の下腹部に顔を埋めてささやいた。少し厚い唇が、無精ひげの消えた頬が、生暖かいぬらりとした舌が、私の汚れも恥ずかしさも構わず舐め取ってゆく。
 手の動きが激しくなるにつれ、にちゅ、にちゅっと卑猥な音を立てるようになった。皮膚と粘液の湿っぽい不協和音。
(初夏、好きだよ。すごくいいよ)
 そう、大介はいつだって優しかった。私を貫いていても、あの忌まわしい傷跡に口付けても、時おり理性を失ったように貪る時も、いつも私を愛しているとささやいてくれる。そんな優しさが……私は……いま、少し物足りない。
 
 粘液で艶やかに光る指先を口に含んで唾液をたっぷりと絡ませる。そして、その指先を今度は自分の中に押し込んでゆく。左手はキッチンのささやかなテーブルに突いたまま。右手の人差し指が少々の抵抗の後に するん と入り込んでいった。短く切った爪がほんの少し内側に触れて、顔をしかめた。だけど、こんな痛みを大介との営みで感じなくなった自分に、少しの浅ましさや恥じらいを覚えた。
 指は中指に変わり、遂に人差し指と両方をねじ込むに至った。微かだったうめき声はやがて切ない高音の混じった独特の喘ぎ声になり、私は自然と彼……とは、別の男の名前を呼んでいた。
 最近、隣へ引っ越して来た、ぼんやりとした若い男。同棲相手は高校生ぐらいの男の子。きっと私たちと同じだ……実は大介も彼らを見てそう言っていた。そしてその男の子は、大介が任された店舗にアルバイトとして入社していた。
 きっと今なら、彼は独りで家に居るんだろうな……妙に気になりだした男性の名は、森 歩と言った。引っ越して来たときに名乗ったあの痩せた男の目が、きっと私を見てぎらりと光ったはず……背徳感や罪悪感も綯い交ぜになって、私の下腹部を突き抜けてゆく。
 四つんばいになって床にこぼれた情欲の残滓をふき取りながら、私はどうかしてしまったんだろうと思い直した。幾らなんでも、そんなこと……ね。

 とりあえずシャワーを浴びて、衣服もつけずに扇風機の風を浴びていた。玄関のドアを半分開けてあるから、風が入って心地よい。拓が出かけて行った後は、いつも手持ち無沙汰だった。焦って適当な職にありつく気はないし、かといって絵を書く気にもなれなかった。
 まあ、いいか。
 タバコに火を点けて、なんとなく窓の外を見下ろしてみる。真夏日の中あくせく走る自動車や宅配便のトラック。そして外回りの会社員。所在無げにふらふらと歩く中年男性、その妻らしき引きつった顔をした女性。
 どれもこれも願い下げだった。私は違う……きっと違う。タバコの煙に少しむせながら、いつものようにかぶりを振った。
 そのとき。開きっぱなしのドア越しに何か声を聞いたような気がした。素肌に皺くちゃのスラックスとよれたシャツだけを身につけて、そっと外に出てみる。
 
