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本編
237:個人的な打算
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バラムとお互いの出したものでドロドロになるまで交わったあと、連続ログイン時間を切るための短いログアウトを挟んでまたログインして現在。
ベッドでバラムに抱えられながら、庭に面する暗闇の壁を見やる。しかし、この眼はその向こうの景色も視ようと思えば視える。
庭の向こう、星の湖に変化が起きていた。
「星が……落ちて、昇っている……」
空の遺跡のような都市から星の光が落ちて、湖に沈み、湖から空の都市へと昇る光もまたある。
……これが、月の機能が正常になった証の景色なのだろう。
「そういえば」
しばし、神秘的な光景を眺めていると、すぐ傍で低い声が呟く。
「お前が月を修復する『個人的な打算』ってなんだったんだ?」
「うん? ……ああ、それは……」
バラムの瞳を見て答える。
「バラムが狂った魔物になる可能性を完全に断ちたかったんだ」
僕の言葉に赤みのある錆色の目が見開かれる。
月さえ直れば魂は慰めを得、狂った魔物は生まれなくなる。……バラムは多分、かなり高い確率で最初のワールドクエストで狂った魔物になる運命だった。
そして、雪山での様子を見るに『狂った魔物になり得る素質』というのはずっと高いまま抱えていくしかないのだと思う。
……月が直らない限り、常に狂った魔物の影はつき纏う。
「僕の力でバラムを奪われる可能性を減らせるのなら、やらないという選択肢はない」
他のすべての魂のため、というのは……言葉を選ばずに言うのならおまけだ。本当にこの考えのみで月の修復を頑張った。
「……は、お前って……」
「ん……」
バラムの顔が少し歪んだかと思うと、軽い口づけの雨が降ってきて、最終的には首筋に頭をグリグリと押しつけられる。無造作な髪が素肌を刺激してくすぐったい。
「ふふっ」
「……惚れた。いや、ずっと惚れてる」
「それは良かった」
心なしか耳や頬が赤みを帯びているのを見て、僕の頬も熱くなってくる。
「僕も、普段の格好いいバラムも、僕にしか見せない少し甘えたなバラムも大好きだ」
「ああ…………格好いい?」
僕の言葉にピクリとバラムが反応する。
「お前……俺のこと格好いいと思ってたのか?」
「え……最初の方からずっと思っていた、と思うけど……」
「最初の方から?」
訝しげな表情で聞き返してくるのが、なんとなく心外な気がしてくる。……しかし、確かにこれまで口にしたことはなかったかもしれない。……犬姿のバラムには「かわいい」と言ったことはあっただろうか?
ふぅむ……とりあえず、僕が格好いいと思っているところを挙げていく。
「僕が思うバラムの格好いいと思うところは、精悍な顔つきと生業と技に見合った体格とか、よく使い込まれて手入れされている装備を身につけている姿とか、優秀な傭兵なのだろうと察せる強さと知恵があるところとか、結構面倒見が良いところも……」
「っ、分かった、もう十分だ」
「うん?」
途中で止められてしまい、まだあるのに……とバラムの方を見ると、今まで見たことがないほど顔が真っ赤になっていた。
……なんだか、いろんなところがむずむずとしてくる。
「バラムはすごく格好いい。僕にとっては誰よりもっ、んん」
さらに畳みかけた言葉に食いつかれるように唇を塞がれてしまった。少し強引にねじ込まれた舌に翻弄されて、身体の芯に熱を灯される。気づけば、ベッドに縫い止められ、格好いい逞しい身体に覆い被さられていた。
熱に滲む視界に、獰猛な光を宿した瞳がギラギラと輝いているのが見える。
「ふ、その瞳も格好いい」
「っ……まだ言うか」
そうして、少し調子に乗った僕はバラムによって、意味のある言葉は発せられないようにひたすら責められてしまった。
ベッドの中で再び1日が過ぎ、さすがに服を着てリビングに移動してご飯を食べながら、後回しにしていた諸々の確認をする。
まずはギルド連盟からのギルド配備に関する僕の許可状の件だ。
確認したところ、僕の目からはそこまでおかしなところは無さそうだったが、ウィスパーでノーナに経緯を説明して書状の下書きと契約書をインベントリ経由で送っておいた。
……当然のようにノーナもすでにウィスパーもインベントリも月の写しによる転移ができるくらい絆レベルが上がっている。……盟友契約前の関係値も換算されているのだろうか。
続いて、たくさん得た称号を確認していく。……アルストでは称号は得づらいはずなのだが、この多さは一体……? まぁ、それほど月の修復が一大事だったということだろうか。
【月の修復者】
月を修復した者の証。世界は慰めを取り戻した。
【月の管理者】
新たに闇の世界を統べる神『月神イーアスピルナ』の管理者の証。世界は安らぎを取り戻した。月神から僅かに信仰の力を分け与えられる。
【連環】
二つ以上の世界を自力で渡り、繋いだ者の証。
【深根環柢】
世界に深く根を張り、知と意志を集めて編纂し繋ぐ者。
若くはあるが、もう雛とは呼べないだろう。
特殊効果:《我は業なり》
主に月の修復と世界を渡ったことで得られた称号であるようだった。二つ以上の世界というのは……幽明の境と闇の世界で二つ、というカウントなのだろうか。『自力』とあるので、イベントでの世界渡りはカウントされないのだろう。
それにしても職業名やユニーク装備にも関わってくる『深根環柢』という称号だが……。とりあえず造語ではあるらしかった。
うぅん……『縁覚』の時の説明文から考えると、これでとりあえず『一人前』認定された、ということなのだろうか? ……一人前のハードルが高過ぎないか? しかもこれでもなお「若くはあるが」とか言われている……。
そして、特殊効果も変化している。以前は《源を技に、技を源に》という、LPとMPをAPに、APをLPとMPに充てられるという効果だったが、変化後は……。
《我は業なり》
技は業となり、たとえ倒れても魂は業に宿る。
業が継がれる限り我滅びる事無し。
特殊効果:LP、MP、APが『業』というステータスに統合される。技能は業を消費して使う。魔法は使えなくなる。業が尽きるまでは倒れない。技能を使ったものを他者に利用されているほど『業』の値や回復速度に補正が入る。
「……これは、ひどい……」
一体、僕は何になってしまったんだ? という称号効果だった。
「またか」
「……まぁ」
僕の様子から色々と察したバラムが半目で僕を見る。僕のせいでは……多分ないと思うが、とりあえずバラムにも称号効果を見せる。
「……ツグハルが死にづらくなるならもうなんでもいい」
バラムがこの情報を見ても、いやに落ち着いた反応を見せる。……もういろいろと感覚が麻痺しているのかもしれない。
「まぁ、それもそうだな」
一理ある。ちなみにUIは既にスタミナ以外のステータスバーが統合されて『業』となっているし、三つのステータスの合計では効かないほどの数値となっていた。……補正というのが入っているのだろう。
ただ、変化前もそうだったが、これだけ数値があっても僕の防御力ではまったく過信は出来ないので、プレイスタイルは変えずにいこうと思う。
そして、次に称号が【深根環柢】に変わったことによってユニーク装備も変化した。今回は、呑み込まれた装備は無さそうだ。良かった。
見た目以外の大きな変化としては……装備全体に《認識阻害》(大)が付与されていた。これは僕が姿を明かしたいと思っている時のみ効果が緩むようだ。まぁ……いちいちフードを被らなくても発動するようになったのは良かったのだろうか?
……というか常に《認識阻害》が発動するということは常に《幻梟の夢渡り》が発動するということ、か……? ……テロ度に拍車がかかってしまったが……僕を認識できなければ害意をもつこともできないと思うので、それほど問題はない……だろうか?
