おそらく、僕だけ違うゲームをしている。

鵩 ジェフロイ

文字の大きさ
120 / 246
本編

154:持ち込み不可

 それから、サバイバルイベントの方にエントリーしたり、追加の概要や注意事項のお知らせが来たりなどして、いよいよイベント当日。

 僕達は借家の1階で思い思いにイベント開始時間を待っている。

 イベントに参加するバラムとシルヴァと話し合いもしながら準備を進めていたので、準備万端だ。


 ちなみに追加でお知らせがきたイベント概要によると、イベント期間はバトルロイヤルもサバイバルも最大6日間とのことだった。また、ワールドイベントと同様の時間加速が入る為、ゲーム内では6日間だが、現実時間では6時間ほどになる。イベント用の特殊な時間加速が入る都合上、途中参加が不可能な為、遅刻厳禁だ。
 途中ログアウトは出来るが、その時点で一発リタイア扱いとなり再参加は不可となる。

 どちらのルールも、2回LPが尽きてしまうと、リタイアとなり、イベント終了まで待機エリアに強制移動させられるとのこと。
 そこでは、バトロワもサバイバルも観戦出来るとのことだった。……なんだか、早々に待機エリアに行ってしまうのも面白そうに思える。

 サバイバルはこの6日間を生き残ることが出来ればよく、6日目はそれまでの進捗具合に則したクライマックスイベントが発生してイベント終了とのことだ。

 つまり、プレイヤーは実質5日間思い思いに試行錯誤して生き残ればいいらしい。しかし、この概要によって『複数のクライマックスイベントが存在する』ということが匂わされてしまったので俄かにプレイヤーが騒ついていた……というのをシャケ茶漬け経由で聞いた。

 まぁ、全員同時に参加するので、どんな分岐があってクライマックスがいくつ用意されているかなど知りようがないので、結局普通に楽しめばいいだろう。

 それよりも僕や他のプレイヤーの頭を悩ませたのは、持ち込める装備やアイテムの制限についてだ。

 装備は装備中の物については制限は無いが、予備や飛び道具のストックに制限がつくとのことだった。
 また、アイテムも合計で15個まで持ち込みという。これは“合計”というのがミソで、通常のインベントリは重複アイテムは同一スロットに収まるが、イベント仕様では同じアイテムが2個あれば、そのまま2枠を使う、という仕様だ。

 これは僕も掲示板を覗いてみたのだが、中々阿鼻叫喚だった。
 矢を持ち運ぶ必要がある弓系職業や、MP回復アイテムが潤沢に必要な魔法系職業など、アイテム消費の激しい職業が何とか15個よりも多く持ち運ぶ方法は無いかと躍起になっていた。

 結果的には、多少持ち込み量を増やすことは出来るようだった。ヒントはインベントリを持っていない住民にあり、住民が普通に使っている革袋などにアイテムをしまえば、その革袋で1個分のアイテムと見なされるようだ。
 しかし、それにもシステム的に許容量が決められていて、詰め込めるだけOKといったお得なスーパーのようなことは出来ないみたいだったが。

 まぁ、この辺りの縛りもイベントの内容やパーティプレイ推奨にかかってくるのだろう。僕達のパーティは検証野郎Z以外はあまり消耗品を必要としないスタイルなので、皆で何を持ち寄るか相談して手分けをすると、普通に十分なアイテムを持ち込めそうだった。
 しかもこの15個の枠は、バラムやシルヴァにも適用されているので、僕達のパーティは全体の中でも持ち込みの枠に余裕がある方なのではないだろうか。

 ちなみに、残念ながら鍋の蓋の従魔であるアルプは15個の枠は与えられないようだった。与えられる基準としては“インベントリが使えるか否か”が条件なのかもしれない。


 …………ただ、それらのプレイヤー全体のお知らせとは別に、運営から僕へ向けた個別のメッセージも来ていて、内容を端的に言うと……「『底根の四つ葉壺』は持ち込み不可」というものだった。

 まぁ「だろうな」という感想だった。
 アイテムの持ち込み制限のあるイベントなことを考えれば、僕ならばほぼコスト無しで記録したアイテムを生成出来る壺など、チートアイテムに等しい。

 ということで『底根の四つ葉壺』はイベント中は留守番が決定した。……一応、ただのアイテム扱いのはずなのだが、不服そうな雰囲気を感じるのは何故だろうか。……気のせいということにしよう。

