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あらしのよるに

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風の強い夜には 想い出の服を着て
あてもなく出かけよう アクセルを
ほんの少しだけ強く踏み込んで

立ち去る別れは 美しいというけれど
傷つくことを恐れて 傷つけるのを躊躇う
そんな自分が 誰しもかわいい
あたしは一人で あらしのよるに

あなたの心には 僕が傘をさして
いつも晴れにしよう そういって
微笑む顔だけ 今は思い出して

失うものなど 何もないと思っていたけど
いつのまにか背負って いつのまにか縋って
そんな身分が 誰しも愛しい
あたしもきっと あらしのよるに

天気予報みたいに 生きられたらいい
先の事なんて 確率にもならない
雨が降るそのときに いつだって傘はない
誰の所為でもない びしょ濡れになるだけ
誰の所為でもない 誰にもわからないだけ

立ち去る別れは 美しいというけれど
傷つくことを恐れて 傷つけるのを躊躇う
そんな自分が 誰しもかわいい
あたしは一人で あらしのよるに

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