13 / 37
対話と友情と嘘
【4】
しおりを挟む龍子さんに合い鍵を借りる際、彼女とこんな約束をしていた。
「もし、凛太郎さんが目覚めた時はすぐに僕へ連絡して欲しい。必ず。僕はその連絡によって、行動を変えるつもりでいるから」
「う、うん。分かった! 連絡する!」
そんな訳で、凛太郎さんが無事目覚めた際には、必ず龍子さんから連絡がある筈だ。
今はまだ、その連絡はない。
従って、凛太郎さんはまだ、目覚めていない。
恐らく今頃は、病院のベッドの上で横になっている事だろう。
さて……ここで焦点となるのは、僕の手元にあるこの人形――ゴーストドールの呪いが、噂通り人を死に至らしめる程の力を持っているのかどうか? だ。
もしそれが本当なら、残念ながら即座に除霊を行わざるを得ない。
時間がないからだ。
しかし、怪談マニアさんが言っていたように、それが伝言ゲームの如くねじ曲がった情報……つまり――人を殺さない呪いであった場合、ほんの少し猶予を与えてもらいたい。
何故なら、どちらかというと僕は、平和的な解決が好みだからである。
先ずはそれを知る必要があった。
僕は拾ったゴーストドールを抱え、急いで自宅へと走り出す。
日本人形を抱えた男子高校生が真剣な表情で猛ダッシュをしているのだ、すれ違う人達には『え? 何この人……関わらないのが吉ね……』みたいな表情を浮かべられ続けた訳だけど……。今はそんな事気にしない。
そう、気になんて……うぅ……。
そんなこんなで、無事我が家へと帰宅。
そしてこの瞬間――
ゴーストドールが、僕に取り憑いた。
道端で拾った際には何も感じなかったので、『家に持ち帰る事』が呪いの発動条件であると気付くのは容易だった。
個人に取り憑く……というよりは、家に取り憑く、という感じなのだろうか?
持ち主と、その同居家族に影響を及ぼす可能性が、ここに来て浮上した。
本当に厄介な怪談である。
因みに僕は、アパートで一人暮らしをしているので同居家族なんていないから、その辺の心配は無用だ。
自宅に辿り着いた瞬間、ゴーストドールから禍々しい怨念のようなものを感じるようになった。
心なしか、身体が重くなったような気がする。
気の所為なのか、はたまた事実なのか、それはまだ分からない。
けれど、凛太郎さんがあんな風になった以上、今は気の所為であっても、後々現実となって襲いかかって来る事に間違いはないだろう。
てゆーかあの人……こんな禍々しい空気感を当てられて、何で三週間もの間、ゴーストドールの異常性に気付かなかったのだろうか?
鈍感というか、危険関知能力に欠けているというか……何にせよ、変人だな。
さて、そろそろ動かないとな。
龍子さんやハーレム三人衆の面々も今頃、凛太郎さんの傍で心配そうにしている筈だろうから……。
急がなきゃ。
「……少し、面接みたいな形になるけど、ここでいいよね」
僕は、リビングにある机の上へゴーストドールを配置。
そして、そのゴーストドールと向かい合う形で、ソファーに腰を下ろした。
先ずは情報収集だ。
今の所、噂でしかこの呪いについての情報を得ていない。
だから確かめよう。
その手段は簡単だ。
直接聞いて、確かめればいい。
誰に? 決まっている――
ゴーストドール――本人に、だ。
先ずは深呼吸だ。
「すぅー…………はぁー……すぅー……はぁー……」
しっかりと、呼吸を整えてから……。
『聞こえるかい? ゴーストドールさん』
と、話し掛けてみる。
すると、少し驚いた様な声色で、返答があった。
『え……何で? 何で私と――会話が出来るの?』
そう返答があった。
ゴーストドールさんからの、返答が。
僕は素直に答える。
『ちょっとした理由から、幼い頃に身に付いてしまった力でね。僕は君みたいな存在と話が出来るんだよ。なかなか面白いでしょ?』
『面白い? ……こんなお化けと話が出来て?』
『ああ……面白くて、滑稽で、そして異常過ぎて……笑えるよ』
本当に……笑い話だ。
『ゴーストドールさん……僕は大至急、君に聞きたい事があるんだ』
『聞きたい事?』
『ああ……だけど君としては、自分の情報だけを話すのは納得が出来ないだろう? 霊の抱えている過去や思考は、デリケートなものが多いからね』
『でりけえと? でりけえとって、何?』
…………デリケート、という言葉を知らないのか。
という事は……この日本人形に宿っている霊は、幼い子供なのだろうか?
まだ英語も習っていないような……それくらいの。
『繊細、って意味だよ』
『へぇー、そうなんだ。ばりけいど……ばりけいどね。覚えたよ』
『デリケートね……』
デリケートとバリケードでは意味が全く違う。
語感は確かに似ているけれども……。
とりあえず、話を進めることにしよう。
『だからさ、先ずは、僕の事から話すよ』
『え?』
『君に僕の事を信用してもらう為に、僕がこんな風に霊と喋れるようになった理由や経緯、それらを君に話そう。だからその代わりと言っちゃなんだけど、教えてくれないか? 君が――
何故人間を呪うのか、その理由を』
8
あなたにおすすめの小説
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2026/1/16:『せきゆすとーぶ』の章を追加。2026/1/23の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/15:『しばふ』の章を追加。2026/1/22の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/14:『でんしれんじ』の章を追加。2026/1/21の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/13:『こえ』の章を追加。2026/1/20の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/12:『あけてはいけない』の章を追加。2026/1/19の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/11:『みきさー』の章を追加。2026/1/18の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/10:『つかまれる』の章を追加。2026/1/17の朝8時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
霊和怪異譚 野花と野薔薇
野花マリオ
ホラー
その“語り”が始まったとき、世界に異変が芽吹く。
静かな町、ふとした日常、どこにでもあるはずの風景に咲きはじめる、奇妙な花々――。
『霊和怪異譚 野花と野薔薇』は、不思議な力を持つ語り部・八木楓と鐘技友紀以下彼女達が語る怪異を描く、短編連作形式の怪異譚シリーズ。
一話ごとに異なる舞台、異なる登場人物、異なる恐怖。それでも、語りが始まるたび、必ず“何か”が咲く――。
語られる怪談はただの物語ではない。
それを「聞いた者」に忍び寄る異変、染みわたる不安。
やがて読者自身の身にも、“あの花”が咲くかもしれない。
日常にひっそりと紛れ込む、静かで妖しいホラー。
あなたも一席、語りを聞いてみませんか?
完結いたしました。
タイトル変更しました。
旧 彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせる
※この物語はフィクションです。実在する人物、企業、団体、名称などは一切関係ありません。
エブリスタにも公開してますがアルファポリス の方がボリュームあります。
表紙イラストは生成AI
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
怪奇蒐集帳(短編集)
naomikoryo
ホラー
この世には、知ってはいけない話がある。
怪談、都市伝説、語り継がれる呪い——
どれもがただの作り話かもしれない。
だが、それでも時々、**「本物」**が紛れ込むことがある。
本書は、そんな“見つけてしまった”怪異を集めた一冊である。
最後のページを閉じるとき、あなたは“何か”に気づくことになるだろう——。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる