おそらく、僕だけ違うゲームをしている。

鵩 ジェフロイ

文字の大きさ
105 / 246
本編

139:抜き打ち耐性チェック

 時折現れる高所の魔物や、魔法を使う魔物は検証野郎Zが危なげなく処理していた。鬼人族ということで、弓を引く力は強いのか、中々の威力のようだった。その代わり命中率が高くなるまで相当時間がかかったようだったが。

 物理的に数が多い時は、あぬ丸は敢えて数匹見逃し、その抜けてきた魔物に対してアルプが《暗闇》や《錯乱》を与えて足止めをし、そこをシャケ茶漬けが処理するという危なげない立ち回りを見せていた。

『皆今日初めて組んだとは思えない、見事な連携だな』
「まぁ、今の連携は俺といつもやってるからな。普段は俺が《挑発》でさらに受け持って数を減らしたり、あぬ丸が倒し切るの待つって感じで。今は他にアタッカーがいるから随分楽だけど」
『なるほど』

 鍋の蓋によると、あぬ丸との2人の戦い方をベースにシャケ茶漬けと検証野郎Zが合わせているようだ。いずれにしろ、皆随分とパーティプレイが慣れているように感じる。


「トウのんの〈睡眠〉を付与するってやつも見てみたいなぁ」
『ん? ああ、それは構わないが』
「じゃあ次に遭遇した魔物にやってみてくれよ」
『ああ、分かった。……たった今感知範囲に魔物が現れたが、それにかけてしまってもいいだろうか?』

 ちょうど僕の《勘破》にユヌの北に多く分布しているゴブリン系の魔物が3体、マーカーとして現れていた。

「うん? 俺の《生命感知》の範囲にはまだ何も無いけど……」
「もっと進めばいる」

 首を傾げるシャケ茶漬けにバラムがフォローを入れてくれる。バラムはさらに僕よりも先に魔物が感知出来ているだろう。

「うっす! 兄貴がそう言うなら、進んでみましょう!」
「トウのんはどの辺まで近づけばデバフ入れられるの?」
『今すぐ出来るが』
「「「えっ」」」
「ほう」

 僕の言葉にシャケ茶漬け、あぬ丸、鍋の蓋が固まる。その後少しだけ〈宵暗の帳〉について、存在を感知さえ出来れば相手を睡眠状態に出来ること、僕が解除しない限り10分以上は確実に目覚めない事を説明した。
 説明を聞いた皆の感想はというと……。

「性能えっぐ……」
「さすトウ~」
「敵に回したら勝てる気がしないな……」
「とても面白そうな技ですね」

 と、こんな感じだった。
 ……まぁ、僕も説明していて改めて滅茶苦茶だなと思ったくらいだ。それに望む夢を見せたりだとか、その夢を覗けるだとかというのは説明を省いている。

 ということで、シャケ茶漬け達も感知出来る範囲に入ってから魔物達に秘技をかける段取りになった。
 少し進んだところでシャケ茶漬け達からの合図を受け、秘技を発動する。念の為《解析》でも特殊効果が付いていることを確認して皆へ伝える。

『技をかけた。問題なく睡眠状態になっているはずだ』
「……トウノ君? 詠唱とか、そういうの無いの?」
「トウのん、バトロワもいけたんじゃないー?」
『それは流石に……』
「おい、無駄口叩いてないでさっさと獲物を見に行け」
「あっ、そうっすね! 了解っす!」

 ツッコミ所が多すぎるのは自分でも分かっているところではあるが、既に仕掛けていて一応戦闘状態に入っている為、バラムが諌める。

 素早く魔物の元へ向かうと、無防備に夢の世界を漂っているゴブリンが転がっていた。

「うわぁ、本当にグッスリだぁ」
「ここから何をしても起きないと言っていましたが……」
『そこまでちゃんと検証出来ているわけでは無いが、そのはずだ』
「では今少し検証してみても良いですか? 勿論、メインはダンジョンですからそこまで時間はかけません」
「まぁ、それなら私達はいいよー」
『ああ、構わない』
「……なぁーんか嫌な予感がするが……手短にな!」
「ええ、ありがとうございます」