 陽射しのもろに照りつけるアパートの通路はじりじりと暑く、白昼の過酷な太陽光線を色の薄い床が跳ね返してくる。一瞬、薄暗い部屋の中へ引っ込めようとした身体が、明らかにピクリと反応した。
 誰かの声、それも甘く、切ない、淫靡な声だ。
 私はドアをそっと閉めて、声のするほうへ向かってみた。何気ない風を装って目線は街路樹と僅かな風に揺れる電話線などを追いながら、耳だけを集中させてみる。
 隣の部屋のドアを通り過ぎて、さらにその隣……ここは、引っ越した時に挨拶に行った若いカップルの部屋だ。ドアに飾られた小さな木の表札と、丸っこい平仮名が目印だった。その鉄製の味気ないドアの向こう側から、なんども色っぽい声が漏れてくる。私は胸の中にぐっと熱い空気が流れるのを感じて、躊躇いながらもドアに耳を寄せてみた。
 そして聞こえてきたのは
「歩さん」
 私の名だ。
「あっあ……あゆ、む」
 聞き間違いかともう一度耳を澄ましてみる。
「大介ぇ……」
 ほら、やはり思い過ごしか
「ごめんね……大、介……あっ、あゆむさん……!」
 私は頭の中がだんだん真っ白になってゆくのを感じた。不思議と冷静なもう一人の自分が、興奮してズボンの下腹部を硬直させたまま彼女の部屋のドアノブに手を掛ける私の様を背後の斜め上から見下ろしているようだ。
 ドアを開けるべきか?
 それとも何も聞かなかったことにして全てを忘れて部屋に戻り、キャンバスにこの胸の高鳴りをぶつける事にするか。
 ドアノブに手を掛けたまま私はしばらくのあいだ蝉時雨を聞いていた。何分も経ったような気がしたが実際はせいぜい数十秒だろう。大通りをサイレンを鳴らした救急車が走りぬけ、彼女の部屋の開け放たれた窓や換気扇の隙間からは、淫靡な摩擦音と私を呼ぶ声が微かに聞こえている。

 そして私はドアノブをゆっくりと回し、彼女の部屋の中へ顔を入れてみた。
 すると真正面に台所のテーブルに手を突いて自らの指で肛門を貫き自慰に耽る彼女の姿があった。その姿は非常に美しく、淫らで、私はたちまち欲望の虜となった。しかし彼女に猛然と襲い掛かる勇気がなく、気が付くとそこで顔をのぞかせたまま、ついに彼女が果てて床に伏せるまで呆然と立ち尽くしていた。

 彼女は憂鬱に見える表情を浮かべて、雑巾で床を拭きだした。丸裸のまま四つんばいになり、こちらに小ぶりだが肉付きのよい尻を向けた。彼女の全てが露わだった。手術のあとが少し残るものの綺麗にすぼまった陰嚢から、すらっと伸びた彼女の陰茎。それに形のよい、浅い茶色をした彼女の肛門。私はそこに口付けたくてたまらなくなった。そして遂に、私は行動に出た。なに、簡単な事だ。手に持っていた部屋の鍵を、わざと床に落として音を立てただけだ。
 
 彼女はひどく驚き、振り向いて私を見るとさらに驚いた。しかし数秒後には、彼女の表情は確信に満ちたものに変わった。私も依存は無かった。
 彼女は短く ふふっ と微笑むと、私の首に手を回し、深い、深い口付けを求めてきた。無論私は舌を押し返して、彼女の唾液と小さな舌を貪り返した。
 自分の部屋と彼女の部屋では、聞こえてくる蝉の声や風の音が全く違うんだな、と何故か一瞬ぼんやりと考えた。

 営業時間も終了間際になると、インターチェンジ付近とはいえ地方都市の夜はすっかりと静まり返ってしまった。夜の二十一時五十分。往来の途絶えた道路に沿って色とりどりのノボリがはためく。洗車、タイヤ、オイル交換、などの派手な色合いの文字と布に混じって、小早川の小柄な身体が見え隠れしている。
 ノボリを片付けるために、腰をかがめて地面に固定した細いパイプから柄の部分を引き抜くとき、こちらに向かって尻を突き出す格好になる。小ぶりだが張りのある、良い尻だ……ごくり、と思わず生唾が喉を通り過ぎていった。

「店長、終わりました!」
 汗ばんだ顔でニッコリ笑いながら、小早川が俺の前に駆けてきた。背の低い小早川が上目遣いで俺を見る。まだ入社して二ヶ月だが機敏に動くし、気も利く。ノボリの片付けも自分で気がついて動いてくれたものだった。愛嬌もあって笑顔が可愛いので、女性客だけでなくスタッフにも好かれていた。
 もちろん、違う意味で俺にも。

