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本編
57:ユヌの大通りツアー
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結論から言うと、虫歯は一応あるらしい。余程のことが無いとならないらしいが。システム的にはバッドステータス《病気》の軽度なものにあたるようで、グレードの低い治癒ポーションか《回復魔法》の〈キュア〉で簡単に治せるそうだ。
それはさておき。
「この後はどうしようか?」
「宿まで送るからお前は宿で準備して待ってろ。俺は他の消耗品を調達してくる」
「……僕も行ってみたいんだが」
「あ? 店が大通りにしか無いからダメだ」
「何がダメなんだ?」
そもそも僕みたいな異人は初期侵入エリアからいって、本来大通りのみでの活動が主流なのだし何の問題があるんだろうか。それに、これからユヌを出ることだし、行ったことの無い場所に行ってみたい。と、引きたく無い一心でバラムの目を見る。すると。
「………………いいだろう。ただし」
「えっ」
「その間こうしてるなら、な」
そう言って、バラムに手を取られる。……ここに来るまでのように手を繋いでいるなら、ということらしい。ううん、気恥ずかしいが、それでユヌを回れるなら良いだろうか?
プレイヤーも……今はほとんどドゥトワに行っているという話だったし、そんなに……いないと思っておこう。
「分かった」
そして、バラムに手を引かれてどういうわけか久しぶりの大通りへと繰り出していった。
*
プレイヤーが少なくなっているというのは本当のようで、大通りには人が疎らだった。プレイヤーも見覚えのある初期装備の者がほとんどだ。
「異人でごった返した大通りしか見たこと無いから、何か新鮮だな」
「前はこれよりも閑散としてるのが普通だったぞ」
「それは、そうだろうな」
大きさの割には住民の数が少ないように思えるこの町にある日突然何万人もの人が増えたんだ。……よく考えたら住民はこれらの事象についてどう思っているんだろうか。
折を見て聞いてみよう、などと考えている内に、バラムの足が止まる。
「ここでポーションを買う」
「ほぅ」
看板とミニマップによると『雑貨屋』とだけ書いてあった。店内に入ると、カウンターがあるだけの小ぢんまりとした内装だった。商品などは陳列されていない。カウンターには店主と思われるお婆さんが何をするでもなく静かに佇んでいた。
「いつものと治癒ポーションをいくつか」
「あいよ」
お婆さんがチラッとこちらを見たので、僅かな間目が合う、が、すぐに奥へ引っ込んでいってしまう。
「ほらよ」
「……おい、多いぞ」
「感謝の気持ちだよ。別にアンタにじゃないよ」
「そうかよ。後で返せっつっても返さねぇぞ」
「ピーチクパーチクうるさいねぇ、用が済んだんならさっさと行きな」
バラムもチラッとこちらを見る。……何だろうか。あっさり買い物が済んでしまい、店を出る。
「もっと商品が店頭に並んでると思ってたが、そんなことも無いんだな」
「市場じゃあるまいし。盗んでくれって言ってるようなもんだろ」
「……なるほど」
何ともリアルな理由だな。逆にウィンドウショッピング的なことをしたければ、市場に行けということか。
そうこうしている内に次の目的地『武具屋』へ到着した。ほとんどのプレイヤーはここで武器や防具を調達するようだ。
武具屋はそれなりに武器や防具が立てかけてあって、ファンタジーものの“武具屋”のイメージ通りという感じだ。流石に店内は広めになっていて、初期装備のプレイヤーが何人かいても余裕がある。……少しチラチラと視線を感じるな……と思っていると。
「っ! 兄貴!?」
急にした大きな声に驚いてそちらを見ると、全身を質の良さそうな革鎧で固めている只人族の……プレイヤーがこちらを見ていた。初期装備が一つも無いことから、それなりの日数プレイしているであろうプレイヤーだと察せられた。
そのプレイヤーはバラムを見て、僕を見て、繋がれた手を見ると「やはり……」と呟いて目を閉じてしまった。まぁ、なんとも言えない場面だろうが、それならそれで上手いことスルーしてもらいたい……。
「兄貴……決してデートのお邪魔をしようってんじゃ無いんですが、少しだけお話が……」
「あ?」
「デ……」
眉間にシワを寄せたバラムとプレイヤーがしばらく睨み合うかのように見つめ合って、沈黙が降りる。しばらくすると、バラムが顎で店の隅を指して、2人でそちらへ移動して何やら話込んでしまった。
そうかからず話がまとまったのか、プレイヤーがこちらへとやって来て────。
「トウノ君! いや、トウノさん! 俺とフレンドになってください!」