 ちなみにもう一つの壺である、ジャルグの金壺もほぼ同じ理由で留守番対象であることを検証野郎Zが教えてくれた。どうやら《財宝変換》というのが《底根変換》とほぼ同じ能力らしいことから、ジャルグは参加出来るが、金壺は持ち込み不可となっている。

 ジャルグはそもそも参加意欲が低かった上に、金壺が持ち込めないと知り、不参加ということだった。検証野郎Zもジャルグの意志を尊重するとのことだ。


 イベントは普段いるフィールドとは別の空間で行われるとのことだったが、こちらも追加で発表されたイベントのキービジュアルを見るに、鬱蒼としたジャングルのような場所が舞台のようだ。
 全体のデザインも普段の西洋ファンタジーなものではなく、エキゾチックなものになっていて新鮮な印象だった。


 さて。


「そろそろ、時間だろうか」
「ああ」
『クククッ、未知の体験はいつでも心躍るであるなぁ』

 シルヴァがワクワクを押さえきれないという風にモゾモゾとしている。ちなみに今はスコップオウルに変身して僕の肩に乗っている。

 突然、視界に影が落ちる。手で触ると、どうやらフードを被せられたようだ。

「ちゃんと被っとけ」
「そうだな。気をつけよう」

 イベント空間には普通に敵性NPCがいる可能性が高いし、基本は他プレイヤーと協力するイベントとはいえ、PK嗜好のプレイヤーがいないとも限らない。

 出来るだけの自衛はしなければ、と気を引き締め直す。


 イベントへの参加は、ログインさえしていれば開始時間になったら自動でイベント空間へ転送される仕組みだ。

 転送先で事前にエントリーしたパーティでまとめられるとのことで、あぬ丸達とはそこで合流する手筈になっている。

 遅刻厳禁な仕様の為か、ゲーム内時間で半日ほど前から定期的に開始までの時を告げる全体アナウンスが流れている。
 先ほど10秒前を告げるアナウンスが流れたので、そろそろだろう。


『イベント開始時刻になりました。これよりイベント空間への転送を開始します』

〈パーティ『チームびっくり箱』はサーバー09に振り分けられました〉


 アナウンスの直後、視界が歪み、景色が変化していく。

 ……パーティ名は、まぁ、何も言うまい。色々案が出されて、一番マシなのがこれだった、とだけ言っておこう。



 やがて変化が収まると、薄暗く小さなランプがいくつか吊るされているだけの、殺風景で広さだけはそこそこある板張りの空間にいた。ここが“イベント空間”とやらなのだろうか。
 ……殺風景過ぎる気がするが。

 視線を巡らせると、バラムとシルヴァもちゃんと転送されてきているようだ。

「お、やっほー」
「ここがイベント空間……なのか?」
「ピキュゥ?」
「随分殺風景な空間ですね」
「どもっす! 兄貴! シルヴァパイセン!」

 一緒に登録したパーティメンバーも続々目の前に現れる。これで僕達のパーティは誰も欠けることなくイベントに参加出来たことになる。

 ちなみに、シルヴァに皆からどう呼ばれたいか聞いてみたところ、普通に名前が気に入っているとのことで、最近、ダンジョンで大々的に名乗ったらしい。
 なので、あっという間にプレイヤーの間で名前が広まり今では『シルヴァ』でも全然通じる。

 気づけば、少し間隔を開けた周囲にも他のプレイヤーが現れ始めていて、随分賑やかになってきていた。

 ザワ……ザワ……

 ……なんか、視線を感じる。

「やっぱ目立つよねー」
「……僕達がか?」
「兄貴と検証野郎Zと大きいから鍋の蓋が、かな。シルヴァパイセンは今は目立たないし、トウノ君はフード被ってる時は分かりづらいし」
「シャケ茶漬けも顔は結構売れてんじゃーん」
「いや、この中だと俺埋もれてね?」
「まぁ……」
「そこは否定してくれよ……」

 シャケ茶漬けが大げさに肩を落とす。

「それにしても、もうイベントは始まっているのだろうか……?」
「そうなんだよねぇ、舞台はジャングルだって聞いてたけどー」


 ガコォンッ!!


「「「「「!?」」」」」

 突然、大きな揺れが僕達を襲った。
感想 295

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? 表紙は自作です(笑) もっちもっちとセゥスです!(笑)

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)