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本編
58:そういえば《解析》したことが無かった
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「調達は一通り終わった。……他に行きたい所はあんのか?」
「最後に東門の方の広場が見たいんだが……」
「面白みのある物なんて無いぞ」
「屋台があると聞いてるし、転移が出来る像も直接見てみたい」
今を逃したら次に何時に見に行けるか分からないしな。
「じゃあ……軽く食ってくか。行くぞ」
「……ああ」
そう言うと再び僕の手を取って歩き出してしまう。「この大通りを真っ直ぐ行くだけだから、手を引く必要は無い」とは、なんとなく言えなかった。
大通りを東方向へ進むと、すぐに広場が見えてきた。とくに目立つものは無く、門から半円状にスペースが空いているだけだった。屋台も2つほどしかない。
「本当に屋台以外何も無いな」
「だから言ったろ」
「アークトゥリアの像は……」
「あれだ」
バラムの指す方を見ると、広場と通りのちょうど境目あたりに大きめの石があった。設置されている場所も道祖神みたいだな……と思いながら近づくと、石に人型の像が彫られているのが分かる。
配信で見た通りの見た目だ。美形の神なのかどうか判断がつかないほどぼんやりとした像になっているが。
確か、この像に触れるんだったな……と手を伸ばすと────。
バチッ
静電気が走るような感覚と共に弾かれて、触れることが出来なかった。
〈《夜狗の目印》《鉄の匂い》《錆の匂い》《灰の残り香》がついている為、アークトゥリア像の機能を使用出来ません。使用するにはこれらの特殊効果を解除してください〉
「……はい?」
「っおい、大丈夫か?」
「……まぁ、大丈夫だが……」
アークトゥリアの像の機能が使えないのは分かった。理由も通知で教えてくれてるし、使うには指定の……おそらく特殊効果の解除が必要なのも分かった。
…………《灰の残り香》以外身に覚えが無いんだが。内容的に出所は想像がつくけども。しかも順番的にゾーイの特殊効果よりも前からついていたようだし。
何故今まで気づかなかったのかと考えれば、ステータス画面には「特殊効果」の項目が無いことに思い至る。もしかしたら特殊効果は《解析》をしないと分からない項目だったのかもしれない。
……そういえば、僕自身を《解析》したことは無かったか。
ちょっと確認するのが怖いが、宿に戻ったら自分を《解析》してみよう……と決めたところで、肩を掴まれて引き寄せられた。
「おい、本当に大丈夫か」
「あ、ああ。色々確認していた。どうやら僕についている特殊効果を解除しない限り、アークトゥリア像の機能が使えないようだ」
「ふん……やはりな」
「やはり?」
そう言うと、バラムもアークトゥリア像に手を伸ばす。
バチッ
バラムも弾かれるようだ。
まぁ、お断りされた特殊効果のほとんどはバラム由来と思われるものだったからな……それをつけた本人がお断りされないわけは無いということか。
「外にある『欠け月の写し』とやらは使えると思うがな」
「なるほど」
バラムは属性?的に光神と大分そりが合わないようなので、アークトゥリア像が使えなくて、欠け月の写しが使えるのは納得感しかない。
そしてそれはバラムとゾーイの特殊効果を持っている僕も、か。
……うぅん、この像の《解析》は今はやめておいた方が良いかもな……まぁ、機能は分かってるんだし、今すぐする必要も無いだろう。
「……この像、使いたい、か?」
「うん? ……いや別に……そこまで移動効率は重視してないし、欠け月の写しが使えるなら近くの欠け月の写しに転移して目的の町に入れば良いんじゃないか?」
効率的なプレイなんて考えてたらこんなことになってないし、〈追憶の戦い〉なんてお断りされてなくても使わなかっただろうし。使えなくて困ることは……意外と無い。
「……そうか。屋台で何か買って食うか」
「そうだな」
アークトゥリア像の機能が僕達には使えないことが分かったので、ここで確認出来ることは大体済んだだろう。
僕達は屋台でラビット肉の串焼きを買って食べながら宿へと戻った。
買い食いするのも随分久しぶり……というか1、2回しかしたことないな……。
*
宿に戻ると、ちょうどローザと旦那さんが揃っていたので、準備が出来次第ドゥトワに行くことを伝えた。
「そうかい……じゃあ、しばらく会えなくなるんだねぇ」
