ヒーロー達の青春エピローグ

蜂峰 文助

文字の大きさ
14 / 106
ヒーロー達の青春エピローグ~春の章~

【第13話】あんな変態の何処が良いんだよ

しおりを挟む

「私はどうやら……土門くんの事が好きみたいだ」

 ある日の昼休み。昼食を食べていると、宇宙が突然そんな事を言い出した。
 それを耳にしながら、愛梨が「ふむ……」と頷きつつ、先程口に入れたタコさんウィンナーをゴクリと飲み込み一言。

「知ってるよー」
「やはり知っていたか……愛梨は何でもお見通しなのだな」
「そりゃそうよねぇー。だって他人の心が読めちゃうんだもん。嫌でもお見通しちゃうよ」
「そうか……ならば私が、何故土門くんに惚れたのかも当然理解してくれている……その解釈で話を進めても良いか?」
「いいよー」
「私は――土門くんに告白しようと考えている」
「ぶっ!?」

 愛梨は飲もうとしたお茶を吹き出し驚いた。
 彼女にだって読めない心もある。
 以前皐月と愛梨の関係性を説明した通り、思ってすぐ口に出した他人の心は読めないのだ。
 正確には、読心は出来るものの、それが追い付かないというのが正しいのだろう。
 そんな訳で、今の宇宙の発言を、愛梨は読み取れなかったのだ。
 だから、驚いたのである。

「ゴホッゴホッ!」
「大丈夫? ハンカチ貸そうか?」
「う……ううん、大丈夫……」
「そんなに驚くなんて意外ね。朝からずーっとその事を考えていたのだけれど……読まれていなかっただなんて、予想外で……」
「ずーっと太陽くんの心ばっかり読んで、どうからかうか考えていたから、そっちが疎かになってた……ごめんなさい」
「それはそれで、万屋くんが不憫ね……」
「で、本当に告白するつもりなの? 心を読んだ感じ、決意は固まってるみたいだけれど……」
「本当よ」

 宇宙は言う。

「本当に今日――私は、土門くんに告白しようと思ってる」

 決意の籠った表情のまま、そう言った。
 愛梨は「なるほど……」と、納得したようで。

「分かった。私に出来る事があるなら何でも言って、手伝うよ」
「ありがとう……そこで早速、貴方に頼みたい事があるの」
「ふむふむ」
「それでね――」

 宇宙は耳打ちで、そのお願いを愛梨に伝える。
 「分かった!」と、愛梨はそれを快く承知した。


「え……何?」

 白羽の矢が立ったのは太陽だった。
 突然、愛梨と宇宙に囲まれて、少し不安になっている様子だった。
 『オレ……何かしたっけ?』そんな思いが、太陽の中に浮かび上がる。
 口を開いたのは愛梨だった。

「太陽くんに、お願いがあるんだー」
「お願い?」
「実はねー……」

 愛梨は太陽に耳打ちをして、その要件を伝える。
 その最中、太陽の顔は真っ赤になっており、それを宇宙は漠然と見つめながら(早く告白して付き合えばいいのに)等と思っていた。
 愛梨の顔が離れる、どうやら要件を伝え終えた様だ。

「な、なるほどねぇ……星空が忍に告白したいから、二人きりになれるようオレに手伝ってほしい……と…………ふむふむ、なるほど……って!? 告白!?」
「声がデカいぞ万屋」
「す、すまん……」

 宇宙に叱られ、咄嗟に自分の迂闊さを謝罪しながら周囲を見渡した太陽。
 どうやら、致命的なミスには繋がらなかったようで一安心。
 ここで改めて疑問をぶつける。

「それにしても何で忍なんだ? あんな変態の何処が良いんだよ」
「あんな変態って……それをあなたが言うのね……」
「静は、あの『山の戦い』から、土門くんに惚れちゃったんだよねー」
「山の戦いって……ああ、忍と二人で【雪使い】と戦ったってやつか。あー……言われてみれば、あの時ぐらいから、お前らの距離感おかしくなってたもんなぁ」
「……確かにその通りだけれど……二人して勝手に私と土門くんの馴れ初めを丸裸にしないでくれる?」

 少し照れ臭そうな宇宙。
 彼女のそんな表情は滅多に見る事が出来ないので、少しキュンとした太陽だった。

「……何キュンとしてるのさ、太陽くん」
「だから呼吸するかの如くオレの心を読むなって」
「読まずとも分かるわよ、その目を見たら」
「え? オレ今そんなに顔に出てた?」
「出てた出てた。すっごく出てた」
「気を付けます……」