ちなみに秘技の〈宵暗の帳〉は〈闇き閨〉へと変化していた。これは遺跡の碑文の最初の言葉に似ているような……この秘技も極まったということなのかもしれない。
あとは『外套』から『羽衣』に変化した装備には新たに《羽変化》という効果が追加されていた。文字通り、羽衣が羽に変化して飛べるらしい。
まぁ、フクロウに《変化》しなくても飛べるようになった、と思えばいいのだろうか。
……こちらも中々稀有な効果なのだろうが、他のものの衝撃が強過ぎて、普通に受け入れられてしまうな……。
試しに《羽変化》させてみると、三対の翼になった。羽衣の半透明の星々の輝きが垣間見える色と質感をそのままに、鳥の翼になったような感じだ。どの鳥がモチーフなのか判断出来ないが……多分、僕といえばでフクロウなのではないだろうか。
そしてなんと、鳥のように羽ばたかなくても飛べるようだった。……フクロウで得た経験を使えないのは少し残念だ。
ベッドでバラムに抱えられながら、庭に面する暗闇の壁を見やる。しかし、この眼はその向こうの景色も視ようと思えば視える。
庭の向こう、星の湖に変化が起きていた。
「星が……落ちて、昇っている……」
空の遺跡のような都市から星の光が落ちて、湖に沈み、湖から空の都市へと昇る光もまたある。
……これが、月の機能が正常になった証の景色なのだろう。
「そういえば」
しばし、神秘的な光景を眺めていると、すぐ傍で低い声が呟く。
「お前が月を修復する『個人的な打算』ってなんだったんだ?」
「うん? ……ああ、それは……」
バラムの瞳を見て答える。
「バラムが狂った魔物になる可能性を完全に断ちたかったんだ」
僕の言葉に赤みのある錆色の目が見開かれる。
月さえ直れば魂は慰めを得、狂った魔物は生まれなくなる。……バラムは多分、かなり高い確率で最初のワールドクエストで狂った魔物になる運命だった。
そして、雪山での様子を見るに『狂った魔物になり得る素質』というのはずっと高いまま抱えていくしかないのだと思う。
……月が直らない限り、常に狂った魔物の影はつき纏う。
「僕の力でバラムを奪われる可能性を減らせるのなら、やらないという選択肢はない」
他のすべての魂のため、というのは……言葉を選ばずに言うのならおまけだ。本当にこの考えのみで月の修復を頑張った。
「……は、お前って……」
「ん……」
バラムの顔が少し歪んだかと思うと、軽い口づけの雨が降ってきて、最終的には首筋に頭をグリグリと押しつけられる。無造作な髪が素肌を刺激してくすぐったい。
「ふふっ」
「……惚れた。いや、ずっと惚れてる」
「それは良かった」
心なしか耳や頬が赤みを帯びているのを見て、僕の頬も熱くなってくる。
「僕も、普段の格好いいバラムも、僕にしか見せない少し甘えたなバラムも大好きだ」
「ああ…………格好いい?」
僕の言葉にピクリとバラムが反応する。
「お前……俺のこと格好いいと思ってたのか?」
「え……最初の方からずっと思っていた、と思うけど……」
「最初の方から?」
訝しげな表情で聞き返してくるのが、なんとなく心外な気がしてくる。……しかし、確かにこれまで口にしたことはなかったかもしれない。……犬姿のバラムには「かわいい」と言ったことはあっただろうか?
ふぅむ……とりあえず、僕が格好いいと思っているところを挙げていく。
「僕が思うバラムの格好いいと思うところは、精悍な顔つきと生業と技に見合った体格とか、よく使い込まれて手入れされている装備を身につけている姿とか、優秀な傭兵なのだろうと察せる強さと知恵があるところとか、結構面倒見が良いところも……」
「っ、分かった、もう十分だ」
「うん?」
途中で止められてしまい、まだあるのに……とバラムの方を見ると、今まで見たことがないほど顔が真っ赤になっていた。
……なんだか、いろんなところがむずむずとしてくる。
「バラムはすごく格好いい。僕にとっては誰よりもっ、んん」
さらに畳みかけた言葉に食いつかれるように唇を塞がれてしまった。少し強引にねじ込まれた舌に翻弄されて、身体の芯に熱を灯される。気づけば、ベッドに縫い止められ、格好いい逞しい身体に覆い被さられていた。
熱に滲む視界に、獰猛な光を宿した瞳がギラギラと輝いているのが見える。
「ふ、その瞳も格好いい」
「っ……まだ言うか」
そうして、少し調子に乗った僕はバラムによって、意味のある言葉は発せられないようにひたすら責められてしまった。
ベッドの中で再び1日が過ぎ、さすがに服を着てリビングに移動してご飯を食べながら、後回しにしていた諸々の確認をする。
まずはギルド連盟からのギルド配備に関する僕の許可状の件だ。
