太陽と龍の追憶

ダイナマイト・キッド

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Tiredland.

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疲労の干潟に膝まで浸かって
Tiredlandに佇んで
上がり続けながら減り続ける数字を眺めて
止まることを忘れた回転木馬を
呆然と見送った

疲労の泥濘に膝まで呑まれて
Tiredlandに沈んで
増え続けるのに空っぽになる部屋を眺めて
止まらない無人の回転木馬を
呆然と見送った

怒りを堪えて生きている。
些細な不満が、すれ違いが、疲れが、不安が、遣る瀬無さ、切なさ、悔しさ、不甲斐なさ、後から追い抜いてくイケ好かないものたちが、降り積もり凝り固まりストゥーパのように心のアチコチで聳え立つ。
誰も同じだ、お前だけじゃない、お前も同じだ、みんな同じだ。
そう言われて椅子に座らされ、振り上げた拳にそっと手を添え押さえつける。頬を引きつらせ草臥れた鉄面皮たちに。
誰もがお前と同じと言われて、自分は一体どこに収まるというのか。
収まりきらない心が新しい些細な不満、すれ違い、疲れ、不安、遣る瀬無さ、切なさ、悔しさ、不甲斐なさを捕まえて取り込んで膨れ上がってゆく。
それが全部集まって小さな山になり、その山がいくつも集まって、さらに集まって集まって集まって出来上がったものが、お前の怒りだ。
その怒りを千、集めて。
さらにそれを千、集めて。
それがもっと千、集まって。
出来上がった三千大激怒の収拾に生涯を捧げる羽目になる。
それなら、まあ、座っていようか。

その代わり、怒りを堪えて書いてゆく。
もう誰にも触らせない。
もう誰にも話さない。
誰にも理解(わか)らせないし、分かち合わない。
自分の怒りは自分で咀嚼して書きつけて、それでそうして生きてゆく。

だからもう、そこに自分が要らないのなら、そう言ってくれ。
会わないのなら会わないと、好きでもないなら嫌いだと、何かを堪えているのなら。
自分の怒りは堪えても、他人の怒りは受け止められない。
自分の怒りで手一杯で、誰かのことまで考えられない。
未熟で軽率な自分にまた腹が立ち、誰かを殴ってしまいたい。
何かを壊してしまいたい。
あなたにひどいことをしてしまいそうだ。

怒りは始めから怒りじゃない。
何かが怒りに変わってく。
怒りはチカラに変わってく。
チカラが怒りを求めてく。
怒りがチカラになってゆく。

抑えきれない怒りを、咀嚼しきれないほどの罵詈雑言を、
土石流のような感情を、心の奥底で渦を巻くヘドロの海を、
怒りと一言で呼んでしまえたら、さぞかし楽だろう。
人にそれをぶつけて気が済むのなら、どんなに楽だろう。

怒り続けることに疲れて。
怒りが続くことが不安で。
怒りだけが湧くのが不満で。
怒りの泥沼に膝まで浸かって気が付いて。
もがきつづけることに疲れて。

疲労の干潟に膝まで浸かって
Tiredlandに佇んで
上がり続けながら減り続ける数字を眺めて
止まることを忘れた回転木馬を
呆然と見送った

疲労の泥濘に膝まで呑まれて
Tiredlandに沈んで
増え続けるのに空っぽになる部屋を眺めて
止まらない無人の回転木馬を
呆然と見送った
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