ヒーロー達の青春エピローグ

蜂峰 文助

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エピソード5『泡水透士郎と万屋月夜』

【第78話】泡水透士郎と万屋月夜⑧

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 衝撃のネタばらしから三日後……。

 万屋月夜は、帰って来た。

 元々、二年もの間海外へ滞在すると思っていた為、パンパンのキャリーバッグを引き摺り。
 気まずそうな表情で、帰って来た。

 何が気まずいって、あちこちに別れの挨拶を済ましていたからだ。
 感動的な別れの挨拶を……お別れ会たるものも開催してくれた。にも関わらず、実は二年ではなく三日でしたぁーなんて、どの面下げて言えば良いのだろう。

 まぁ……そのお別れ会を企画したのが、静達中学メンバー出身の元ヒーロー達であったのは幸いだった。
 一般のクラスメイト達だったら、恥ずかしさのあまり不登校になってもおかしくなかった……。
 何食わぬ顔で登校したら、気まず過ぎる雰囲気間違いなしであった……。
 本当に幸いだった……と、月夜は胸を撫で下ろす。

 それと同じくして、疑問が浮かぶ。

(静達は、どこまで知っていたのかしら? ひょっとして全て知っていたのかしら? だとしたら……あのお別れ会の時、どんな心境だったのかな? 顔では悲しそうな顔していても、心の中では大爆笑してたんじゃ……そう考えると……立つわね……腹が!)

 月夜の表情は、怒りで満ち溢れていた。
 その目が、メラメラと燃え滾っている。

「月夜ちゃん! ありがとねぇー!!」

 改札を越えた所で、又旅に抱き締められた。

「それと変な感じになっちゃってごめんなさぁい!! まさか太陽くんがそんな面白――コホン……酷い企みを企てていただなんて私知らなくてぇ!! 本当にごめんなさぁい!」
「猫田さん……今、面白い企みって言おうとしてました?」
「してないわぁ」
「説得力がないなぁ……」

 何せ又旅は、行きの飛行機の中で事情説明をした際、腹を抱えて息が出来なくなる程爆笑していたのだ。
 少なくとも彼女は、この一件を『面白い企み』と、思っている事は間違いない。

「ま……まぁ? でも、こうして帰って来れた訳だしぃ……太陽くんに、酷い事するのはやめてあげてね? ねぇ?」
「死ぬまで殺し続けます」
「怖い!! ワンワンくん! 月夜ちゃんが怖いわぁ!! 鬼の目をしてるぅ!!」

 月夜の般若のような顔を目の当たりにし、市一の後ろに隠れる又旅。
 市一が溜め息を吐く。

「何にせよ……感謝するぞ万屋月夜……この三日間、有意義な時間となった……。お前から取れたデータは、間違いなくポルターガイスト撃破に役立つ事だろう……。誇れ、お前はまた世界を救ったのだ……」
「あ……いえいえ……それはその……恐縮です」
「一時的とは言え、お前を再び……こちらの世界へ引き寄せた事を詫びよう……青春の邪魔をして済まなかった」
「いえいえ……こちらこそ、お役に立てて良かったです。頑張ってくださいね――世界平和の為に」
「……ああ。ありがとう……」

 市一が笑って頷いた。
 すると又旅が、トンっと月夜の背中を押した。
 前に転げそうになる月夜
 又旅と市一が手を振っている。

「青春――――頑張ってねぇ」
「幸せになれよ……ヒーロー……」

 その言葉を受け、深々と月夜は頭を下げた。
 「はい!! ありがとうございます!!」と、頭を下げた。
 そして走り出す。

 月夜を見送る又旅と市一。
 少し感慨深そうにしている。

「大人になったねぇ……月夜ちゃん……」
「そりゃそうさ……子供は大人になるものだ……」
「まさか、月夜ちゃんと透士郎くんがねぇ……驚いちゃったわぁ……。他の皆もぉ、あの二人みたいにくっ付いたりしてるのかしらぁ? 例えばぁ……太陽くんと愛梨ちゃんとかぁ、皐月ちゃんと剛士くんとかぁ」
「さぁな……。まぁ……奴らは奴らで、青春している事だろう……」
「うん、そうだと良いわねぇ」
「さ……帰るぞ。オレ達は、そんな彼女達の為に世界を守らねばならんのだ……」
「うん!! あの子達や……そして――――


 の為にも……ねぇ……」


 そう言って又旅は、自らの少し大きくなった腹部に優しく触れた。
 市一もまた、そんな彼女の腹部を一瞥した後……。

「……そうだな」

 優しく……微笑んだのであった。



 一方その頃――月夜は、足を止めていた。
 空港内のロビーで、目当ての人と出会えたからだ。

 目当ての人――最愛の人――――泡水透士郎と。

 気まずそうに微笑み合った後……二人は見つめ合う。

 そして先に口を開いたのは透士郎だった。
 二度目となるその言葉を口にする。

「月夜……。


 オレはお前が好きだ――愛してる。この一件が終わったから……一緒に暮らしてくれないか?」

 しかしここで、透士郎は訂正する。

「ま……一緒に暮らすのは却下だな、まだ早いか」
「そうね。それは後々考えましょ」
「そうだな。……で? もう一個の方は?」
「そんなの……決まっているじゃない――――



 私も……透士郎の事が好きよ。不束者ですが、どうぞよろしくお願いします」


 「ああ……こちらこそ」と、透士郎は月夜を抱き締めたのであった。
 しばらく抱きしめ合った後、抱擁が解かれる。
 顔を合わせて月夜と透士郎は声を揃えて言う。

 「「さて」」と……。

「「恋人になってといきましょうか」」

 その共同作業とは――

「あのクソ馬鹿クソエロ糞あんぽんたんな糞兄貴を――――」
「あのクソ腰抜けポンコツ猿知恵野郎の太陽を――――」


「「ぶっ殺す!!」」

 禍々しい言葉とは裏腹に……月夜と透士郎は楽しそうだった。
 二人の手は、しっかりと結ばれている。
 固く硬く……握り締められている。
 二人は歩幅を揃え走り始めた。

 はじめての共同作業を成し遂げる為に――
 輝く未来へ向かう為に――

 この後……太陽が散々で無惨で凄惨な目に合う事になるのだが……それはまぁ一先ず置いておいて。

 いよいよ秋が終わり。
 本格的な寒さが街を包み込んでいた。


 春夏秋冬――最後の季節が、到来する。










 エピソード5『泡水透士郎と万屋月夜』――〈完〉
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