 昼過ぎから忙しく働いたお陰で、彼も俺も赤とグレーの作業着がぷんと汗臭くなっていた。目の前に居る小早川の帽子と作業着からも、悩ましいほどの甘ったるい汗のにおいが漂っている。時おり表の通りをガーッと音を立てて走ってゆくトラックや自動車も灯りをほとんど消してロープを張ったスタンドには見向きもせず、インターチェンジやその向こうの工業地帯と繋がる湾岸道路を目指してゆく。

 俺は汗まみれの身体が唇から喉にかけてやけに乾いていくのを感じていた。少しの間、小早川の顔を正面からじっと見てしまい、気まずい沈黙を生んでしまったから……だと思う。
「ああ、ありがとう。気が利くな!」
「えへへっ。ありがとうございます」
 この子は全てを見透かしているのだろうか。天使のように微笑んで、ちょこんと頭を下げた小早川の髪の毛から、汗とは違う甘くてどきどきするにおいが鼻をついた。
 そして俺は、再び彼を、小早川 拓の顔をじっと見た。
「?」
 小早川はきょとんとした顔をして、俺の目をじっと見返してくる。黒目が大きくて、くりっとした瞳。同性愛者でなくても、女性であっても、きっと彼の目には惹かれるのだろう。それほど、この美少年の瞳には不可思議な妖しさと艶やかさ、色香のようなものまでが秘められているように思えてならなかった。
 加えてまさに中世的と言える女性らしさを含んだような顔たちと、爽やかで子供のような笑顔。半袖の作業着からは、痩身だがふっくらとした肉付きの若々しい肉体が伸びている。そして細く少し節の浮いた華奢な指先。
 奪いたい。
 小早川は俺の前で、やり場のなさそうにソワソワしている。恋人の待つ部屋に早く帰りたいんだろうか。もう二十二時。彼を拘束するには遅い時間だ。早く帰してあげなくてはいけない。それは、重々承知の上だった。だけど、どうにも踏ん切りがつかず、俺は身勝手な横恋慕の成すがままに彼を引き止めて、仕事についての話や、取り留めのない話をいつまでも続けていた。

 時計は二十二時三十分を回った。閉店時間は二十二時。いつもならどんなに遅くなっても、どんなにゆっくり作業をしても、こんな時間まで店に居ることなどなかった。いい加減、話を切り上げて片付けを終えなくてはならなかったが……ふと気が付くと、小早川は俺の話を笑顔でふんふんと聞いて時おり相槌を打ったり笑ったりして、尚且つ店内を簡単に片付けてくれていた。そして
「店長、灯り消していいですか?」
 と唐突に聞いた。俺は一瞬、このガラス張りになった客室の明かりのことかと思い、灯りを落とした薄明かりの店内で絡み合う二人を想像して顔を赤らめてしまった。
「あ、ああ頼む」
 しかしそれは、表にある会社のマークの描かれた大きな看板のことだとすぐに思い直した。だがどっちみち、この部屋の明かりも消してしまわなくてはならない。そして、戸締りをして、店を出て。同じアパートの違う部屋に帰る時間が来たのだ。
「じゃあ、店長。お先に失礼します!」
「ああ、気をつけてな。お疲れ様」
 小早川はちょこんと頭を下げると、となりの事務所まで走っていってタイムカードを切った。俺は最後にトイレや店の周りを点検して、灯りをすべて落とし、戸締りをして外に出た。彼の姿は、もう見えなかった。

 結局、私が彼女の部屋を出たのは二十二時半を少し回ってからだった。急がなくては拓が帰ってきてしまうのだが、初夏が中々離してくれなかったのだ。光栄だが、身に余る幸福は帰って自分を滅ぼす事になる。
 私は急いで部屋のドアにとりついて、ドアノブを回して凍りついた。
 灯りがついている?