 さて、いよいよ話は本題へ……。

「で、お前らを二人きりにしたいのは分かったけど……オレは一体何をすればいいんだ?」
「簡単な事よ。貴方にして欲しい事は一つだけ」
「ふむふむ」

 「―――――――――――」宇宙は、そのして欲しい事の説明を始める。
 説明を終えると、太陽は「なるほど」と頷いた。

「それくらいなら、お安い御用だ」


 そしてその時が来る。
 放課後――

 忍のスマホ画面に表示されているのは、RAINというメールアプリ。
 そこには太陽からのメッセージ。

『おつかれ忍(ㅅ˙³˙)♡
 悪いけどエロくて良い話があるんだ!( *¯ ꒳¯*)
 放課後一人で屋上に来てくれるか?┐(´∀`)┌ヤレヤレ』

(相変わらず。顔文字がウザい)

 忍はそのメッセージを見て、そんな感想を覚えた。
 『エロくて良い話』――その言葉の響きに吸い寄せられるかの如く、彼の足は屋上へと向かって行く。

 向かって……。

(階段上がるのダルいな……)

 そんな訳で、忍は周囲を確認し、人が居ない事を確認すると、能力を発動。
 【瞬間移動】にて、一瞬で屋上へと辿り着いた。

 校内では感じる事が出来ない、風の流れを感じ、忍は屋上にいる事を五感で確認する。

「さて……何の話だ? 太……――っ!」

 忍の目の前に居たのは、太陽ではなく――宇宙だった。

「やっばり瞬間移動して来たのね……土門くん……万屋の言った通りだったわ」
「…………何故、星空が?」
「ごめんなさい……私が、万屋に頼んで、貴方をここへ呼んで貰ったの……――伝えたい事があったから」
「……伝えたい事?」
「ええ……」

 忍の鼓動が高鳴り、(もしや――)という予想が頭を過ぎる。
 屋上に二人きりで呼び出された上に、静が顔を赤く染めながらモジモジと『伝えたい事がある』と言っているのだ。
 そんな想像を、してしまうのも無理はない。
 ドクン……ドクン……忍と宇宙、互いの心臓の鼓動が響き合っているようだった。

「土門くん……私は――」

 そして……忍の予想は現実となる。

「貴方の事が、好きです。私と……お付き合いしてください」

 宇宙は、思いを吐露しながら、深く深く、頭を下げたのだった。
 当然……忍の答えは――


 一方その頃、屋上入り口。
 扉の中からこっそりと二人を見つめていた愛梨と太陽。

「きゃー! 宇宙ったら本当に言っちゃったわ!」
「マジ!? それでそれで!? 答えは!?」
「当然……」

 愛梨は、左手でOKのサインを見せる。
 その瞬間、太陽が空気も呼ばず飛び出した。慌てて止めに入る愛梨だが、間に合わない。

「やったなぁー!! お前らぁー!! 最高だぁぁあーーっ!!」
「太陽っ!?」
「万屋!?」

 勢い良く駆け寄り、太陽は新カップルの二名を纏めてハグしたのだった。
 その目には、うっすらと涙が浮かんでいる。

「まったく……他人の事なのに、自分の事のように喜んじゃって……」

 その様子を遠くから眺めていた愛梨が、苦笑を浮かべながらそう呟いた。
 そして愛梨は続ける。
 小さく……呟くように続けた。

「私も……待ってるからね。太陽くん」

 ゆっくりと愛梨も、太陽と新カップルの宇宙と忍の元へと近づいて行く。
 そして今度は、三人にしっかりと聞こえる声でこう言った。

「おめでとう。二人共」

 こうして……宇宙と忍。
 両名は無事――

 付き合う事になったのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

マカロニ
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】

remo
恋愛
「…溶けろよ」 甘く響くかすれた声と奔放な舌にどこまでも落とされた。 本宮 のい。新社会人1年目。 永遠に出来そうもない彼氏を夢見つつ、目の前の仕事に奮闘中。 なんだけど。 青井 奏。 高校時代の同級生に再会した。 と思う間もなく、 和泉 碧。 初恋の相手らしき人も現れた。 幸せの青い鳥は一体どこに。 【完結】 ありがとうございました‼︎

処理中です...