僕の足元に流れるような動作で土下座をしてそう叫んだ。
〈『シャケ茶漬け』さんからフレンド申請が届きました〉
惚れ惚れとするような、何の躊躇いの無い土下座にしばし呆然としてしまったが、我に返ると周りの視線が痛い。とりあえず、土下座はやめてもらわねば。
「ああ、別にかまわないから、とりあえず立ってくれ」
「兄貴との交流の邪魔もしないし、むしろ邪魔する奴を排除するから……え、いいの?」
僕の了承を半ば聞いていなかったのか、最後らへんでようやくポカンとこちらを見る。……少し不穏な言葉が聞こえた気がするが……まぁ、いいか。
「ああ。だからその……早く立って欲しい」
〈フレンド申請を承認しました。『シャケ茶漬け』さんとフレンドになりました〉
視線操作でさくっと申請を承認する。
「お、わ、ありがとう。自分で言うのもなんだけど、突然フレンド申請してくる奴をこんなあっさり承認していいのか?」
「? 何でだ?」
やっと土下座から立ち上がったプレイヤー……シャケ茶漬けが言わんとするところが分からなくて首を傾げる。
「だってトウノ君、ワールドクエストで総合貢献度1位だったし、他にも色々発見して注目を集めてるだろ? 警戒とかするんじゃないか?」
「正直、他のプレイヤーとあまり顔を合わさないからほとんど実感は無いんだが……まぁ、迷惑だったらブロックなり通報なりすればいいし……」
「あー……それもそうか!」
シャケ茶漬けは納得という風に頷く。
「それにバ……大剣使いがある程度認めてそうだから、問題無いかな、と」
防衛戦の配信を見てもプレイヤーとあまり関わって無さそうだったバラムが、シャケ茶漬けのことは個人として認識してそうだったし。何故「兄貴」と呼んでいるのかは分からないが。
「……すぅーっ……ありがてぇ。二重の意味で」
「二重?」
「いや、こっちの話だ」
「おい、もう用は済んだか」
「うっす! 無事フレンドになってもらいました!」
バラムが幾分低い声でシャケ茶漬けに声をかけると、背筋をピンと真っ直ぐにして応える。なんか……2人を見てると昔の不良ドラマとか漫画とか、そういうのを思い出すな……。
「そうか……少しの間こいつのこと見てろ」
「うっす! いつまででも!」
「あ゛?」
「こっ、言葉の綾っす!」
冷や汗を流すシャケ茶漬けに舌打ちをすると、バラムはカウンターへ行って店主とやり取りを始めた。
「そういえば兄貴とトウノ君は変わったところをデートコースにしてるんだな?」
「デ……じゃなくて、ドゥトワに行く準備をしてるだけだ」
「トウノ君まだドゥトワ行ってなかったのか……」
心底驚いたという顔だった。ということは、ある程度プレイしている者達はもうほとんどドゥトワに進出しているのだろうか。
「ドゥトワどころかこの武具屋に入ったのも初めてだしな……あと呼び捨てで良いぞ?」
「マジか。そんなんでどうやってプレイ出来るんだって思うが……トウノ君だしなぁ……。あ、呼び捨ては兄貴に殺されそうだから勘弁してくれ」
「そんなことは無いと思うが、まぁ好きに呼んでくれ。ところで、何で大剣使いを『兄貴』と呼んでいるんだ?」
「俺が思い浮べる『格好良い』詰め合わせハッピーセットで撃ち抜かれたからだな。あっ! 憧れ的な意味でな!」
急に話すスピードが上がった気がする。でも、そうか、シャケ茶漬けはバラムに憧れてるのか……。
「じゃあ、ドゥトワまでパーティを組むか?」
見た目的にシャケ茶漬けは戦闘職だろうし、口振り的にドゥトワまで行ける実力があるのだろうし、バラムの負担が軽くなるかもしれないと口にした瞬間────。
────ビシッ
「?」
何故か空気が急速に冷えた、気がする。
「ハ、ハハハ、冗談はよすんだ、トウノ君。兄貴に無限リスキルされちまうよ……それにそんな野暮は俺もしたくないしな!」
「そうか?」
こうして武具屋での用を済ませたバラムが戻って来たところで、3人目のフレンド、シャケ茶漬けと別れた。
それはさておき。
「この後はどうしようか?」
「宿まで送るからお前は宿で準備して待ってろ。俺は他の消耗品を調達してくる」
「……僕も行ってみたいんだが」
「あ? 店が大通りにしか無いからダメだ」
「何がダメなんだ?」
そもそも僕みたいな異人は初期侵入エリアからいって、本来大通りのみでの活動が主流なのだし何の問題があるんだろうか。それに、これからユヌを出ることだし、行ったことの無い場所に行ってみたい。と、引きたく無い一心でバラムの目を見る。すると。
「………………いいだろう。ただし」
「えっ」
「その間こうしてるなら、な」
そう言って、バラムに手を取られる。……ここに来るまでのように手を繋いでいるなら、ということらしい。ううん、気恥ずかしいが、それでユヌを回れるなら良いだろうか?