 しまった。拓が帰ってきてしまったのだ。ほうらみろ、ともう一人の自分が私の背後から自嘲気味に笑っている。どうする……しかし初夏の部屋に逃げる事も出来ない。彼女の恋人は拓の上司だ。もうすぐ帰ってきてしまうだろう。となると。
 私はフゥーっと溜め息をついて頭を二、三度ポリポリと掻いた。そして息をすっと吸い込んで、結局言い訳の準備もなく部屋へと踏み込んだ。

 ガチャリと鈍い音がして、鉄製のドアがゆっくり開いていった。小さな玄関のささやかな下駄箱に、拓がポケットの中身を乱雑に置いたものがあって。正面の台所と一体化したスペースの明かりが消されている。その向こうの曇りガラスの引き戸が閉まっていて、蛍光灯に照らされて正座する拓の形を、ぼうっと浮かび上がらせていた。
 意を決してガラス戸に手をかけて、ゆっくりと右に引いていった……ばたばたばた、と騒がしい音を立ててガラス戸は開いたが、部屋中に充満した重苦しい雰囲気は少しも流れ出ることなく、そのまま沈殿しているかのようだった。

 私はつい、黙って彼の前に座ってしまった。
「おかえり」
 さぞ間抜けな声だったろう。私は精一杯の虚勢を張って、彼に声をかけたつもりだったのだ。
「ずっと家に居たみたいな言い方だね。シャワーぐらい浴びてきたら?」
「いや、拓こそ、入っておいで。私は後で良いよ」
「あの人のにおいを消したくないから?」
「な、なにを」
 完全にバレている。その上、どうやら聞かれてしまったらしい……時間ギリギリまで私を求める、彼女との淫靡な睦み事の一部始終を。

 私は気まずい沈黙に追い立てられるようにして、しかし僅かでも潔白を証明するようにシャワーを浴びた。熱い湯を頭から被って、身体の隅々にまで石鹸を擦り込んだ。この指が、舌が、そして私自身が、さっきまで熱く爛れた彼女の中に居た。愛を誓ったはずの無い、拓以外の淫らな人間の中に。指を少し曲げたり、伸ばしたりしてみる。感触もにおいも、湯にさらわれて消えていった。たった数時間、いや数分前までの私と、今の私はまるで別人のような心持だった。一体どうしちまったんだ……柄にもなく焦燥や後悔といった気持ちに押しつぶされそうで、私は今、どうしたいのかを良く考えてみる事にした。

 答えは明白だった。拓に、許しを請いたい。私には彼しかいないのだ。彼を失う事が、私のとって何よりもの損失なのだ。彼を失えば精神的にも、肉体的にも、二度と再び立ち直れないほどのダメージを負うだろう。
 
 しかし。
 
 同時に、もう彼女に会えないのかと思うと……途端に胸が締め付けられるように苦しくなった。はくん、はくん、と心臓が大きく脈打って、頭がくらくらする。
 部屋は一つ挟んで隣同士だが、このことが露見したら引っ越してしまうかも知れない。この部屋は私が借りたから私は出て行かないが、しかし彼女の居ないこのアパートに、私が居る意味もまたないような気がしてしまう。もう一度彼女に会いたい……この先も、彼女に会いたい。そんなふしだらに思える気持ちにもまた、偽りは無かった。

 頭のてっぺんからつま先まですっきりして風呂場から出ると、拓は先ほどと少しも違わない体制でじっと座っていた。ただし違っている点があるとしたら、彼の座っている部分の床には無数の濡れた染みがあり……彼のすすり泣く声が重く押し黙った部屋の中に響いている事だ。
 私は衣服を身につけるにももどかしく、彼を背中から抱きしめた。だが彼は全力で私の身体を押しのけた。
「触るなっ!」
 涙声で怒鳴る拓の真っ赤になった目が、私をキッと睨みつけている。裏切り、嫉妬、悲しみ、彼女への憎しみ。すべてが顔中から、いや身体中から津波のように押し寄せて、彼の小柄な身体と心は今、どん底の大海原に漂う小船のように翻弄され、引き裂かれようとしているに違いない。

「た、拓」
「気安く呼ぶなっ!! 下着ぐらいつけろよ!」
 私は俯き、すごすごと洋服箪笥の前に進んで下着を物色した。
 そっと振り返って見ると、拓は相変わらずそのままの姿勢を崩さなかった。