しんみりとした雰囲気でローザが言う。その顔を見て、僕もユヌを離れるということはこの宿やローザ達ともしばらく会えなくなってしまうのだという実感が湧いてきてしまった。
「やだよぉ、今生の別れじゃあるまいし! また弁当を持たせてあげるから、そんな顔しないでおくれな」
そう言うとローザに力強く背中を叩かれる。いつか関所であった時のような痛みは感じず、沈んだ気分が吹き飛ぶような衝撃だけを感じた。
「あ、ああ。また戻って来たらここに泊まってもいいだろうか」
「何言ってんだい! 良いに決まってるよぉ」
ローザはそう言うと、ニッと満面の笑みを浮かべた。
「……ふ、ここのご飯が恋しすぎて、すぐに戻りたくなってしまうかもしれないな」
「おやまぁ! 上手いこと言うようになったじゃないか!」
少し冗談めかしたが、割と本心だ。偶然でしか無かったが、10年ぶり……と言っていい食事がここのご飯で本当に良かったと思えるくらいには気に入っている。
「と言っても、起きていられる時間を調節する為に早めに、いつもより長く寝ようと思うんだが」
と、同行するバラムにも伝えるつもりで横目で見る。
「どのくらいだ」
「3日くらいかな」
「……そうか。3日後、お前が起きたらすぐ出発でいいんだな?」
「ああ」
「すぐったってうちで食べてくんだろう?」
「もちろん」
しばらく食べれないのなら、食べておかない手はない。
「弁当も準備しとくからねぇ。アンタ! 腕によりをかけるよぉ!」
「……ああ」
その後、串焼きを軽く食べた程度で満腹度にはまだ余裕があった為、食堂で食事をとってから、2階へと上がった。
僕が自分の部屋に入ると……扉の前でバラムがすごい見てくる。…………ああ。
「どうぞ、入ってくれ。……もしかして、部屋主の許可が無いと入れないのか」
「ああ」
そう言うと、バラムが部屋へと入ってくる。
鍵などとくに無くても「そういうもの」かと思っていたが、案外ファンタジーなセキュリティがしっかりしているのかもしれない。
「何だこれ」
バラムが机に置かれていた木彫りの像を手に取る。
「バラム達が遺跡で戦った、狂った魔物を模った物らしい。……あの魔物の返礼だとか」
「ああ?」
手にした像を強く握ったのか「ミシッ」とした音がした。
「置物以外の特別な用途も効果も無さそうだから問題無いだろう…………多分」
「多分なんじゃねぇか」
だって、《解析》結果の隠蔽があまりに多かったし……。
「はぁ、ま、今はいいだろう。それより……」
「わ……」
木彫りの置物を元の位置へ置き、僕の腕を掴んで引いていくと、ベッドへ座った己の膝に僕を座らせた。
「3日会えなくなるんだ。防衛戦で借りも増えたし、しっかり礼をしておかないとな?」
「……それ、まだ言う、むっ」
流石にキスを正当化する為の詭弁なんじゃないかと思い当たってきてるのだが、僕相手にそれをする意味が分からないのと、何故か抵抗する気が湧かないので受け入れてしまう。
昨夜のような熱が渦巻く感じは無かったが、じわじわ熱を滞留させるようにゆっくりと長い口づけをした。
その後、ある程度満足したらしいバラムに頼まれて追加で作成した飴玉を渡し、色々確認したりしてログアウトした。
*
ログアウトをして少し休憩した後、アルスト公式連携アプリから先程“トウノ”を《解析》した結果のスクショを表示させる。
名前:トウノ
年齢:18
性別:男
種族:只人族
職業:揺籃編纂士 職業ギルドランクC
称号:【本の虫】【森碧】 控え【揺籃】【ユヌの救世主】
技能:《解析》《編纂》《古ルートムンド語》《歴史学》《暗視》《感知》《騎乗》《演奏》
装備:揺籃の編纂士装束シリーズ、揺籃の鍵、革紐付きの呼子笛、盟友の証《バラム》
状態:正常
特殊効果:《夜狗の目印》《鉄の匂い》《錆の匂い》《灰の残り香》
《夜狗の目印》
【夜狗の血族】バラムの付けた目印。
己の縄張りを示す証。
特殊効果:縄張りを侵す者への《夜狗の威圧》自動発動
《鉄の匂い》
【鉄銹】バラムの宿す力の匂い。
鉄を厭う者達は嫌悪することだろう。
その者達には汚れである故に。
特殊効果:特定の住民の好感度変化(中)、転生選択肢分岐
《錆の匂い》
【鉄銹】バラムにこびりついた妄執の匂い。
錆を厭う者達は嫌悪することだろう。
その者達には汚れである故に。
特殊効果:特定の住民の好感度変化(中)、転生選択肢分岐
……内容やいつからどうやって付与されていたのかはもうこの際置いておくとして……『転生選択肢分岐』って何だ?