 ということで検証野郎Zの検証が始まったのだが…………。

 出来るだけダメージの少ない攻撃で何回攻撃されても起きるのか起きないのかを確かめている内はまだ良かった、とだけ言っておこう。

「いやぁ……『検証班のヤベェ奴』の真髄を見ましたわぁ……」
「うっ……久しぶりにレーティングフル解放を後悔した……」
『ああ、久々のグロ耐性チェックだったな……』
「こうなる気がしたんだよ、俺ぁ……」
「皆さん全員レーティングフル解放でしたか。珍しい事もあるものですね」
「猛烈に後悔してるところだけどなー」
『ほほう、彼奴……精霊にも大分嫌われておるようだし、いつかは“こちら側”に来るかもしれないであるな』

 検証野郎Zとバラム、そしてシルヴァ以外は若干グロッキー気味だ。

「思いがけず良い検証が出来ました。ありがとうございます」
『いや、こちらこそ色々と試してくれて助かった』

 検証結果はと言えば、やはり何をしても効果時間が切れるか、僕が解除しない限り“何があっても起きない”と思って良さそう、という事だった。改めて恐ろしい秘技だ。

 ちなみにゴブリン達は既に生命力が尽き、事切れている。

「ま、まぁ……じゃあもう近いから行っちまおう、ダンジョン……」
「そうだねぇー」
『ああ』

 若干パーティ全体のテンションが下がってしまったが、何とか切り替えてダンジョンへと歩みを進めた。



『ここが“ハズレダンジョン”……』

 ひたすら北西の方角に進む事しばらく。周囲を蔦植物に囲まれた洞窟のような大穴の前へと辿り着いた。

「そうー。ここの洞窟の中に入ろうとすると、洞窟の中じゃなくてダンジョンに飛ばされるって感じ!」
『ふむ』


[ダンジョン:金壺の地下道]
始まりの町『ユヌ』の北西の林深くにあるダンジョン。
地下道の何処かに妖精が集めた金銀財宝があるという。

危険度:★★☆☆☆☆☆


 ……何となく、入り口付近の空間を《解析》してみたら出来てしまった。しかも内容が……。

『ここのダンジョンは“妖精”が関わっているらしい……』
『帰るぞ』
「兄貴? 何処行くんすか?」

 報告しないわけにはいくまいと、バラムに《解析》結果の重要な情報を伝えると予想通り、即、踵を返してしまった。

『まぁ、待つである。ここにいるのは多少悪戯好きではあるが、大した事は無いである。この異人らにも対処出来るレベルであろう。それに知っている気配も僅かに感じるである』
『お前の知り合いな時点で厄介な奴だろ。帰る』
『それはそうであるが……まぁ、お主と我、それに主殿がいれば全く問題無い相手であるよ。主殿も異人である。冒険を楽しんでも良かろう』
『…………チッ。分かった』

 バラムが自分の感覚を研ぎ澄ました気配がしてから、シルヴァの意見を呑み、留まる判断をしてくれた。バラムも直感などが鋭いので問題無いと判断したのだろうか。

「どうしたんすか?」
「なんでも無ぇ」
「? そうっすか」
『ところで、もう入っていくのか?』
「あー、その前にネタバレになっちゃうけど、ちょっとだけ事前情報あった方が良いかもぉ?」
『そうなのか』

 ということで、あぬ丸がダンジョン情報を教えてくれる。

「ダンジョンの中は薄暗くてカビ臭い地下道になってるんだけど、まず最初にダンジョンボスらしきオークウォリアーが出てくるんだけど、すぐに背を向けて奥に行っちゃうんだよー」
『へぇ、そうなのか』
「んで、その途中でけしかけられる色んな雑魚敵を処理しつつ、行き止まりでオークウォリアーを倒して終わりーって感じなんだー」
「でもそれだけだし、ドロップもショボいから本当にすぐ過疎ったな」

 最初にダンジョンボスが姿を見せて逃げるのは中々聞かないユニークな演出だと思うが、それだけのようらしい。

「でもトウのんなら何か見つけられるかもしれないから期待してる!」
『それなんだが……このダンジョンは“妖精”が関わっているようだから、確かに他にも何かあるかもしれないな』
「お、早速!」
「ほぅ、結局未だ発見されていない“妖精”ですか」
「流石にちょっとワクワクしてきたな!」
「妖精かぁ……アルストの妖精ってどんな感じなんだろうな?」
『ククク……』
『……』

 実は皆が“徘徊レアボス”と呼んでいる存在も妖精なんだが。


 とまぁ、とりあえず。
 僕達は“ハズレダンジョン”に突入した。


〈ダンジョン『煤けた地下道』を発見しました〉


 …………ん?
感想 295

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? 表紙は自作です(笑) もっちもっちとセゥスです!(笑)

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)