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一級河川

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黄昏 鉄橋を渡る
区間快速 通り過ぎた
顔 顔 顔 顔が
草臥れて ヒトの事言えないか、
と俯いて あたしも今日を泳ぎきる
 
新築 真新しい壁
入居者募集 過ぎ去った
今日 明日 明後日も
草臥れた ヒトたちの事を思えば
ふと浮かぶ あたしの生きた証し
 
たとえば流されて
真っ赤な海に
溺れてしまいたくなっても
このまま流されて
真っ赤な嘘に
すがりついていたくても

国道 光と煙の渦
右折車線 混み合った
群れ 列 連なりが
草臥れを ヒトのせいにしたくて
我先に あたしは置き去りに

傷は浅い 罪は深い
小さな混沌の物語の
この街を流れる 川の水面のように

いつかは気が付いて
どす黒い海に
背を向ける日が来て
それでも気が付けば
どす黒い海に
また戻ってゆくんだ
このまま流されて
真っ赤な嘘に
すがりついていたくても
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