プレイヤーも……今はほとんどドゥトワに行っているという話だったし、そんなに……いないと思っておこう。
「分かった」
そして、バラムに手を引かれてどういうわけか久しぶりの大通りへと繰り出していった。
*
プレイヤーが少なくなっているというのは本当のようで、大通りには人が疎らだった。プレイヤーも見覚えのある初期装備の者がほとんどだ。
「異人でごった返した大通りしか見たこと無いから、何か新鮮だな」
「前はこれよりも閑散としてるのが普通だったぞ」
「それは、そうだろうな」
大きさの割には住民の数が少ないように思えるこの町にある日突然何万人もの人が増えたんだ。……よく考えたら住民はこれらの事象についてどう思っているんだろうか。
折を見て聞いてみよう、などと考えている内に、バラムの足が止まる。
「ここでポーションを買う」
「ほぅ」
看板とミニマップによると『雑貨屋』とだけ書いてあった。店内に入ると、カウンターがあるだけの小ぢんまりとした内装だった。商品などは陳列されていない。カウンターには店主と思われるお婆さんが何をするでもなく静かに佇んでいた。
「いつものと治癒ポーションをいくつか」
「あいよ」
お婆さんがチラッとこちらを見たので、僅かな間目が合う、が、すぐに奥へ引っ込んでいってしまう。
「ほらよ」
「……おい、多いぞ」
「感謝の気持ちだよ。別にアンタにじゃないよ」
「そうかよ。後で返せっつっても返さねぇぞ」
「ピーチクパーチクうるさいねぇ、用が済んだんならさっさと行きな」
バラムもチラッとこちらを見る。……何だろうか。あっさり買い物が済んでしまい、店を出る。
「もっと商品が店頭に並んでると思ってたが、そんなことも無いんだな」
「市場じゃあるまいし。盗んでくれって言ってるようなもんだろ」
「……なるほど」
何ともリアルな理由だな。逆にウィンドウショッピング的なことをしたければ、市場に行けということか。
そうこうしている内に次の目的地『武具屋』へ到着した。ほとんどのプレイヤーはここで武器や防具を調達するようだ。
武具屋はそれなりに武器や防具が立てかけてあって、ファンタジーものの“武具屋”のイメージ通りという感じだ。流石に店内は広めになっていて、初期装備のプレイヤーが何人かいても余裕がある。……少しチラチラと視線を感じるな……と思っていると。
「っ! 兄貴!?」
急にした大きな声に驚いてそちらを見ると、全身を質の良さそうな革鎧で固めている只人族の……プレイヤーがこちらを見ていた。初期装備が一つも無いことから、それなりの日数プレイしているであろうプレイヤーだと察せられた。
そのプレイヤーはバラムを見て、僕を見て、繋がれた手を見ると「やはり……」と呟いて目を閉じてしまった。まぁ、なんとも言えない場面だろうが、それならそれで上手いことスルーしてもらいたい……。
「兄貴……決してデートのお邪魔をしようってんじゃ無いんですが、少しだけお話が……」
「あ?」
「デ……」
眉間にシワを寄せたバラムとプレイヤーがしばらく睨み合うかのように見つめ合って、沈黙が降りる。しばらくすると、バラムが顎で店の隅を指して、2人でそちらへ移動して何やら話込んでしまった。
そうかからず話がまとまったのか、プレイヤーがこちらへとやって来て────。
「トウノ君! いや、トウノさん! 俺とフレンドになってください!」
僕の足元に流れるような動作で土下座をしてそう叫んだ。
〈『シャケ茶漬け』さんからフレンド申請が届きました〉
惚れ惚れとするような、何の躊躇いの無い土下座にしばし呆然としてしまったが、我に返ると周りの視線が痛い。とりあえず、土下座はやめてもらわねば。
「ああ、別にかまわないから、とりあえず立ってくれ」
