ゴーストバスター幽野怜Ⅲ〜三つの因縁編〜

蜂峰 文助

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第十六話『黄金の糸と冥王』

【7】

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【兆力無双】の右腕が、大きく膨らんだ。

 その膨らんだ右腕を、思いっきり、銀の壁へと叩き込む。

 凄まじい轟音。
 銀の壁は大きく凹み、ヒビが入る。

 しかし、割れはしない。

「くあーっ!! かったいのう! というか攻撃してこんかい!! この腰抜けぇ!!」

【兆力無双】は煽り。

「……やはり……防戦一方ですか……。しかし、それはむしろこちらのペースです。このまま、耐え忍ぶことにしましょう」

【銀丿軍隊】は冷静に対処する。

(トリオン・ストロンリアーの復活が、あの黄金色の糸の力であると仮定した場合……恐らく、制限時間がある。それも……長くない、十分程度だと予想できます。ならば、その時間が切れるまで、耐え忍べば良い話……簡単なことです)

 次々と銀を繰り出し、【兆力無双】の攻撃を防いでいく。

「はぁ……はぁ……どうやらバレておるな! 余の時間が少ないことに!」

 あの【兆力無双】が息切れを起こしている。それほどの猛攻。

 しかし――――【銀丿軍隊】は倒せない。

(それにしても、霊王を召喚するとは……あの娘、恐ろしい力を扱う……どうやら、この力には『霊王は霊王を殺せない』という世界の理すら通用しない様子……。あっぱれです、糸の娘よ)

 猛攻を続ける【兆力無双】

 巨大化させた両拳による連撃を放ちながら叫ぶ。

「かぁーっ!! 守ってばっかおらんと戦わんかい!! この引きこもりがぁ!!」

「……ご冗談を……防ぐだけで精一杯なのですよ……」

 これもまた、真実だった。

【兆力無双】の怒涛の攻撃が通らない、しかし、【銀丿軍隊】が防戦一方で、攻撃に移れないのも、また事実であった。

 彼の鉄壁とも呼べる防御力があろうと……彼女の猛攻を防ぎるためには、相当な精神と、集中力を要する。

 早い話が――――油断したら、その瞬間潰される。

 この戦いは我慢比べだ。

 そしてそんな戦いこそが、【銀丿軍隊】の真骨頂。

 戦況は五分、

 だが、この状況に持ち込んでいる時点で、【銀丿軍隊】のペースであり。

 この差こそが、『霊王丿十』と『霊王丿九』の差、なのである。


「…………あー……疲れた」

 ここで、疲労困憊の【兆力無双】の連撃が止んだ。

 「ふぅー……休憩じゃ休憩じゃあー」

「………………」

 めちゃくちゃわざとらしく、スキを作っていた。

 攻撃して来いと、言わんばかりに。

「……相変わらずバカですねぇ……【兆力無双《あなた》】は……そんな分かりやすい誘導に引っかかるバカがどこにいますか」

「むむっ……バレたか。鋭いな」

 やはり、そういう作戦だった様子。
 バレバレだった。

「仕方ない」再び、【兆力無双】の連撃がはじまる。

「もう少し……頭を使う戦い方をした方が良いですよ!」

「頭を使う? それは――――」

【兆力無双】の顔が巨大化。
 そしてそのまま、頭突きを繰り出す。

「こういうことか?」

 巨大な銀の壁が崩壊。

 馬鹿な頭突きだが、凄まじい威力だった。

【銀丿軍隊】の顔が引き攣る。

「いや……そういう意味でなく…………」

 バカの光明か、銀の壁の一つが崩壊し、道ができた。

「隙あり」【兆力無双】がニヤリと笑い、その道を全力で突破していく。

 こうなってしまうと、【銀丿軍隊】も攻撃に打って出る他ない。

 銀の槍が、ザクザクと【兆力無双】の身体を貫く。

 だが、止まらない。

 ターゲットの目前まで迫まり、右腕を巨大化、【兆力無双】はその右腕を――――


「……お手柔らかに」

「やなこった」


 思いっきり振るった。

「がっ!!」巨大な右腕が直撃。激しく吹っ飛ばされる【銀丿軍隊】

 二十キロ吹き飛ばされ、地面を転がる。

 敗北はしていない。即座に体勢を立て直し、追撃に備える。

 片や、追撃を行おうとしている【兆力無双】

 しかし――――


「む?」

 ここで、自身の身体が、全く動かないことに気がついた。

【兆力無双】の身体が、淡く光っている。

 サラサラと……まるで、砂のように、身体が少しづつ消え去っていく。


 時間切れだ。


「……ふむ……やはり、倒し切れなかったか……流石じゃなぁ、シルバリア」

「これ程、私にダメージを与えておいて、よくもまぁ……」

【銀丿軍隊】は、割れたメガネを右手で整えつつ、続ける。

「それにしても……あなた程の女性が、よもや人間に敗れていたとは……分からないものですねぇ」

「カカカッ! それは余自信が不思議に思っておるよ。…………ただ……」

「?」

「人間の底力というものは、凄まじいぞ。お主も、気を付けることじゃな」

「まぁ……一つの助言として、受け取っておきますよ」

「助言? いやいや、これは警告じゃぞ?」

「警告?」

「ほれ……後ろを見てみぃ」【兆力無双】が、【銀丿軍隊】の背後を指差す。

 振り返るとそこに――――


 一人の人間がいた。


 一人の、女性がいた。


【兆力無双】は、カカカッ! と笑う。

「余の言葉の意味が分からんかったか? ならばきっと、その者が教えてくれるじゃろうて」

「この女性が……?」と、眉間に皺を寄せる【銀丿軍隊】


「のう?」【兆力無双】が、その女性――――幽野 冥へと話を振った。

「ええ……」冥は頷いた。


 そして、額に、真っ黒な御札を貼り付けた。

 次の瞬間――――冥の身体から、悍ましい程の黒い霊気が溢れ出した。

「教えてあげるわ、【銀丿軍隊】――人間の底力を――――――



 人類の――怒りを!!」


 世界最強のゴーストバスター、幽野 冥。

 その由縁――――

 切り札――


『冥獣』――――『冥王神』が、発動された。
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