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顔の具合が悪い
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しばらく羽田の頭を押さえつけたまま腰を振ってみたが、どうにも昂らない手塚。羽田は時に酷くされるのを好む傾向にあるが、手塚はそんなことしたくない、大事な大事な恋人を、大切に優しく抱きたいと思っている。こんな暴力的な扱いをしたくない。
不意に手を離すと、羽田も息苦しかったようで、枕から顔を背けたかと思うとぷはぁ、と息を吸い込んだ。だが顔は依然見えないまま。
「顔、見せて下さいよ」
やはり羽田の顔を見ながらしたい。しかし
「やだってば」
けんもほろろに断られた。
「羽田さんはさっきの、気持ちよかったですか」
「うん……」
そう返事している割に、羽田のほうもそれほど高揚しているように思えない。
「僕は、気持ち良くなかったです」
羽田にだって手塚が萎えてしまったことは、内部の質量から察していた。
どうせ酷く扱うなら、と思い切って手塚は羽田を力ずくで仰向けにした。
「あっ、やめ……」
いつも飄々と余裕たっぷりな羽田が慌てているのがとても珍しかったが、それよりも驚いたのは、ようやく見ることのできた顔。
瞼全体が腫れ上がり、もはや片目は完全に開けることができなくなっている。濃く長いまつげが頑張って瞼をこじ開けようとしているが、腫れぼったい重力に負けている。『ものもらい』と聞いて想像する数倍のひどさであった。元々が大したことのない顔ならそこまで目立つこともないかもしれないが、美の集大成とも言える羽田の顔に、ただ一つの汚点はたいそう目立つのだった。
「ひどくない? 嫌がってるの無理矢理見るなんて」
「どの口が言うんですか。ひどいことさせられたついでですよ」
呆れたような声色に、ほんの少し非難の色を添えて。手塚がそう言いながら羽田の頬を優しく撫でた。
「こんな顔見たら、萎えるでしょ」
落胆まじりの声に、手塚は気づかされる。信じられないが、羽田は手塚にこんな顔を見られるのが恥ずかしかったのかもしれない、と。
「顔なんてどうでもいい、とは言いませんけど、でも、そんなことで萎えたりしません」
「バカ正直」
「すみません」
「そういうとこも好きだよ」
くつくつと笑う羽田はもういつもの羽田で、瞼の腫れなんて手塚にとっては本当にどうでも良かった。
「僕は、さっきのあんなプレイの方が萎えますよ。ちゃんと顔を見ながら、優しく抱かせて下さい」
あらためて羽田の細腰を掴み、挿入を深くした。見つめ合う二人に、安堵にも似た表情が浮かぶ。
「いつも通りだね」
「いつも通りがいいんですよ」
翌朝。手塚が朝餉の仕度を済ませ、そろそろ羽田を起こさなきゃと思っていたら、羽田がリビングに現れた。いつも寝起きが悪く起こしてもなかなか起きないというのに。
「おはようごz……あれっ?」
「なんか、治っちゃった」
羽田の瞼は全く普段通り。涼しい目元が今朝も輝いている。
「えぐい顔面治癒力、どういう仕組みになってるんですか」
「さぁ? あっ、今朝も美味しそう♪」
終わったことはどうでもいいとばかりに朝食へ目を向ける羽田と、慌ててみそ汁を温め直す手塚だった。
不意に手を離すと、羽田も息苦しかったようで、枕から顔を背けたかと思うとぷはぁ、と息を吸い込んだ。だが顔は依然見えないまま。
「顔、見せて下さいよ」
やはり羽田の顔を見ながらしたい。しかし
「やだってば」
けんもほろろに断られた。
「羽田さんはさっきの、気持ちよかったですか」
「うん……」
そう返事している割に、羽田のほうもそれほど高揚しているように思えない。
「僕は、気持ち良くなかったです」
羽田にだって手塚が萎えてしまったことは、内部の質量から察していた。
どうせ酷く扱うなら、と思い切って手塚は羽田を力ずくで仰向けにした。
「あっ、やめ……」
いつも飄々と余裕たっぷりな羽田が慌てているのがとても珍しかったが、それよりも驚いたのは、ようやく見ることのできた顔。
瞼全体が腫れ上がり、もはや片目は完全に開けることができなくなっている。濃く長いまつげが頑張って瞼をこじ開けようとしているが、腫れぼったい重力に負けている。『ものもらい』と聞いて想像する数倍のひどさであった。元々が大したことのない顔ならそこまで目立つこともないかもしれないが、美の集大成とも言える羽田の顔に、ただ一つの汚点はたいそう目立つのだった。
「ひどくない? 嫌がってるの無理矢理見るなんて」
「どの口が言うんですか。ひどいことさせられたついでですよ」
呆れたような声色に、ほんの少し非難の色を添えて。手塚がそう言いながら羽田の頬を優しく撫でた。
「こんな顔見たら、萎えるでしょ」
落胆まじりの声に、手塚は気づかされる。信じられないが、羽田は手塚にこんな顔を見られるのが恥ずかしかったのかもしれない、と。
「顔なんてどうでもいい、とは言いませんけど、でも、そんなことで萎えたりしません」
「バカ正直」
「すみません」
「そういうとこも好きだよ」
くつくつと笑う羽田はもういつもの羽田で、瞼の腫れなんて手塚にとっては本当にどうでも良かった。
「僕は、さっきのあんなプレイの方が萎えますよ。ちゃんと顔を見ながら、優しく抱かせて下さい」
あらためて羽田の細腰を掴み、挿入を深くした。見つめ合う二人に、安堵にも似た表情が浮かぶ。
「いつも通りだね」
「いつも通りがいいんですよ」
翌朝。手塚が朝餉の仕度を済ませ、そろそろ羽田を起こさなきゃと思っていたら、羽田がリビングに現れた。いつも寝起きが悪く起こしてもなかなか起きないというのに。
「おはようごz……あれっ?」
「なんか、治っちゃった」
羽田の瞼は全く普段通り。涼しい目元が今朝も輝いている。
「えぐい顔面治癒力、どういう仕組みになってるんですか」
「さぁ? あっ、今朝も美味しそう♪」
終わったことはどうでもいいとばかりに朝食へ目を向ける羽田と、慌ててみそ汁を温め直す手塚だった。
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