確認したところ、僕の目からはそこまでおかしなところは無さそうだったが、ウィスパーでノーナに経緯を説明して書状の下書きと契約書をインベントリ経由で送っておいた。
……当然のようにノーナもすでにウィスパーもインベントリも月の写しによる転移ができるくらい絆レベルが上がっている。……盟友契約前の関係値も換算されているのだろうか。
続いて、たくさん得た称号を確認していく。……アルストでは称号は得づらいはずなのだが、この多さは一体……? まぁ、それほど月の修復が一大事だったということだろうか。
【月の修復者】
月を修復した者の証。世界は慰めを取り戻した。
【月の管理者】
新たに闇の世界を統べる神『月神イーアスピルナ』の管理者の証。世界は安らぎを取り戻した。月神から僅かに信仰の力を分け与えられる。
【連環】
二つ以上の世界を自力で渡り、繋いだ者の証。
【深根環柢】
世界に深く根を張り、知と意志を集めて編纂し繋ぐ者。
若くはあるが、もう雛とは呼べないだろう。
特殊効果:《我は業なり》
主に月の修復と世界を渡ったことで得られた称号であるようだった。二つ以上の世界というのは……幽明の境と闇の世界で二つ、というカウントなのだろうか。『自力』とあるので、イベントでの世界渡りはカウントされないのだろう。
それにしても職業名やユニーク装備にも関わってくる『深根環柢』という称号だが……。とりあえず造語ではあるらしかった。
うぅん……『縁覚』の時の説明文から考えると、これでとりあえず『一人前』認定された、ということなのだろうか? ……一人前のハードルが高過ぎないか? しかもこれでもなお「若くはあるが」とか言われている……。
そして、特殊効果も変化している。以前は《源を技に、技を源に》という、LPとMPをAPに、APをLPとMPに充てられるという効果だったが、変化後は……。
《我は業なり》
技は業となり、たとえ倒れても魂は業に宿る。
業が継がれる限り我滅びる事無し。
特殊効果:LP、MP、APが『業』というステータスに統合される。技能は業を消費して使う。魔法は使えなくなる。業が尽きるまでは倒れない。技能を使ったものを他者に利用されているほど『業』の値や回復速度に補正が入る。
「……これは、ひどい……」
一体、僕は何になってしまったんだ? という称号効果だった。
「またか」
「……まぁ」
僕の様子から色々と察したバラムが半目で僕を見る。僕のせいでは……多分ないと思うが、とりあえずバラムにも称号効果を見せる。
「……ツグハルが死にづらくなるならもうなんでもいい」
バラムがこの情報を見ても、いやに落ち着いた反応を見せる。……もういろいろと感覚が麻痺しているのかもしれない。
「まぁ、それもそうだな」
一理ある。ちなみにUIは既にスタミナ以外のステータスバーが統合されて『業』となっているし、三つのステータスの合計では効かないほどの数値となっていた。……補正というのが入っているのだろう。
ただ、変化前もそうだったが、これだけ数値があっても僕の防御力ではまったく過信は出来ないので、プレイスタイルは変えずにいこうと思う。
そして、次に称号が【深根環柢】に変わったことによってユニーク装備も変化した。今回は、呑み込まれた装備は無さそうだ。良かった。
見た目以外の大きな変化としては……装備全体に《認識阻害》(大)が付与されていた。これは僕が姿を明かしたいと思っている時のみ効果が緩むようだ。まぁ……いちいちフードを被らなくても発動するようになったのは良かったのだろうか?
……というか常に《認識阻害》が発動するということは常に《幻梟の夢渡り》が発動するということ、か……? ……テロ度に拍車がかかってしまったが……僕を認識できなければ害意をもつこともできないと思うので、それほど問題はない……だろうか?
ちなみに秘技の〈宵暗の帳〉は〈闇き閨〉へと変化していた。これは遺跡の碑文の最初の言葉に似ているような……この秘技も極まったということなのかもしれない。
あとは『外套』から『羽衣』に変化した装備には新たに《羽変化》という効果が追加されていた。文字通り、羽衣が羽に変化して飛べるらしい。
まぁ、フクロウに《変化》しなくても飛べるようになった、と思えばいいのだろうか。
……こちらも中々稀有な効果なのだろうが、他のものの衝撃が強過ぎて、普通に受け入れられてしまうな……。
試しに《羽変化》させてみると、三対の翼になった。羽衣の半透明の星々の輝きが垣間見える色と質感をそのままに、鳥の翼になったような感じだ。どの鳥がモチーフなのか判断出来ないが……多分、僕といえばでフクロウなのではないだろうか。
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