「最後に東門の方の広場が見たいんだが……」
「面白みのある物なんて無いぞ」
「屋台があると聞いてるし、転移が出来る像も直接見てみたい」
今を逃したら次に何時に見に行けるか分からないしな。
「じゃあ……軽く食ってくか。行くぞ」
「……ああ」
そう言うと再び僕の手を取って歩き出してしまう。「この大通りを真っ直ぐ行くだけだから、手を引く必要は無い」とは、なんとなく言えなかった。
大通りを東方向へ進むと、すぐに広場が見えてきた。とくに目立つものは無く、門から半円状にスペースが空いているだけだった。屋台も2つほどしかない。
「本当に屋台以外何も無いな」
「だから言ったろ」
「アークトゥリアの像は……」
「あれだ」
バラムの指す方を見ると、広場と通りのちょうど境目あたりに大きめの石があった。設置されている場所も道祖神みたいだな……と思いながら近づくと、石に人型の像が彫られているのが分かる。
配信で見た通りの見た目だ。美形の神なのかどうか判断がつかないほどぼんやりとした像になっているが。
確か、この像に触れるんだったな……と手を伸ばすと────。
バチッ
静電気が走るような感覚と共に弾かれて、触れることが出来なかった。
〈《夜狗の目印》《鉄の匂い》《錆の匂い》《灰の残り香》がついている為、アークトゥリア像の機能を使用出来ません。使用するにはこれらの特殊効果を解除してください〉
「……はい?」
「っおい、大丈夫か?」
「……まぁ、大丈夫だが……」
アークトゥリアの像の機能が使えないのは分かった。理由も通知で教えてくれてるし、使うには指定の……おそらく特殊効果の解除が必要なのも分かった。
…………《灰の残り香》以外身に覚えが無いんだが。内容的に出所は想像がつくけども。しかも順番的にゾーイの特殊効果よりも前からついていたようだし。
何故今まで気づかなかったのかと考えれば、ステータス画面には「特殊効果」の項目が無いことに思い至る。もしかしたら特殊効果は《解析》をしないと分からない項目だったのかもしれない。
……そういえば、僕自身を《解析》したことは無かったか。
ちょっと確認するのが怖いが、宿に戻ったら自分を《解析》してみよう……と決めたところで、肩を掴まれて引き寄せられた。
「おい、本当に大丈夫か」
「あ、ああ。色々確認していた。どうやら僕についている特殊効果を解除しない限り、アークトゥリア像の機能が使えないようだ」
「ふん……やはりな」
「やはり?」
そう言うと、バラムもアークトゥリア像に手を伸ばす。
バチッ
バラムも弾かれるようだ。
まぁ、お断りされた特殊効果のほとんどはバラム由来と思われるものだったからな……それをつけた本人がお断りされないわけは無いということか。
「外にある『欠け月の写し』とやらは使えると思うがな」
「なるほど」
バラムは属性?的に光神と大分そりが合わないようなので、アークトゥリア像が使えなくて、欠け月の写しが使えるのは納得感しかない。
そしてそれはバラムとゾーイの特殊効果を持っている僕も、か。
……うぅん、この像の《解析》は今はやめておいた方が良いかもな……まぁ、機能は分かってるんだし、今すぐする必要も無いだろう。
「……この像、使いたい、か?」
「うん? ……いや別に……そこまで移動効率は重視してないし、欠け月の写しが使えるなら近くの欠け月の写しに転移して目的の町に入れば良いんじゃないか?」
効率的なプレイなんて考えてたらこんなことになってないし、〈追憶の戦い〉なんてお断りされてなくても使わなかっただろうし。使えなくて困ることは……意外と無い。
「……そうか。屋台で何か買って食うか」
「そうだな」
アークトゥリア像の機能が僕達には使えないことが分かったので、ここで確認出来ることは大体済んだだろう。
僕達は屋台でラビット肉の串焼きを買って食べながら宿へと戻った。
買い食いするのも随分久しぶり……というか1、2回しかしたことないな……。
*
宿に戻ると、ちょうどローザと旦那さんが揃っていたので、準備が出来次第ドゥトワに行くことを伝えた。
「そうかい……じゃあ、しばらく会えなくなるんだねぇ」
しんみりとした雰囲気でローザが言う。その顔を見て、僕もユヌを離れるということはこの宿やローザ達ともしばらく会えなくなってしまうのだという実感が湧いてきてしまった。