 最早、私に弁解の余地など無かった。彼の言うとおりにするしかない……それで彼の気が晴れるなら、許しを得られるなら……私はこの期に及んでもまた、そんな甘い考えを捨て切れなかった。
「拓。すまなかった、どうしたら……その、私は」
「出てって」
「なっ」
「出て行け!!」
 拓は押し殺していた感情を完全にスパークさせて、私の喉元に食らいつかんばかりの勢いで責め立てた。正座して膝に乗せた両手の拳をぶるぶると震わせて、腹の底から響き渡る声でありとあらゆる罵詈雑言を浴びせてくる。
 怒りを抑えられない拓が勢い余って、急に立ち上がった。しかしずっと正座を続けていたために脚が痺れたらしく。拓は力なくその場に崩れ落ちてしまった。
 私が思わず伸ばした右手を思いっきり振り払って、拓は再び怒りのままに怒鳴り始めた。

 この小柄な身体のドコに、そんなパワーが。
 妙なことに感心している場合ではなかった。私は無性にタバコが吸いたくなってきた。追い詰められて、身の置き場がなかった。しかし、全ては自分の行いのせいだ……今は大人しくしたがって、また後で話すしかないだろう。

 私はなるべく平静を装って、彼に「わかった」とだけ言って身支度を始めた。一日か二日の着替えと簡単な荷物、それにタバコを二箱バッグに放り込むと拓のほうをチラと見た。彼は一瞬目を合わせたが、プイとそっぽを向いてしまった。
「良いのか」
「……知らない」
 にべもない。こうなったら私は私で引っ込みがつかず、靴を履いて玄関を出た。ガチャン、と重たい音がして、ドアが閉まった。拓は──追っては来なかった。

 部屋を出て、鉄柵から往来の暗い道路を見渡した。空には珍しく星が瞬き、夏の割りに涼しいのは空気が澄んでいるからだろうな、と、全く意味のない推察などをしてみた。そして次に私の目に飛び込んできたのは、三つほど先の街灯の下を歩く初夏の華奢な背中だった。まさか……私はたまらず、カバンをバタバタと揺らして駆け出した。全力疾走なんて何年ぶりだろう。膝や足首がピキピキと音を立てて、急な仕打ちに驚いているようだった。

 果たして、追いついてみるとそれは紛れもない初夏だった。
「初夏……」
 私は息を切らしながら彼女の名を呼んだ。
「歩さん」
 振り返った彼女は、笑っていた。まるでたった今まで夜風にでも当たるために外を歩いていました、とでも言いたげな雰囲気だ。
 だがその左手にはやや大きめのバッグが下がっていて、顔にも少し涙の乾いた後があった。そして彼女はひと言。
「バレちゃった」
「ああ」
 私はどうしたらいいのかさっぱりわからなかった。わからなかったが、彼女と一緒に居るべきなのだろうと思った。そして初夏と私は互いに手を繋ぎ、行くあてもなく夜空の低い位置を明るく染める中心街の方角へと進んでいった。

 俺が拓の震える身体の目の前に立ったとき、部屋の中はひどく荒れていた。箪笥の引き出しも皿もコップも洋服も何もかも、まるで部屋の中に小型の台風が発生したような有様で散々にぶちまけられてるじゃないか。
「小早川」
 彼の部屋から異様な騒乱が聞こえていた頃、俺の部屋でも修羅場になっていた。仕事から帰ってきて、玄関のドアを空けた俺は、聞き覚えのある他人の名で呼ばれた。恋人であり、数年連れ添った初夏から。
 そこから全てが露見した。彼女の携帯電話には、教えあったメールアドレスを確認するメールと、その異様な文章。何も複雑なもんじゃない、たった5文字だ。
 しかし、彼女からのそれが許されるのは俺だけだったはずだ。俺は怒り狂い、彼女の頬桁を張り飛ばしたかった。だけど出来なかった。それでも俺は、彼女を愛して居たかったから。