「兄貴との交流の邪魔もしないし、むしろ邪魔する奴を排除するから……え、いいの?」
僕の了承を半ば聞いていなかったのか、最後らへんでようやくポカンとこちらを見る。……少し不穏な言葉が聞こえた気がするが……まぁ、いいか。
「ああ。だからその……早く立って欲しい」
〈フレンド申請を承認しました。『シャケ茶漬け』さんとフレンドになりました〉
視線操作でさくっと申請を承認する。
「お、わ、ありがとう。自分で言うのもなんだけど、突然フレンド申請してくる奴をこんなあっさり承認していいのか?」
「? 何でだ?」
やっと土下座から立ち上がったプレイヤー……シャケ茶漬けが言わんとするところが分からなくて首を傾げる。
「だってトウノ君、ワールドクエストで総合貢献度1位だったし、他にも色々発見して注目を集めてるだろ? 警戒とかするんじゃないか?」
「正直、他のプレイヤーとあまり顔を合わさないからほとんど実感は無いんだが……まぁ、迷惑だったらブロックなり通報なりすればいいし……」
「あー……それもそうか!」
シャケ茶漬けは納得という風に頷く。
「それにバ……大剣使いがある程度認めてそうだから、問題無いかな、と」
防衛戦の配信を見てもプレイヤーとあまり関わって無さそうだったバラムが、シャケ茶漬けのことは個人として認識してそうだったし。何故「兄貴」と呼んでいるのかは分からないが。
「……すぅーっ……ありがてぇ。二重の意味で」
「二重?」
「いや、こっちの話だ」
「おい、もう用は済んだか」
「うっす! 無事フレンドになってもらいました!」
バラムが幾分低い声でシャケ茶漬けに声をかけると、背筋をピンと真っ直ぐにして応える。なんか……2人を見てると昔の不良ドラマとか漫画とか、そういうのを思い出すな……。
「そうか……少しの間こいつのこと見てろ」
「うっす! いつまででも!」
「あ゛?」
「こっ、言葉の綾っす!」
冷や汗を流すシャケ茶漬けに舌打ちをすると、バラムはカウンターへ行って店主とやり取りを始めた。
「そういえば兄貴とトウノ君は変わったところをデートコースにしてるんだな?」
「デ……じゃなくて、ドゥトワに行く準備をしてるだけだ」
「トウノ君まだドゥトワ行ってなかったのか……」
心底驚いたという顔だった。ということは、ある程度プレイしている者達はもうほとんどドゥトワに進出しているのだろうか。
「ドゥトワどころかこの武具屋に入ったのも初めてだしな……あと呼び捨てで良いぞ?」
「マジか。そんなんでどうやってプレイ出来るんだって思うが……トウノ君だしなぁ……。あ、呼び捨ては兄貴に殺されそうだから勘弁してくれ」
「そんなことは無いと思うが、まぁ好きに呼んでくれ。ところで、何で大剣使いを『兄貴』と呼んでいるんだ?」
「俺が思い浮べる『格好良い』詰め合わせハッピーセットで撃ち抜かれたからだな。あっ! 憧れ的な意味でな!」
急に話すスピードが上がった気がする。でも、そうか、シャケ茶漬けはバラムに憧れてるのか……。
「じゃあ、ドゥトワまでパーティを組むか?」
見た目的にシャケ茶漬けは戦闘職だろうし、口振り的にドゥトワまで行ける実力があるのだろうし、バラムの負担が軽くなるかもしれないと口にした瞬間────。
────ビシッ
「?」
何故か空気が急速に冷えた、気がする。
「ハ、ハハハ、冗談はよすんだ、トウノ君。兄貴に無限リスキルされちまうよ……それにそんな野暮は俺もしたくないしな!」
「そうか?」
こうして武具屋での用を済ませたバラムが戻って来たところで、3人目のフレンド、シャケ茶漬けと別れた。
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