「やだよぉ、今生の別れじゃあるまいし! また弁当を持たせてあげるから、そんな顔しないでおくれな」
そう言うとローザに力強く背中を叩かれる。いつか関所であった時のような痛みは感じず、沈んだ気分が吹き飛ぶような衝撃だけを感じた。
「あ、ああ。また戻って来たらここに泊まってもいいだろうか」
「何言ってんだい! 良いに決まってるよぉ」
ローザはそう言うと、ニッと満面の笑みを浮かべた。
「……ふ、ここのご飯が恋しすぎて、すぐに戻りたくなってしまうかもしれないな」
「おやまぁ! 上手いこと言うようになったじゃないか!」
少し冗談めかしたが、割と本心だ。偶然でしか無かったが、10年ぶり……と言っていい食事がここのご飯で本当に良かったと思えるくらいには気に入っている。
「と言っても、起きていられる時間を調節する為に早めに、いつもより長く寝ようと思うんだが」
と、同行するバラムにも伝えるつもりで横目で見る。
「どのくらいだ」
「3日くらいかな」
「……そうか。3日後、お前が起きたらすぐ出発でいいんだな?」
「ああ」
「すぐったってうちで食べてくんだろう?」
「もちろん」
しばらく食べれないのなら、食べておかない手はない。
「弁当も準備しとくからねぇ。アンタ! 腕によりをかけるよぉ!」
「……ああ」
その後、串焼きを軽く食べた程度で満腹度にはまだ余裕があった為、食堂で食事をとってから、2階へと上がった。
僕が自分の部屋に入ると……扉の前でバラムがすごい見てくる。…………ああ。
「どうぞ、入ってくれ。……もしかして、部屋主の許可が無いと入れないのか」
「ああ」
そう言うと、バラムが部屋へと入ってくる。
鍵などとくに無くても「そういうもの」かと思っていたが、案外ファンタジーなセキュリティがしっかりしているのかもしれない。
「何だこれ」
バラムが机に置かれていた木彫りの像を手に取る。
「バラム達が遺跡で戦った、狂った魔物を模った物らしい。……あの魔物の返礼だとか」
「ああ?」
手にした像を強く握ったのか「ミシッ」とした音がした。
「置物以外の特別な用途も効果も無さそうだから問題無いだろう…………多分」
「多分なんじゃねぇか」
だって、《解析》結果の隠蔽があまりに多かったし……。
「はぁ、ま、今はいいだろう。それより……」
「わ……」
木彫りの置物を元の位置へ置き、僕の腕を掴んで引いていくと、ベッドへ座った己の膝に僕を座らせた。
「3日会えなくなるんだ。防衛戦で借りも増えたし、しっかり礼をしておかないとな?」
「……それ、まだ言う、むっ」
流石にキスを正当化する為の詭弁なんじゃないかと思い当たってきてるのだが、僕相手にそれをする意味が分からないのと、何故か抵抗する気が湧かないので受け入れてしまう。
昨夜のような熱が渦巻く感じは無かったが、じわじわ熱を滞留させるようにゆっくりと長い口づけをした。
その後、ある程度満足したらしいバラムに頼まれて追加で作成した飴玉を渡し、色々確認したりしてログアウトした。
*
ログアウトをして少し休憩した後、アルスト公式連携アプリから先程“トウノ”を《解析》した結果のスクショを表示させる。
名前:トウノ
年齢:18
性別:男
種族:只人族
職業:揺籃編纂士 職業ギルドランクC
称号:【本の虫】【森碧】 控え【揺籃】【ユヌの救世主】
技能:《解析》《編纂》《古ルートムンド語》《歴史学》《暗視》《感知》《騎乗》《演奏》
装備:揺籃の編纂士装束シリーズ、揺籃の鍵、革紐付きの呼子笛、盟友の証《バラム》
状態:正常
特殊効果:《夜狗の目印》《鉄の匂い》《錆の匂い》《灰の残り香》
《夜狗の目印》
【夜狗の血族】バラムの付けた目印。
己の縄張りを示す証。
特殊効果:縄張りを侵す者への《夜狗の威圧》自動発動
《鉄の匂い》
【鉄銹】バラムの宿す力の匂い。
鉄を厭う者達は嫌悪することだろう。
その者達には汚れである故に。
特殊効果:特定の住民の好感度変化(中)、転生選択肢分岐
《錆の匂い》
【鉄銹】バラムにこびりついた妄執の匂い。
錆を厭う者達は嫌悪することだろう。
その者達には汚れである故に。
特殊効果:特定の住民の好感度変化(中)、転生選択肢分岐
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