 結局、彼女は無言で(理由は分からなかったが)少し泣きながらこの部屋を出て行った。でも、戻ってきて欲しい。呆然としていた俺が次に聞いたのは、一つ挟んで隣の部屋……つまり小早川の部屋で何かが壊れたり叩きつけられたりするような音だった。
 急いで駆けつけた俺は、異様な有様の部屋の真ん中でうずくまり、雨に濡れた子犬のように震える小早川の姿を見たのだった。

 小早川の両手の拳には血が滲んでいた。力いっぱい、壁や床やあらゆる調度品を殴りつけたのだろう。涙も枯れ果てて、ただただ乾いた喉を悲しく鳴らすだけの小早川は……こんな事を言った罪で地獄に落ちても構わないが、ひどくいたいけで、ひたすらに愛おしかった。

 彼をこの場で抱きしめて、俺こそが君を愛する唯一の男だと言ってしまいたかった。俺と一緒に働いて、一緒に生きていこう。俺と一緒にやりなおそう。
 俺の両腕と唇がもう少しで動き出すという時に……小早川が、先に動いた。崩れ落ちるように俺の膝に寄りかかり、掠れたような声でひとこと
「店長」
 とだけ、言った。
「店長……俺……俺」
「……」
「悔しいよ……やっぱり先生は、女の子みたいな格好した人がよかったのかな」

「悔しい……悔しいよ、俺。俺だって俺だって沢山頑張ってきたのに。身体だって綺麗にして、髪の毛も伸ばして」
「小早川」
「ねえ店長……」
「ん?」
「……店長は、俺のことどう思ってる?」
 数秒、気まずい沈黙が部屋の中に流れた。
「店長は俺のこと、好き?」
 上目遣いで俺を見る小早川の瞳が濡れて、うるうると揺れている。この子は確かに可愛い。俺はずっと、小早川が好きだった。彼を、今目の前に居るいたいけな少年を、自由に貪りつくす日を夢に見ていた。
「ねえ店長」
 小早川が俺の腰に両手を回して、腹部に顔を押し付ける形でぎゅっと抱きついてきた。二人ともかなり汗くさいが、小早川の身体からは不思議と嫌なにおいがしなかった。ただし、塩辛い涙のほんの少しツンとしたにおいだけが顔から濃密に漂っていた。
 甘くて、理性や欲望を溶かしてしまうような体臭。加えて、ずっと汗をかいたままのせいかほんのりと香るわきが。
全てが、目の前に居る小早川の全てが……あまりに蠱惑的だった。そして今まさに、俺の想いは遂げられようとしていた。
 俺は小早川の髪の毛を優しく撫で、そして両の頬を優しく手のひらで包み込んで顔を上げさせた。
 小早川の涙に濡れた端正な顔が、目の前数センチの所にあった。少し生ぐさい口臭まで直接鼻の奥に届くような距離だった。そして俺は唇を動かし思いのたけを伝えた。
「小早川」
「うん」
「彼は……君の本当に好きな人は、きっと帰ってくるよ」
「……」
「俺も、初夏に帰ってきて欲しい」
「……」
「だから今日は風呂に入って、怪我の手当てをしな。少し片付けたら早く寝ちゃえば良いさ。明日も十一時から十九時までシフト入ってんだぞ」
「……でも」
「いいから今日は休め」

 頭の中で、何度も想像して反芻した言葉とは似ても似つかない、男気に溢れた美辞麗句。だが俺は、どうしても今の彼を奪い、抱きとめる気に離れなかった。いや、本当の所どうなのかはわからない……ただ、部屋を出るとき背中にそっと抱きついてきた小早川の
「ありがとう」
 という言葉を聞いて、少なくとも自分の行いは間違いではなかった事を知った。

 そして、全てはあるべきところへ帰ってゆけば良い。俺は強がりながら彼の部屋を出て、真っ暗な自室へ戻った。そしてシャワーを頭からかぶりながら、少しだけ泣いた。

おしまい
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