怪談潰しの変人〜ゴーストドールが可哀想〜

蜂峰 文助

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対話と友情と嘘

【3】

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 その後僕は、龍子さんから合鍵を受け取り、急いで凛太郎さんの家へ。
 玄関の戸を開けると、相変わらずの汚部屋が広がっていた。
 そんな事はどうでもいい。
 今はそんな感想より、やらなくちゃいけない事がある。

 僕は部屋中を駆け回った。

 様々な箇所を見渡した。

 しかし、見つからない――ゴーストドールが。

 亀美さんの情報から推察するに、これは恐らく――
 即ち――

 ゴーストドールはまた、次の獲物を見つける為に道路へ捨てられた状態となっている訳だ。

「くそっ! 遅かったか!」

 僕はまたしても走り出す。
 次の犠牲者が出る前に――!!

 街中を駆け回り探すも、見つからない。

 範囲が広い! 見つけようにも、何も手掛かりがない。
 どうすれば……どうすれば!!

 早く見つけないと、次の犠牲者が――

 そうだ……。
 なら、何か知っているかもしれない。
 この件には関わって欲しくないけど、仕方がない……。

 僕は再びスマホを取り出し、通話ボタンを押す。
 頼む……出てくれ。

『プルル……ガチャ! はいもしもし』
「早いな」
『え? 誰? 何が?』
「僕だよ、僕。電話番号登録してくれてないの?」
『僕僕詐欺なら結構です』
「それを言うなら『オレオレ詐欺』でしょ? 僕だよ、央 竜生」
『なっ! なななな央くんっ!?』

 何をそんなに驚いているんだろう?

「電話して早々悪いけど、とりあえず今は無駄話している余裕がないんだ。単刀直入に言うよ――怪談サイト管理人である、君の力を借りたいんだ」
『私の……力を?』
「そう、君の力を」
『……と、いう事は――また、怪談案件!?』
「っ!!」

 びっくりしたぁー、急に大声出すもんだから。
 この人、階段の事となると急にキャラが濃くなるんだよなぁ……。

『何々? 今度は何の怪談なの!?』
「…………ゴーストドール」
『ご、ゴーストドール!? きゃあああっ!! すっごぉーい!! 央くんが遂にあのゴーストドールに立ち向かうんだぁー!! すっごぉーい!! うわぁー、私も参戦したいなぁー! あ、ヨダレ出そう、じゅるり……』
「いやいや、そんな風に活き活きワクワクと関わるような怪談じゃないから、やめといて。僕だって、出来る事なら君に電話はしたくなかったんだから」
『そうよね。ごめん……取り乱しちゃって』
「いや、良いよ」
『で、ゴーストドールがどうかしたの? 誰か知り合いが取り憑かれちゃったのかな?』
「ああ……龍子さんのお兄さんがね」
『東さんの? ……確か、中宮木凛太郎さんだっけ?』
「そうだね。で、僕が聞きたいのは、ゴーストドールは呪い終えた後、再び路上に現れるのはどの辺なのか検討はつかないかな……と思ってね」
『え? 呪い終えたって事は……』
「うん、つい先程、救急車で運ばれたよ」
『……そっか……うーん……ごめん。残念ながら、的確な場所は分からないわ』
「だよね。急に電話してごめん」

 それもそうだ。
 幾ら階段マニアとはいえ、それを知っていれば自分で調査に乗り出している筈……無駄骨だった。変に彼女がソワソワしてしまう情報を伝えただけだったな。
 仕方ない、自分の足と勘を信じて、しらみ潰しに探すしか――

『けど……』

 そう、彼女は言った。

『今までのゴーストドールの出現地点から、可能性の高い場所は割り出せるかもしれない』
「本当に!?」
『ええ。東さんのお兄さん――中宮木さんがゴーストドールを拾ったのはどの辺なのか分かる?』
「えーっと……確か、家の傍って言ってたから……中央町、かな」
『なるほど……』

 電話越しに、カタカタとキーボードを打つ音が聞こえる。
 どうやらパソコンを触っているようだ。

『前前前回の人が拾った場所は、北東町……。
 前前回の人が拾った場所は、南西町……。
 前回の人が拾った場所は、隣の外田市下河町……。
 そして今回、中央町……うーん……これだけではデータが足りない……その前は……さらにその前……なるほど……と、なると……』

 凄く考えてくれている。
 後は答えが出るか否か。

『分かった!』

 キーボードを強く叩く音が聞こえた。
 どうやら、推論がまとまった様子だ。

「聞かせて」
『まず、これ迄の出現場所から察するに、ゴーストドールは同じ場所に二度現れないという事』
「なるほど」
『二つ目、一度現れた場所から、まるでかのように、対極の方向にある町へ出現するという事』
「逃げる?」
『そう見えるって話。……三つ目は、過去に追える範囲内での出現傾向から見るに、一度出現した町に隣接した町には殆ど出現していない事』
「と、なると……確かに、逃げてるようにも見える」
『でしょ? そして最後は移動距離。これらを合算する事で、次にゴーストドールが現れる可能性が高い町は――外田市上河町。恐らくそこに、ゴーストドールは出現していると思われるわ』
「ありがとう! 行ってみる!」


 僕は再び走り出した。

『ただし、これは確実な情報ではないから。あくまで、これ迄のデータから推測される結論に過ぎない。外れていたら、ごめんなさい』

 謝る事なんてないよ。
 目星を付けてくれただけでも、ありがたい。
 闇雲に走り回るよりも、やる気が出る。

『これもまた推測なのだけれど……噂って言うのは、誇大化していくものなんです。その噂を元にして、私はサイトに『ゴーストドールは命の危険のある怪談』的な事を記載したけれど……それも真実とは限らない』

 と、言うと……?

『要するに、ゴーストドールに呪われた人間が死ぬ可能性は百パーセントではないって事。中宮木さんも、後日、何のこともなかったかのように復調する可能性だってある』

 でも……それはあくまで、可能性の話でしょ?
 悪い可能性を重視するのは、リスク対策として最も大切な事だよ。

『知っているでしょうけど、改めて聞くわね? ゴーストドールは危険な怪談よ? それでも動くの?』

 もちろんだ。
 こんな恐ろしい怪談、放っておける訳がない。絶対に止める。
 それに決めたんだ――悲しませないって……。

 凛太郎さんを、必ず助けるって。

『そう……またあなたは、つもりなのね……分かった。もう止めない、だから――頑張ってね』


 ありがとう。

 怪談マニアさん……あなたの推理はどうやら、ドンピシャだったみたいです。

「はぁ……はぁ……見つけた……」

 息が切れる、足がプルプルする。
 アレだけ長い距離を全力疾走したのだから当然だ。

 だけど……そのかいはあった。

「ふぅ……間に合ったようで、何よりだよ……」

 これで……これ以上、この呪いの犠牲者を出さなくて済みそうだ。
 僕は道端に落ちている日本人形に手を伸ばす。

「誰にも拾われないのは、寂しいよね。だからさ、ウチに来なよ――ゴーストドールさん」
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